こころに残ったところ。「『分かりやすくしていけばいいのですよ。身のまわりにある物や、人を一つずつ片付けていけばいいんです。余計な雑音を取り払っていけば、必要なものだけが残ってるものです。あなたの生活で、複雑なものを順に消していけばいい。清算するんですよ』」(p91)これを聞いた「鯨」はどんどん人を殺していくわけですが・・・殺し屋小説に出てきたシンプルライフ指南。
熊田紺也『死体とご遺体』【内容情報】(「BOOK」データベースより)湯潅とは、死体を洗い、化粧をほどこし、仏衣を着せて旅立ちのための“ご遺体”にする儀式のこと。かつてCM業界で活躍した著者は、バブル崩壊による倒産に見舞われ、紆余曲折のすえ、湯潅サービスの起業にたどりついた。以降十年、出会ったご遺体はかれこれ四千体―。死者を抱き、洗い続けること。そこからみえる、現代の死生の姿とは。心に残ったところ。「その結果、それまでは『ただの赤の他人のうす汚い死体』にすぎなかった一個の身体が、ようやくにして『尊厳のあるご遺体』になったという実感もふつふつと湧いてきた。」(p21)死体をご遺体にする。してくれる。これってすごいお仕事だ。かつては身内がやっていて、それはそれは慣れてないので大変だったそう。ニーズのあるところにサービスは生まれる。湯潅作業の具体的な流れもよくわかりました。喪家訪問→遺体確認→機材セット→末期の水(逆さ水)→身体洗浄・洗髪→着衣の着せ替え→化粧・整髪→納棺→葬家退出この作業の一部にご遺族を参加させることで、癒しを与えることにもなると。第三章の「記憶に残る特別なご遺体」では様々なご遺体とその背景から感じたことを綴ってらっしゃいます。飛び降り、やけど、死後硬直、蛆のわいた遺体。プロといえど、大変な思いをされたことと察します。「こういう仕事をし、こういう遺体を度重ねて見ていると、現代とは自分がいつどんなときに生命を失うことになるか、全く予測のつかない時代なのだなと実感する。そんなことはわかっている、という方も多いだろう。だが、悲惨な事故死体を自分の目で見てみるといい。たいていの人は恐怖ですくみあがるはずである。」(p117)だからこそ、「今」を悔いのないように生きなくちゃなぁと思います。義務感でしんどくなってしまっては本末転倒だけれども、悔いは少ない方がいい。「第4章 妻は語る」では、仕事のパートナーとしてメイクを担当される奥さんの言葉にも、やっぱりいいお仕事をされてるんだなぁと実感。プロ意識。「仕事にはキャリアを積んで慣れていい部分、慣れなくてはいけない部分と、絶対に慣れてはいけない部分があると思うんです。」(p163)便利な時代だけれども、湯潅だけはコンビニエンスになってはいけない仕事だとおっしゃいます。死を考えることは、生を考えること。人は裸で生まれて、裸で死んでいく。生まれた時も、死ぬ時も、無力。【目次】(「BOOK」データベースより)序章 四十九歳の誕生日、私は初めて遺体を洗った第1章 CM制作会社社長から湯潅師へ第2章 湯潅サービスを起業する第3章 記憶に残る特別なご遺体第4章 妻は語る第5章 四千体の手応えと、来し方行く末熊田紺也『死体とご遺体』(楽天)『死体とご遺体 夫婦湯灌師と4000体の出会い (平凡社新書)』(Amazon)
川上卓也『〈貧乏道〉を往く』心に残ったところ。「ひとつの物を無理して買わなければならない人間には、無理をして手に入れた物自体を有効に利用することなんて不可能なんです。」(p26)分相応、そして成長。「節約術というのは、戦術と同じです。節約術を用いなければならない状態に陥る前に、それを回避する戦略が必要なのです。」(p38)戦略がないのに戦術だけでは、戦争に負ける、と。忍者隊だけでは、天下を取れない。「自分のベクトルを持ち、シンプルライフを送ることが戦略です。」(p38)「他者を顧みずに、ちょっと悪びれて言うならば自己中心主義で生きることが、自分のベクトルを探すための手段です。」(p60)「人生は、無限でないにしろ、いくらかのリセットが可能です。」(p62)「モノサシのない人間が旅行をしても、消費以外の薬効は得られないのです。」(p89)「僕の嫌いな言葉の一つに『自分探しの旅』というのがあります。こんなもの、どこをうろついたって見つかりはしません。常に、そこにいる。それが、ゴミに埋もれてしまった本人にも霞んでしまっているだけの話です。自分のない人間が旅をしたって無駄。モノサシなき人生設計など落書き同然なのです。」(p91)自分のモノサシとは、価値観。シンプルライフへの移行は、スパイラルで徐々にでよい、と。緩やかにリセットを繰り返していけばいい、と。油絵を描きたいなら、まずは鉛筆を削ることから。「道具というものは、自分の意志に基づいて用いなければ足枷になるのです。」(p151)最期を前に、何を残すのか、残したいのか、残せるのか。誰に、何を。そのためには、いつ。「自分の思うとおりの人生を歩んでこられたか、つくるべきものはつくれたか、これからそれを成すのか、なにを、誰に、なんのために。」(p211)残された時間をどう使うのかは、自分次第。川上卓也『〈貧乏道〉を往く』(楽天)『“貧乏道”を往く』(Amazon)