2010年06月11日(金) |
山崎 武也『持たない贅沢』★★★☆☆ |
『持たない贅沢』 山崎 武也 三笠書房
心に残ったところ。
「個々の動作や配慮を万全なものにすることによって、大きな調和の場を作り出そうという試みが茶道の神髄である。その本質を見失ったのでは、茶の道を歩んでいるように見えても、その道は脇道でしかない。」(p19)
「最も重要なものは、目には見えない。カタチを積み重ねてココロを縦横無尽に働かせていけば、人生の本質へとつながる茶道の本質も少しずつ見えてくるはずである。」(p19)
「現在持っているものは、すべて過去に身につけたものであるから、まったく使い物にならないと考えるくらいの心構えが必要である。」(p30)
「今現在の瞬間を大切にするためには、過去にとらわれてはいけないし、将来に対す思惑にも左右されてはいけない。(略)現在に対して全力投球をするのである。」(p31)
「自分にとってプラスになる欲を、自分の能力と分に見合った程度に持ち続けることのできる人が、人生の達人になる資質の人である。その人の人生には無理がない。」(p35)
「何かを続けてしているうちに、それを一所懸命にすればするほど、当初の目的から外れていく可能性がある。目的達成のために利用している手段を追求しているうちに、熱中するあまりその手段を目的と見誤ってしまうからだ。」(p43)
そんな時は、その行為を一時休止するのが効果的。 沈思黙考。瞑想。原点に戻って考える。 思考のダイエット。
「所有するというのは、そのモノを全面的にコントロールできるということだ。所有が人びとを安心させる所以である。 だが、所有は持つことで、持っていると重い。それだけ自分の身体の自由が制限されることになる。したがって、所有しているモノが少なければ少ないほど、身軽である分だけ、身体の自由がきく。モノを所有していれば、モノの存在や安否が気になるので、それだけ心が乱される結果にもなる。持っているモノが少なければ少ないほど、精神の自由も確保されるのである。」(p49)
もったいない、の思い違いで、実際には精神的にも経済的にも空間的にも損をしている、といことはありがち。
「形あるものは、収容力に限りがある。一杯になったら、それ以上は入らない。その道理は誰もが知っているはずである。にもかかわらず、その簡単な事実を無視する人が後を絶つことはない。収容力以上に詰めこもうとしたら、そのものは壊れてしまうか本来の機能が果たせなくなってしまうかである。」(p54)
ではどうしたらいいかというと。
「やはり、将来に備えて、余裕を残しておくのが得策であろう。そのほうが、逆に自分の欲をよりよく満足させる結果になる。」(p55)
「写真などに取っておいて、後から見るというのは、直接に見て体験することではなくなる。懐かしく思うときには、大いに役立つかもしれないが、茶道のその場にいて何かを感じとる機会を逸している。」(p63)
今を愉しむ、ということ。
「毎日繰り返していると、ついつまらないことをしていると考えがちである。そんなときには、もしそれができなくなったときはどうなるかと考えてみる。すると、つまらないと思ったことの有り難みを、ひしひしと感じるはずだ。」(p81)
「手抜きというのは、必要な手続きを省くことだといわれているが、実際に省かれているのは人の心である。それを敏感に感じとったときは、どんなに立派に見えるものにも、人が感動することはない。」(p85)
「物を乱暴に扱うのは、その物を大切にしていない証拠であるが、さらにその場にいる人の心に対してもまったく配慮をしていないことを示している。」(p90)
「しかしながら、少しでも気になったことは、少なくとも多少は頭の片隅に残っていて、無意識のうちに心の重荷になっている。それがちょっとの努力でできることであったら、その場で片づけておいたほうがいい。そうすれば、心の中に一点のわだかまりもなくなり、前進のみを考えることができる。」(p93)
ゴミ拾いのような誰もがするわけではないことを続けることは、超短期的視点に立てば損かもしれないが、長期的にみれば、ローリスクハイリターンの人格向上のための投資となる。
掃除が有効な理由。
「自分の心を清浄に保つためには、自分の身の回りから清らかにしていき、徐々に自分の心まで浄化していく。(略)目に見える外のものをきれいにして、その影響を受けながら、目に見えない内へと同化させていくほうが楽である。」(p97)
執着。
「すべての悪の根源は自分自身にあることがわかる。」(p123)
「自分はそれらの欲のどこに焦点を当てているのかを、冷静な目で見ておくのが、幸せへ向かっての出発点となる。そのときに、それらの欲は最終的な目的ではなく、幸せという目的へ到達するための手段であることを忘れてはならない。」(p124)
美しいものを見る目を養う、の章。
「空白にも価値があると考えて大切にする。何もないと寂しいと考えると同時に、自分で頭を働かせて空白を埋めようとする。それだけで心が躍ってくる。空白には無限の可能性があり、知的活動を促進する結果になるのである。」(p462)
「まず作法は身体で覚える。(略)そのような状態になると、これまた自然に『なぜそうしているか』という理由もわかってくる。」(p176-177)
上っ面の「贅沢」に惑わされない、の章。
縁の会った人と自分自身を豊かにするために。
「人生の中で出会う人は、そのつきあいに関する長短や深浅の差はあっても、すべて何らかの縁がある貴重な人である。自分の宝物であると考えて、真摯なコミニュケーションをするように努めてみる。」(p197)
「結局、人びとは『便利』という言葉に幻惑されたり、さまざまな欲に釣られたりして、不必要なものまで必要であると錯覚している。」(p198-199)
「道具であれ何であれ、人間と同じように、物にも天寿を全うさせることを考えるべきである。(略) それを利用した人としては、せめて捨てるときに、物の果たした役割に対して感謝したうえで、葬送をするくらいの気持ちにならなくてはならない。」(p205)
それをすると、次から安易に手に入れようとしなくなっていく。 物に振り回されて窮屈な思いをしないために、必要なプロセス。
お金も手段。
「どんな人でも、自分の足元をよく見れば、いくつかの幸せが転がっている。それらを豊かさであると考えるかどうかによって、その人の幸福度が決まってくるのだ。」(p213)
小さな幸せを、ひとつひとつ感謝して、味わう。 そうすると幸せは増殖する。
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