2005年12月18日(日) |
山本 文緒『みんないってしまう』★★☆☆☆ |
『みんないってしまう』 山本 文緒 角川書店 (1997/01)
なんだか切ない気持ちになる、失うことを体験してきた女性のための、短編集。
一番心に響いたのは『いつも心に裁ちバサミ』。
整理整頓のできない社員のボクを叱る垢抜けない”冴えないただのOL”に見える、優等生の亜紀子さん。 噂では課長と不倫をしているらしい。
彼女の保管していたチケットが無くなった。 アルバイトの女の子の仕業だと決めつけて取り返しにいく彼女。
彼女は取り返したことを上司に告げず、アルバイトはやめさせられることなく、亜紀子さんの不倫相手と冗談を言い合い笑う。
ボクは思わず課長を殴り倒していた。
「お前らのしたことは暴力じゃないのか!」
泣きそうになっている亜紀子さんが目に入る。
私も、泣きそうになった。
そんな、「なんだか泣きたい」気持ちがそこかしこに漂う一冊。
『不完全自殺マニュアル』『泣かずに眠れ』もそう。
どうしようもない人たちが流されて生きる『ライフ』。 これは不快感がわきたって仕方がなかった。 読みたくなかった。
『対岸の彼女』もいいけど、こういうのも時にはよいね。
『みんないってしまう』
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