活字中毒のワタシの日記

2004年07月30日(金) 蓮池透『奪還 引き裂かれた二十四年』★★★★☆

奪還―引き裂かれた二十四年
奪還―引き裂かれた二十四年
蓮池 透
新潮社 (2003/04/25)

国家国旗法なんてつくって『愛国心』なんか植え付けようとしなくても、これを読書感想文(てのも嫌いではあるけれど)の課題図書のうちの一冊に加えてはどうよ。

それで十分だと思うよ。コドモには。

うちの子が。
隣の子が。
職場の同僚が。

ある日突然姿を消す。

自主的な蒸発はありえない。
考えられるのは、拉致。

そして24年。

24年って、もう私24年前のことなんてすっかり忘れてる。10歳か。
そう、私の誕生日にも拉致されたカップルがいはるんだ。
15歳の誕生日は、日航機が落ちて、長野にいて轟音を聞いたのでした。

とにかく。
読んでください。少しでも多くの人に。
『蓮池兄』さんは、テレビで見た印象そのままの、賢く冷静な方のようでした。そして良心も持ち合わせてる。
だから洗脳された弟に、とまどい、いらだつ。

読み進めるうちに、これは北朝鮮だけの門題じゃないと気づくはず。
無能の国、日本。
そしてその無能な政治家を選ぶ、無能な国民。

このままじゃいけないよね。

森喜朗は前から嫌いやったけど、もっと嫌いになりました。
山中なんとかも同様。
田中眞紀子さんも人としては面白いけど、政治家向きじゃない。国民を見てないもの。

ほんとうに、帰れた方々はよかった。当たり前のことなのに、よかったと思えることがまた哀しい。
まだ北に残ってる(無理矢理残らされている)方々の1日も早い帰国を願っています。

読んで、帰ったばかりの蓮池さん(弟)のやつれぶりの真実を、知って下さい。

奪還―引き裂かれた二十四年



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2004年07月29日(木) 『二人だけで生きたかった』★★☆☆☆

二人だけで生きたかった―老夫婦心中事件の周辺
二人だけで生きたかった―老夫婦心中事件の周辺
NHKスペシャル取材班
双葉社 (2004/02)

NHKのアーカイブス特別編だとか。
副題は『老夫婦心中事件の周辺』。
NHK取材班は足取りを追う。

痴ほうの妻をかかえ、持病の体と戦いながらの日々。
それでも、彼は幸せだった。

どうにもならなくなって、その時彼等が選んだ道は。

親子心中なんて聞くと「それは心中じゃなくて殺人と自殺だろ!」と言いたくなる私ですが、ここに出てくる老夫婦はそうじゃなかったのかもしれない。

二人だけで、海へ。

これで楽になれる。

ふたり一緒に。

そう、どんなに愛し合っても、一緒に死ぬというのはかなり難しい。
残されるのが嫌と言っても。

彼等予備軍はものすごくたくさんいて、そしてそれに国や地方の対応がおいついていない。
私自身、予備軍なんだ。
子どもの世話になるなんて考えてもいないけど、その時がこないとわからない。まして、痴ほうになったら。(物忘れはすでにかなりきてますが)

老後をちょっと考えてみるのもいいかもしれません。

なにより私がうらやましかったのは




"夫の妻への献身的な愛。

薄っぺらな自分にそれができるだろうか"




日に日に薄情さのつのる自分にはちょっとキツイ愛情ものでした。

二人だけで生きたかった―老夫婦心中事件の周辺



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2004年07月28日(水) 東野圭吾『幻夜』★★★★☆

幻夜
幻夜
東野 圭吾
集英社 (2004/01)

参った、参りました。
昨夜は2ちゃんのミステリ板の東野圭吾ネタバレスレなど読みふけってしまいました。(その前はアマゾンの京極夏彦のレビューへの読み手=ファンのこだわりに感心し)
やっと読み終えてくれた相方に、感想を語り合おうとしたら…。

え?
そうなの?
あれも?
えええ?
あっそういえばっ。
そっ、そっか。
あああ、そうだ大阪だ。

私は、ほんとーに、伏線とかほっとんど気づいてなかったことに気づきました。
相方、わかりすぎ。頭のよさの違いなのかなぁ。
東野さんに申し訳なさすぎるくらい、読めてない。

でも、面白かったです。
ぐいぐいぐいと、読まされました。

ネタばれになってしまうので、多くは語れません(て能力的にいつものことやん)。
『白夜行』をも一度読まねばと図書館に予約しました。
あ、そうだ『風とともに去りぬ』もだわ。

「善」「純情」な手料理やの娘のせつない恋心が、そしてラストの雅也の決意が、痛ましいようで救いのような気がする、お話でした。

アマゾンのベストレビューアーの方が今年最初の徹夜本と書いてあったし、ほんとおすすめです。くらーい気持ちになるかもしれないけどね。

『幻夜』東野 圭吾 (著)

ほんと、推理小説を推理できない私…。うわっつらしか読めない私でも、楽しめた一冊でした。

幻夜



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2004年07月27日(火) 北朝鮮による拉致被害者家族連絡会著『家族』★★★★★

家族
家族
北朝鮮による拉致被害者家族連絡会
光文社 (2003/07/08)

日本人として、たまたま自分の身に起きなかった幸運に感謝しつつ、是非読んでほしいと思う一冊です。
無知な自分を恥じました。
贅沢な自分を反省しました。
それでもたいして変わらないのですが。

北朝鮮に拉致された方々の一刻も早い帰国を。
生存を私も、信じています。
できることをやりたいです。

まずは、知ることから。

横田さんが、めぐみさんを見たと語った脱北者(元工作員)に、これからは彼の家族(北にいる)の無事も祈ります、と語ったくだりは三浦綾子さんの小説を思わせました。
キリスト教って、救われる人はいるのですね。救う人になる人も。

次はこれを読もう。
『奪還―引き裂かれた二十四年』蓮池 透 (著)

家族



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2004年07月20日(火) 桐野夏生『残虐記』★★★☆☆

残虐記
残虐記
桐野 夏生
新潮社 (2004/02/27)

帯より。
「誘拐。監禁。謎の一年間。そして、25年後の『真実』。」

一通の手紙をきっかけに、突然失踪した小説家。
夫に残された原稿。
そこには25年前の小学生監禁事件の被害者だった事実が記された手記だった。

小説と手記と、現実と空想と。
いたましさの中に、ほんの少しの救いと、哀しさと。
そんなものがつまった印象でした。

監禁事件といえば、アレが題材となったかと思われます。
どれくらいの深さの心の傷が残されたのか、修復不可能なこの小説から少し、想像することができるかもしれません。

私の思い出せる恐怖は、2度ほど痴漢にあった(泥棒とも対面したっけそういえば)ことですが、無力感は怒りを萎えさせるのに十分な程でした。
女性であれば私でなくてもよく、たまたま私で、対抗できない悔しさもどかしさ哀しさ。
これの一体何乗で表現できるのでしょうね。

痛みを感じた分だけ、ひとの痛みにも感じやすい自分になりたい。

残虐記



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2004年07月16日(金) 羽田圭介『黒冷水』★★★☆☆

黒冷水
黒冷水
羽田 圭介
河出書房新社 (2003/11/22)

17歳。文芸賞受賞。

直木賞と芥川賞を10代がとったということで負けちゃいられないと書いたとどっかで読んだ。
その直木賞と芥川賞は酷評書くことになりそうなので、読みません。

で、こちらはというと、兄と弟の確執を描いたもの。
登場人物は少ないのに、読ませます。
『青の炎』みたいだよ、と相方にはすすめました。
ちょっと違うかな。
でも黒冷水、分かるような気がするよ。
私もどす黒くなった経験、封じ込めてる。
血がたぎるような怒り、じゃあまだ大丈夫なんだよね。

ラストの構成も凝っていて、「え?」と読者を惑わすあたりもなかなかのもの。

久しぶりに読みごたえのある本に出会えました。
感動…はせえへんかったけど。
次回以降に期待!

黒冷水



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2004年07月12日(月) 青木和夫作加藤美紀画『ハッピーバースデー命かがやく瞬間』★★☆☆☆

ハッピーバースデー―命かがやく瞬間
ハッピーバースデー―命かがやく瞬間
青木 和雄 加藤 美紀
金の星社 (1998/01)

※感想文の参考にしようと(あわよくばパクろうと?)検索してやってきた方、残念でした。参考になりません※

第44回青少年読書感想文全国コンクールの中学校の部の課題図書。
図書館の目立つ所にあったので、借りてみた。

母親の癒えない心の傷を負わされ、ことばをなくした11歳のあすか。
ずっといい子できた兄直人からの「おまえ、生まれてこなきゃよかったな」。
単身赴任をいいことに、しつけも責任も母親にまかせきり、の父親。
あすかを傷つけ続ける母。

そんな二人を救ったのは、田舎の祖父母。
自分で生きることの大切さを教わる。

言葉を取り戻し、転校先ではいじめに断固立ち向かう。
校長や親も巻き込んで、いじめ問題は解決に向かう。

祖父の死にショックを受けるあすか。

同じ敷地内にある養護教室。
そこで寝たきりのめぐみとともだちになるあすか。
そして、めぐみとの死別。

そして、最後にはあすかの12歳の誕生日を祝う会がこっそり計画され…。

『命の尊さを強く感じました。』
『あすかのように、強く生きたいと思います。』
『いじめは絶対にいけないと思います。』

なんて感想文が寄せられることでしょう。

なんでこんな本をあえて読ませるのだろう。
お涙ちょうだいを狙ったみえみえのドラマ。

よく見たら、著者はカウンセリング経験豊かな元教師。
あまりに定形的で道徳の時間に見たドラマみたいだなーと思った。
『ダイブ!』とか、『ダレン・シャン』とかじゃだめなわけ?
本嫌いな中学生がまた増えるんじゃないかといらん心配をしてしまう。

けれど、一点共感できたところ。
まだ自分の「こども」を大切にできてない母に、「ママ」ではなく「静代さんと呼ぶことにする。」と言いのけたところ。
母親が自分の中の「こども」を大事にすることに気づくのはまだ先だけれど、あすかの中の「おとな」が成長している証だ。

私もそうすればよかったのか、とすとんと胸に落ちた。
今でもメールなんかじゃ名前を使っているけれど、「おかあさん」と思えないのにそう呼ぶのは不自然で苦痛だ。
そっか。
「おとうさん」だって「おばあちゃん」だってそうすればよかったんだ。
「コモコモ」だけじゃなく。
(うちにいりびたってた祖母の弟の顧問さんをそう呼んでいたのだ)

ハッピーバースデー―命かがやく瞬間



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2004年07月10日(土) 戸梶圭太『CHEAP TRIBEベイビー、日本の戦後は安かった』★★★☆☆

CHEAP TRIBE-ベイビー、日本の戦後は安かった
戸梶 圭太
文藝春秋 (2003/08/07)

副題。
「トカジがほじくり出す、できればなかったことにしたい でもそうはいかな、あなたもそこにいたでしょう昭和史」
「ダメ男の爆烈的人生」

この人の本を読むと「安い」の意味合いが違って来てしまうのは私だけ?
「安い」人間にはなりたくないな。
人間を「安い」だの「高い」だのいうような人間になりたくないな。
でも、ゴミ捨て無視開き直りオババさまや暴走ご近所迷惑走り屋改造マニアくんは「安い」。
と思ってしまう。

そんなことを思う私は、はいあがろうとしてるけどやっぱり「安い」人間なんでしょうね。
トカジ読んでるし。好んで。(相方は 絶 対 読まない)
読書の幅が広いってことで許してもらえないでしょうか。

一人の男性の昭和史です。
炭坑で死を日常のこととして過ごす少年時代。
やりたいやりたいやりたいやりたい(ヘッペしたい、というそうです)と悶々と過ごす青年時代。
極道と関わり、人生の裏街道をなんとか走り抜け、最期はトカジさん、トカジすぎます、この終わり方。もすこしなんとかなりませんか。
と頼みたくなる主人公栄吉の人生の終焉。

こんな昭和史もあったのでしょう。
もっと悲惨なものだって。栄吉は男性だけど、うちのばあちゃんも夫を早くになくして多くの子ども抱えて、ほんとーにがんばってきた。

苦労しらずや、私。

守られてきたし逃げてきたものね。

それを忘れず、できる範囲で守っていこう、大事なものを。

CHEAP TRIBE-ベイビー、日本の戦後は安かった



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2004年07月07日(水) 鴨下一郎『何もかも嫌になって泣きたいときに読む本』★☆☆☆☆

何もかも嫌になって泣きたいときに読む本
鴨下 一郎
青春出版社 (2005/12)

帯より。
「『もう、がんばらない。…こんな弱い自分がいたっていい。

肩の力をじょうずに抜いた、恋愛、仕事、人間関係、毎日の暮し…』

というわけで期待して読んだ鬱の私ですが、鬱だからか、なんだかあたりさわりないどっちつかずの話がまとまりなく続き、眠くなった。

なので何もかも嫌になって泣きたいくらい辛い時は、「フテ寝」。
これが一番なのかもしれない、と深読みしてみたりして。

ストレスに関するクリニックの第一人者のようで、診察はきっとすばらしいのだろうけど、御本をお書きになるのは苦手なのかもしれない。
ほんと、不思議なくらい、すとんすとんと入ってくる「何か」がないんだもの。

もしかしてゴーストライター使った?
これもまた、タイトル負けしている本だと思います。
残念ながら。

何もかも嫌になって泣きたいときに読む本



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2004年07月06日(火) 津村秀介『浜名湖殺人事件』★☆☆☆☆

浜名湖殺人事件―富士‐博多間37時間30分の謎
津村 秀介
講談社 (2005/07)

いかにも列車の旅暇つぶし用の一冊といった感じ。
副題は『富士-博多37時間30分の謎』。

浜名湖で心中したと見られる男女。
湖畔で絞め殺されるのを目撃された男性。
そして、関東で絞殺されていた男性。

この4人の関係は。

で、完全犯罪をもくろむ犯人と、その謎を解こうとする刑事。

こういうの、好きな人は好きなんだろうね。
時刻表、私も一時期見るの好きだった。
18きっぷで九州や北海道行ったりしたもんなぁ。

でも、まあ、この手の本は今の私には結構です。
もっとがつーんとくるのが読みたい。
人生短いからね。

浜名湖殺人事件―富士‐博多間37時間30分の謎



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2004年07月05日(月) 江國 香織 『号泣する準備はできていた』★★☆☆☆

号泣する準備はできていた
号泣する準備はできていた
江國 香織
新潮社 (2003/11/19)

理解できへん。
先日の『世界の中心で、愛をさけぶ』がこっちよりも売れてるなんて。

そういう私も、この直木賞受賞作、途中までは???でした。
短編が続くわけですが、(ベストビューワーもつっこんでいたが、私も行間広くてページ稼いでんな、と感じた)
なんかこー、もりあがらず、たのしめず、うっとくるものもなく、なんなわけ?と。

そしてラスト2編『号泣する準備はできていた』『そこなう』で、きました。
ひきこまれました。
不思議な、哀しさやせつなさのつまったボトルにつめられたような気持ちになった。短編だったからよかったのかもね。これで長編だったらかなりきつい。

タイトルがうますぎて、損してるような気がするけれど(ものすごく構えてしまわない?このタイトルじゃ)、ぴかぴかのペンでさらさらと勢いよく気持ち良く書けたんじゃないのかな、と思った。
見える人には見える、ぴかぴか。金ぴかじゃない、軽く透明ですらあるぴかぴか。
随所にその「さらさら」が感じられて小気味良かった。
こんな文を書けたらいいなぁと思った。

でも江國さんの、もっと読みたい!とは思わない。
また御縁があれば、という感じ。
今回は前回同様保育園の新着図書でした。返却しないと。
次は『蹴りたい背中』あたりか?(^^ゞ

号泣。
ずいぶん前に数日号泣したけど、疲れるのなんの。
しばらくは、準備もしたくない。幸せなことです。

号泣する準備はできていた



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