青の階

2005年05月29日(日) モルモローゾ

天気のよい日が続いていてうれしい。

朝見るなら、空と雲の境界がはっきりしている空がいい。
好きな音楽を聴きながら洗濯物を干して
いつも教室に一番乗りの友達に会うために早めに家を出る。

夏が近付いて日暮れの速度がゆるやかになってきた。
完全に暮れたと思っていた夜空に緑青の色が残っているのを見つけたとき、
胸がきゅ、と軋む音がする。

あっと言う間に5月が終わりそうになっていて、ショックだ。
もうちょっと時間にはゆっくり過ぎて欲しい。
まだ何もしていない。
焦がれる気持ちばかりつのってゆく。
腕に力が入らない。
呆然としている間に、零れてゆく。
溢れてゆく。
こんなに欲しいのに。



2005年05月27日(金) 胎動

自転車置き場に長く長く影が伸びて、
それからゆっくり闇が落ちてきた。
どこか遠いところ、遠い、遠い、遠いところへ
行きたいと切望しているわたしたちを置いて
日常は廻り続ける。
海を見てると落ち着くし、
日が暮れた後の波音を聴いていると癒される、
浜辺で焚き火をして、
ちらちら揺れる火をずっと見ていたい、
そんな話をしていた。
きたないことが多すぎて、指の先から体が腐ってくるような感覚に襲われる。
まだ20年しか生きていないのにこうなのだ。
汚れたと感じた分だけ、潮騒で洗い流したい。



2005年05月24日(火) 黙り込む夕暮れ

授業が終わった後、みんなはバスで帰るので、
わたしは自転車で帰るので、
バス停の手前でわたしだけが右に曲がる。
わたしのいないところで
どんな楽しい話をしているのか、
電車の窓から
どんなに美しい夕日を見ているのか、
そんなばかなことを気にしている。
5月も終わりに近いのに、にわかに憂鬱になってきた。
笑えば笑うほど、喉の奥がぎゅっと痛む。



2005年05月22日(日) すんなり伸びた睫毛眺めて

交響楽団の友達の演奏会を聴きに行った。
コンサートホールは、なんというか
空間をすごく無駄に(贅沢に?)使った建築で、
一緒に行った友達と「面白いけど理論のH先生が怒りそうな建物だね」
などと苦笑していた。
そういえばソロじゃなくてオケを聴きに行くのは随分久しぶりだ。
同じ楽器でもソロとオケじゃ音が全然違うので変な感じがする。
今日はヴァイオリンがすごくうまい人がいて、くらくらした。
おおきくあくびをしながら隣を盗み見れば
友達が真剣な表情で演奏に聴き入っていたのでどきりとした。
彼女の恋は順調で、わたしは最近少し寂しい。



2005年05月20日(金) ウィンク☆ウィンク

英語のコミュニケーションの時間に
お互いにプリントに載っている質問を出し合いましょう、みたいな授業があって
その中のひとつに「Can you demonstrate how to wink?」という質問文が。
そういうわけで、今日はだれかれかまわずウィンクしまくりだった。
にっこりわらって、
ばっちん!



2005年05月14日(土) エンジン

GWに友達が車に乗ってきたのを見たせいか、
免許を持っている男の子たちは
鳥のヒナのようにピヨピヨと「車ほしい」を繰り返している。
わたしは疲れやすいし、したら勉強が苦しくなるし、
夜や休日は自分の時間を持ちたい派だから
バイトはしていないけれど
したらちょっとはお金がたまるのかな、
やっぱり、自分の車があったらいいな、とみんなと一緒に憧れている。

車とかバイクがあると、
世界が広がるとはほんとなのだなあ、と思う。
早朝、皆より少し早い時間に教室に行って
机の上にドライブマップを広げ、
あそこに行こう、ここに行こう、
ここを通ってあのルートで行こう、
そう話してるだけでなんだかもうそこに行ったような気分になる。

とにかく遠くに行きたいよ。
海が見える場所まで行きたい。



2005年05月13日(金) 晴天賛歌

空が晴れてると
なんだかうまくいくような気がする。
一緒においでよ、と言われるだけで
すごく幸せな気持ちで笑える。



2005年05月12日(木) 夢のガーディアン

やっと、また金曜日が巡ってくる。
一週間はとても長い。
ようで短い。
毎日一体何をやってるんだろうと思う。
色んなことが時々虚しくなってしまう。
ひとに何かを言われた日などは特に。
わたしはみんなに沢山の隠し事を持っていて、
だからそう見えるんだろう。
別にそんなに気楽で優雅に暮らしてるわけじゃない。

それでも言うつもりはない。
昔の傷も、密かな恋も、夢も、愛も、
わたしだけが知っていればいい。



2005年05月10日(火) でんせん

GW中はやたら暖かかったのに今週はまた微妙な気温で
薄着で大学に行ったのは失敗だった。
後悔しながらも、貴重な空き時間、
薄暗い食堂にこもる気にはなれなくって外のベンチで友達同士喋っていた。
わたしは森博嗣が好きで、
そしたら友達の中にも森博嗣が好きな子がいて、
二人で意気投合してにこにこしていた。
「すべてがFになる」
「冷たい密室と博士たち」
「笑わない数学者」
「封印再度」……
交互にシリーズものの題名を言い合って笑う。
「何かが抜けてる」
「『詩的私的ジャック』だ」
同じものを知っている、喜び。

でもこの子は英語の副題まで覚えていたので
さすがにちょっとびっくりした。



2005年05月09日(月) ピチカートの鋲

日曜日は二村英仁のヴァイオリンコンサートに行ってきた。
大好きなバッハのシャコンヌを聴いて、胸がときめいた。
バッハがなんて深くて崇高なのか改めて思い知った。

会場についてからサイン会があることを知って
当然迷うことなく演奏会が終わった後に長い列に並んだ。
音が好きです、とか、おつかれさまでした、とか
言うことはいくらでもあるはずなのに
本人を前にすると言葉が一つも出てこなくて、
わたしは鯉のように口をぱくぱくするだけだった。
何か言えばよかった…。



2005年05月07日(土) あの時確かに、恋に落ちた

45秒はわたしをとりこにするには充分すぎる時間だった。

ずっと習っている割にはわたしは全くヴァイオリニストに詳しくなく、
知っているヴァイオリニストといったら
パガニーニと五嶋みどりぐらいだった。
「だった」、というか、今でも大体そんなもんだ。
だから彼のCDを試聴したのも本当に偶然で、
ブラームスのハンガリー舞曲第5番を練習していた時
練習の参考にプロの演奏を聞こうと思っただけだったのだ。
目的のハンガリー舞曲より先に、他の曲を選んでヘッドホンを耳に当てた。

シャコンヌ、
その初めの重音を聴いた時に震えたのだ。
あの時確かに、恋に落ちた。



2005年05月06日(金) 水の憂いに濡れる午後

女友達二人が、すごいけんかをしているので
みんな心配している。
口もきかない、目も合わせない。
Zは親友が欲しいのだ。
相手のことを大切にして、大切にされて、
いつもなによりもその人のことを優先して、
あらゆることを相談できて、
あらゆるときにつながっていられる、
そんな親友が欲しいのだ。
そしてわたしの顔を見ながら、
シィラはいいね、Aと仲いいもんね、と言うのだ。
でもそんなんじゃない、別の友達に一時間前に言われたばかりだ、
Aとシィラは仲良く見えるけど、そんなに一緒にいるわけじゃないよね、と。

外からどう見えるかじゃないだろう。
一緒にいる時間じゃないだろう。
Aと仲良く見えなくたっていい。一緒にいれなくたっていい。
重要なのはそんなことじゃない。
わたしのことをただの友達としか思ってなくても、
なんとも思って無くても、
いい。
そんなの問題じゃない。



2005年05月05日(木) 白いほうが熱い

小さい頃は花火が苦手だった。
手に持った細い棒の先端から白い光が勢いよく噴き出してゆくのは、
その光が赤い粒となってアスファルトの上を転がるのを見るのは、
ほとんど恐怖だった。
きっと動く火が怖かったのだと思う。
ゆらゆら動くロウソクの静かな炎と対照的に
花火の火は勢いを持ち、明るく火花を散らして燃えるから。
浴衣に火の粉が燃え移りそうで、不安で、
花火を持つ手を遠くに伸ばして体から火を遠ざけていた。

そんなことを思い出しながら花火をした。
怖がりのわたしも今では花火が大好きで
指と指の間にはさんで一度に沢山の花火を振り回したりする。
あんまりみんなが一斉に花火に火をつけるもんだから、
煙がどんどんどんどん空に向けて立ち昇ってゆく。
真っ暗だった空が煙のせいで白く濁った色になる。

そっと、隣の友達から火をうつしてもらう瞬間が好きだ。
橙色に染まった手元、触れそうで触れない指、
一つの火を、同じものを、共有している気持ちになる。

すっくとひとりが立ち上がり、
ガンマンのように筒を持つ手を上空に向けた。
一発、二発、三発、四発…
打ち出し花火がきらきらきれいに尾を引いて琵琶湖の水面に流れて消えた。



2005年05月04日(水) スローテンポできらきら流れる

友達が、シロツメ草を踏みつけるのがかわいそうだから
草むらの端を歩こうと言い出した時
バイト三昧の生活の男がわたしと同じ本を沢山読んでいると知った時
いつもへらへらしている奴のライダー姿を見た時
お洒落な男の車のBGMがバッハの「無伴奏チェロ組曲」だった時
その後部座席に放り投げてある漫画が「ヨコハマ買い出し紀行」だった時
胸がぎゅっとなる気がする
いつもはにくったらしいと思ってる子に対しても、
とてもやさしい気持ちになれる
こんな日は、いつまでも夜が終わらなければいいと願う
そうすればずっと楽しくて幸せな気持ちが続くのに、と


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