あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2006年08月28日(月) 安易な選択、或いは放棄







酷く甘い酒を飲んで、みっともなく赤く染まった肌で電車に乗った。
ぐらぐらと揺れるのはたぶん、酒とちっとも旨くなかった煙草と、独りになったとたんに襲ってくる暗い感情のせいだ。



電車に、乗る。
夏の盛りより早々と暗くなった外には同じように走る列車の灯りが川面に映って揺れていて、遠すぎるその灯りに不覚にも泣きたくなる。
これは
慣れない味の酒のせいだと言い訳をして、
少しずつ醒めていく酔いにすがるように目を瞑ってみる。
吐いた息は、今まで深呼吸をしていなかったみたいに蒼褪めていて喉元に苦しく滞るので、火照った肌に冷えた表面のペットボトルを押し当てて息をする、短く、何度も。
目を開けると窓ガラスに充血した目の自分が映っていて、
再び目を閉じる、
鼻梁に涙が、落ちたのを感じる。
人が少なくてよかったと思う。


   もう名も呼べない、





ほんのすこしの過ちを赦せなかった自分を嗤うように、
もう誰の目にも見せない
もはや苦々しいほどの痛みをすがるようにこらえる表情を浮かべてみる。

そして酒や煙草や他の何をもってしても
消すことのできなかった熾火を赦す
それをせめて 弱めることのできるのは涙だけだとわかっていて
もう涙も忘れるつもりでいる自分の強情さに

  今 ここで

 世界が壊れてしまわないかと子供のように願う














↑さようならとだけ言って。

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ここにはもう、
なにも僕の得るものはないのに






2006年08月27日(日) こえ









いとしい、ひとの声を聴く。



耳元で、はかなく散っていくその声。
心はそれに囚われていても、やるせなさに縛られて応える声がかすれる。







くずれない恋。
もう名前も呼べない。





はら、はらと
止めようもなく涙があおむけになった目尻からいくつも耳元へ落ちて、散っていったあのひとの声に溶ける。






空には虹。
きっと心を震わすほど美しい。
このまま、目を開いて真っ正直にそれを見上げてしまえば自分が壊れてしまうような気がして視線を上げられない。
ただ涙がとめどなく、
とめどなく、

リミッターを少しだけ水位が越えたのかと思うような穏やかさで、






このままここで、
こわれてしまっても、
それでも、
いいと
思うのに。






2006年08月20日(日) たぶんあすこに、いるのだキミは、




朝からステキに暑い。
手のひらからさっきまで食べていたパイナップルの香りがする。


どうも最近アタマのほうが色惚けていて、なんだか仕事中も意識をふっと持っていかれる時があってヤバイ。
色惚け、と言うと何だかシアワセにホンワカしているようだけれど真実その逆。
独りでいるとひどく不安定で今日なんかは朝からボロボロと泣いてしまった。
家にいるとタバコが吸えなくてストッパーが働かない。
ひとが生活している辺りをかすめるように動くと、そちら側に強烈な引力を感じて動けなくなる。
この意識が飛翔して、魂が裂かれるように思うのだ。
もう少しで、メールをしたり連絡を取りそうになる。
手紙の文面まで頭の中に浮かぶ。
ひどくあやうい。


昨日ひさびさにタバコを吸ったら、ひどく血の気が引いてくらくらした。
あの感覚は嫌いじゃない。
ここからどこへでも、行けると思うことは、
行ってはいけない場所へも行けてしまうということで、それは僕の中の禁忌を刺激して媚惑的で煽情的な選択肢。

指に跡が残るくらいに両の手を絡ませて自分を封じる、
早く、と思う。
早く、

   何かが壊れてしまえばいい。


僕の内側を知ってか知らずか(たぶん知らないんだろう)、親は暢気に出会いを紹介しようかなどと言う。
お願いだからそんなことをすれば親子の縁を切るから死ぬほど嫌だから口に出すのもやめてくれと言うと、今度は僕を不良品扱いだ。
「あんたちょっとおかしいよ」
おかしくていいからそれでいいから不良品だからさ。
これ以上かき乱さないでほしい。

風呂から上がって自分の顔を見る。
確かにそろそろ個体としては成熟期なんだろう。
もう少ししたら皺とかシミとか白髪とか禿とか考えるようになるんだろう。
のびやかな、と言われるには程遠いけれど、売り物のように考えるなら物体としては熟してきたということ。
けれどもこれは売り物ではない。
もう既にsold outで抜け殻だ。







↑考えるのくらいはいつも簡単だけど。

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明日も、ひとの近くに行かなきゃならない。
きっと立ち止まってしまうだろう。
全身の細胞がざわめくような思いをする。

それでも生きなきゃいけないんだ。





2006年08月19日(土) 盲目(2)




ここから、立ち上がって
このまま外へ出てしまえば
行く先はもう 行ってはいけない場所だけに限られてしまいそうで
僕の身体はあえて動きを止めている
君ひとりが何の故にこの焦りを孕ませるのかわからない、
わからない、
ただ





泣きそうなのを流すように ハーブの香る煙草を口にする
久しぶりの煙草は胸にくらくらと甘いので
あまり深く味わうことのないように
唇の先だけで浅く
煙を含んでは吐いている

 まるで嘘だらけの恋を囁くよう


餓えているように 白い刺激物を貪るあと
脳髄の裏側を嬲られるみたく
足元の世界は潤むようにゆがむ
増えてゆく動悸と
やわらかな しかし絶え間ない戒めのあいだ
ひとの面影は何度も僕をよぎり そのたびに歩けなくなる足をあまりに正直すぎると思う


凶暴な、
安らぎのない祈りや渇望や飢えの中において
どこまでもあなたはまっすぐに私を指します









↑敗北、なのかも。

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2006年08月18日(金) くずれる砂




おおげさな雨。
なんだかむしょうに、急にこみあげるものがあって
懸命にやりすごす、馬鹿げた想いだと、思えばそれだけで
世界はやわらかくくだけた




こころが、からだを支配する前に
どこか遠くへ行ってしまわなければ と
このこころの強さに怯えている

すこしずつ、ふかく
考えればすぐに
思考は存在を否定してしまうから
せめてあわあわと 息もしないように
せめて夢に逃げていかないように
目を あけている


ここにいたくない
いたくない

ゆる ゆると
うたう、ように
髪にさわって 頬に触れて 唇をなぞる、
目はもうひとを憶えているので
たとえ目を閉じていてももう、その息遣いまでが
まるで手の内にある みたいに








↑ただひとえに、あなたを

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まちがえた、なんて
もう思ってはいけないんだ。





2006年08月10日(木) ことばがそれを のりこえられるひがくるでしょうか





あぁ、会いたい、
会いたくて会いたくて死にそうだ。

ふと
囚われたその考えに溺れて溺死しそうになる。
喉の、奥から、
波のようにじわじわと喉元を過ぎ舌を埋めて、
ただそれだけの望みが、
こころを、
言葉を、
声を、
くちびるを、
この身体を、
思うがままに染め上げて、一色に。
真摯な打算がこの身体を動かしてあのひとの元へ駆り立てるのだ。

これが
恋というもの
この熱さが
想うということ
言葉では何とでも言える。
衝動や情熱や一時的な嵐のようなもの、
そんな類のものであればいい。
一瞬を遣り過ごせば収まっていくものであればいい。
けれどこれは狂気で、
しかも月の皓々と照るを原因とするものではないから、
煽られるのはただ、
この望みが未だにここに根付いているということの証。
脳や理性を支配する、
ただの圧倒的な願い。

 会いたい、会いたい、それだけが望み


会えなければ死んでしまう、とか
そんなやわな願いではない。
会えないという選択肢はそこに存在できない。
死ぬとか、
ただそこで終わってしまえるような選択肢はない。
この身体はたとえ死んでも動く気がする。
死んだあとの方が楽なのかもしれない。
と、
こころはあまりに自由で怖い。

ただ、
ひと目、
こころが、ただあなたに会いたいと言います


さよなら神様。
あのひとの前でアナタは無力です。
心はやはりひとつしかなくて、どんなに分裂してもあのひとを想います。
その細胞の一片一片に至るまで。
花は
あのひとの香りであのひとの形、あのひとの声をしてあのひとの心をしています。
ただそれだけ。

こころが、
あのひとをもとめます








↑ことばはそれを乗り越えることができるでしょうか。

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あのひとが、
もう、
いないって、
ようやく、
いつかようやく、
しんじられる日がきたら、
あのひとが、
もう、
いないって、
ぼくのなかにも、
あのひとのなかにももう、
いないって、
しんじられる日がきたら、
いつか、
いつかようやく、


そうしたら。





2006年08月05日(土) Shinkansen






野も山もつっきってゆくレールの上から
窓の外を見ていると
地平線の向こうに揺らぐものがあって
白くぼんやりと輝いているあれがそう海です、と
つぶやきながら水平まで行けないかと考えている
けれど時速300キロでその穏やかな白い光は背後に飛んでゆき
そういえば富士山も見られなかった、と
がっくりしながら座席に身をうずめる
土曜昼間の自由席車両はずいぶん空いていて
並びの3席を占領して寝そべりながらふぅっと力を抜いている

 時速300キロで滑りゆく僕のからだ











↑なんとも、うっとりだ。

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