2006年07月30日(日) |
壊れないようにそっと抱く腕 |
夏が来てしまいました。という感じ。 7月は何だか大変だった。 職場もいろいろあったし、精神的にも、それなりに。 懐かしいひとにたくさん会った気がする。演劇も映画もかなり見た。 本を異様なほど買い込んだ。 そんなこんなで今はすごい金欠。やばいよ。
夏は何だか寝不足だとかでは寝ててはいけないような気持になるので、そして少しくらいの不調では動けなくならないので、不思議だけど何とか生きていける、という気分。 大丈夫かな。 大丈夫だ。 きっとあのひとが守ってくれる。 遠くで響く花火の音。 破裂音に追い上げられるような気持になるたびに、深呼吸をする。 もうすこしだけ、生き延びよう。もうすこし。 確かに生きてゆくのは習慣病でも、ここに意識と心があり理性が僕を支えていく。 そしてこの心は恥知らずにもあのひとの名前しか呼ばないのだから。
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梅雨明け。 空には雲がむくむくとわきあがっていて、 もう幼い頃のようにはわくわくとした気持ちはなくて、 どことなく憂鬱な暑さをこらえている。 ただ夕立が降ったらいいな、と そこに濡れる自分を想像すると 先程の酔いが身体を巡っていくようで とりあえず部屋に戻って古風な香を焚いてみる。 穏やかに、と 微笑んだのはもう誰だったかも忘れて 少ししけったような煙に軽く咳を漏らしている。
店の中にまで轟くような雷鳴だった。 なんとまぁ、と言いながら緑色の薄い酒を舐めている。 甘い酒のグラスの縁についた塩がきらきら光って、うっとりと酔いが浮かんでくるのを待ち受ける。
どこまで行けば帰れるんだろうね、と
甘えた台詞はこのひとにありがちな媚びを含んでいて。 答えようもない問いに眼差しだけできつく戒めを強いておいて、何も言わずグラスを口元に揺らしている。
いつでも帰れるんじゃないの、と
言葉にするのは簡単でもそれが亀裂を深めるのはわかっていて、ひとの狡さを受け容れるように視線は時折指先に落ちる。 簡単に、嘘でも一瞬は信じられる心を持っていたはずなのに、その一瞬すらここにはもう訪れてくれなくて、勝手に醒めていく理性を止められない自分によほど呆れてみる。
ここは、
寒いのでも 暑いのでもなくて、アルコールを受け容れた身体から少しずつ体温が逃げてゆくのを脱力しながら感じている。 皮膚は、薄く身にまとった衣のように頼りない感覚で、視界から色がだんだんと褪せてゆくのが冷えてゆく身体と同じペースなのが、ひどく切ない気持になる。 笑って、くれたらいいのに。
雨はどうやら時を置かず上がり、甘い酒は2杯とも同じように薄く甘く唇に残らない。 あきらめたくないと呟いたのが何か別の話だったように思えて、現に動いた自分の唇をなぞってみる。 舌に薄く濃い抹茶の匂い。
そうして陳腐化した情熱を穏やかに塗りこめている、静かな情熱はもう忘れるところからしか起こされない。
ひそかに感情はどこまでも独善的 希望なのか期待なのかどちらかわからなくても 恋人のこえがする、暗い部屋から それは追いかけようとすると意味もなく耳の中で溶ける。 抱きしめる、ただ 腕のやり場にも困った頃をもう思い出せないでいる 最後に、 もうあなたにキスをするだけの価値があるのかどうかもわからなくなってしまって困惑しているのです
*
朝が来たね、 耳の奥で残酷な声 朝が来たね、 のろりと 起こした半身の下にわだかまった未練 朝が来たね、 うるさく 朝が来たね、 見据える朝がせめて単調に笑うのが救いだったりする 朝が来たね、
*
空が晴れていきます 夕立が 朝顔の萎びた姿を弾劾していきました 辛辣な太陽に アスファルトは銀色に光り 残像が虹色に目を噛みます もう 大事なものを 大事にしないと決めた 結局 何もしないでいるのが一番自然で傷みにくい 空が晴れていきます 夕立が 朝顔の萎びた姿を弾劾していきました 夏の匂いを残して 夏が ゆっくりと退いていきます
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息も出来なくなりそうなので、何が苦しいのかもわからなくなってしまう。
また朝が来てしまった、と思うもうすぐ7ヵ月が過ぎると思う。
笑ってほしい、ただ僕をあんまり甘やかすアナタに笑ってもらいたい。
ささやかな希望と絶望と後悔と慰めと、真っ黒な朝。 ささやかすぎて笑ってしまう。 もうこんなのはイヤだと笑う。 もう諦めたんだと笑うのが一番つらい、かもしれない。 ただ笑う。 笑う。 アナタ一人幸せにできないと笑う。
とても、後悔がとても大きいのは もう取り戻せないからだ、とか
ざいあくか ん ?
とか
欲情、するときのあの 喉の乾上がる感じ、とか
少しくらいはわかっていて わかっていなくてもゆるされることをできる限りそのまま流して
目の上にうすく幕を下ろす、がたがたと ふるえる指先は怯えているのではなくて 世界はここにはないことを知っていて 知っていなくて もうどこか遠くへ 押しやることを決め付けていて
何故だかもう手放したひとの夢を見る 何度も 白昼夢のように。 ぽっかりと開けていると目の中に ふるえる ように あのひとが下りてくる 無意識にゆがむ眉根をもう あきらめている
執着はどこへ どこまで 行くんだろう 目の前を 死んでしまったひととよく似た背中が歩いていて 心がぐずぐずに溶けてしまうのを恐れて それだけで僕はもう前へ行けない
もう僕を待っていないでください もう僕を待たないでください 今もこれからも僕はひとりです 咲き続ける花の数は一定数を超えず 花びらは淡く光りながら散っていくのです それだけ 開けば開くだけ散ってしまう心を知らない、と言ってみる
目の上に薄く 幕をして 世界を半分ほど拒む 受け流せばそれだけで過ぎていく事柄を もう恋ではないと嘯いてみせる ここはずいぶんと寒い
2006年07月19日(水) |
ここにいないわたしのこと |
口には出さずに愛してる、と言ってみる
ここにはいつまでいられるんだろう、と茫然としてみる やわらかくて、 いたたまれない 遠くへ行くと少しだけ空が見えたようなきもちになる 距離は後ろ髪の長さで 遠く手繰られるのを感じても それはもう帰る場所はなくなったみたいに淡い
2006年07月18日(火) |
sin from thy lips |
: : ROMEO : : [To JULIET] If I profane with my unworthiest hand : : This holy shrine, the gentle fine is this: : : My lips, two blushing pilgrims, ready stand : : To smooth that rough touch with a tender kiss.
: : JULIET : : Good pilgrim, you do wrong your hand too much, : : Which mannerly devotion shows in this; : : For saints have hands that pilgrims' hands do touch, : : And palm to palm is holy palmers' kiss.
: : ROMEO : : Have not saints lips, and holy palmers too?
: : JULIET : : Ay, pilgrim, lips that they must use in prayer.
: : ROMEO : : O, then, dear saint, let lips do what hands do; : : They pray, grant thou, lest faith turn to despair.
: : JULIET : : Saints do not move, though grant for prayers' sake.
: : ROMEO : : Then move not, while my prayer's effect I take. : : Thus from my lips, by yours, my sin is purged.
: : JULIET : : Then have my lips the sin that they have took.
: : ROMEO : : Sin from thy lips? O trespass sweetly urged! : : Give me my sin again.
: : JULIET : : You kiss by the book.
明日の君を見る前に 少し 話をしておこう
空はかすれた灰色で 画用紙の上方に濁った それが今も 凍りついたままに僕を繋いでいる
君の声はもう 真昼を僕に運ぶことはなくて 崩れていくファンタジア 目を射す陽光が耳に焼き付けた蝉の音は 甦るたび影の色にほどけた 眩暈、 揺らめくたましいのように 足を縫い止めきつく絡む夏の陽をまだ 君の声とともに憶えている
緑は濃く匂って君の息を止める その気配に僕が立ち止まるあの木陰の坂道 手のひらを 突いて 離れて かきよせる肩と肌と 死にたげな欲望 ここに、 いない 無意識は絶望に等しい
雨、 濡れた髪のにおい ふるえる指先 喉の渇き掠れる声、 情熱 言葉にして想う前の駆け上るだけの恋 悔恨 触れる、 祈ることすら知らない幼い希望
明日君は夢に僕を見るだろう、 くぐもる遥かな雑踏の中。 見交わすことも なく この目は伏せられたまま君を知るだろう、 その羞恥と後悔の気配に。 灰色に塗られた空、 取り戻せない青の無垢と苛立ちの狭間で 勝手に塗り上げられたその濁りに絶望する瞳を 憐れまぬよう 蔑まぬよう ここに、 今も
希望を、刻まない なら それでもよかったのに、と わらう
アイシテイマス
2006年07月15日(土) |
ただ勝手に愛しているとかいないとか |
見下ろした遠くには青白い雲海が満ちていて その吐息のような色に
あそこへ
行ってみたいと 声が 落ちてしまう
もうどこへも帰れないと泣いたはずが ここへ留まれるはずもない事もわかっていて ひっそりとわらう 名を呼べない相手は一人だけでいい もう勝手に 独りで墜ちていくんでしょう
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何だか最近はもう、詩を書こうとしても集中力が続かない。 たぶんあんまり幸せでも不幸せでもないんだ。 いのちをぎりぎりと絞るような感覚がない。 もうあんなのはうんざりだ、とか。 ただ明らかに愛しているひとがいる。そしてそれが叶わないのを知ってる。 それは単純な不幸だ。 そこで何かが途絶して、なにかがだらだらとこぼれつづけている。 それはただの、僕の欠陥だというだけ。
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明日は梅田に演劇を見に行ってきます。 実はとてもとても楽しみ。 ハコは適度な大きさ(だと思う)なので、熱気がここまで届く気がするし、演出家が好きな人だったり役者が好きな人だったりで、かなり期待してる。 あとは、誰か呼び出してご飯でもできないかなぁと画策中。 ・・・もう遅いかな。
2006年07月13日(木) |
つ よ く な る よ |
つらくなるよ
ひっそり そんなことを言った唇があった 僕はわざと聞き間違えたふりをして
そうだよ、つよくならなきゃ
なんて 残酷なことを微笑んでみたりする あえて 触れないのは引きずり込まれないためで 突き放すこの手が 笑えないくらいに酔っているのもひとつの防衛線かもしれない
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しばらく忙しくしておりました。 昨日は「言鳴―ことなり―」というイベントに出ていたり。 して。 久しぶりにたくさん、自分の詩を読み返しました。 自分の心が、少しも変わっていないのを確かめるかのように。 そしてあれらが少しずつ過去になってしまったのを確かめるかのように。 とても声が聞こえなくなってしまっても、まだここに、生き続けているものを思うように。
たくさん、詩を読んだので。 ひとの夢を見た。 あの詩を詠んでいた頃に、そばにいたひとの夢だ。
ひとから、 白く小さな箱が送られてくる。 中には3つの指輪が入っている。 ひどく繊細で美しいそれらのフォルム。 しかし僕はどこかで、こんな僕の趣味嗜好に合った指輪をあのひとが選べるはずはない、と薄くわかっている。 手に取ろうとすると、それらはすべて小指用の指輪であることに気付く。 美しく、硬質なライン。 銀色の。 手紙がついている。 何やら連絡事項のような、僕には理解できない内容の。 宛名は確かに僕なのに、何かの会議の事務連絡のような短い活字の列。 意味がわからず、連絡を取ろうとしかけて、 電車に乗っているのに気付く
何だか不思議な夢だった。 もう、あのひとのことを忘れてしまったかのような。 あの指輪は、なかなかよかったな、と。 月を欲しがるようなことを考えてみる。 うん、わかっている。 僕はあの指輪が欲しいのじゃなくて、ひとがくれる指輪が欲しいのだ。 それはきっと指輪でも何でもよくて、ひとから贈られたというその事実が甘いのだ。 馬鹿みたいだけど。 少しだけ、 今日は願ってはいけないことを願ってしまう。 少しだけ、 ほんの少しだけ、 決して言葉にはしないから。
うん、楽しかった。 そして明日は一日オフです。いぇい。
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