あつい、 お茶を淹れて冷たい夜の息の中で飲む。 呼吸を節約するような感じ。 はあ、とつよく息を吐くと真っ白に曇って暗い中に溶けてゆく。
ほしい、ものがあるね
そんなのはもう、忘れたつもりでいるんだけど。 だから思い出させないでほしい。 もう名前も呼ばない。 ・・・だけどまた、思い出さなくなるまでに長い長い時間がかかるんだろうか。 そして夜に響く一瞬の着信に息を止めるんだろうか。 敗北は怖くない。 こわいのは、 突き落とされるように恋慕が襲いかかってくる、あのまっくろな絶望のような一瞬だけ。それだけ。
**
久しぶりに星界の紋章シリーズを読んでいたり。 このユーモアのセンスはかなり好きな部類だ。 確か新刊本が出ていたような。 本をがしがし読んでいる。 足りなくなるのが怖い。まんじゅうこわい、の気分がよくわかる(いやそれは違うだろ)。 でも先週はTSUTAYAの半額キャンペーンだったんで、DVDもたくさん見た。 何を借りたかって、まぁそれはその色々(笑) 先週は熱を出したり(今週も若干)勉強したり試験があったりで忙しかった。 明日も何かあるね。 ってモーターショー行ってくるんだけどさ☆ きれぃなおねいさんを見てきまふー。むふー。(違)
だけど冬来たりなば、 春遠からじ。
冬は好きなんです。 スケート行かなくっちゃ。
火照る、頬に、 ヒトが軽く指を触れて
「あぁ、熱があるね」
と 僅か切なげに眉根を寄せ ちい さく 困った ように笑みを見せるので僕は
熱に潤み塞ぐ気鬱の合間に ちら ちらと うすい悦びの ひらめくのをこらえていたりします
**
『見舞いの話』
見舞いには水蜜でしょう と思って百貨店の果物売場からおおきな籠を下げて市電に乗ってゆく。 左腕に下ろす籠の透明なセロファンから未だ青白い水蜜の未熟なかほりが 市電の軽く温もった中に優婉に漂ってくる。 市電は カァブを揺れながら曲り終えがたぴしと音を立てて停車場に着く。 降りると寮は乱雑に並んだ自転車の向こうに鬱蒼と建っており 学生らしき人影がひとつ バルコンに出て怠惰そうに煙草を吸っている。 おおきな籠は狭い階段を人に先んじて登り 軋む階段を三階 軋む廊下を左側二室目 ノックと共に訪いは返事なくドアを開ける。 部屋の主は眠っておるようだ 入口脇に籠を置き ひとつばかり指先で皮を剥き 水蜜の甘さを確かめてから また来る 消息を残して軋む廊下と階段を帰る。
ことば、が
君の手で壊されたのを見て僕はようやく救われたように微笑む
あのひとが、 僕の捧げた言葉をすべて捨てたと聞いて 僕は黙りこくり しばらくしてうなずいた 「そう」
怒りは ひとのことばをすべて聞き終えるまで ほころばず 僕は僕の言葉を喪に付した ひとつのこらず 昨日が今日に そして明日が消えるまで
狂暴なのは心で それは狭い籠の中で泣き叫んで暴れた 手に入れるのはひどく簡単なのに 変容した朝はもう 二度と 清らかにはならない の を 憶えられずにいる
なみだが
なみだが ながれでようとするその 一瞬前に あっけなく瞼に溶けてゆくのを 僕はもう あきらめていて
名を 呼んではいけないことくらい たとえばもう あのひとのいなくなったことをしらせるでんわをとったよるのしずかさくらいには わかっていたり するのです
あなたを僕に、 あるいは僕をあなたに。
ほんとに、もう眠らないといけない、のだけど。
なんかアタマがぐらぐらする。 すごい追いつめられてる感じがする。 些細なことでめっちゃキレる。 ヤバイと思う。 朝目が覚めたとき、どろん、って感じがする。 それはもう擬音語でどろん。 どろっどろだ。
別に苦しかない。 比較的元気だ(頭痛と眩暈がするけどこんくらいはなんともない)。 強いて言えば仕事があんまりない。 面白くない。 なんだか、 熱があるみたいだ。
うすく、吐き気、 これは悪徳の匂いだもう知ッてる。 くるしい、のは、 苦しい自分が何処にいるのかわからなくて泣きそうになる。
舌の端に腫れ物ができて歯に当たって痛い。
でも愛とか恋とかそういうやわらかなものが自分のどこにも無いのを知るのはひどくこわい
そうして時々 あのひとは僕の扉を揺らす 外に 居るのだという気配だけ残して 去る 決して どんな名前でもあのひとは僕を呼ばず 呼びかける言葉を持たぬので その 息遣いだけで 濃く 居るのだという気配だけ残して 居なく なって しまう
僕の 名前は すおう と いいます 僕の 名前は まこと と いいます 私の 名前は と いいます 僕の 名前は と いいます 私の 名前は と いいます
自己紹介を続け もう 人格は名に宿り 呼ばれることすら 慣れて しまったけれど あのひとの 声は 呼ぶべき僕の名を知らず その名があることすら きっと 心から否定 して しまったのだろうけど
だから僕は この こころが あのひとを思うことすら いつか 名も呼ばれぬかなしみの前に 押し殺されて 少しずつ無機質なものになってゆくのを 諦めてみたりする
ただ それが 呼ばれない名を待つだけの待ち焦がれるだけのことであるのを 時々 あのひと が 扉の向こうに居るのだという気配だけ残して消えるたびに 僕は 貪られるように確認して いたり する
北風のにおいが好きだ。
そろそろスケートに行ける。 今度暇な日があったら行ってこよう。去年の冬に買ったプリペイドカードが未だに残ってる。
すきなひとが電話を鳴らす。 うつむいて伏せた眼で世界を拒んで、鼓膜に想いを集める。 ほんの短い電話だ。 電話を切って、 ふ、と笑うとゆるやかに波が引いていって 思いがけなく明るい部屋の中で僕はぼうっとする。
やばい、
と思う。 好きになりそうだ。 だけどこんなのはいやなんだ。 本当に。 ほんとうに、いやなんだ。
|