気分刊日記





2004年04月30日(金) 空白の月末

今日は結局定時出社で20時まで会社にいました。帰りに『ドラムライン』でも観ようかと劇場まで行ったのですが、なぜか猛烈に疲れていたので引き返して家でゴロゴロしてます。
 そんな訳で、FOXチャンネルなんか見ながらダラダラしていたら「RANK『SEXYなシングルウーマン ベスト25』」なんてのをやっていた。嬉しかったのは14位にセルマ・ブレアがランクインしていた事。でも、4位に既に結婚して出産を控えるグイネス・パルトロウが入っているっていったい何時の番組なんだ?2位のレニ・ゼルヴィガーを見ていて思い出したのは、なんか松浦亜矢っぽい。オバサンと可愛さがゴチャ混ぜな感覚。でもて、1位がケツ顎のサンドラ・ブロックってアメ公のセンスは分からん。
 「ダーマ&グレッグ」って吹き替えが最高だね。



2004年04月29日(木) 映画の奴隷

株券消化最終期限でしたので、朝起きて、すぐ出発。新宿で『オーシャン・オブ・ファイヤー』、日比谷で『スクール・オブ・ロック』『スパニッシュ・アパートメント』。本当は『グッド・ガール』を観たかったんだけど起きれなかった・・・。本当は『スクール〜』観た後帰ろうと思ったんだけどいつもの貧乏性が出た。でも、ある意味それぞれに、それなりに思いを馳せる事ができたのでまあ良しとする。

『オーシャン・オブ・ファイヤー』imdb

『スクール・オブ・ロック』imdb先ず主張しておきたいのが、昨年「アニマルハウス」がDVDで再発された時に考えたんだが、そろそろ“ジョン・ベルーシ”を日本でも再評価&神格化しても良いのではないでしょうか?
 そんな中、批評家の評判・配給会社の力の入れ方・公開のタイミング・そして何より作品の面白さを携えて、ジャック・ブラックの「スクール・オブ・ロック」が公開されたわけである。

ジャック・ブラック。その名の通りブラックなユーモアと、ユニークな外見、多才で唯一無二のキャラクターであるのは誰もが認める事であろうが、あえて私は“ベルーシの再来”的なものを感じると言っておこう。可能かどうか分からないが、ビル・マレーやダン・アイクロイドと共演してみて彼らに確認してもらたいほどだ。

 映画は大変面白く、万民受けする事間違えなし!これまでのジャック・ブラックファンには、日寄っているとか説教臭いと言われるかもしれないが、あのリチャード・リンクレター(「バッド・チューニング」「ウェイキング・ライフ」など)が、あのジャック・ブラック(「ハイ・フェデリティー」、一昨年のMTVアワードの司会は最高!)を起用してこれ程まで王道の大衆映画を作ってきた事に感動できる(最近感動のポイントがこんなのばかりだなぁ・・・)。
 ストーリー的なことを言うと、規格外の臨時教員が生徒達との交流で、彼らの未来の選択肢を広げると言うお話は古くは「メリーポピンズ」、近年も「ミュージック・オブ・ハート」「勇気あるもの」「いまを生きる」などハリウッドの作品、日本のTVドラマにもなった「GTO」、そして同じくTVの連ドラ藤原紀香主演の「ナオミ」の下敷きになったであろう澤井健原作の漫画『イオナ』などは一番傑作で本作にも近いのではなかと思う。
 ただ本作が少し違うのは、臨時教員のジャック・ブラックが生徒と同じ位置まで降りてゆくのではなくて、最初っから最後まで同じ目線(たまにその下)に居る。要は転校生がガキ大将になって、クラスの雰囲気を一変させ、先生や父兄達を困らせると言った方がいいかもしれない。その手段が悪戯ならぬ“ロック”なのだ。
また、使われる曲は曲の背景やアーティストの背景が既に色々な時代や意味を象徴する記号となっている為、さびが流れるだけでも笑いを誘うなどの効果が十分に現れる。

『スパニッシュ・アパートメント』imdb



2004年04月28日(水) 普通の人は流されている人?

 うううっ、昨夜はいつもより高度な内容が関係する付合いで、焼酎日本酒泡盛を飲んでしまい、明らかなる二日酔いで午前中は上の空な仕事。幸いな事に給料日だったので昼過ぎに銀行に出かけたら、外の空気は二日酔いの酒気を帯びて緩みまくった肌が良い塩梅に引き締まる冷たさ。でも、春の暖かい日射しが降り注ぐ絶妙な気候。なんで、こんな良い天気の日に日が暮れる迄パソコンに向ってなきゃならんのかという疑問は、少なくとも3年前忘れる事にしているはずだが、毎春衣替えの時に一緒に押し入れにしまってあるアルバムを眺めてしまうように、この春も考えずに入られない。
 そんなこんなでやる気がマイナス20%だったので、6時に会社を退いて、知り合いがプッシュする映画の試写に行ってみた。7月31日岩波ホールにて公開予定、井上ひさし原作、黒木和雄監督の『父と暮らせば』である。
タイトルだけ見るとなんとなくほんわか和み系の小津にオマージュを捧げた様なマッタリ映画かと思いきや・・・監督の名前を見ればむべなるかな、原作の名前で更に。広島の原爆・被爆者を描いた重いテーマの映画である。要は、近代日本と言う身近な場所と歴史を扱い、実存の我々には時間的にはかなり遠くなっていて、現実問題としては一部の人を除いて現在の我々生活ではメディアを通してしか距離をはかれない遠くて近い“戦争”を描いて入るのである、それも、世界的にも歴史的にも唯一の核戦争体験の視点を介して。ほんと、個人的には体調が万全ではなかったので観るタイミングを失敗したとも思う。
 でも、夜が深まるにつれて回復して来たので、三十路の有人が主催するテクノイベントにかおを出す。本人はどうか知らんが、ユニークで周りの人にストレスを感じさせない人間なので、おのずと人に好かれる社交性を醸し出していて、若いもんに混じってもなかなか良い感じの人間関係を築いているようだ。羨ましい限りである。
もう一人堅気の友人と合流してみたものの、私も彼も休日前の無理をこなして来た身なので結構疲れており、あまり長居せずに終電で帰宅した。今回も当の本人のプレイを聞かずに申し訳なかった。地元の飯やで日本がチェコに勝つ模様を目撃して家帰って速攻睡眠!

『父と暮らせば』
 



2004年04月18日(日) 韓国映画強化月間?

 実は一回書き込んだのがフリーズしまして、書く気力を無くしてしまったんですよ。その間に「何を書いたか」「何があったか」なんて記憶が大幅に欠落してしまいました。

 日曜は昼から新宿で2本観て来ました。久しぶりのテアトル・タイムズスクエアで『ぼくは怖くない』。そして、恐らく「取引先から券をもらった」とか「株券消化のために」という理由ではなく、自発的にその作品の前売り券を購入して観に行った初の韓国映画『悪い男』を観て来ました。

えっと、確か「ゴッド・ディーバ」と、 ロン・パールマンに付いて一言二事書いたはず・・・「ゴッド・ディーバ」は同じ近未来作り込SF映画として、「キャシャーン」と並べられているようですが、失敬な!「ゴッド・ディーバ」のエンキ・ビラルはフランス駆使の漫画家ににして、長篇3作目の監督だぞ!特に『ティコ・ムーン』のビジュアルは私のお気に入りフランス映画の1本だ!

で、ロン・パールマンも芸歴は長いと思うのですが、私が認識したのは「薔薇の名前」の厩男と、それから数年後、大好きなフランス映画『ロスト・チルドレン』に怪力男役で出ていたから。その後、同作の監督ジュネと共に「エーリアン4」なんかにも出てた、“ハリウッドの島田久作”又は、長江。最近では「ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション」で、アクメ社の取り締まり役(タスマニア・デビルに喰われて骨になっちゃう役)で老けてた。たしか、先週全米公開した「ヘル・ボーイ」は彼が演じているはず。SPEの作品なんだけど会社は「スパイダーマン」に掛かり切りであんまり興味無いみたいだけど、個人的には“蜘蛛男”よりも期待度大なんです。同じ赤い悪魔でも「デアデビル」よりも行けると思うんですが?キャラも良いし、なんてったて大好きなセルマ・ブレア(このページの写真はイケてない)が準主役級で出ているのもポイント!

 『ぼくは怖くない』imdb

 『悪い男』imdb: 



2004年04月17日(土) 4分の1の憂鬱

 ヤバいヤバいヤバいっすよぉぉぉぉ!既に今年も4分の1を経過しているのに、自分何もリニューして無いッスよ。はぁ〜・・・。(と、自分にも言い聞かせる&危機感を煽る)

 で、夜昼逆転のバイオリズムでダメ人間レベルをかなりハイレベルで維持している私ですが、今日も午後起き、夕方でかけて近所のコンビニに行くように電車に乗って渋谷で『エレファント』を見て、下北を30分くらいブラッとして帰って来ました。

あ、あと、今関あきよし監督が児童売春で捕まりましたが、これまでの彼の仕事(映画TV)を見れば納得の様な気がするのですがどうでしょう。たしか松浦亜弥の「美・少女日記」とかも彼だよね。よく今迄我慢できたなぁ、ってかこんだけの仕事してたら素人じゃなくてアイドルに手を出せたんじゃ無いかと・・・。そこは趣味の世界ですかねぇ?しろうと好きとか。

で、帰宅後はTVをダラダラ見ています。で、深夜TVで『FINアイドルニュース』なんてみてます。通常“目に優しくて頭に悪いアイドル”を頭に良い“ニュース”と組み合わせる事でバランスをとってるのが新しいですね。それも、3人一組・ネタ3つ・コスプレ1種類の1セットを5・6回と言う構成で組んでいるので飽きない様に工夫しています。ただ、どんなに足掻いても、番組の進行が悪魔でも“アイドル主導”なので、ネタを読むアイドルがバカだったり、メインに座るアイドルがバカだと辛いです。個人的には、久々に中川翔子が見れて嬉しいです。

『エレファント』imdb カンヌの監督賞とパルムドールをW受賞しているんですが、あんまし面白くありませんでした。だって、ここ何年かパルムドールが面白かった事ほとんどねぇじゃん。ってか、美少年少女集めてオサレにアレンジした再現フィルム作ってみました。とは言え、単なる再現フィルムじゃ何なんで時間の入れ替え編集をしてみたり、監督の趣味でゲイ的な要素を入れてみたりしています。その最たるアレンジが「美少年ばっか!」ってことです。
おかげで、この事件の根本、「ボウリング・フォー・コロンバイン」の主題でもあった、“アメリカ銃社会”の異常性が美化されているように見える。いや、逆にこういう描き方でこの問題をより異質な印象を与えようとしていると言う見方もわからなくも無いし、カンヌはそう捕らえたんだろうとも思う。けど、この映画を観る人がそこ迄読んでくれるかどうかは疑問。特に日本の若い人には“オサレな映画”ってイメージが先行しているような気がするし、そもそも、銃自体が既に異質であると言う認識に基づいている日本に於ては「今さら言われんでも、アメリカが異常なのはよう解っとるわい!」ってか。そんなわけで、誉めるのはオープニングの空の早送り映像に通常早さの音を付けていたところぐらい。
スクリーンの中だけじゃ無く日常でも銃をバンバン撃つ国の話は、この国ではブラウン管の中での話し。DVD化する時は写真集を付けると良いかと。



2004年04月14日(水) モチベーションを回復する方法

 本日は久々に平日休みをとってみました。とは言え、朝10時から銀座で『KILL BILL vol.2』の試写に行ったのでいつもより早く家を出たんですが、寝たのも遅かったので睡眠時間3時間程で映画に向うはめに。色々と思うとこも有りましたが、多分1&2の抱き合わせで買わされたんだろうなぁって感じでした。
 その後、楽しみにしていた用事がポシャってしまい、急遽『ラブ・アクチュアリー』を観て、そのまま新宿に移動して『殺人の追憶』、雨の外を避けて地下道を移動して『花とアリス』。どの作品もなかなか面白かったので、次を観に行く度にこの印象(観終わった後の充実感)を壊したく無い!って気持ちが働いて辛かった。

 『KILL BILL vol.2』imdb最初の20分位がかなり辛いです。つまり、回想シーン&マイケル・マッドセンとの絡みですね。一応伏線を確認して頂くパートなんですが、辛いのでそれ所じゃ無くなっちゃうんですよ。で、ダリル・ハンナとの対決当たりからやっとハイテンポになるんですが、でもそこ迄の20分がトラウマになってしまい「この映画本当にオモロイのか?」という疑問が拭えません。
でも、ビルとの再開辺からさすがタランティーの的なドンデン返し&カッと割り。ビルとブライドの対決シーンは香港映画的にも結構納得です。でも、前作の印象を引きづりながら、器用で気の効いた普通のタラン・ティーノ映画に仕上がっている本作は、観客の混乱を招くのは必死。休み明けにはかけかが検討され、5月いっぱいで終了なんてことも・・・。
十分ヒット作も作ったし、やりたい放題やっても許されるンだよね“タラちゃん”!

 『ラブ・アクチュアリー』imdbさすが、ヒット作の脚本家だっただけあってエピソードが面白い!役者もいいし、初監督なのにこれだけのパートを纏め切ったのは、自作の脚本だったことも有るが、キャストとか、カッと割とか、かなりリアルなビジョンで本を書いたって事じゃ無いかな。
様々な恋愛模様を提示しているのでどれかしら共感を得られるものがあて、でも、痛い恋愛経験もまた然り。ちょっとエピソードが多すぎると思わなくも無い。
可哀想だったのは、如何せんクリスマス映画なので日本公開(バレンタインデーの1週前)もDVD発売時期(初夏5月)もなかなかきつい時期かと思いますが頑張りましょう。
やっぱり、クリスマス間際の人恋しくなる時期にこれはと思う彼女を連れて観に行くのが似合う作品。

 『殺人の追憶』imdb凄く面白かったです。基本的に韓国映画は駄目なタイプなのですが、全く気にならずストーリーにのめり込めました。
オチがわかっているのに、これだけ緊張感を持続してユーモアも忘れないのが凄い。画造りもとても凝っていて、役者も味がる。一つの事件の時間の経過を追う事で人間の内面の葛藤や油断、そして人間性を緻密に深く掘り下げて描いている。そのどれもがとても自然な流れで更に感心する。
驚く程ビビッドな空気を持つ、極上の人間ドラマ

 『花とアリス』自然な雰囲気を引き出す演出は健在。とっぴょうしも無いストリーに、リアルな女子高生が息を吹き込んでいる、ある意味青春映画。
 鈴木杏も蒼井優も自然で演技も上手い。確かに若いけど、最近のアイドル若年齢化とは一線を画した存在感と演技力だと思う。そんな訳で、彼女たちが今後TVで消費されないでさらなるステップUPを目指してもらいたいと思う。
一種“鈴木杏と蒼井優のプロモーション映画”



2004年04月12日(月) one & only


今週号のスピリッツだったか、麻生久美子が表紙なんだけど相変わらず可愛いなぁ〜と思って見ていて、ふと思ったのが「チャン・ツィイーに似てんなぁ」だった。


で、先日見つけた 章子怡のオフィシャルサイトのトップが激可愛いんです。因みにこの画見てて思ったのが、荻野目慶子に似てる?って、連想ゲームみたいなスパイラルが始まってしまうのだ。
2004年04月06日(火) そのうち亡くなる懐かしい日本

 実は本日も試写会。ここの所連日の外出で個人的には気が引けるのだが、なんかもうどうにでもなれって気分が自分の中で蔓延しているので思いきっ昼から4時間程出かけて来ました。

 銀座で「鮫肌男と桃尻女」「パティー7」の石井克人監督作『茶の味』の完成披露試写と言うものに行って来ました。当日は監督、主要出演者7名(メインページの6人+土屋アンナ)が来場して簡単な挨拶と質疑応答が20分位有りました。
‘生’浅野忠信、‘生’我修院達也、なんかもそれなりによろしいかと思いますが、やっぱり‘生’土屋アンナについて書かねばならんデショ?!と言ったものの普通にふてぶてしくて、良く言えば「飾らない」「今時の女の子」って感じで観たマンマ、TVのマンマの印象で。まあ、血の特権として整った顔立ちと、すらっとしたスタイルは当たり前なんですが、声もイメージも私的には‘若くした
秋川リサ’じゃん!で、終わりです。彼女よりもむしろ、主演の女の子・坂野真弥ちゃんが、
高橋マリちゃんみたいに可愛くなりそうだなって感じでした。(それって真弥ちゃんもハーフってこと?)でも、この子はどうやら子役界では結構注目の子らしいですね。
作品は今年度のカンヌ映画祭監督週間オープニング作品と言う事らしいのですが、監督週間オープニング作品であって、カンヌ映画祭オープニング作品ではないのですね、監督週間て如何程の物なんでしょう?監督、浅野、真弥ちゃんが出席するらしいです。シネマライズで夏公開、「ロスト・イン・トランスレーション」が何時終わるかって所かな・・・。

 『茶の味』なんか、おサレでCOOLで小気味よくて面白いんだけど、ほんわか家族だんらんだったり、“日本の里山”“四季折々”の描写が随所に挿入されたりするのが、緩やかに馴染んでいて気持ちよかった。同じように自然や四季や田舎の風景を挿入していた最近の日本映画があったなぁとおもったら中野裕之の「Stereo Future」だった。同じようにセンスのいい人が同じテーマを使っても全く印象は違うのが映画と言う作品なんだねぇ。(中野裕之はリスペクトしてますが、基本的に私の「Stereo Future」評価は低いです)
石井監督はCM出身ですが、既に長篇3作目と言うことも有ってスタイルが確立されているので、これまでと些か違うタイプの作品を作ってもゆるぎが無い感じで、メッセージっぽいものが有っても押し付けないし、他のシーンと同列に描写するので鼻に付かない。(その辺、桐谷さんも頑張って欲しい所)

オシャレ系日本映画なんだけど、年輩の人も見れる和み系作品。でも、本作もテアトル渋谷でやって欲しかった!



2004年04月05日(月) キャシャーンがやらねば誰がやる〜?

 はぁ〜い!おやつ時から会社を抜け出し観てきましたよ『キャシャーン』。
込んでましたねェかなり、で、長かったですねぇ2時間20分は!細かい事は後ほどですが、長いと感じさせてしまうと言う事は「・・・」ですね。柳下さんは「この作品を裁いちゃいけない」みたいな言い方をなさっていましたが、それはどう言う事かと・・・。全然関係ないのですが会場係で妊婦が働いてましたよぉ?

 『キャシャーン』しょっぱなから物凄いメッセージ込めちゃいましたねェ桐谷さんは。それも直球=‘言葉’で。しかしながら、その直球が、映像の造り込と馴染まず、一本の映画として、なんだかバランスを崩している。それだけでは無く、「これまでの映画の文法超える斬新さ」を求めながら、同時に「グローバルで普遍的なメッセージを自分なりの表現で伝えようという意気込み」、(今の日本でそれなりの規模の映画を作ろうと思うと)「息なりこの規模の作品を任された異業種参入新人監督の彼は、次回のことなんか考えずにこの一作に全てを注ぎ込むしかない決意」、「題材となる「キャシャーン」を含む’70〜80年代のヒーローものに対する思い入れ」の各々が、完全にでは無く微妙にズレ合っていて、それを2時間20分見せられるのは辛いかなぁ。

特に、映像を見せる事にかなりの力点が置かれて、役者の演技・間・行間と言ったものを忘れ、重要な点の殆どを「死」であったり「戦争」「神」「生命」「人間」「生きる」など、安易に言葉を使って伝えようとしてしまっている、と言うよりむしろ逆に言葉のチカラを侮りている。これは、映像出身だからかな。また、後半は途中で意図的に無音にしたりするのは、言葉のチカラの恐ろしさに気付いたからか?まあ、この行間や間が無いと言うのは本人が「70%は絵コンテ通りです」と言ってのけている時点でむべなるかなである。

また、この造り込や、むき出しの‘言葉’が、押井守のように情報量をUPさせようと思ったのならそれもお門違い。押井による言葉の使い方は、作品の世界観や画との関連性、キャラクターの性格など、作品と密接にリンクしているし、謎掛けだったり比喩的だったりとめったに直球である事は無い。聖書だろうが、シェイクスピア(シェイクスピア劇を殆どみた事のない私でも「ぽいっ」と感じるシーンが有った)だろうが押井は露骨には使わなかったし、きちんと消化してから作品に反映していた。画面の中の情報量を濃くするのは理解出来るが、言葉に於てはそれは一概に良しとは言えない。

アクションが日本のコミック的にこだわったと言うが、そこに香港アクションもしっかり消化してこそ斬新な表現、次なる表現が有るってもんでましょ?そら、チャンバラ入れりゃイイって部分も有るけど、ドンパチ、チャンバラ、マーシャルアーツでアクションを組むならもっと斬新な殺陣を考えてほしかった!

同じ80年代文化に浸っていたチルドレンとしてその表現は余りにも痛く解る。宇多田ヒカルなんてはやりの嫁さんを捕まえたが、唐沢寿明を配役したり、押井との対談に感激したり、彼の根底にはMTV80年世代のオタク魂を見て取った!特に、今回のキャシャーンは人類でも無く新造人間でも無い異端である。ティムバートンもピータージャクソンも、異端を描く事で王道に行ったが、王道を歩む前にいくつもの経験を積んでいるのだ。桐谷は、もっと肉体とストーリーの有る作品を何本か撮ってからこの作品に向った方が良かったと思う。

ともあれ、この規模でこの原作と配役と造形は新米監督としてはがんばっていると思う。似た様なテーマになりそうな東映の「デビルマン」がコケる気満々なのを考えると、それよりはイイ結果が出るのでは無いだろうか。ただし、最大のネックは2時間20分と言う長さ。後の裁きは客が付けてくれるさ。PVにしちゃ金がかかり過ぎだよ。



2004年04月03日(土) 吹き抜けに見えた天上はガラス張りのサンルーフ

 今年も行ってきましたよ、NODA・MAP。私の心待ちにしていた、年に一回の精神的人工透析!!なのに、遅刻して10分押しぐらいで会場入りっすよ・・・とほほ。

ヤフオクでは些か安値がつきはじめているんですが、ヒロインが宮沢りえだからでしょうか?ま、このまま次回公演も安定しほしいです、基本的に高チケットなので!!

今回、(前回もそうでしたが)メッセージ性の強いリアルな言葉がポンポンでてきました。ただそのどれもが、言葉としてはリアルなんだけど、台詞としてはオブラートに包まれていたり二次的な意味の方が強かったして、単にそのまま受け取れないものでした。もちろん、それは言葉遊びと言う方法であったり、発せられる状況、役者、関係性、など様々な要素を意識させつつ使われるのでその時その時で持つ意味も違ってくる訳です。

野田の舞台を見ると、いつも言葉と肉体の無限の可能性と秘めたチカラの強さに圧倒され、感心させられるのです。日常で何気なく使う言葉も異なる肉体と状況と時間とを組み合わせる事で全く違うメッセージを含む訳です。

そして、その無限のチカラに気付かずに暮らしていた自分、これからもそのチカラを意識的に使えない自分の無力感、周りに飛び交う無意識な言葉に対するやり切れ無さに精神を揺さぶられる訳です。(前回は言葉と同様に肉体=カラダについて同じ様な事を書きました。)

今回は特に言葉、余りにも言葉が身近だからこそ、気付いた時のショックは自らのコミュニケーション能力の限界の一部を思い知らされ、それがガラス張りのサンルーフとなって私の頭上に現れ、それ以上高く舞い上がる事は不可能だと知るのです・・・。

と、こ難しく書いてしまいましたが、大旨納得の舞台です。ただ、私自身が彼のワークショップ経由の舞台構成に飽きているかもしれないと言う認識を持ったのは収穫でも有り、残念なことでも有りました。できれば次回は『し』の再演でも見たいなぁ。

あと、役者についてですが、阿部サダヲの少年は後3年はみてらるんじゃ無いかなぁ?阿部さえ問題なければ野田的にはとても使いやすい肉体だと思うけど。因に阿部君は何処までアドリブなのか?宮沢りえはふつう。前回の松さんを見てしまったので、神を憑依する巫女と言う意味では分が悪いよ。高橋由美子やけに声がでていたなぁ!後の役者皆さんレベル通りの演技で特に気にならなかった。毎回思うのは、NODA・MAPの役者はカーテンコールではとても楽しそうに新国立の舞台を走っている。


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