言葉のサラダ
黄と藍



 グッドナイト

・・・
ぱりぱ・り
ぱ、リパり

剥がれていく
壊れていく

・・・
パり・ぱり
ぱりパ、リ

境界が消えていく
マスクに皹が入る

・・・
パ・リパリ
ぱりぱり、

嘘はいらない
真実も求めない

2003年10月31日(金)



 コウヨウ

解っていた結果なのにまたやってしまった
同じ道を指でなぞらせる
それだけに満足してしまう
影で見ているか
上で見ているかは解らない
認めて欲しいだけだった
嘘なんか吐いたって直ぐに解る
涙目で見上げても
血走った目で睨んでも
細めた目線に刺しても
何も変わらない
何も変わらない

2003年10月30日(木)



 枯葉

落ちて行く中、手を伸ばした
誰も見つけてくれなくて落ちていった
残した手紙に周りが気付く
もう居ないあたしを忘れていく
手紙に気付いた友達があたしへ手紙を返す
もう帰らないのに手紙を返す
もう返らないのに手紙を返す

2003年10月29日(水)



 散〃

一般に特殊は対応できない
特殊に一般は対応できない
正常が異常となるか
異常が正常になるか
矢印は向かい合ってなければならない
矢印が同じ方向を向くことはないんだから
それが当たり前で不満を持ってはいけない
違和感を感じているのは自分だけなんだから

腫れ物扱いは嫌?
出る杭は打たれるのに?
そう仕向けたのは己で?
馬鹿じゃない?
ホコタテな話?

異質者を見る目はいらない
抉りだしてやる
異変者と呼ぶ者の耳をモイデやろうか
変と発する口を裂いてもいい
私の身がおかしいなら硫酸のシャワーをよこせ

2003年10月28日(火)



 序説

右か左か迷うのはいい
AかBか迷うのと同じだから
右を選んだら左は選ばれないし
右を選ばなければ必然的に左が選ばれるわけだ

しかし困る迷いとはそうじゃあない
否応なしにAとBを選んでしまう
右を選んでも左を選んだのと同じだし
右を選ばなくても結局左と一緒に選ばれてしまうからだ

両方はいらない、と跳ね除けると
選択肢は消えて自分までも消えてしまう
選ばないならさようなら
選ぶ気なら両方どうぞ

阿弥陀くじは無駄
だって着く所は同じだから
くじ引きも駄目
だって全部が同じなんだし

納豆を糸を引かせずに混ぜられるか?
不可能だ
既に混ぜる前から糸は有るから



それはウレシ泣キに似てる
それはカナシ笑イに似てる

2003年10月27日(月)



 「死のう」と口遊む烏たち

生きるってのは死なないってこと
生きてるってのは死んでないってこと

人々は生き続けている
それは同時に
死なないで居続けているということ

死なないように生きるなんてつまらない
生きたくないから死ぬなんて下らない
平等に訪れるそれも何処か運命的なものがある

死を逃げと考える
生を常識と感じる
生きてるって実感するために
死のうと試みる人は多い
死んでるって実感するために
生きようと試みた人は絶えない

出来るなら、と私は思う
人は考えないだけで心底では思っている
死を選択したい、と
方法や時間や場所を

私もそうしたい
私がそうしたい

2003年10月26日(日)



 過食症

絶対的に欠けてしまっている何かを探している
食物を見ると起こる吐き気
空腹を埋めるために口に含む
後に襲うのは吐き気
見れば含みたくなり
直後に吐き気が襲う
食欲があるのか
否か

気持ち悪さを食物で埋める

2003年10月25日(土)



 困惑

言っていることが凄すぎて
疑うのは羨ましさから
素直に受け止められない
しかし越えることもままならない


羨ましい
決して真似は出来ないが

2003年10月24日(金)



 受動態


嫌われるのが怖いだけで
好かれるのが怖いだけで

今すぐやりたくないから
明日早起きしたらやろうって決めて

たぶん朝起きたら
昨日やっとけばって後悔するのに

後悔はしたくないけど
やりたいこともやりたい

紅茶飲んで
朝焼けでも拝みますか


2003年10月23日(木)



 虫眼鏡

おかしな色の猫が
路地の裏で蹲る。
寝てるのか、
果てや死んだのか、
突付く枝も見当たらない。

おかしな色の猫は
コタツを思い出していて、
聞こえない音に泣いて、
もしくは鳴いているのか、
自分のこともわからない。


こいつ方耳が無いぞ。
腐り落ちているのかもしれない。
随分不自由しているのだろうな。
誰も見つけない路地裏で、
ひっそりと生きていくのか。


寒い夕方の、
暖かい路地裏。
何も考えないで、
どこにも行こうとも思わないで、
ただ、ここに居ようと思う。



誰も居ない明け方の、
路地裏のダンボール、
汚れた毛布、
カラスの突付く生ゴミ、
ただの硬い肉片。

2003年10月22日(水)



 恐怖なんて一瞬だ

泣きながらハンドクリームを塗りたくる
毟り取られたのは指先の皮だけじゃない
思い出しながらまたナミダが溢れてくる
やっぱり止める事なんて無理だったのかな


貫き通す意志が欲しい
受け止める器を持ちたい
無いものねだりはあたしだけじゃない
足して1にならなくちゃいけないなんて誰も言ってない
言い訳を探してもないよ
数字だって見つからないでしょ


大声で泣き叫びながら
ナミダの染みたティッシュを見回す
喉がべたべたになっちゃった

2003年10月21日(火)



 歩く帰路は寂しい


誰もに
悪、と
呼ばれよう

雲が
こんなにも低くて

汚らしい夕日が家を覆う
窓からは隣りの呼び込みが聞こえる
そのうちに真っ暗になって
誰もワタシの姿を見なくなるだろう
今夜も雲が月を隠している

所々紫を帯びた雲は
太陽から逃げていき
挙句夜に吸い込まれて行く

キミとワタシが離れているように
クモとワタシも離れている
追っても追っても等距離で
詰めることの出来ない隙間を開けている

キミが
いい、と
勧めるなら

キミが
こんなにも遠くて

2003年10月20日(月)



 太陽

足元があんなに遠い
天井に背中が届いたよ

ぐんぐん伸びる
あたし伸びてる

睫毛に雲が霞む
何か口にぶつかった?

ぐんぐん伸びる
まだ伸びる

両手が地面に引っ張られる
負けやしないと両手を伸ばす

ぐんぐん伸びる
もう終り?

届いたのはタイヨウ?
真っ黒なタイヨウ?


射られたのは何処?

2003年10月19日(日)



 まだ足そうか

マニキュア
水性ペン
消しゴム
目薬



サイゴまで使えないもの

2003年10月18日(土)



 冷緑茶

とても集中できない
意識が飛び回る
ひと口で食べれない
我慢もできない

耐え切れないのを何かのせいにしても
笑ってる観客を背中にしても
泣き笑いで電話をしても
平気で嘘を吐いても
上りきれない階段に息切れしても

上を見上げて
唇を噛締めて
鉄の味を思い浮かべるだけだ

2003年10月17日(金)



 容疑者

苦い薬を飲んだ
なんだか悪いことをしたみたいだ


2003年10月16日(木)



 神サマ


うそつきなあたしの一言目はうそだ
三度話したことは作り話だ
虚言癖があるんだろう
信じれば真実

疑われないのが罪悪感
オーディエンスはいつも聴いてる
頭をいっぱいにさせるから
笑って少し吐き出す
いやだと言っても聞きゃあしない
黙れと言っても静かにゃならん
壁に叩き付ければ体がクラリ

さようなら
さようならみなさん
あたしはもうだめなんです

2003年10月15日(水)



 ふわふわ

石油のシャンプー
汚れててもよく泡立つ
強い毒素で汚れを落とす
水で洗い流しても
まだ頭に残ってる気がしてならない
よく泡の立つシャンプー
石油のシャンプーは私みたいだ

2003年10月14日(火)



 ガラス窓

小さく付いた傷がさぁ〜
いずれはいっぱいになってー
傷だらけって呼ばれるようになってー
すぐに新しいのと取り替えちゃうんだー

傷付けて
取り替えることで
また
自分自身が傷付いてるのにねぇ〜

2003年10月13日(月)



 対立

変わりたいと思うのに
そのままでいてと言われる
やりたいと実行したことは
やめてくれと止められる
実際分からないのに
知ってると断言される
問題に向かい合えないのに
頑張れと励まされる
見た目以上に元気がないのに
悩みを握り消してくれるのかも

君の顔が眩しい
直視できないよ

2003年10月12日(日)



 初めて深呼吸をした

スーっと蕩けて
水の中に消える

頭だけ有って
身体はどこかに行っちゃった感じ

冷水に浸った身体は
真っ赤に変わり
食道を抜ける酸素が涼しい

目の前がクラリとした
頬を浸すと目が覚める

「あたし、此処に居る」

水に入れた食塩の様
まだ飽和溶液にはなってない

2003年10月11日(土)



 チクリ

中指を火傷した
やっぱり約束なんて作らなければ良かった
中指がヒリヒリする
タイピングなんてお止めなさい
中指が赤い
だってあなた氷で冷やさなかったでしょう

我侭なあなたは
どんな結果になっても
受け入れなさい

2003年10月10日(金)



 コサイン

笑ってみよう
とりあえず
泣いたふりよりずっといい

楽しんでみよう
とりあえず
頬は膨らまさないで

責任が取れないから
全部人任せにするの
何か失敗しても
その人が悪いの
あたしはただ
言われた通りにしていただけだもん
時間通りに事が
運ばれないのなんて当たり前じゃない

2003年10月09日(木)



 懇願

人はみんな理由を探しているものだと思ってた

形容詞とか
占いとか
診断テストとか

形にして理由にしたいものだと思ってた

『なんとなく』
なんかは誤魔化しに過ぎないと思ってた
逃げているのだと
形容詞が見つからないフリをしているのだと思ってた


でも目の前には平気で使ってる人が居る

2003年10月07日(火)



 バー

面白いことがない。
夢中になれるものがない。

熱心にプレイしてたゲームも
データを再生するまでですら待てない。
あんなに必死で模写してたのに
もう頁を開けない。

今はそれでいい。
そうでなくちゃいけない。

だって耐えられない。

2003年10月06日(月)



 黙祷

扉を開ける前に鍵を開けようと思った
鍵を探してた

金色の古い鍵を手に持った
差し込むのに何で躊躇ったんだろう

取っ手に手を掛ける時でなく
何故今躊躇ったんだろう



鍵をやっと回して
それからずっと動けない

2003年10月05日(日)



 虹色

青いサカナが泳いでる
キラキラ光ってないし
肥えてもいない
ちっとも魅力がない
誰の目にも留まらない
形容詞なら「青い」だけ

それ以外何も説明出来ない
誰にも相手にされないから
サカナは何れ群を離れた

泳いでるサカナは小さいのかもしれない
あるいは大きいのかもしれない
比べるサカナが居ないから
自分が何かも分からない
もしかしたら自分は「サカナ」だけど
「魚」ではないのかもしれない
誰にも指摘されないから何も疑問を感じない

ピンクの藻に引っ掛かった
そうしてサカナは死んだ

2003年10月04日(土)



 メモ

もし死なれたら
あたしはその瞬間から
泣き続け
目を腫らして
布団に蹲り続けるだろう

そして無気力になり
死んだように生活をするか
もしくは本当に死んでしまうかもしれない

あの目を忘れないように
焼かれる前に取り出して
肌身放さず持ち歩くだろう

毎日画像を再生して
並べて壁紙にして
声を聞き続けるかもしれない
部屋で私物を探し続けるかもしれない

寝る間も惜しんで話したい
毎日顔を見ていたい
いつも傍に居て欲しい

時間はもうないんだよ

2003年10月03日(金)



 仮装

マスク越しの深呼吸は辛いや
肺に酸素が届かない

着ぐるみ越しじゃ暑いも寒いもないよ
あぁ重い


なんであの子には分かるんだろう
無意識に見透かしてる


演劇部に入った方がいい?

2003年10月01日(水)
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