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■ 台所が好き?
吉本ばななの『キッチン』を読んだ。土曜日、メガモールで仕入れたものだ。
古本屋なのだが、そこにいた日本人の客がどうにもおかしくて、思わず立ち読みするふりをして観察してしまった。
お父さんがPHP文庫を手にとって「いい加減なことばかり書いてるなあ。腹が立ってきた」と憤懣やるかたなし、という口調で話していたが、その相手は7,8歳のてめえの息子なのだ。
貧乏旅行者風の若い男と女がにぎやかに品定めしていたが、あまりにも話がかみ合わないのだ。男は「志茂田景樹って死んだっけ」「あっこの本読んだことある」などととにかく始終話してはいるものの、明らかにあまり本を読まない人のようだ・・・と思っていると「詩はいいよねえ。これとかどう? 藤村の詩とかいいよ」と、箱入りの全集ものを抜き出したりするのだが、女は「あたしそういうの興味ないんだ」の一言で片付けてしまうのだ。
男が好みを探ろうとしたのか、恋愛エッセイを指したりすると「ああいうのつまんない」とこれも一言。「映画の原作なんかないかな」といいつつ女は一冊抜き出し、「あたしソフィー・マルソーすごい好きなんだあ」と、ついに糸口発見かと思いきや、男は「その人って作家なの?」というクリーンヒットを返し、僕はもうこの二人を尾行したい誘惑にかられてしかたなかった。
さてとにかく本を仕入れて中毒症状が緩和されたのだが、『キッチン』にはあまりに名作たることを期待しすぎていたかもしれない。「バブルというのも、あれはあれでいい時代だったのかもしれないなあ」という、ふやけた馬鹿みたいな言葉が、この作品に対する主な感想だ。味覚の境界があいまいで、くどくどとはしていないが明らかに甘い、バナナラッシーとでも言っておこう。これは虚構なのだ、おばあちゃんでもニューハーフでも、どんどん死ねばいい。そして生きていく希望か何か、主人公がつかみかければめでたしめでたし。
2002年10月27日(日)
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