Kyoto Sanga Sketch Book
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2006年12月09日(土) |
【G大阪戦第33節】〜白い背中。独走の先 |
開幕、横浜M戦での大漁失点の後。 パウとただ2人奮闘していた斉藤が 怒りにまかせて地面に蹴り叩きつけたボールが、 宙を高く飛んでいった。
あれから8ヶ月。 手島も角田も劇的な「帰宅」をしたのに、まだこんな所に居る。 中盤からの守備の崩壊、頼みにしたかった手島はまた怪我がち。 守りの崩壊の責任から柱谷幸一監督が解任。 しかし美濃部監督になっても勝てなかった。
勝てばガンバは優勝争いに残ることができ、 サンガはJ1残留の可能性が残る。
土砂降り。 2−2のドローのままロスタイムに入った。互いの選手は消耗しきっていた。
時間が押すにつれ、互いのゴールの間を行き来する20人の選手たち。 冷静なシステムなんて関係なく、もう塊のように移動していた。 後半ポゼッションが高いのはガンバ、しかし決定機は京都にも多い。 ガンバが空回りしている。
ボールに引き寄せられてまた選手たちが集まった。 しかし、深い中盤でサンガ選手がクリアする。 次の瞬間、一人の白い京都の選手が反対方向に抜け出した。 敵も味方もガンバゴールに取り残されている。もう誰も追えない。
たった一人、サンガ選手。 アウェイのサポーターの方を向き 土砂降りの中独走になった。
誰にも邪魔されない。サンガ選手の独走。 目の前には勝利と残留に導くはずのゴールとその前に佇む相手GKのみ。 誰もいない空間で、白いユニは伸び伸びと独走を続ける。
京都の得点はもう目の前。残留の光はそこにもう見えていた。
この試合、G大阪はただ勝つだけでは得失点上優勝は難しい。 「4点差以上つけて勝ちたい」と西野監督は試合前にコメントを残しています。 開幕当時ならそれは容易だったはず。
しかし、前半は京都の高いボール支配率で始まり、 パウリーニョ、田原、そしてトップ下中山がよく動く。 一方G大阪は遠藤、シジクレイを欠き出足が鈍い。攻守共に連動せず。 前半9分。中盤で斉藤、石井、中山と次々にパスが繋がれた。 パウリーニョから相手GKがこぼした球を田原が拾い、再度パウリーニョ。京都先制。
それからも京都のチャンスは続きそうに見えた。 しかし、ガンバのコーナーキックから失点。 1−1で前半は折り返し。
後半早々FWを投入して3トップ気味に攻勢をかけるG大阪。開始直後に追加点。 サンガも慌てて対応。大久保をDFに下げシステムを4バックにかえる。 その後ボールポゼッションは積極的な攻撃をしかけるG大阪に。 しかし、カウンター攻撃で決定機は何度も京都に訪れる。
今日のガンバの寄せの詰めは総じて結構甘い。 大志がJ2の時のようにドリブルで切り裂き、 フリーにしている選手に何度もクロスをあげる。 しかし…田原の右足のシュートは倒れたGKの手の中へすっぽり入ってしまう。 どフリーのアンドレのヘディングシュートもゴールの右に飛んでいってしまう。
「京都は後半で3得点してもおかしくないんですが…」と呆れるアナウンサー。
ようやく追加点がとれたのは、 アンドレのスルーパスに反応したパウリーニョの左足。
ガンバの気持ちばかりの攻めと、サンガの決定力不足。 2−2でロスタイムに突入した。
ガンバの空回り。 フィニッシュが甘く、悉く京都のDFに跳ね返される。 中央に入った角田の死守と、怪我明けの手島の攻撃参加と、 以前なら珍しい光景も見える。
ガンバの攻撃を凌いだサンガに、 終了間際、最後の定機が訪れようとしていた。
独走中の白い京都ユニは少し体を傾けた。 まだGKまでは距離がある。 ゴールへのタイミングは余裕をもって計れるはず。 そして、満を期してボールは放たれた。
が、球は相手GKの腕にキャッチされた。
「なんで?」
そしてそのほんの僅か、十秒後。 歓声と悲鳴。こだまするガンバのスタジオDJの叫び。 家長からのクロスボールに、マグノが頭を合わした。
ガンバの優勝争い戦線残留と、サンガの降格の決定。
嗚咽したままユニを上げて顔を隠す角田。 整列して下を向いたまま嗚咽している選手たち。 立ちすくむサポーター。目を見開いたまま涙を落とす女性サポーターが映る。
画面を消した。 テレビ観戦なら、そんな卑怯なことができる。
これから映されるのは、九死に一生を得たガンバ選手たちの喜びと、 ガンバサポーターの万歳。そんなものは見たくない。
そんなもの見る必要はないやろ。
夜。 もう試合が終わって何時間もたつのに、 あの白い京都のアウェイユニの独走する後ろ姿だけが、 何度も何度もフラッシュバックする。
あの選手が誰か調べる気もおこらない。責める気持ちにもなれず。 彼の責任でなく、 あまりに今年の最後の姿のサンガを象徴する出来事で。 開幕の大崩壊からここまで持ち直しても、まだ何か足りない。
あれが普通に、ごく普通に入っていたら来年もJ1でできる奇跡は起きたのかも。 いや、おきなかったのかも。
翌週の最終節。西京極。 名古屋にとっても京都にとっても消化試合。どちらにも覇気がない。 セットプレーでの1失点。その後退場者を出して終了。 冷え込んだスタジアムで挨拶に立つ梅村社長へ、 サポーターから大ブーイング。
選手が一周する。ゴール前で大きな拍手が起きていた。 みると、背広姿の京都初の生え抜き監督美濃部さんが頭を下げていた。 シーズン途中でのコーチからの昇格監督に、責任はどれぐらいあるんだろうか。 こういうノリ、前もあった。 そうだ、一年目のゲルトの時だ。
紅葉もほぼ終わり。茶色に染まりつつある赤と冷たく清廉な空気。
”サッカーは勝負の世界なので、戦術など色々な要素が 勝敗を左右すると思うが、 一番の問題は”サッカーを楽しむ” ということができていなかったのではないかと感じています”(斉藤大介選手)
其の夜、一年ぶりに京都の元サッカーバーの居酒屋へ。 帰り際に奥に入っていたサッカーファンの店員が声をかけてくれた。 「今年はついてなかったですよ。」
それに何と答えていいか。 「そうですよね…。」と曖昧に返答しただけ。
このクラブは、物事が予定通り運ばないとJ2に落ちてしまう程の、 色んな意味での「弱さ」をもっている。 ただ、私たちは気持ちの切り替え方だけは知っているわけで。。
<第33節G大阪戦出場選手> GK 西村弘司 DF 手島和希・角田誠・児玉新 MF 大久保裕樹・中山博貴・石井俊也・斉藤大介・渡邉大剛 FW 田原豊・パウリーニョ 途中出場 加藤大志 星大輔 アンドレ 監督 美濃部直彦
■2006年シーズンの流れ 開幕直後マリノス、川崎等相手に大量失点。チーム全体での守備崩壊で試合にならず、パウリーニョと斉藤だけが目立つ状況。レンタル移籍中だった手島と2年前に完全移籍済みの角田を呼び戻して補強しDFを再整備。2年ぶりのコンパクトサッカーへ。W杯による中断中にアンドレら外国人二人を招集。 しかし補強者を中心に怪我人も増え、試合内容も安定しない。中盤に守備的な石井を入れることで多少中盤の守備も機能始めたが、浦和戦の大敗を受けて柱谷幸一監督とフィジカルコーチが解任。美濃部コーチの監督昇格。 美濃部監督は基本3バックを採用し、今までの選手に加え中山や渡辺大剛と若手を起用(GKも怪我の平井にかわり若手の西村に)。この頃になると試合内容も落ち着き、決定機も相手を上回る試合も出てきたが、決定力不足が目立ち、監督交代後は一勝も挙げられず最下位に
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