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後悔するならしなければいい。まったくもってその通りだから、そうできなかった自分を後悔している。
触れた口唇は特になんと云う事もなく、綺麗に矯正された歯並びの感触を味わった。あの時の己は完全に壊れていたに違いない。 ずっとずっと触れたかった。柔らかな白い肌、掌、指、爪。 今でも泣きそうなくらいに鮮明に、でも不確かに己の中に残っている感触。
受け入れられたのではなく、拒絶されたのでもなく、でも結局あの人は爪の先ほども己を受け入れてはおらず、ただ通り過ぎるのを待っていただけ。結局の所無視されたのだと解った時のあの羞恥と後悔が苦く己を痺れさせる。
進学を考えてはみたものの、己自身それがどれほど本気なのか図りかねる。半分以上が現実逃避なのだろうと分かっているが。 とりあえず今現在のことを片付けてしまおう。何もかもそれからだ。それからでも遅くない。
どんな道に進んでも、応援してるからね。
どんな愛の言葉にも勝るその言葉。愛されている喜び。
最近己は夢の中で殺される。いつも決まった人に。 方法は様々。絞殺だったり、刺殺だったり。 簡単には死ねなくて苦しむ。 押し当てられる掌の異様なまでに鮮やかな感触を、喉に食い込んでくる指の形を、ナイフにかかった長い指の形を、はっきりと覚えている。 コマ落としのようにゆっくりと進む時間の中で、永遠にも思える苦痛の中で、己は微笑んでいる。 目が醒めるとその生々しい感触に薄ら寒い思いを抱く。同時に背筋を這い登ってくる恍惚に身を震わせる。
己は殺されたいのか。あの人に、殺されたいのだろうか。 否。おそらくは殺すほどの強い気持ちを欲している。殺意にも似た強い思いを己に向けて欲しい。 聞き届けられてしまった願いが、未だ果たされない約束が、果たされないが故に行き場を失って悶えている。 そういうことなのだ。
でも、もしかしたら本当に殺されたいのかもしれない。この世から消え去ってしまいたいのかもしれない。 きっとあの人なら己のことを跡形も無く綺麗に消し去ってくれるだろう。
あまり感慨は無い。 この一年はあまりにも短く、無為のままに過ぎていってしまった。失った時間も、命も、人も、物も、何もかも取り戻せない。 それでも次の日に希望を託そう。少なくとも今日のこの日だけでも、己は明日を見なければならない。
きっと己が奪った命の為に、生きなければならない。
一年経った。つい昨日のことのように思い出せるのに。
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