2012年05月23日(水) |
カラヤンのベル・レク(スカラ座) |
NHKBSプレミアムで放送されたカラヤン指揮のヴェルディのレクイエムを聞きました。演奏者は以下の通り。
「レクイエム(死者のためのミサ曲)」ヴェルデイ作曲 (ソプラノ)レオンタイン・プライス (メゾ・ソプラノ)フィオレンツァ・コッソット (テノール)ルチアーノ・パヴァロッティ (バス)ニコライ・ギャウロフ (合唱)ミラノ・スカラ座合唱団 (管弦楽)ミラノ・スカラ座管弦楽団 (指揮)ヘルベルト・フォン・カラヤン イタリア ミラノ・スカラ座で収録 (収録:1967年1月)
この演奏のエピソードとして以下の話が伝えられているようです。
「1967年1月16日と17日に特別公演はトスカニーニの没後10年を記念するものだったためスカラ座は映画用の照明の使用を禁止した。そこでカラヤンはホールが使われない1月14日と15日のわずか2日間で撮影を終了させなくてはならず、予定していたベルゴンツィは都合をつけることができなかった。そこでまったく無名のテノールが起用された。彼の名はルチアーノ・パヴァロッティ。それは素晴らしいものだった。」
豪華なソリスト達です。プライス、コッソット、ギャウロフに負けることなくまだ若いパバロッティが美声を聞かせてくれています。プライスのソプラノは確かに低音から高温まで均一で馬力十分な声なのですが、他の3人とは少し異質な感じがしました。「イタリアの声」ではないのです。ギャウロフもイタリア人ではないですが、こちらはどういう組み合わせでもキチンと合わせられる「しなやかさ」を持っている声だと思いました。ギャウロフはフレーニと結婚してフレーニの故郷のモデナに住んだといいますからイタリアが合っていたのかもしれません。
「ヴェルディ」のレクイエムですから、スカラ座でイタリア人ソリストがぴったりくるのだと思いました。合唱団もすごいですが、スカラ座フィルの上手なこと。弦楽器も管楽器・打楽器も統率のとれた(カラヤンに統率されてというより自分達で音楽を作っている感じです)非常に高度な芸術性を感じさせます。
今回1967年のとんでもない名演奏の存在を知ったのですが、これだけの演奏を可能としたのは当時の社会情勢であったのではないかという気がします。それは「東西冷戦の本格化」ということです。1964年にフルシチョフが追放されてブレジネフ時代に入り、1968年には「プラハの春」がブレジネフによって潰されました。60年代はムラビンスキー&レニングラードフィル、リヒテル等が西側に知られるようになり、東側の驚異的な音楽水準が西側の音楽家達の競争心に火をつけたのでした。特にカラヤンは西側の音楽家の伝統を一身に背負って華々しい活動を繰り広げていましたから、とにかく名演奏を歴史に残したいと考えていたと思います。
この演奏が「映像」を残すことを目的であったので、演奏者の表情や演奏姿勢に少し硬いところがあります。それが音楽と妙に符号していて凄まじさを増しています。カラヤンの動きが少し大げさなのは仕方ないですね。
NHKBSプレミアムで深夜放送されたクラシック番組のエクサン・プロバンス音楽祭2011の「椿姫」を見ました。同じ日に1967年収録のカラヤン&スカラ座のレクイエムも放送されましたが、こちらの方の感想は後日へ回します。 歌劇「椿姫」ヴェルディ作曲 ナタリー・デセイ(ヴィオレッタ) リュドヴィク・テジエ(父ジェルモン) チャールズ・カストロノーヴォ(アルフレード)ほか。 (合唱)エストニア・フィルハーモニー室内合唱団 (管弦楽)ロンドン交響楽団 (指揮)ルイ・ラングレ (演出)ジャン・フランソア・シヴァディエ フランス、エクサン・プロバンス 大司教館中庭で収録(2011年7月収録)
デセイが見事でした。前から思っていたのですが、小さい身体の割りに意外と骨太でエネルギーがあることを再確認しました。歌を歌うのではなくヴィオレッタを演じていました。ここまで役を演じられる「歌手」というと今のところ「ダムラウ」と双璧ではないでしょうか。全体として配役に恵まれながら奇抜な演出で失敗したザルツブルグよりずっと魅力的でした。
但し「父ジェルモン」のテジエだけは最後まで「?」でした。若手歌手が多い中でデセイと並んで今回の看板的存在ですが、彼が出てくると他の歌手から浮いてしまう感じがしました。オペラへの取り組み方が違うのかしら。何でこうなるのでしょうか。アルフレード役のカストロノーヴァがコントロールされた美声で非常に好演していただけに残念でした。カーテンコールではテジエが大御所のように喝采を浴びていましたが、本当にそうだったのでしょうか?
父ジェルモンは難しい役ですけれど。最初から人間味溢れていては若い二人を引き剥がすことにはならないし、かといってあまり「つっけんどん」だと「なんでヴィオレッタが説得されるのよ」ということになります。この辺の微妙な雰囲気が欲しいところ。テジエにはその微妙さがありませんでした。アルフレードから父に鞍替えしたというドミンゴがどのように歌うのか早く聞いてみたいです。
オーケストラも合唱もしっかりした音楽を作っていました。指揮者のルイ・ラングレーの優れた統率は素晴らしいと思いました。
2012年05月12日(土) |
合唱団発表会&中目黒のピザ店 |
今日東京目黒区の合唱祭があり、妻の所属しているコーラスグループが参加するというので旧都立大学キャンパスの目黒パーシモンホールまで出かけてきました。嘗て目黒区南(最寄り駅は目蒲線洗足でした)の社宅に住んでいる時に妻が参加したコーラスグループですが、若い人の新規加入がないために昔から変わらず妻が最年少なので妻は色々な役割を担うことになります。今日は「講評者の世話担当」ということで妻は朝から出かけました。私は妻のコーラスの出番の少し前に到着し前後3団体程度の合唱を聞きました(全部で27団体が参加)。
歌の楽しみ方は人様々なので色々な舞台があって面白いことは面白かったです。総じて若い人に比率の少ない団体が多いので、声の大きさだとか美しいハーモニーを期待するのは酷である程度で妥協せざるを得ません。それより日頃の練習の成果発表会として、手頃な緊張感、久しぶりに舞台衣装を着てオメカシすること、自分達のような音楽愛好家がかなりいてそれぞれ頑張っていることの刺激を受けるといったシルバー社会のセンスの良い催しものといったところでしょうか。講評の先生はすべての演奏を丹念に聴いたようですがものすごい忍耐力ふだと思います。頭が下がります。
ところで都立大学駅に午後1時に着けばOKだったので、今日の昼食はうわさの中目黒のナポリピザ店で食べてきました。ダ・イーサというピッツェーラでなんでもここはナポリピザコンテストで世界一になった職人さんが開いた店だそうです。
ダ・イーサのホームページ
中目黒から山手通りを北上していくと道の両側には様々な形態のレストランが軒を並べています。かなりの激戦区です。そんな中でも他の店を羨ましがらせるようにダ・イーダには行列ができていました。少し並んで窯の見える席に案内されてメニューも見ずにマルゲリータを注文しました。店内はナポリのピッチェーラの雰囲気に満ちています。奥の壁にはナポリのプレぜービオが飾られています。窯は店の目立つ位置に据えられていてピザ職人は存在感十分に腕を奮っていました。(オリーブオイルの使い方もポイントだと思いました)
さてマルゲリータですが文句の付けようのない「本場」もの。いままで日本で味わったピザの中で文句なく「No.1」です。ナポリそのままの味でした。もっともマルゲリータ一枚の値段が1650円(土曜日)ですから本番の3倍となります。材料、窯などを考えると仕方ないのでしょうか。ナポリまで行かずに食べられるのですから。
やはり本場で修業した職人さんの仕事はたいしたものだと思いました。日本にもナポリピザの店が増えていますが、やはり本場の味を知っている職人さんは貴重だと思います。この店が流行るということは本場の味を知っているナポリピザファンが多いということ。ナポリピザブームはまだまだ拡大していきそうです。
「麦と兵隊」が無性に読みたくなったのですが、新潮文庫本は絶版で手に入りません。ということで須坂の田舎に帰ったついでに実家の本棚を物色して「新潮文庫版」を取ってきました。
実家にあった文庫本は昭和44年の第20刷で、定価は何と「100円」。本文の紙は大分茶色に変色していますが読めないほどではないです。誰が買ったのか今になっては経緯は分かりませんが、読みたい本をその昔に家族が買っていたいう事実は感慨深いものがあります。同じように絶版の文庫本で「平将門(上)」を実家で見つけたときも嬉かしかったです。
「麦と兵隊」とともに「阿Q正伝」も探したのですが、こちらは見つかりませんでした。たしか赤いカバーのかかった文庫本があったはずなのですが。こちらは絶版ではないので購入しようかとも考えています。
2012年05月05日(土) |
久しぶりのクラリネット |
私と妻が所属していた高校の吹奏楽クラブの演奏会が40回を迎えて6月3日に開催されるという案内を頂いていました。今回は40回を記念してOBも交えての合同演奏を披露したいとの現役生の計画があって、クラブOBに案内されました。実はずっと昔、私が高校のクラブ3年生の時に第一回演奏会が開催されたのでした。妻はその時1年生で参加しました。それから40回実に40年の月日が流れました。
5月5日は連休を利用した合同ステージの練習日が設定され、改築で新しくなった(といっても随分前ですが)母校まで出かけて練習に参加してきました。6月3日の本番には出るかどうかは少し考えてから決めようと思っています。なにせ久しぶりのクラリネットだし、私達が卒業してからコンクール全国大会に出場するなど後輩達は相当うまくなっていて、私達の参加で迷惑を掛けてはいけないと考えているからです。
高校の新校舎については外から眺めたことはありましたが、教室に入るのは今日が初めてです。昔のオンボロ校舎とは雲泥の差ですごく奇麗です。ですが床とか壁は木造で昔のデザインも取り入れているので非常に懐かしいムードはあります。後輩達の練習室は大変立派です。防音装置が施されているだろうし、複数のコントラバスとかフルスケールのハープとか昔では考えられない楽器が並んでいます。
ところで、現役高校生に混じって練習してみて、直ぐに「昔の伝統は生きている」と実感しました。コンクールで全国大会に駒を進める時代になっても昔の雰囲気はそのままでした。「なんでこれで全国大会?」という感じなのです。想像するにこれから夏までの間に長足の進歩をするのだろうと思います。現在は楽器の性能も上がり、インターネットで情報は入手できます。伝統を生かしつつ現代風に効率的に成長して欲しいと思いました。
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