20年以上に及ぶスリランカの内戦は、昨年12月から停戦中ですが、スリランカ政府とLTTEとの和平交渉がいよいよ9月から始まるようです。昨日の新聞では9月16日から18日までの間、タイのバンコクで開催されると報道されました。
昨年7月のコロンボ近郊の国際空港で爆弾事件があり、緊張が一挙に高まりましたが、その後12月の総選挙において政権の交代(PA政権からUNP政権)が実現したことを契機に停戦が成立していたのです。前政権の時は政権発足から3ヶ月停戦が実現したものの、直ぐに内戦状態に逆戻りし、かえって激しい内戦状態になってしまったのです。今回もいつ停戦が破られるのかを心配しているというのが実情です。この和平会談で停戦を恒久的な和平につなげてほしいものです。
今回の和平交渉は、ノルウェー政府の仲介とタイ政府の斡旋で実現したものですが、スリランカへの最大の援助国である日本政府ももう少し活躍してほしいと思います。
私の勤めているSLT(スリランカテレコム)は9月8日にスリランカ北部のジャフナ(旧LTTE支配地域の中心都市)で新電話設備のオープニングセレモニーを開催します。内戦の間、スリランカ北部・東部地域は、危険が伴うため、設備の増設・維持ができず、電話サービスは非常に低下してしまいました。SLTでは今年の5月から資材を供給するとともに、特別部隊を編成し急ピッチで電話設備の増設を行ってきたのです。こうした努力が和平の実現に役立てば幸いです。
こちらスリランカは一年中夏なので夏に特別に休むという慣習はないのですが、日本では「お盆」を中心にその前後にかためて夏休みをとるのが普通なので、先週夏休みを一週間とりました。この休みを利用して日本から妻をスリランカに招待しました。子供達はそれぞれ自分の事で忙しいので今回は来れませんでした。
日本とスリランカは時差が3時間あるので、妻は毎日朝3時(日本の朝6時に相当)に起きていました。彼女の感覚では、コロンボの気候のほうが日本より過ごしやすいそうです。この時期コロンボなど「島」の西側は雨季なので比較的涼しいのです。湿気も適当にありますが日本ほどではありません。
今年は下の娘が高校入学だったので妻は正月から大変忙しかったのです。実は、上の息子の高校入学の時も私が外国にいたので、妻がひとりで走り回ったのでした。それと、私も妻も、長野の実家に親を残しているので妻は色々と気を配らなくてはなりません。ということで妻の慰労の意味を込めて招待したのですが、果たしてのんびりできたかどうか。妻は昨日日本に帰国しました。
先週来、会社の長期経営計画モデルの試作に挑戦しています。日本人の同僚が大半を作成しているのですが、まとめの段階で私も参画しました。使っているソフトウェアは「Excll」です。スプレッドシートで20枚くらいの規模です。こうしたモデルの作成作業に関してはずいぶん昔から関わってきてます。
私が初めてソフトによるモデルをつくったのは15年位前です。MS−DOS上の「マルチプラン」という表計算ソフトを使いました。当時NECがどんどん新しいパソコンを出していて、大きいサイズのCDROMが使えるパソコンが家庭に普及し始める時代でした。もちろん通信はまだまだでした。
当時この「マルチプラン」というソフトは画期的なツールだと感激したものです。会社の商品別原価の計算では100以上のシステムへの原価配賦で大活躍しました。それまでは電卓でいちいち計算していたのですから。何日間か徹夜していた作業が瞬時に計算されました。なんといっても、変数を変えて繰り返しシミュレートできるところが大進歩だったのです。そして、それを時間軸の変化にも適用したのが、長期経営計画モデルでした。パソコンの循環計算と収束条件活用し、変数を変えたときの長期経営計画モデル数値の検討は大変エキサイテングでした。ただし、当時は印刷機能が不充分で、罫線が書けない時代でしたから、プレゼン資料作成は下線を駆使して苦労した記憶があります。マルチプランに罫線機能が付加されたときは感激しました。
それ以来、他の仕事を挟んで、何度か経営計画策定作業をしました。そのたびにソフトウエアの進歩には驚かされます。正直いってついていけません。昔のマルチプランが懐かしい。いまでは「Excell」機能はほんの数パーセントしか活用していないかもしれません。また、大規模なソフトになると作りこんだ計算式が複雑になって大変です。計算式のミスを無くすには大変な苦労が必要です。
ソフト機能が向上し、高度なシュミレーションが可能になったのは事実ですが、やはり大切なのは基本的な将来予測をどのように行うのか、悲観的・楽観的に過ぎないかという点です。意思決定の最後はやはり経験に基づいた経営者の意思だと思います。
終戦記念日を前にして、NHK海外放送で印象的な番組を見ることができました。それは、台湾沖海戦における日本海軍の軍事成果が非常に過大に報告され、次のレイテ島において、この報告により米軍軍事力を過小評価したことから壊滅的な失敗繋がり、そうした「粉飾報告」は終戦まで続いたというもの。番組では、海軍部内における戦果報告作成の過程を追って、現場・現地司令部・大本営といた各段階での報告検討過程が報道されていました。
私は、日本でもこちらでも経理を担当しているので、番組をみて改めて難しい問題だなあと感慨を新たにしました。というのも、ひとつには、最近「エンロン・ワールドコム」といった大企業が粉飾決算により危機に立たされているとおり、行き過ぎた(?)株価至上主義によって企業経営者は(意識的にも無意識にも)粉飾の誘惑に駆られているとう現実があるからです。国民の安全・発展が国家の目的であるはずなのに、海軍・陸軍のメンツが優先してしまった当時の状況は、今の企業社会にも見え隠れします。
もうひとつの興味は、限られた情報をどう判断すべきかという問題です。情報が豊富で判断がほぼ確実に保証されれば問題がないのですが、ことはそう簡単ではなく、非常に少ない情報で、さらにそれに基づく将来によって意思決定しなければならない場合があるからです。NHKの放送の中で、当時の関係者の証言として「現地司令部も大本営も現地から報告を否定することができない状況であった」と報道していました。しかしその背後で、現地には大本営の作戦を遂行して失敗は許されないと心理が大勢を占めていて、上部組織の意に沿う報告が意識的に作られていたのでした。情報の評価・将来の予測に、どれくらい「意思」を参入することができるかという問題でもあります。
企業にとって「失敗を恐れずに挑戦すべし」「ポシチブ思考」といった前向きな行動様式は最も大切な精神だと確信していますが、時に誤解が生じて、情報を悲観的に分析することが消極論と取られたりすることがあります。果敢に挑戦することと、失敗の危険性を十分評価し、リスクをヘッジすることは矛盾しないはずなのですが、こうした思考はまだ十分定着していないようです。
でも、NHKの番組の中で高級参謀が「当時のことは忘れてしまった。」と証言していることろや、「現場司令官が報告に偽りがあれば腹を切るというので否定できなかった」という現地司令部の雰囲気を見るにつけ、組織人間の行動の難しさも実感したひとときでした。
私の会社には野良猫がたくさん住んでいます。といってもコロンボでは普通なのですが。その中の一匹の黒白のメス猫が4匹の子供を産んで育てています。会社の中庭に住んでいるので、毎日通り掛かりの際に覗きに行っています。
子猫四匹はそれぞれ個性が違っています。とても臆病で人間が近づくとすぐ逃げるタイプと、人間にさわられてもなんともないタイプとその中間くらいのタイプ。生まれから間もないので、生まれてからの経験でそうなったとは考えにくいです。多分、生まれつきなのでしょう。
私は、野良猫社会において、人間を恐れない猫の方が長生きするのではないか、幸せだろうと考えています。人間に近づくことから「エサ」をもらう機会が増えるしひょっとするとご主人を見つけることができるかもしれないからです。そのために子猫のころから人間に触れられることに慣れることができるよう、チャンスをみては近くにいって覗いているのです。
しかし、覗きに来る私を見て、逆に人間不信に陥る子猫もいるようですし、人間になれことにより警戒心が薄らぎ交通事故に遭いやすくなる猫をいるでしょう。この辺が難しいところです。いずれにしても4匹の子猫が無事育ってくれるといいなと思っています。
先週金曜日からコロンボで第14回のアジア陸上競技大会が開催されています。9月にプサンでアジア大会があるようですが、陸上競技においてはその前哨戦のようなものでしょう。日本ではほとんど報道されないでしょうが、こちらはすごく盛り上がっています。
昨年の12月に始まった停戦状態がすでに8ヶ月以上続き、スリランカの人もスポーツを存分に楽しめる環境になっているようです。この国おいては、スポーツを幅広く振興することによって、ルールに基づくスポーツマンシップを育ててほしいと思います。
アジアの中では日本と中国の強さが目立ちます。でも体格を見ると、はっきり言って日本の選手が勝っているとは到底思えないのです。中国の選手は均整がとれているし、南アジア(インド、パキスタン、スリランカ等)と中近東の国の人たちは日本人より足が長く胸も厚くて強そうなのです。そうした国が本格的にスポーツに力を入れだしたら、アジアスポーツにおける日本地位も危ないかも知れません。経済状況みたいですね。
8月5日は私の勤めているスリランカ通信会社と日本の通信会社のマネジメント契約満了の日でした。5年前のこの日、内戦が激しくコロンボ市内で爆弾テロが発生するような状況下において、スリランカ国の通信インフラの整備のため日本の通信技術経営ノウハウを活用するプロジェクトが始まったのでした。この5年間に当時30万に満たなかった電話契約数は70万を超え、通話サービス品質(故障率、通話完了の比率等)の大幅な進歩がありました。
5年目の今日、スリランカにおいては、今後の電気通信さらにはコミュニケーション産業の方向付けの模索が続いています。先進諸国の状況からは少し送れているとは言え、通信革命の波はこの国に押し寄せてきています。つまり、「従来の電話からモバイル通信・インターネットによるコミュニケーション」です。しかし、国民全体への普及は整備されたといっても、固定電話・モバイルあわせても人口普及率で「10%」前後の留まっています。国内における情報格差は広がる一方のような気がします。
今日朝のニュースでNTTコミュニケーションズが「IP電話」電話サービスを開始すると報道していました。IPネットワークを活用すると、従来の電話交換機による通信に比べて驚くほど低コストで通話サービスを提供することができます。技術的にはIPネットワークを活用することによって、国際電話料金も大幅に下げることができます。日本・スリランカも含めてそうした安価な国際電話サービスのブラックマーケットが存在するのも現実のようです。
こうした現実の競争に対抗して通話料金を値下げしつつ、スリランカ国内全般で通信インフラを整備していくことは、企業経営的にかなり困難を伴います。プロジェクト5年間が終了した後、どのような決断がなされるのか、また枠組みの中で、日本の経験をどのようにしたら生かすことができるのか模索が続いています。
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