恋文
DiaryINDEX|past|will
翳ってゆく ひかりに 満たされる
すこしづつ 失われてゆく あいだ
カーテンの むこうに
風が 吹いて 木々が揺れる
音を 聞いている
いまに 雨になる
鳥が
やってくる
わたしは
こない
ずっと 待っている
わたしは
いない
このあいだまで 雨だったから 気づかなかったのね
もう こんなに 明るかったんだ
まぶしくて ぼんやりしている
空は まだ 明るかった
小鳥が やってきては 帰ってゆく
木立が だんだん 翳ってゆく
鳥の声も 遠ざかる
鉄路のあいだの みどりの草にも 花は咲いて
つながってゆく その むこうの 曲がりかど
ふつりと 消える
2008年04月23日(水) |
春のなかに - ある人を悼んで |
春のなか 逝く 花は 雨のなかにも 咲いているのに
花びらから ぽつんと 落ちる しずくように
そのまま ひかりのなかに おかえりください
いつか だれもが ゆくように
夢のなかで 聞いていた
雨音が つながって
いちにち ずっと
水槽のなかから 外を見ている
雨のなか 小鳥が やってきては 帰ってゆく
小さな 餌場
軒下の草花が わずかに 揺れる
ずっと一日 雨のなか
花が 舞っていた ちょっと まだ 冷たい 風
川に ぽつんと 眠っている 鴨
でも 春だ
あぁ いつのまにか あったんだ
菜の花 菜の花
ずっと 向こうまで
もっと 向こうまで
見ていよう
時は 自分ひとりで 過ぎてゆく
立ち止まっても 追いかけなくても
わたしの時間は わたしといっしょに 過ぎてゆく
振り返ると そうで ありたかった わたしが いるような 気がする
もう一度 振り返って どこも 変わらない そのままの わたしが いる
誰にとっても きょうが すぎる
遠くにいる あなたが 過ごしただろう
わたしの 知らない きょうは
少しくらいは 重なっただろうか
テーブルの上に 八重の花
娘がひろってきたのだろう 花海棠だろうか
ちいさな春 ぽつりと
花がうつむく
また ひとしきり 雨が 走っていった
切り絵のような 木の枝の 向こうに
雲が走ってゆく
鳥が来て 去ってゆく
うっすら 朱い 空に
影になる
思い出すこと ひとつ ひとつ
ずっと いまでも 同じなのに
どうして こんなに 遠くに 来てしまった
みたいな 気がするのかしらね
立ち止まったまま 動けないよりも
どこへとも 進んでいったほうがいい
いつか どこかに たどり着けるだろう
どこにでも 行けるかもしれない
雨に 囲まれているみたい
雨の 向こうは
どんな 明日になるだろう
また ひとしきり 雨音がする
花が 雨のむこうに かすんでいる
遠く 近くに 聞こえる いろんな音も
いつか 雨音だけに なる
すぎてしまえば あぁ、こんなことが あったのだと 思いだすのだろう
いちにち また いちにちを
そんなふうに 過ごして ゆければいい
冬に もどっても
そのときに もどらない
そのときの 風のように 冷たいのに
あなたが まどろむあいだ
わたしも 添い寝をしている
あなたが ねがえりをうつと
わたしも そっと からだをかえる
あなたが そこにいるだろう
そこは とても 遠いけれど
いつか すり抜けて いってしまいます
かたちは かたちでは ない
わたしの かたち
痛みと 引きかえに
きょうも まだ ある
ひとりで 時がすぎてゆくなら
だまって 見送っていようか
だれか 立ち止まるだろうか
はじまりは ほんの はずみで すれちがったまま おわる いちにち
夢に とどまって いられない
朝を むかえる
また 明日の朝へ むかう
|