恋文
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こんなに 明るいのに 音もなく 降っている 雨
小鳥が 軒下に やってきて また 去ってゆく
草むらも 木立も きらきら 光っている
雨音が止み 薄く暮れた外から 風が 誰かの声を 運んでくる
草の匂いとともに
あまた あるけど
ひとひら
あれば いいかな
目覚めても まだ 続いているような 気がする
夢の境を 踏み越えて ゆこうか
しらないまに 縺れてしまった 髪の先
ぷつりと 切ると
まるで 痛いような 気がする
なんの 特別なこともなく 一日が 過ぎる
どこかで 何が あったとしても
遠くに 向かうだろう
どこまで 行くだろう
たそがれは 柔らかな ひかり
きょうは おやすみ
また 明日から
あ 遠ざかってゆく 音
飛行機は どこに いる
残っている
ひかりが 少しづつ
失われてゆく
春の 吐息のように かおる
夕暮れ
ほのかに 明るくなる
まるくなって じっとしている
どこかで 水のおとがする
もう きょうがはじまる
きょう一日が 終わって 暮れてゆく
飛行機が 軌跡をえがいて 渡ってゆく
空のむこう 雲のむこう
まだ 明けない 夜をおもう
行きつ戻りつ 足踏みもして
少しは 前に 進めたかしら
ざわざわと 木立がさわぐ
枝が しなやかに 揺れる
雨を 待っている
岩の上を 白く波をたてて 走り
淀みでは 木立を 映している
辿ってゆく その先は まだ 見えない
雨のなかの 道すがら
ふと 薫る いのちの ような
雲がでて ひかりが なごんだ
少し しめったような 風も いい
心地よい 軽やかな おとがする
みどりが 濃くなる
日が傾くと ふと ひんやりする
みどりの匂いを 残したまま
射るような 光から 目をそらせて
影のなかに 逃げ込む
地面が 白い
わたし ちいさな ひずみ
こんな明るい ひざしのなか
まぶしくて 目をほそめる
森のこみちをゆく
ひかりが 付き添ってくれる
どこからか 香る
花のかおり 草のかおり
からだが ときめく
いつのまに こんなに みどりになっていたのだろう
花も どこにも 咲いて
まぶしい
ふと 影に 身を寄せる
目の前に
光は あんまりに あかるい
水彩絵の具を 溶かしたみたい
さっきまで あんなに 痛いように 射していた
ひかりが 去ってゆく あいだ
空を みている
毎日のことを している
一日は そうやって 過ぎてゆく
どんなときでも
まぶしい 光のなかに
やわらかな みどりが揺れる
午後が ゆっくり 終わる
籠には うっすら ひかりが はいる
どこにも いかなくても
しずかな いちにち
すこしづつ 遠ざかってゆく ひかりのなか
どこからか 子供の声がする
うっすら 暮れてゆく
思い出が たちあらわれて
眠くなって しまう
ちいさく 束ねる 髪
欠けたまま たばねる
もうすぐ 暗くなる
濡れたまま おもい
空の一角が 暗くなっているのに
遠くには うっすらと 夕日が照らしている
突然の 雨のあとに
みどりの匂いが 漂っている
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