恋文
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2008年03月31日(月) 春は 春

連翹が
雨に
ぬれそぼる

みんな
同じというわけではないけれど

また ひとつ
思い出に
つながる


2008年03月30日(日) 翳る

ブラインドの隙間から
消えてゆく ひかりを
見ている

どんどん 孤立してゆく
ここに

まだ ひとりでいる


2008年03月29日(土) 午後

川の流れを
聞いています

小鳥が
さえずっています

音と いえば
それだけで

ひかりが
かわってゆくのを
見ています


2008年03月28日(金) 過去

忘れても
忘れなくても

そこに あった

思い出したくて
思い出したくなくても

よみがえる


2008年03月27日(木) もうすぐ

遅い雪が降った あとに

やっと 青空が見えました

木蓮の蕾が
ちじこまっていたけれど

もうすぐ
おおきく ふくらみそうです


2008年03月26日(水)

夜が更けてきました
いちにち
雨でした

そちらでは
もうすぐ 夜明けですね

まだ 暗い部屋のなかで
あなたは
ぐっすり 眠っているでしょうか

もう 桜は咲いたでしょうか

あなたの 窓から
花が 見えるかしら


2008年03月25日(火) 家族

ゆらゆら
同じところを
漂っている

交わりながら
すれ違いながら

水槽のなかに
いるように


2008年03月24日(月)

時が ゆっくりと
過ぎてゆく

その どの瞬間にも
もどれない

ひとしきり
降っていた 雪が
止んでいる


2008年03月23日(日)

黒い鳥が
地面に 踊るように
しきりに なにか
ついばんでいる

だんだんと
白く なってゆく

色がなくなると
音も しなくなる


2008年03月22日(土)

空が 暗くなる

通る人を
追いかけるように

雨になる


2008年03月20日(木) 春なのに

花びらのように
降ってくる

雪の ひらひら

名残惜しいのね

もう
春なのに


2008年03月19日(水) 真ん中 

それで
いい

見知っている
そのひとが

通って いった

ここは
真ん中 なのかしら

見知らぬ人が
追っている


2008年03月18日(火) 散歩

川の 向こうのほうに
浮かんでいるのは
水鳥たち

橋の下
目の前には
岩の上を
音を立ててゆく
流れ

空は 灰色

歩いている


2008年03月17日(月) うん

ありがとう と
言ったら
よかったのに

うん
と 言った

ことばが
つまって
しまったから


2008年03月16日(日) 知らない

忘れているあいだも
わたしは
わたし自身なのだった

誰もが知っていても

わたしだけ
知らない


2008年03月14日(金) 夕日

連翹が
ほのおのよう

夕日が
うしろから
照らしている


2008年03月13日(木) 香り

通りすぎるたび
花が香る

触れてくれる
みたい


2008年03月12日(水) 雨の夕暮れ

いつのまにか
取り残されて
しまった
ような

夕暮れは
雨の色

風がはこんでくる
しぶきが
ひたひたと

からだを
濡らしている


2008年03月11日(火)

しんと静かな
家の中に

ときおり
聞こえてくる

誰もいない
道を

過ぎてゆく
風の音



2008年03月10日(月) 灰色

うちの中から見る
空は 灰色

誰もいない
ひとりでいると

うちのなかも
灰色になる


2008年03月09日(日) 散歩

まっすぐに 立っている
木々を 見ながら
通り過ぎてゆきましょう

鳥の声は
あちらからも
こちらからも
聞こえています

寒いとは 思いません

一歩一歩
わたしが歩いています


2008年03月08日(土)

しかたがない と
思いますが
わたしは ひとつの
性です

鏡に 映して
もうひとつの
性に 
なりたいと思います

ときどき
入り混じって
しまいます

鏡のなかにも また
もう一人の
わたしが
ありました


2008年03月07日(金) 重い足取り

また その夢を見る

一歩のために
足を
あげるのが
重い

もう 脚から
くずれて

しまいそうに
なりながら

歩いている

いつも 
どこかに

行かないと

いけないのだ と


2008年03月06日(木) 髪に触れられて

そのとき
どこか わたしの
真ん中に
沈んでいる

じぶんを
取り返したように
おもった


2008年03月04日(火) 遠くから

からだに
しみこむように
風が吹く

わたしのいない町にも
風は吹いているだろう

ここから 繋がってゆかない
その風を 想う








2008年03月03日(月)

いつしか空は
暗くなり

風が木の枝を
揺らす

咲いたばかりの花が
ふるえる


2008年03月02日(日) わたしの姿に

誰が 知るわけでもない
わたしを

わたしが 抱いていたい
わたしを

かりかりと
引っかくように

呼び覚ましながら

知らないところにいる
わたしは

いまここにいる
わたしに なりたい


2008年03月01日(土) 毎日は

わたしが
いなくても

おなじ

毎日が
くるよね


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