恋文
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2006年05月31日(水) いったりきたり

ゆめで 
みていた

なんどでも
みていたかった

ここから そこへは
ゆけない

そこから ここへは
かえれない


2006年05月30日(火) 冷たい雨

こんなに
雨が
冷たいなんて

花海棠が
濡れていた
あの 春にも
こんなでは
なかった

もう あやめも
咲きはじめたのに

空を
見上げる




2006年05月28日(日) 湖畔

風が
遠くのおとを
はこんでくる

明るい湖畔から
石だたみの
路地へ

こんなに
時がゆっくり
ながれるから

思い出を
つれてこよう


2006年05月27日(土)

わたしが
わたしであるという
それだけの
ことなのに

わたしではない
だれかの
眼を
とおして
いるのね


2006年05月24日(水) しぐさ

髪を
後ろに
くくり持って

くわえた
クリップ

見ている
わたし自身


2006年05月23日(火) 恋心

どこにも
なくなってしまった
恋文の
宛て先

なにに
恋をしているのだろう

まだ
恋をしていたい
わたし


2006年05月22日(月) 風の日に

窓が
雨にたたかれるたびに
揺れる木を
見ている

花弁が
吹き寄せられて
小道が
白くなる

声を
あげてみると
どこかに
失っていった


2006年05月21日(日) 結う

髪を
梳く

指先に
うつる

かおりを
そのまま

ひと房
とって


2006年05月19日(金) からだ

うでや あし

むね おなか

うつして
ゆく
ゆびさき

まんまえにいる
わたしの
からだ


2006年05月18日(木) 雨上がり

一群の雲が
飛行船のように
進んでいる

午後の光を
残して
青空がみえる

地面は 
黒く
濡れている


2006年05月17日(水)

あのとき
見ることの
なかった
海は

もう
どこにも ない

思い浮かべる
こんど
見るであろう


2006年05月16日(火) 夏をおもう

わたしが 
いなかった
夏のように

あるいは

わたしが 
いた
夏のように

それから

わたしが
いる
夏として




2006年05月15日(月) いない

わたしが
いないと
おもう

目を
とじて
なにも
見ない

だからと
いって
わたしが
見えないわけでは
ないのに


2006年05月14日(日) 閉じる

ぱたん と
閉じる

鳥たちの
さえずりが
聞こえる

ぱたん と
やっぱり
閉じる

なにも
聞こえないように


2006年05月13日(土)

花の
かおりは
どこにゆく

みどりは
濡れたまま

けむる
雨のなか


2006年05月12日(金) いや

いやなんだ

だって
いやなんだもん

もう
知らない


2006年05月11日(木) 行き先

明るいひざしのなか
見なれた風景が
いつか知らないように
見える

いつもの道を
いつものように
歩きながら
きっと行き先が
ないような
気持になる


2006年05月10日(水) 夢のできごと

夢だと 
さとるのに

ながい ながい
時が たっていた
みたいなのに

まだ
明けていない


2006年05月09日(火)

刈られては
うしない

雨には
うなだれる

いくども
めぐってきた

春に まだ
失はない


2006年05月08日(月)

雨の音が
きこえる

夢との 
あいまに

ぽつんと 
汗ばんで

のばした
脚に

ひんやりと
風がくる


2006年05月07日(日) わたし

どんどん
失ってしまう

わたしの
わたし

離れないよ

いつのまにか
なくなってしまっても

まだ
わたしの
わたし



2006年05月06日(土) 菜の花

なだらかな
みどりの丘に
菜の花畑

風が吹いて
いるだろう
揺れる
菜の花

ずっと
見ていた

ずっと
繋がっている


2006年05月05日(金)

なにが あったと
問われれば
なにもない

いちにちが
過ぎて
思い出す

昼過ぎに
突然 降ったのだ


2006年05月04日(木) ほどく

髪は
ほどいたほうがいい

くくると
とじこもってしまう

だけど くくる
いまは


2006年05月03日(水) みどり

いちめんの
みどりの野

日が暮れて
ひかりを
失っても


2006年05月02日(火)

あらがおうか
どうしよう

ぼんやりと
あかるくなった
へやのなか

からだが
しずんでゆく
みたい


2006年05月01日(月)

この 腕は
知らない

わたしじゃ
ないみたい

でも
知ってる

わたしじゃなくて
いいんだ


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