lucky seventh
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2005年01月13日(木) |
違えた歯車、不幸の連鎖 |
そうしてあなたは、あたしの大切なものを奪った。
“違えた歯車、不幸の連鎖”
夕闇せまるそんな時間、一際大きく立派な屋敷の前で起こる諍い。 呪をかけられた妹を救いたいがために、屋敷の主人(あるじ)が所有する "ある物"を譲ってくれと頼みにきた青年。 しかし、門番である男は身分の明らかでない者を主人に会わせることは できないと門前払いをする。 それは門番にとっては当たり前の事だった。 下っ端でありながらも、男は屋敷の主人を心から慕っていたから。 その頑な態度に、青年は男を切って屋敷に侵入する。 それを偶然、屋敷の主人の息子である少年は見てしまう。 少年は自分の父である屋敷の主人の所有する"ある物"を狙って 不法侵入してくる青年を捕らえる。
青年は役所に差し出され、死罪になった。
ところかわり、青年の故郷である町の城下の一角。 美しい着物を纏った美しい1人の少女が泣いている。 手にはぐしゃぐしゃに握りしめられた、青年の死の知らせが 書いてある文(ふみ)。 少女は恨みの篭った目で、空に浮かぶ銀の月を睨む。
風景は一転、銀の月から移り変わるように銀の髪の少年へ。 息を乱し、膝をついて睨むように見やる視線の先には、 食えない笑みを浮かべる老人。 少年の身体に見えない"呪い(のろい、叉はまじない)"をかけられた少年。 実は老人は少年が役所に差し出した青年はその妹である少女にかけられた 理不尽な呪いを解くために、"ある物"のことを助言した人だった。
少年は呪を解くために、老人がいる少女のもとへと旅立つ。 そんな少年が連れ添う娘。 ひっそり影ながら支える娘に、少年は少しずつ心を開く。 お互いを思いやる少年と娘。
睨みある少年と少女。 少女は自分の兄である青年を殺した(少年が役所に差し出した所為だと 少女はそう思っている。)少年に恨みつらみを言う。 冷ややかな少年。 彼の背後には娘がいた。 娘は言う。
「確かにあなたには罪はない。 理不尽な行為によって、無情な目にあっている。 けれど、あなたの兄さまのした行為は許されるものではない。 あなたの兄さまは待たなければ行けなかった。 どれだけかかろうと待たなければ行けなかった。 なのにあなたの兄さまは、あたしの兄さまを殺した。
そうしてあなた達は、あたしの大切なものを奪ったんだ。」
娘は言う。
他でもない、理不尽を知っているのにその理不尽を他人にするのかと。 自分と同じ、人間を作るのかと。
娘は門番の妹だった。 自分の職務をはたしていただけの兄、なのに殺されてしまった兄。 娘の目に、少女と同じ憎しみが宿っていた。 少年は静かに、そんな娘を見つめていた。
弱くてごめんね。
小さな子供の伸ばされた手。
縋るように、届くように、
小さな子供は手を伸ばす。
1人は銀の、1人は金の
輝く双月のような色の髪が揺れた。
「嫌です、母様」
金色の天使が泣きながら怒った。
「お願いです、母様」
銀色の堕天使が叫びながら縋った。
けれど、黒髪の悪魔は悲しそうに微笑むだけ。
「お前たちはまだ戻れる。」
金色の天使と銀色の堕天使を撫で、悪魔言はい聞かせるように言った。
「死なないで。 生きておくれ、最後まで足掻いておくれよ。」
矛盾する自分の言葉に自嘲的に笑った。 手からすり抜けていく、愛おしい感触に名残惜し気に目を閉じる。
「私は悪魔。 やがて、あの男は私を捕らえにくるだろう…。」
そして、悪魔は嘆く。
「私は弱い。 誰かを守れるほど強くはない…この身1つで購えればいいが、 この生命(イノチ)を与えることも分けることも私にはできない…」
酷い悪魔は言った。 この世で、酷く優しい悪魔は自分の不甲斐無さを、力不足を呪った。
「どうして?どうして僕らだけなのです?」
「どうして?どうして連れていってはくれないのです?」
それでも、子供達は言う。 この手を話したら2度と会えないような、そんな恐ろしい予感がしたから。
『生も死も、一緒と言ったじゃないですか!??』
この言葉が、悪魔をどれほど傷つける知っていても、 子供達はこの手がはずされないためになら、どんな言葉も紡ぐ。
「母様を困らせるな…」
小悪魔は言った。 小悪魔は、自分は悪魔と居られるから言えた。 それが例え、心通わせ同じ人を守ると誓った盟約者であっても。
「僕たちは違う生き物なんだ。」
傷つける言葉をはいても、その言葉の意図を理解できるとしっていても。
「あきらめろ」
その言葉は悪魔をここから少しでも早く引き剥がしたいがための言ノ葉。 それをさせないがために天使と堕天使も、悪魔を見る。
『母様』
縋るように、 届くように
弱くて、ごめん。 お前たちを守れるだけ強ければ…
大切な者を守るためには、どれほど力があっても足りないと言うことを その時はまだ、悪魔は知らなかった。
2005年01月04日(火) |
ロボットダンス 〜寸劇〜 |
目を開くと、忘れてしまうような それは微睡みの中の、夢…
それでも、それでも、嬉しかったんだ。
「ゼイゼアー…」
ロボットには心がないと誰かが言った。 ほんとうに? 確かにロボットは人の顔をミリ単位でもって見て、 身体にサーチをかけて、表情を作る。 確かに人とは違う。 血のかわりにオイルの回る身体、取り外しのきくパーツ、 明らかに僕らと彼らは違っていて、だけどそれでも僕は思うんだ。
彼らは人なんだと。
「初めまして、シイ… 私の名はゼイゼアーと言います。」
ゼイゼアー あの時、君は起動したばかりだったね。 人とは違う清潔感、部屋からとは違う消毒液の匂い。
「今日から、貴方の話し相手になったんですよ。」
君だけは、僕に話し掛けてきてくれたね。 世界と言う名の毒に侵され、呪いにかかったように眠り続ける 『眠り姫』と、呼ばれた僕に。 昏々と眠り続ける僕、医師たちはでさえ僕が意識を持っているのか そうでないのか分からないような有り様だったのに、 他のロボット達はすぐにあきらめたけれど、 君は根気強く、反応を返さない僕に話し掛けてくれた。 手を握ってくれた。
嬉しかったよ。
「ごきげんよう、シイ。今日はとてもよく晴れていますよ。 気候装置の調子がよいのですかね? いつもより、空が青々としていて美しいですよ。」
「おはようございます、シイ。今日は顔色がいいですね。 久し振りに後で、散歩にでも行きましょうよ。」
何気ない会話、 何気ない日常、 君は僕にそれを与えてくれた。
目覚める可能性は低いと言われた僕を 最後まで守ろうとしたのも、君だけだった。
いつも考えていた。 眠る僕に、君はいつもどんな顔で話し掛けているんだろう?って。 そう考えて、眠る僕の世界に色がついた。
君がどんな風に笑うのか? 君がどんな人なのだろうか? どんな服を着て、どんな瞳の色で、どんな髪型で…
シイ、泣かないで。
君は信じることを知っていたね。 ねぇ、知ってた? それってとても難しいことなんだよ。
シイ、笑って下さいよ。
ねぇ、どうして君はこんなにも僕のことを信じてくれたの? いつだって、最後には誰1人として、僕のことを見放すのに。 ねぇ、どうして君はこんなにも僕のことが分かるんだろうね? 僕ってとても表情が読み取りにくいことで有名なんだよ。 なんていったって眠っているんだからね。
シイ。
でも、泣かないでと君は笑った。 余分なエネルギーを使う余裕もないくせに、 君は微笑みを作り、僕にそう言ったんだ。
聞こえていた。 君はなんて人間らしいだろ。
人だって、子供の頃は大人を真似ていた。 見て、真似て、それがいつしか一人歩きして、 1つの『心』と言うものになっていった。 その人と同じようなものを君は取得したんだ。
「君も人間になったの?」
ううん、違う。 ゼイゼアー、君は人間になったんだね。
目覚めた僕のベットの横で、君はいつも微笑んでいたんだね。 涙で霞んだ視界の中で、僕は初めて君を見た。
ナナナ
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