lucky seventh
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2004年12月24日(金) 君だけが

アイツは、俺のためにいてくれたから。


















“君だけが”


















「お前たちだって殺してんじゃネェのかよ?」

短く、不揃いの髪が揺れる。
あんなに自慢にして髪が短く無惨にちぎり、切れていた。
どうしたんだ?そう聞いた時、彼はあげたんだ。そう言って笑った。
あの衝撃的な事実を後にして、始めて見た彼の心からの微笑みだった。

「軍人になって、片棒担いでる奴の言うことじゃネェだろ?」

その彼が怒っていた。
あの震撼させるような、嘲笑うかのような笑みを見せて。

「同じように殺してんだよ。
お前が、お前の家族を殺されたように…ナァ?」

彼の逆鱗に触れてしまった少年は、呆然と彼を見る。
筋金いりの猫かぶりの彼、偽ることを知っている彼、
きっと、ここでもあの時のように何だかんだ言って頼りになる整備士を
やっていたのだろう。

彼は、この世界を否定するために生きていると言うのに。

「貴方に何が分かるって言うんですか!??」

凍り付いた少年の頬が、赤く紅潮する。
自らも持て余す、憎悪をたぎらせて。

「知らネェよ」

だけど、底知れぬ闇のような彼の心には何も響かない。
どこまでも絶望に身を浸した彼には届かない。
その声に、泣きそうな色が含まれていると分かっていても、
うるさいとばかりに、彼は笑うだけだった。

「ただキャンキャン、犬みたくほざくお前が目障りなんだよ。」






この世界に捕われた奴の言葉なんて知らない。

この世界はぜったいなんかじゃないから、


2004年12月23日(木) Oh My God!

「神はいたよ。」

少女は微笑んだ。
















「祈りもしない。願いもしない。
ただ、神が存在していたなら、私は信じられたから。」

少女は言う。
怯むことなく、脅えることなく。

「縋りたいんじゃない。救いが欲しいわけじゃない。
確かに、そんな時もあるかしれない。
だけど、それよりも私は知りたかったんだ。」

ただ、淡々と言葉を紡ぐ。

「神がいるのか。」


















世界の終着駅という名の駅があった。
昇った太陽が落ちてくるさまが、まるで世界最後の日のように
美しく、儚くもある街にある駅だから、人々はそこを世界の終着駅と呼び、
そこから先の大地は世界の果てと呼んだ。
老婆は語る。
遠い昔に、1人の少女が世界の果てへと旅立った。と。




「およしよ。」

宿屋の女将が少女に言った。

「あそこは未開の地、何があるか分からないよ。」

少女の身を案じているのだろう。
心配そうに、引き止める女将に少女は申し訳なさそうに苦笑いした。

「女将さん、ありがと。
でも、私は行きたいんだ。」

その瞳には決意が強く表れいて、永年色んな人を見てきた女将には
自分では止められないと覚った。

「本当に行くのかい?」

これは最後の確認と言うように、女将は言う。

「うん。」

少女は笑った。

「ここで最後だから。」





これは少女の長い、長い旅の最後のお話し。
神を探して、世界中を旅した少女の過ごした物語り。


2004年12月22日(水) 君だけを



アイツが、俺のかわりに泣いてくれるから。




















“君だけを”

















俺の神さま

俺だけの神さま


俺に『俺』をくれた絶対の存在


『愛は容易くも憎しみに変わり、
 憎しみは、いつしか愛へと変わっていく。』


あぁ、そんなに憂えないで泣かないで

『人はなんと、移ろいやすく変わり行くのだろう…』

そんな表情をさせるこんな世界なんて、俺が壊してあげるから…















「なぁーんだ、あっけなくネェ?」

声もなく、立ち尽す人々の頭上から声が降ってきた。
日頃聞き慣れた声なのに、一瞬誰だか分からず警戒したように騒ぎだす。
地べたを這いずる人の群れにその硬質で、鋭い声の持ち主は音もなく降り立った。
そしてゾクリとするような、見たことのないような表情で笑った。
それまで見せていた人の良さそうな笑みが剥がれ落ちた。
残酷で、惨忍な姿をさらした。

「あれぇ?びっくりして開いた口も塞がらないってカァ??」

いつも着ている整備士ようの服に、自慢の膝裏まである長い三つ編みが揺れる。
クックックと音をたてて、笑う。

「ダメだねぇ〜、ダメダメですヨォ〜」

前半は呆れたように、後半はいつものポカした時に叱るように
すっとぼけた口調で話すその姿に、まさかと視線で人々は見た。

「大丈夫。ちゃーんと地獄へ送ってあげるから、
 だから、大人しく死んでくれネェ?」

その瞬間、艦内にけたたましいサイレン音が響き渡った。

「まさか…貴方なの?」

緊急事態のせいで、臨時艦長となった女が信じられないわとばかりと言った。
その声音には、どこかした懇願がまじる。

「ねぇ…貴方なの!?」

ニコリ
無言の笑顔は肯定か、否定か。
彼は彼らしからぬ笑いを浮かべ、狂った宴の幕をあげた。

「さぁ、さいごのショータイムの始まりさ」

その視線は虚空を漂い、どこか遠くに向けていることを
絶望にたたき落とされた地上の人々には分からい。















ねぇ、俺の神さま

世界でただ1人の俺だけの神さま


あなたのいないココで、どうして俺だけがココにいるのですか?














「もう、涙はでねぇんだよ。」

裏切りを罵る言葉に笑う。
最初に裏切ったのは、どっちだと言うように。

「アイツが、俺のかわりに泣いてくれないから
 悲しみも憎しみも、たまる一方。」
















否定されることで俺はこの世界に存在し続けてきた。

それならば、俺も否定しよう。

俺を否定することで存在し続けるこの世界を


受け入れることしかできなかった、俺の神さまに変わって…















「さぁ、逃げまどえ。
 これがせめてもの、さいごの慈悲だ」



2004年12月21日(火) Dear dearest




大切な人、いますか?




















・Dear dearest・


















君は今、どこにいるんだろう?











『スズ!』


深い、深い闇の中を2つの小柄な影が失踪する。
ウェーブのかかった長い髪の少女がストレートの長い髪の少女の手を引く。


『振り向いちゃ、ダメ!!』


ところどころ差し込む月の光によって照らされる。
ウェーブの髪の少女が叫ぶ。
金とも銀ともいえる不思議な色合いの髪の少女が叫んだ。
それにつられるように、ストレートの長い髪の少女、
漆黒の髪の少女との手がはなれた。


「リン!?」

『走って、スズ!!』


解き放たれた手、漆黒の髪の少女 スズはあらんかぎり手を伸ばす。


『バカね』


解き放った手、不思議な色合いの髪の少女 リンは苦笑した。













差し伸べた手は、取ってはくれなかったね。











2004年12月20日(月) 夢遊病 (Dreaminng Dreamer (DD))

彼女は笑って言った。

「わたし、夢見てるの。」


















.。○夢遊病.。○


2004年12月19日(日) one's own only




堕天にもっとも近き、天使がいた。
闇に染まりきることのできない、堕天使がいた。


















光と闇の世界のはざまで、そこに1つだけの存在がいた。


『誰?』


それは異形の姿をした異端の存在。
床にちらばる長い銀の髪、それだけが身体をまとわりつくようで、
衣服を何一つ纏わないその身体には、あちらこちらから不思議なほど透明で、
それでいてどこか柔らかな羽毛の翼が生えている。
そして何より、その翼には目のようなものがあった。

それはどこか孔雀の羽を連想させる翼だった。


『誰?』


無機質で、それでいて、どこか柔らかな音が聞こえてくる。
否、それは声とは違う頭に直接響いてくる声なき声。


「知らない。」


問い、返された言葉にその存在は首を傾げた。
その拍子にふわりと揺れる長い銀の髪の間に、
能面のように作り物めいた顔と、隠された剃刀色の瞳があらわになる。


『知らない?』

「そう、でも貴方は知っているよ。   セラフィム」


天使でも、堕天使でもない。
この世でただ1つ、たった1人の存在は笑った。


「セラフ」


その声に笑った。


















堕天にもっとも近き天使がいた。
闇に染まりきることのない堕天使がいた。

まばゆい金の光の加護も、
包み込む黒の闇の加護も、

その天使は得る事ができなかった。
その堕天使は得る事をしなかった。

それ故に、その存在はどちらにも受け入れられることはなく。
それ故に、その存在はどちらにもなれなかった。




そうして、いつしかその存在は忘れ去られていった。





2004年12月16日(木) きみへ辿り着く道

出来れば、きみのすべてが欲しかった。




















・きみへ辿り着く道・
















ローズン・フィーメーラは僕にとって、とても大事な女性(ヒト)だった。
世の中に存在するどんなに美しい女性も、彼女に出会った僕にとっては
すべてが同じで、だから僕は平等に女性を優しく愛した。
女性は宝だと、尊敬する祖母に言われたから。
だけど、その行為か僕のとても大事な女性を追い詰めた。


「あんたは馬鹿よ」

姉のマルグリットは、鋭い鴬茶の瞳を細め言った。

「あの娘(コ)は言ってしまいました」

姉のジュリエッタは、鈍い鶸茶の瞳を潤ませて言った。


彼女のいなくなった部屋で、僕はやっとすべてを知った。
僕は遅過ぎたのだ。
彼女と他の部屋とをつなぐ居間の暖炉では、炎の悪魔が背を向けて
その炎を頼りな気にゆらゆらと揺らめかせていた。


「ルカシクファー、君は知っていたの?」


ルカシクファーは答えない。
けれど、炎がほんの一瞬小さくしぼんだ。


「そっか…

 ……そっかぁ…」


自分があまりにも愚かで、


「ハハ…」


いつのまにか、泣き笑いのような表情(カオ)になっていた。



君は言った。
守ると言った、僕に対して。



「私は私いがいの誰かを信じないわ。」


それでもなお守ると言った僕に、君は言った。


「信じないわ。」


君はそう言って微笑んだ。



あの時から、君は知っていたんだね。
あの時から、君は分かっていたんだね。
あの時よりもずっと前から、君は選んでいたんだね。
あの時よりもずっと前から、君は決めていたんだね。


「私は私の生きたいように、生きるわ。」


もう随分と昔に、あの丘で君は言っていたよね。


「例えそれがどんな道でも、」


また、花咲く季節に訪れようと言って。
それっきり。


「私の選んだ道だから。」


いつでも君は、僕の隣で笑っていたから。
僕はいつでも叶うと、君との約束をいつのまにか忘れてしまった。

君はいつでも、いつまでもその約束を待ってくれていたのに。
君は僕を信じていてくれていたのに。
君は僕を守ってくれていたのに。
君の優しさに、僕は甘えていたんだ。



「ねぇ、貴方は?」


君は行ってしまった。
この世界の果ての、さらに向こう側に。


「貴方はどういう風に生きるのかしら?」




君は遠いところに行ってしまった。


2004年12月15日(水) 私は『私』いがいの誰かを信じない。

大切な言葉は胸の奥にしまって、
私は私いがいの誰かを信じないと言いました。




















・私は『私』いがいの誰かを信じない。・



















「守るから、」

彼は私の両の手を握りしめて、滅多に見せない真剣な表情(カオ)で言った。

「僕は君を守るから。」

私はそれに微笑んだ。






ゲホゲホ…

ひときわ月が輝く、星がさんさんと煌めいて、
冬特有の空気は、夜の帳につつまれた世界。
少女は1人、明かりもつけず俯いていた。
震える肩は寒さではなく、
辺りには怪我をしたわけではないのに血の香りが漂う。

ゲホゲホゲホ…

ふいに暖炉にボッと火がついた。
あおい、青い炎を光源に部屋がうっすらと明るく、温かくなる。

「ローズン、だいじょうぶぅ?」

暖炉の中から舌ったらずな声が聞こえてきた。
その声に少女は申し訳なさそうに、謝罪した。

「ごめんなさい、ルカシクファー。
 起こしてしまったわね。」

「ううん。いいのぉ。
 だってローズン苦しそぉ。
 アタシ、とっても心配。」

声を発しているのは暖炉の中にいるのはあおい、青い炎。
この部屋の家主と契約を交わした蒼い炎の悪魔 ルカシクファー、
本来なら家主以外の人間のことなど気にする必要はないのに、
青い炎に浮かぶ、ギョロリとした藍の大きな目は
ゆらゆら揺らめいて、暖炉の中から心配そうに少女を見上げていた。

「ありがとう」

少女はうっすらと微笑んで、近くに並べてある薪を一本手にとり、
暖炉の目の前にしゃがみ込んで、ルカシクファーに渡した。
ルカシクファーは薪を受け取り、照れかくしのようにそれをギュッと抱きしめる。
青い炎がボッと一瞬、大きく燃え上がった。
だけど、すぐにその炎は頼りな気に小さくしぼみ、
ルカシクファーは覗き込むように、少女を見上げた。

「ローズン、ローズン。
 アタシ、貴方がとっても心配。」

2回同じ言葉を繰り返すのは、この悪魔の癖。
悪魔はその身体に流れる知識の中に、
ありとあらゆるすべての魔法を記憶し、記録している。
だから、分かったのだろう。

「今の貴方、ボロボロなのぉ。
 呪いの力で、魔法ちゃんと使うことができないのぉ」

少女は悲しそうに笑った。

「お願い。彼には言わないで。」

「どうして?
 ローズン、ローズン。
 このままでは貴方、死んでしまうのぉ」

青い火の粉が、ひらひらと舞う。
元から青白い顔が、それに照らされさらに蒼白になった。

「だから、余計にお願い。
 彼は自分を責めてしまうわ。」

その少女の真剣で、どこか必死さを漂わせる言葉に、
ルカシクファーはただ黙って頷くことしかなかった。

「ありがとう」

少女は心からの礼を述べて、重い身体を引きずるように
与えられた部屋に戻っていった。


「ローズン、ローズン。
 貴方は信じてないのぉ?」

残されたルクシファーは寂しそうに、悲しそうに見届け、
やがて炎はボッと消えた。
ポツリと呟いた言葉は、空気に溶けた。


2004年12月13日(月) 黄昏ヘブン

さようなら

さようなら


すべてに別れを告げて

わたしは消えてしまおうか?



















<黄昏ヘブン>


















「あの人はどこですか?」

遠征帰ってくると、門の所に見知らぬ人影が2つ立っている。
神々しいまでの色彩を持った幼い子供に僕らは目を奪われた。

「あの人はどこですか?」

星を宿したような瞳が、するどく斬り付けるように見る。
ひやりとした。
その問いに、ふいに数日前僕らの前から姿を消したあの人を思い出す。
いな、姿を消さなければならないほどに追い詰めてしまった人を…

「織(オリ)姫」

睨む少年を窘めるように、落ち着いた声の少年が割って入った。

「少しは抑えなさい」

どこまでも淡々したその声に、何の感情も感じられない。
織姫と呼ばれた、星のような煌めきの瞳を持つ少年は思うところが
あるのだろう、不承不承だが頷いた。

「初めまして、都市同盟の皆様。
 私(わたくし)の名は佐保(サホ)姫、そしてこちらは織姫。
 私(わたくし)どもはこちらの居城におられるお方をお向いに参りました」

軽く、頭を下げそう言う少年には申し分程度に作ったような
微笑みが浮かんでいる。


「おりますのでしょう?」

次の週間壮絶に少年は笑う。




「御方は。竜田(タツタ)の姫はどちらに?」


2004年12月09日(木) 人形と私(ワタクシ)  ワールドアナザ−ノックトリップ(略してWantシリーズ))

目をあけると、そこは知らない風景

あぁ、ここはどこ?




















適当にひとつにまとめた、髪の毛がぱらぱらと落ちる。
着古したタートルネックは袖のほうがほつれて、
太ももの長さの黒いベロアのスカートからはだふだふとした
ジャージがのぞく、その姿はまさに部屋着のまんま。
そんなかっこうで気がつけば、見知らぬ地にいた。
屋外なのに何故か部屋着のまま。
しかも、足下はスリッパで。


「どこやねん。」


あまりの驚きに、力のぬけたような声しかでなかった。

西暦20××年、二十歳の式を迎える目前に何故だか分からないが、
目をひらくとそこは不思議の国でした。

戸籍もなにもないって言うのにどうしろって言うんですか?
どこぞの誰か知らないが、アフターケアってことば知ってますか?


「ふふ」


こぼれるの自棄っぱちな声音。
かさかさに渇いた唇、リップも何もつけていないから
切れてそこからほんのりと血の香りと味がする。


(あぁ、なんてリアルな夢なんだろう…。)


眼前に広がる光景は、よくテレビで見たアフリカのサバンナのような風景、
風がザアァァ−っと吹くと、さらされた黄土の大地が流れる。
申し分程度に、生えた草木はどこか色褪せていて。


(ここは一体、何所なんだろう?)


ほんの少し、冷静になった頭で考えてみた。
目をこらして見ても、もとからの視力の弱い目で、
しかも眼鏡のその目に写る景色は、悪化したせいで遠くがぼやけて見える。

仕方なく、もう一度冷静に今度は近くを見渡した。
右を見ても、左を見ても、同じような景色が続いているだけ。


「日本じゃない…?」


冷静を通り過ぎて、フリーズした。
冷やし過ぎた思考に頭をやられ、首を振っては見るが、
血の気のぬけた顔色は戻るどころかさらに青白くなっていく。


「ふふふふ…」

(きっと、気付かぬ間に世界の反対側に飛んでいくなんて…)


ガクっと下を向くとその拍子に髪がばさばさと落ち、
眼鏡がガシャンと音をたてて地面に激突した。



「ふふ…」


なおも、こぼれる笑いは止まらない。
精神的なショックに黄昏れて立ち尽していると、
ふいに誰かに呼ばれた気がした。
はっとして顔をあげると、目線ナナメ45度の距離に
今朝も抱きしめて眠っていた愛用の人形が2匹何故かそこに居た。


2004年12月02日(木) ライト・ライト・エンドノワール

人が気付くのはいつも一番最後、
でもだからって、言い逃げだなんて酷いよ。


















“ライト・ライト・エンドノワール”



















彼女は言った。

「こんな人生死んでもいいかな。」

そんな風に言ってしまう彼女が、とても悲しい人に見えた。
とても美しい造作なのに、どこか人形めいた彼女の渇いた瞳に、
僕は彼女に笑ってほしいと思った。

その心が、どんなに残酷だったか知らなかった。無知な僕。

「そんなこといわないで。」

僕の声に、彼女の渇いた瞳がごろごろと揺れた。




「どうして、そんなに投げやりなの。」

拙い先入観、才能があるのにやる気のない彼女に僕は言った。

「君ならもっと上手くやれるじゃないか!」

押し付けた価値観、君に抱いた偶像という名の塗り固められた言葉たち。
君はそれに何とも思わないように聞いている。
それは彼女が何よりも優しいから、優しいだけだから、
でも、そんなことに僕はちっとも気付けなかった。

「だから?」

彼女の言葉を自分の言い様に聞いて、
彼女を詰りたいから、都合のいいようにいつだって聞いていた。

「だから?僕のこと馬鹿にしてるの?」

馬鹿にしていたのは、僕。
本当の愚かものだったのも僕だった。


彼女の優しさに気付くのはいつだって、後。
すべてが終わって通り過ぎた、後。
知らなかったすめば、世界はなんて簡潔なんだろう。
ごめんなさいで済めば、世界はなんて滞りなく進むんだろう。

「知ってた?あの人は努力を努力とも思わないくらい、
 すべてを注ぎ込んで愛していたんだよ。」

愛はそそがれるものだと誰かがいった。
見返りなぞ求めず、ただひたすら捧げるだけ。

「神への信仰に似ているね?」

無償の愛だけが、この世でもっとも一番美しい形なのかもしれない。
彼女のすべては捧げられるだけで終わっていたのかもしれない。

だから、彼女は特別だったのかもしれない。

こんな世界だから、人はすぐに欲望に片寄る。
こんな世界だから、人はすぐに大切なものを見失う。
この世に得だけのものなんて、存在しない。
いつだって、そのすぐ側にはそれに見合うだけの損が存在している。

彼女は生きている。
捧げるだけの人生に存在しながら、
その心の中では、そんな人生に疑問を抱きながら、
彼女はそれでもそれが自分の人生だから、生きている。
迷いながら、彷徨いながら。

「何か1つ一生懸命に生きている生き方が、
 たまに嫌になるの。


 ううん。最初から間違ってしまったのかもしれない。」

その時から、彼女の人生の価値は彼女にとってどうでもよいものに
なってしまったのかもしれない。
誰もが羨む人生にあっても、彼女はちっとも喜ばない。
自分で縛ってしまった人生に、失敗したかなと。他人事のように思うだけ、
だけど、それでも彼女はその道を歩いているからどこにも逃げられない。

引かれたレールの上を走る人生はほんとうに幸せ?
人生にレールを引くこと事態が、彼女にとっては苦痛だったのに。

「こんな人生死んでもいいかな。」

「そんなこといわないで。」

それから、何ににも縛られなくなった彼女にとって
縛られた僕らの言葉なんて何の意味もなさないんだろう。

「そんなことってどんなこと?」

うっすらと笑う、その壮絶な表情に僕は泣いた。

あぁ、僕はなんにも分かっていないのかもしれない。
否、僕になんいも分かる事ができないのだろう。

「あなたになんて私は分からない。
 それは、私が私を分からないように、
 私があなたを分からないのと同じなように。」

心が抉られた。
ただ、涙もでなくなるほど思って、悩んだ彼女の瞳が
ごろごろと、それでも酷く揺れる心に反応して揺れるのを見て、
今になって、彼女を深く傷つけたろうだということにやっと気付いた。


そして僕はまた、彼女の言葉で一番傷付いているのが彼女自身だなんて
ちっとも気付けないのだ。

いつだって気付くのは、後。
すべてが終わって通り過ぎた、後。



悔いるだけが、僕の人生だった。


2004年12月01日(水) 私という名の不協和音

壊したいと、思ったことがある。

壊して、なくなってしまえばいいのに、


だけどそれは、酷く悲しい気持ち。













【不協和音】

















あぁ、乱れている。


胸に手を当てて、心臓の音を聞く。
途切れがちに聞こえるのは、気のせいなのだろうか?

腕に手の先を当てる、脈を計ってみる。
腕に耳を当てる。


あぁ、私は生きているんだ。


ふとした拍子にそんなことを思う時がある。
生きているんだから、当たり前の筈なのに何故だかそう思う時がある。
でも、私はどうして生きているのか分からない。
生きててもどうしようもないと、思う。
そのどうしようもないは、きっとあきらめで最高に惨めな称号で、
私はきっと人生という名のレースに出る事ができなかったのだろう。


壊れてしまえ、そう思ったことがある。
壊れてしまえばばいい、そうしたら私はきっと笑えるから。


心も身体も粉々に、そして私は流砂となって時を刻む。
変わらぬ時を、
思い嘆き、
そうして私は大河の一滴となろうとも、そこに流れ続ける。
埋もれた私を
溺れた私を
それでも私は私として、ただあるがままに
掘って
掬って
くださいませんか?





身体の中を流れる水に、鼓動が重なる。

あぁ、私はフル可動しているんだね。
私は生きているんだね。










ほんとうに?


ナナナ

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