lucky seventh
DiaryINDEX|past|will
私が愛に、泣いている。
非生産的な行為に理由を求めて、 私は私の愛を正当化する。
「愛してる。」
めったに言わない言葉を間をおいて言うと、 満足そうに人は笑う。 疑いもしない、甘い言葉に惑わされる。 その様は砂糖にむらがる蟻のよう、 我ながらひねていると分かっているけど、 それを苦笑することしかできない。 私は可笑しいのだろうか?
「愛している。」
人は笑う。 その言葉に嬉しそうに、 人は泣く。 その言葉に嬉しそうに、
愛は暗い 私は泣く。
綺麗だね。雪みたいだ。 あの人は髪をひとふさ摘んで、言った。
・このシロで隠して。
雪を綺麗だなんて思ったことはなかった。 寒い冬の季節はビルのはざまで暖をとって、それでも冷える手先を 白い息を吹きかけて、ただただ耐え忍んでいた。 寒い冬という季節は、生きていく上でもっとも過酷な時期をしていて、 綺麗とかそういうんじゃなくて、ただ身体に降り積もる氷の欠片が 体温を奪い、眠ればそれは死を意味していた。
こんな風に唐突にそんなことを考えたのはあの人のせいだ。 あの人がふいに言ったあの言葉。 いつものように大きなソファーの上で本読むあの人が、 ふいに窓の外を見て言った。
「雪だ」
その言葉に隣にねそべりながらあの人の方を向いた。 だから、どうかしたの?くらいの気安さで。 目が合って、あの人を笑う。
「綺麗だね。雪みたいだ。」
そういって、あの人は髪をひとふさ摘んで、言った。 いつもの唐突な行動に戸惑い、 それ以上にそんな風に言われたのは初めてで、 どうすればいいのか分からなかった。 身じろぎも出来ずに、固まってしまった。
「雪はね。すべてを隠してくれるんだ。」
あの人はそういって笑った。
「あぁ、でもアレかな?」
そうしてあの人はさらに笑う。 よりいっそう、笑う。
「雪を欺くような」
そっちの方が似合うね。
いつだって消えそうな自分を、雪はさらに消そうとするかのように降り積もる。 けれどあの人はそのシロと同じくらい、白いと言った。
このシロでは隠せない。
そうやって、僕らはナァナァと生きてきた。
・弱い心を飼うケモノ・
見上げた夜空に紫煙が浮かぶ。 時刻は深夜、ここな眠りにおちたベットタウンのベランダで、 そこから見える風景に目を細めた。
「世界が眠りにつけばいいのに、」
片膝を抱え、地べたにすわりながら、そう独りでごちる。 片手には火のついた煙草、もう一方の手にビールを持って、 ただ、自分だけが起きているような錯覚を感じる。 それが現実になることはないのに、そうなったらと考える。 ほてった身体が夜風にあたる。 それだけでほんの少し心が軽くなる。 ふっと少しの間だけ、自分をしばる重圧から逃れられたような気がした。
「そんなことアルわけないのにな。」
そうしてほんの瞬きの間の解放の後に、 すぐさま地面にしばりつけられるような、そんな衝動。 自嘲する。
「らしくない…らしくないったらありゃしナイ。」
指で弄んだ煙草から灰がおちる。 その手を地面におろしグッと揉み消した。
「何やってんだか…」
片手をおろしたまま、抱えた片膝にことりと額をあてた。 冷たい夜風が気持ちいい。 目を閉じると、喧噪のかわり聞こえる草木の風にゆれる音、 これだけはいつまでも変わらない。 例えどこに居ようと、どこに行こうと聞こえる音に、 どうしようもない程の安堵を感じる。
「かえりたい。」
どこに?
「かえりたい」
あふれてくる感情に、こぼれる涙は何を意味するのだろう? 都会のせまい空のように、ベランダの外に広がる空はなんともちっぽけで、 あのオーロラのように広大な空を、 海に落ちる太陽の見える水平線にどこまでも続く荒野の地平線。 世界はこんない広いのに、見える風景はこんなにも狭い。 切り捨ててしまえば、もう泣くことはないだろう。 割り切ってしまえば、何かを失ってしまいそうで堪え難い。
「かえる場所、ココだろ?」
目を閉じると、見たこともない風景が広がる。 草木にゆらす風の音と、照らす月とほとんど見えない星々だけの世界が、 閉じられて見えない目の中に息づいている。
「かえる場所はココ(だけ)なんだ」
そうでなければいいのにと思ったのは、何度目だろう? 弱い心はここから抜け出すことも、 ここに治まることも拒んで、繰り返すだけ。
すべてが眠りにおちて、そして、自分1人だけ取り残されたら… この弱い心を受け入れることは赦されますか?
2005年02月14日(月) |
こんな僕のバレンタインデー� |
女の子達が色めき立つ、ピンク色の季節がやってきた。 そんな中、何故だか僕もそんな女の子の中に紛れ込んでいる。 何故?
つい前日、幼馴染みが帰ってきた。 日本人にしては色素の薄い茶色の髪に、誰が見ても完璧と言われるような美貌と 造形美と言ってもいいバランスのとれた肢体を有した稀有な幼馴染みは、 小学校から中学校に上がる前に、遠い異国の地に旅立った。 僕ともう1人の幼馴染みに、すぐにスキップして帰ってくる。 と、当たり前のように宣言した美貌の幼馴染みは、 めでたく今年、中学3年生を目前にせまったある日にその宣言通りに帰ってきた。 レイくんはリョ-姉さま(レイくんの実の姉)とよく似た笑顔で言った。
「今日からクラスメートだね」
同じ学校で同じクラスに転入してきた。(故意にやったのは明白だ) ちなみにすごいことに席は隣だった。(これは偶然だ) 少女のように可愛らしかったレイくんは、その面影を残したまま ほんの少しだけ大人になって、その回りを巻き込む力だけは前にもまして 磨きがかかりパワーアップしていた。 学校生活に少々問題を抱えていた僕をあっという間に解決させてしまったのだ。 そこに至までには、様々な騒ぎと混乱と恐怖があったが、 今はそこは割愛させていただく。 そんなドタバタに対して、 もう1人の幼馴染みであるキョ-ちゃんは感心したように言っていた。
「今だお前ヘの愛は変わらず、だな。」
愛されてるな。 そう言ってぽんぽんと僕の頭を撫でてくれた。 ずっと、ずっと僕の身体についた痣や傷を心配していたのだろう。 自分1人では、僕を守れないと悩んでいたのだろう。 キョ-ちゃんは優しいから、心を痛める。 ほんとうに僕は愛されているんだと実感させられた。
そんなわけで、僕の精一杯の感謝を伝えるべく、 僕の数少ない特技で恐れ多くもリョ-姉さまに太鼓判をおしてもらった 料理で、思いっきり愛をこめてみようと思った。 バレンタインに便乗して。
もちろん僕なんかが贈らなくても、容姿端麗・眉目秀麗な2人には 言葉通り山のようにチョコをもらうのだろうけど…
2005年02月13日(日) |
そうするしかなかった物語り |
選べる未来はいつも、ここからでは狭まったトンネルのように見渡せず、 まるで流されるように決めていた。 それでもいつのまにかどこか遠くを目指していたはずなのに、 行き止まりへとぶちあたってしまうのだ。
誰かの呼ぶ声に振り向いても、 それは条件反射であって本当は聞こえてはいない。 そうして、いつのもにかその声を聞こえないフリ、無視するスベを覚えた。
「海鳴(ウナリ)くんはいつもツマンナソウだね」
喫茶店の一角で、アイスティーにガムシロを入れながら 年のわりには幼く見えるような顔で、そいつは少女のように笑った。
「人生にツカレタって顔に書いてあるように、見えるよ?」
2つにくくったウエーブのついた髪、ばっちり化粧をした顔、 丹念に色づけたであろう指先に、 誰が見ても流行だという服に身を包んだそいつは、 そうやって自分を周囲に溶けこましながら、意味もなく笑う。 大学で同じクラスの仲間が、何も悩みがなさそうでいいなぁと言った笑いで。
「海鳴くんはとても素直だね」
私はそんな風にできないよ。
そいつは笑う。 そうすれば、誰も心配しないから。 そうすれば、誰も踏み込んでこないから。 そして、ほんの少しの望みにすがりつくように。 「笑う角には福来る」 そいったそいつは、いつもと違って恐ろしく真面目だった。 けれどその話しを聞きながら思い出したのはまったく別の、 おとぎ話しの『パンドラの箱』だった。 あらゆる疫災の後に残った希望。 しかし、それこそが最強災厄の疫災だと言ったやつがいた。 よく言ったもんだ。
「お前は可哀想な奴なのか?」
気が付けば、いつのまにか開けなくてもいい箱を開けてしまったのは いつだっただろう? 考えることが好きで、知っていくことが好きで、 そして、いつのまにか気付いてしまった。
「そんな言葉でニゲたくなんてないよ」
もがいて、抗って そいつは今も浸かりきることに躊躇する。 目に見えないソコに怯えて、 ソコに屈することをよしとぜす、頑に拒む。 強い微笑みだった。
「お前は凄いな」
止めてしまった自分とは違う。
けれど、そいつは首を振る。 それを認めるのを拒むように、 違うんだと確信するように、ごく一部の人にしかさらさない素顔で。
「オナジだよ。私も海鳴くんとオナジなんだよ。 ただ海鳴くんと私はチガウから、選択肢も選択もチガウんだよ」
だからこそ、お互いがお互いを羨ましくてしょうがない。 そいつにはできなかった選択肢の選択をもし自分ができたなら、と 人生にしたら、してればほど無意味なものはない。 選んでしまったものをやり直すことはできても、 その時に戻って選びなおすことはできないのだから。 理屈では分かっている。 それでも、できないからこそ人はよりいっそう思うのだ。
「だがら、お前は凄いんだ」
選びたかった未来に思いをはせる。 自分は好き好んでつまらない顔をしているわけじゃない。 本当につまらないのだ。 何もかもがつまらなく。 自分もそれ以外のすべても煩わしいと思うのに、 それを切り捨てるほど強くはなれなかった。 けれどそれを大切にできるほど強くもなれなかった。 なのに、目の前にそいつは笑ってすべてを切り捨てた。 いらないんだと、私は支えは作らないと。 素顔を曝さないことで、本当の意味で誰かを寄せつけることはしなかった。 仲の良い特定のグループの中に所属せず、 それでもそれを感じさせるようなことをさせやしなかった。 大勢の中で、そいつは独りだった。 誰かにすがりついてしまいそうな自分とは違っていた。
「お前になりたかった」
「私は海鳴くんにナリタカッタよ」
でも、もうそうするしかなかったんだ。
:::::::: すがりつく自分と すがりつか(け)なかった君。
1人で生きられない俺と 独りで生きていく私。
ナナナ
|