lucky seventh
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2004年06月12日(土) この空の果てに




飛んでいこう

この空の果てに


どこまでも、

いつまでも、


最果ての地をこえ

あの空の果てまで








2004年06月11日(金) ふりほどいた手、いえなかった約束3(無色シリーズ)



目を閉じて、すりぬけていく風に指を絡ませた。

あぁ、どうかこの思いが君を守り続けていますように

祈りは、
願いは、

それだけでは決して叶わないと知っていたのに…



どうしては人は、そう思わずにはおられないのだろうか?















・ふりほどいた手、いえなかった約束・

















「何をしている」

丘の上で、風に吹かれている闇にむかって男は口をひらいた。
さらさらと美しい髪は声がかかると同時にほんの少し反応をしめし、揺れただけだった。

「何をしている」

根気強く、男は語りかけた。
元来口数の多い方ではないのだろうことは、出会って少しの間で男にはそれが分かった。
あの炎に包まれた村の時に喋って以来、闇は喋り過ぎたとばかりに口をとじていた。
そうして時折、ぽつりぽつりと溢れるように言葉をこぼす。
しゅうじゅうするように間をおいて、ソレは口をひらいた。

「聞いていた…」

「?」

「風に、今でも守られているか…と」

しかし、その言葉の大半は主語はぬけているようものだった。
表情の抜け落ちたような能面の顔にはなんの感情もうかがうことはできず、
その真意を計り知ることは、いかに男が並々ならぬ軍人でも不可能であった。
ただ、こうして語る言葉の端々には何かが込められているのだけは何となく感じ取れた。

「そうか」

風がふわりと慰めるように、ソレの髪をすいている。
黙ってソレは優しい風の手に身をあずけていた。
その瞳にはなんの感情も浮かばず、ただただ遠い何処かを見つめているだけで、
今にも消えてしまいそうなほどその存在感は希薄になっていた。
溶けて消えてしまうそううな闇に、男は手のを伸ばした。

「お前は…」

闇は微動だにしない、ただその瞳が如実に動揺をあらわにしていた。

「イ…ラァ…」

声にならない言葉で誰かの名前を呼ぶ。
男はその瞬間、細い腕を掴み自らの胸の中に闇をかき抱いた。
その強い力にソレは呻いた。

「お前は…誰を思っている」

すっと、耳によせられた唇によって呟かれた音に腕の中のソレは震えた。

「お前は誰を俺に重ねている」

見透かされたその言葉にさめたように闇は男を突き飛ばした。
すべて、捨て去るかのように。

「知らない」

闇は心の中で何度も愛おしい召喚主の名を呼ぶ。

「知らない」

かたくななソレの態度に、男は口付けた。



2004年06月10日(木) きみよ、光となれ








「うらやましいなぁ…」

肘をつきながら、感歎するように言う彼の仕種に私は笑った。
現在の時刻は日が真上にのぼりかけた午前11時過ぎ、
朝食の時間はとっくに過ぎているので、カフェにはブランチを楽しむ人影がまばらにあるだけだった。

「何、笑ってんだよ。」

私の話しに素直にそう言う人は珍しかった。
そんな風に言える彼に私は嬉しくて笑ってしまった。
ストローを口に加え、すねている彼はあの頃と変わらない少年のようで、
眩しいものを見るかのように私は目を細めた。

彼はヒカリなんだ。

「あぁ!またバカなこと考えてるんだろ!!」

さっきとうって変わって何だか照れたように彼は怒鳴った。
精神感応(テレパシー)の適合者である彼にとっては抑えているとはいえ、
長い付き合いもあって私の思っていることは大体分かるらしい。
ほんのり赤く染まった顔をかくすように、自分の髪をガシガシと彼はかき混ぜた。

「そんな羨ましいことばっかりでもないんだけどね。」

クスクスとこぼれる声を止めようともせず、私は笑いながら話しを元に戻した。
これ以上続けると本題からそれる上に、お願いしてもいないのに、
彼が1人でどつぼに入るのが目に見えていたからだ。

「聖なる証。って崇めたれられるのはまぁいいとして、
 だからって羨ましがられてもねぇ。けっこう痛いんだよコレ。」

そうやって、手の平を彼の方にズイっと押し出した。
それを見た途端、彼はウゲッと嫌そうに身を引いてイテっと小さく呻いた。
私の手のグロさと、見たことによって彼の力が無意識に働きかけ、
痛みがダイレクトに流れ込んできたんだろう。
ここまではっきりと態度に表わす人は珍しく、私はまた笑ってしまった。

「ってか、痛みが尋常じゃねぇだろ…」

笑う私に、彼は不機嫌そうに言った。
いっけん怒っても見えるその態度は、実は私を心配してのものだと知っている。
そう、たしかに尋常ではない痛みなのだ。
これはそれを持つものにしか分からない痛みと、そして重みを持っているのだ。
こちらをうかがうように見る彼を安心させるように微笑んで、私は言った。

「人が望むものは必ずしも誰かが望むものと限らないように、
 私が望むものも同じだとは限られない。」

「違いねぇ」

そういって納得したように頷く彼もまた、自らのその力でたくさん苦しんできたんのだろう。
その横顔は、どこか大人びていた。

「だが俺らは、望む望まないにしろ手に入れちまった。
 だからもう、否定しても何も始らないところにまで来ちまったんだ。」

私を見つめる瞳は強く、優しい。
彼はなんて強いのだろうかと私は改めて思った。
傷付いて、傷付いた分だけ彼は強くなる。
そのすべてをバネにして、まるでそれは弱くては生きていけなかったかのように、
悲しい強さを感じた。

「受け入れる、しかなかったのかもね。」

私の言葉にほんの少し悲しそうに彼は笑い、
けれどその悲しみを満面の笑みに変え、自信満々に彼は言う。

「あぁ。
 でも、それを選んだのは俺自身んだ。」

それはふきったような清清しいものだった。


「少なくとも、俺はそう思いたい。
 そう思うことは力になる。」










悪夢は終わらない。



この身をつらぬく光の刃

手の平にくいこむ幻視の痛み

さいなまれる


悲鳴をのみこむ

これは夢だ



されどさめない夢がないように
また、終わらぬ悪夢もないのだろう。




2004年06月07日(月) ゆめに思いを、はせた。 (黒衣の花嫁)

あの人はいつも黒い衣服を身にまとっていた。

おれが生まれたすでにその時、あの人は喪に服していたんだ。












第一章 ゆめに思いを、はせた。














長いウィッグの黒髪が一歩歩くたびにさらさらとゆれる。
男にしては長めのまつげにふちどられた宝石のような瞳は、
空をあらわすセルリアンブルー。
ダークブルーのスーツは紛れもない『青』の証、そして今日はいつもと違い
その黒のブーツは通所の物に比べてヒールがあった。

「隊長、お疲れさんです♪」

貸し与えられた部屋のドアをあけれると、そこにはすでに先客が来ていた。
黄葉した銀杏のような髪と新緑の瞳をもった彼の部下は楽しそうに言った。

「いやぁ〜相も変わらず見事な化けっぷりですね♪」

「化けたなんて失礼だね…」

脱力したように隊長と呼ばれた少年は、自分の部下を見やった。
楽しそうにソファーで寝転ぶさまは思わず給料ドロボーと叫びたくなる態度で、

「頼んだこと、ちゃんとやっといてくれた?」

念をおしたくもなる。
急ぎの用事だからとつい先日頼んだ仕事は、この部下とその相方に一任していた。
さる歌姫の警護のための特注のプログラミング、彼がわざわざこんな格好をして
ここに訪れたのはそんな理由からだった。

「勿の論ですとも。ちゃーんとチルチルとミチルに組み込んでおきました!」

自慢げに笑う部下の肩に、チルチルとミチルと付けられた手の平サイズの
美しい青い翼をもつ鳥型の人工知能ロボットが大人しく鎮座していた。

「チルチル、ミチル」

少年がそっと手を上げながら呼ぶと、チルチルはその上げられてた手に
ミチルは肩にそっと飛んでおりた。

「うん、異常はないみたいだね」

嬉しそうに、小鳥を見る少年の瞳はとても満足そうだった。
そんな態度に腑に落ちないというように、彼の部下は彼を見た。

「隊長、一体なにをそんなに警戒しているんですか?」

たかだか護衛、しかもそれは戦闘とは一切無縁であるはずの民間船で、
確かにそこにはお偉いさんの娘である歌姫が乗るのだが、
それにしては少し警戒し過ぎではないのだろうか?

そんな部下の推測に、彼は不敵に言った。

「荒れるよ」

それは確信だった。
何かを待ち望むかのように、唇にひかれた真っ赤なルージュが弧をえがいた。

彼は笑っていた。


そんな自分の上司の態度の迫りくる嵐の予感に、

(荒れそうだ…)

部下の脳裏には荒れ狂う仲間たちの鬼の形相が浮かんでは消えた。


「って事で留守番よろしく!」






2004年06月06日(日) 氷の棺 三つ子シリーズ

たった1つの真実をみつけるために、

人は、どれほどものを犠牲にしていくんだろう?


私には分からない。



















『氷の棺』












大人になればなるほど、忘れていくことが増えていく。
大人になればなるほど、それを受け入れていく。

だから、せめて覚えておこう。

君はそう微笑んだ。




「僕らは1つの魂が3つに割れた」

よく似た面差しのの3人の子供、その中で大人びた声の音が響く。

「だから、俺らは不完全?」

強い意志をひめた声の音は面白そうに、それでいてどこか楽しいそうに
その声に応える。
大人びた声の持ち主は、その反応に苦笑で返した。

「アツル、楽しそうだね?」

「アツミは何でもかんでも難しく考え過ぎだ。」

同じ魂から3つに別れて生まれてきた子供たちは、同じ顔で、違う表情で笑う。

「アツコもそう思うだろ?」

アツルはそう言って、半身ではない片割れを見た。
同音なのに、違った意味をもつ3人の子供は3つでやっと1つだった。
だからこそ、何よりも強い絆と証を持っていた。

「アツル」

アツミの窘めるような声も、3人しかいないここでならアツルにとっては
なんの抑止にもならない。


いつもそうだった。
アツルは強く、だからこそとても弱かった。
キラキラした瞳は切れそうなほど鋭く、まわりに溶け込むことはない色をはっきりと浮き上がらせていた。
だれもがその色から視線を逸らせることはできなかった。
強烈で圧倒的な存在感、それゆえに異質だった。

アツミは弱く、だからこそとても強かった。
ランランとした瞳はおぼろげで鈍く、溶け込むことでその魅力がいっそう色鮮やかに高まった。
それはまるで回りが鮮やかであればあるほど深みを帯びていく色彩。
魔性のように捕らえて放さない誘惑のような存在感、それゆえに異端だった。

そして、アツコはそのどちらでもなかった。
その存在感は確かに存在するのに、まるで見えないかのように、
空気のようにあって当たり前のようだった。
そして、まるで中和するかのように2人の存在を緩和していた。


「さぁ?」

アツコはいつも曖昧だった。
肯定も否定もしない、ただすべてを受け入れ、すべてを拒絶していた。
それゆえに、彼女をよく知らない人にとってはその存在は、
未知的で、時に計りしれない者に対しての様々な感情の色を与えた。

「さぁ?って…」

アツルはむくれたようにアツコを見た。
アツミもちょっとガックリきたようにアツコを見ていた。

「だって、それはしょせん栓のないことだもん。」

アツコはふふふ、と笑って2人を見た。

「1人じゃないって分かっていれば、それで私は十分だもの。」


「「ズルイ…」」


「それを言われたら…」

「僕らは何も言えないじゃないか。」



















たった1つの真実をみつけるために、

人は、どれほどものを犠牲にしていくんだろう?


私には分からない。





願わくは真実を覆い隠すだけの言葉をください。

私は何も失いたくないから…



ナナナ

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