lucky seventh
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2004年05月18日(火) ASH






なまえを寄越せ。

それが契約で誓約で、
だからわたしは自分の名を渡した。

禁じられたのはその名を語ること、
それは強制ではない、。

しかしその名をなのれば魔法は解ける。












ASH -your dreamer?










僕らは 夢を見過ぎた

さめない夢は もはや夢ですらない

目をつむることはできても

もう 目をひらくには遅過ぎた




夢が現実となるのだ












「入れ」


感情の伺えない声で、私は呼び起こされた。

くらい、くらい空間の中で私は1人、そこに立つ。

目の前には私と同じ顔をした少女が1人、向き合うようにそこにいた。


「久し振りだね」


少女は私が表情を動かさない代わりに、笑う。

笑っているはずなのに、声には感情は何も宿らない。

それは出来の悪い人形のようで、魂を込め忘れた形代のようだった。


2004年05月11日(火) 遺言と遺書






なにひとつ残さず、僕はいくよ。




















「遺言と遺書」















親愛なる友よ
この言葉を、最期にきみに伝えられたのなら僕は幸せです。









さよなら、忘れてください。









すべてを持っていくので、どうか悲しまないで


2004年05月07日(金) 魔法使いは恋におちる2


運命とは川の流れのようなもの。

そして、私たちはその川を泳ぐ魚なんだ。












=魔法使いは恋におちる=












占いのようなものだと、ミレニアムは笑った。
その後に、ミレニアムは厳密に言うと違うんだけだけどねと言って、
立って食器棚から1つのガラスのコップを取り出した。

「時は流れているの。
 そう、それはまるで広く深く、長い大河のように。」

それから、ミレニアムは何もない宙(チュウ)をガラスのコップに
掬うようにみせた。

「そして、私はその水をほんのすこし掬うことができるの」

空のガラスのコップをかかげて見せた。
窓からの光をうけて、ガラスのコップはキラキラと輝く。

「大きな流れは、やがて分岐していく。」

ミレニアムはガラスのコップから見えない水をそっと流した。

「だから、私には大河がどの方向に流れているのかしか分からないの。」
不便よね。

ミレニアムは苦笑した。
あまりに漠然とし過ぎた、それは方向を指し示すだけで、
抽象的な言葉しか言い様が、表し様がないんだと言った。










「ミレニアム?」

ちょうど外から夕刊を取りにいったトリニティは、居間に足を踏み入れると、
そこには珍しくソファの上でぼーっとしている妹の後ろ姿を見かけた。
いつもなら楽しそうにドラマの再放送見ている時間だった。

「ミレニアム」

テレビをつけなくていいのか?
トリニティはそう聞こうとしたのを寸前でやめた。

「ミリィ?」

ミレニアムの名前を呼ぶ、しかし声が聞こえていないかのように、
ミレニアムは、クッションを抱きしめたままちっとも動かなかった。
トリニティは反応の鈍い妹を見て、怪訝そうに眉間に皺を寄せた。

「ミリィ?」

手に持っている新聞紙でぽんっと後ろから軽く頭を叩く。
すると、ミレニアムは夢から覚めたように、呆然と叩いた主(ヌシ)
トリニティを見上げた。

「姉さん…?」

あれ?
ミレニアムは不思議そうに首を傾げた。
それから、思い出すかのようにきょろきょろと辺りを見渡した。

「え?」

その表情は大半を戸惑いを表していた。
ミレニアムのその姿は、トリニティの片割れである彼女のしぐさに
ひどく酷似していた。


2004年05月06日(木) ふりほどいた手、いえなかった約束2(無色シリーズ)

振り返っても、
君を泣かした事実だけ、

私の歩いた道には、
君の涙であふれていた。













・ふりほどいた手、いえなかった約束・













「それは後悔?」

闇は笑った。
それははたから見たら、炎の鬣を持つ男に対しての嘲りに見えた。
しかし、ソレは嫌になるほど自覚していた。
そう、それは自分への自嘲、

離してしまった手に対しての、
帰りたいと思ってしまった思いへの、

限り無い衝動だった。



男は何も答えなかった。


「みんなみんな泣いてるよ」

そらす事なく、互いに見つめ合うだけが精一杯で、

「生きてるものだけが、みんなみんな泣いてる」

ただ、見ることしかできなかった。
けれど、ソレの目には何も宿らない。
あるのは思い出の中にある愛しい召喚主だけ。

「だって死者は泣けない、だろ?」

歌うようにソレは言った。

「泣くのはいつだって、生者だけ。」

だから愚かなんだと、ソレは言った。



男はソレに刃を向けた。
ソレはただそこに居るだけだった。


男の目にあるのは焦燥と困惑を混ぜたもの、

「逃げないのか?」

男は不思議そうに言った。
その言葉は、

「逃げないの?」

その言葉は、かなしい程愚かに優しい少年と同じだった。



「逃げないのカ?」

繰り返すように
なぞるように発した言葉は、まるで鏡のよう。


それは否応なく、自分の姿をうつし向かい合わせる。






闇は言う。

「何故?」


闇は言った。

「逃げて欲しいのか?」







何一つ、同じものは存在しないのに、
泣きそうに歪んだ表情に、闇は悲しくなった。

毛を逆立てている姿は同じ。

少年はいつだって、ソレの言葉に傷付いていた。
そして男も、同じように傷付いていた。




踏み込まないで、
心の中に、
心の闇に、




闇はまた繰り返すのかと悲しくなる。
ソレはまだ終わりがないのかと哀しなった。


2004年05月05日(水) ふりほどいた手、いえなかった約束(無色シリーズ)

「どうして?」

酷く、裏切られたようなそんな傷ついた表情(カオ)で
君は、切れてしまった人形のように呆然と言った。










・ふりほどいた手、いえなかった約束・
















真っ赤な炎の中、ただソレは突っ立ていた。
ソレを喚んだ、あの愛おしい召喚主(ショウカンヌシ)は今はここにない。

これは罰なのだろうか?
あの愛しくも、ひどく愚かに優しかった召喚主を傷つけつてしまった。

ソレは酷く、無感動に崩れさる家々を見ていた。
黒い鎧の兵士に斬り付けられている、無力な村びとを見ていた。
自分で選んだとはいえ、傷つけてまで離れれしまったここにない
召喚主のことだけだけが、ソレの目に浮かぶ。



どれくらい、そこに居たのだろうか。
すでに生きている人の気配は失せ、ただ燃え盛る火の熱と血の匂いだけが
その場を支配していた。
ふいに、ソレの近くに人の気配がした。
それはどこか、ソレの大切な召喚主の気配に似ていて、
ソレはハッとその気配のする方に顔を向けた。

「誰?」

ふわりとソレの髪が揺れる、召喚主に綺麗だから伸ばしてと
せがまれた時からソレの自慢となった長く美しい髪。
能面のように無表情なソレは問いかける。
否、それは問いかけではなく確認だった。
しかし、それが分かる唯一の人は今ここにない。



「まだ、村びとがいきていたのか」

ソレの声を無視するように、その気配の主は言った。
そこに居たのは暗い色をその目に宿す、炎の鬣を持つ男だった。
その瞬間、微かにソレは顔を顰めた。
ほんの少しの不快さと、とまどい、懐かしい何かにあったという思い。
同じような色を宿した目だった。


まるで、その思いが罰だというように
ソレは泣きそうに笑った。

大切なものは1つだけしかいらない。

それなのにソレの手の中にはこぼれ落ちそうなほどの
星の光りがあった。


それは罪だ。

それはいつか大切な人を傷つける。


いや、もうすでにソレは傷つけてしまったことを知っていた。


「×××」


ここにはいない召喚主の名前を喚んだ。

「やっぱり君の手を離れたしまったのは間違いだったよ」

分かっていたはずなのに、それでもソレは愛おしいから、
何よりも愛していたからその手を放す決意をした。

男はソレの言葉に顔を顰めた。
この常規を逸した光景に気でもふれたのかと思ったのだろう。
しかし生憎、ソレは普通の生き物ではない。
ソレは闇だった。

ただ、光の影となってあるだけの闇。


闇は闇としてしか存在しえない。
それでも闇は闇として存在することになんら異議はなかった。
そう、召喚主に出会うまでは…

その思いをソレはエゴだと言った。
けれど、それをくだんの召喚主は自己犠牲だと泣いて笑った。





生きている人は、生きているが故に時に互いを傷つける。
そして、それは大切だからこそ傷つけ合うこともあるのだと、ソレは気付いていた。




それは闇
ソレは闇




死ぬほど自分を憎むことになると知っていても、
後で絶望するかもしれないと分かっていても、
ソレは召喚主が幸せならそれでよかった。
いつしか、それだけがソレの幸せとなっていた。







あなたが生きていてくれればそれでいい。
たとえ私が、死んだとしても。
生きることがあなたにとって どれほど地獄か知っていたのにね。

身を挺して 召喚主を逃がしましょう。


ナナナ

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