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2015年12月22日(火) 意味のないクラブワールドカップ

サッカー、FIFAクラブワールドカップジャパン2015が終了した。優勝はバルセロナ(欧州王者/スペイン)、2位にリバープレート(南米王者/アルゼンチン)、3位は開催国枠で出場した日本の広島が食い込んだ。

広島は3位と「善戦」

広島はオセアニア王者(オークランドシティ/ニュージーランド)、アフリカ王者(マゼンべ/コンゴ)を撃破したが、準決勝でリバープレートに0−1で惜敗。3位決定戦に回った。相手はバルセロナに負けた広州(中国/アジア王者)。アジア勢同士の対決になったが、逆転で勝利した。広島はJリーグのCSを戦った後の苦しい日程にもかかわらず、3位に入った。

どこがバルセロナと戦えるか――なんじゃそれ

しかしながら、広島の3位はもちろん、世界3位を意味しない。強豪クラブは西ヨーロッパ(イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア)に集中しているのが現状。この大会の見どころは、第一に、どこがバルセロナと戦えるか、そして第二に、どこがバルセロナという巨人に偶然、勝利するか(ジャイアントキリングを果たすか)――に集中していた。国際的スポーツ大会としては、関心のあり方がどう考えても普通ではない。

というのも、だれがみてもサッカーの実力からすれば、この大会のチャンピオンは欧州王者(今年はバルセロナ)なのである。その本命が勝ってしまえば、話題性は皆無。日本のメディアは試合内容よりも、地球の裏側からやってきたリバープレートの大応援団に向けられた。

世界選抜vsアルゼンチン・ウルグアイ国内組混成軍

決勝戦は欧州vs南米。欧州王者バルセロナはいってみれば、世界選抜。南米出身のメッシ(アルゼンチン)、スワレス(ウルグアイ)、ネイマール(ブラジル)の強力攻撃陣がなかでも光り輝く。欧州王者にもかかわらず、中心選手が南米人という皮肉。一方の南米王者リバープレートは、アルゼンチンとウルグアイの国内組混成部隊といった様相。世界のサッカー市場がいまのように欧州偏重になる以前、欧州vs南米が第三国(日本)で対決する「トヨタカップ」の時代は決戦の緊張が漲っていたが、近年のクラブワールドカップにおいてはそれも薄らいで久しい。大会の存在意義は見出しにくい。

TV中継の勘違いにとダサさに辟易

この大会は読売系TVで地上波中継されたが、その中継もダサい。出演者が揃いの虹色マフラーを着用して登場するのだが、これはLGBT社会運動の象徴カラー。筆者はLGBT社会運動に偏見はないが、サッカー中継には違和感がある。進行役キャラクターの金髪君にも違和感。スポーツ中継に奇妙な演出は不要である。

広島よ、ACLを勝ち抜いて大会出場を果たせ

最後に、前出の広島に一言。開催国枠による出場ではなく、ACLを勝ち抜いて、アジア王者として大会に出場してほしかった。広島のいまのチーム力ではたして、他国開催の本大会において3位に勝ち進めたであろうか。

3位決定戦の相手、広州は、バルセロナに0−3で惨敗した後の消化試合。彼らの目的も、バルセロナと試合をすることだったようだ。とりわけ、南米出身選手のモチベーションは低いように感じられた。フェリペが彼らを後半、引っ込めたのは、そこを見て取ったからだろう。そんな相手に勝った広島を、だから貶めるつもりもないし、称賛するつもりもない。



2015年12月06日(日) 年間3位が優勝しなくてよかった(JリーグCS決勝戦)

Jリーグチャンピオンシップ(CS)決勝戦第2レグ、広島(ホーム)がG大阪と1−1で引き分け、通算得点4−3で優勝した。年間勝点広島の優勝が決まって筆者はほっとした。アウエーの第1レグ、3−2でG大阪に先勝していた広島にとって、この試合は罰ゲームに等しかったにちがいない。とにかく年間勝点1位の広島が優勝したことで、Jリーグが今年から採用したCS制度の無用性が実証されたことになる。

あわや勝点差11差の3位チームが優勝しそうに

さて、今朝(6日)の新聞のスポーツ欄に目を通していたとき、〔J1年間勝敗表〕という記事に目が留まった。その表では、(1)広島(勝点74)、(2)G大阪(同63)、(3)浦和(同72)、(4)FC東京(同63)…と続いていた。筆者はCS制度を採用したJ1に興味を失っていたから、リーグ戦の動向を気にかけていなかった。あれ、74の下に63がきて、その下に72、でその下が63?? 数字を覚えたての幼児が見たら、「おかあさん、新聞が間違っているよ」と指摘したに違いない。

なんと首位と勝点差11のチーム(G大阪)の順位が2位で、その差2の浦和が3位なのだ。かりにCS決勝戦でG大阪が広島に勝っていたら、リーグ戦で勝点差11の3位のチーム(しかも4位のチームと勝点差なし)が優勝していたことになったのだ。恐ろしいのはG大阪が第1レグの終了近くで失点を重ねて敗れたのは、退場者を出したため。勝負事で「もし」はないのだけれど、退場者が出ていなかったらG大阪が勝っていた可能性も高い。

順位表を見て改めて感じたのは、まずCS制度のバカバカしさ。リーグ戦の一戦一戦の結果を尊重しない同制度に怒りを覚えた。次に、準決勝で敗れた浦和への同情。準決勝、90分で1−1なのだから、年間勝点2位の浦和が決勝に進むべきだった。このことは、6日朝のTVのニュース番組のスポーツコーナーにおいて、サッカー評論家のN氏からも指摘があった。メディアでは、ポストシーズンでリーグ戦上位チームが下位チームに負ける現象を「下剋上」と表現しておもしろがるが、悪い風潮である。下剋上というのは下位者が実力を蓄えて上位者を蹴落とす現象をいうのであって、一発勝負でたまたま勝った現象を表現する言葉としては適切でない。

まあ、年間2位の勝点をあげながら、ホームで勝ち切れなかった浦和も浦和だが、サッカーにおいては、一試合の勝敗が実力差を反映するわけではない。

そればかりではない。CSを観戦した日本代表監督のハリルホジッチが、「CSは日本だけの制度。選手は疲れていたようだ」という意味のコメントをウエブで読んだ。年間3位のG大阪が勝ったときのハリルホジッチのコメントを聞きたかったものだが、彼がCSに好感を抱いていないのは確か。

筆者はCS制度を認めていないが、Jリーグに最低限改善してほしいのは、リーグ優勝は年間最多勝点チームとして表彰し、それとは別に、CSの勝者をCSの優勝者として表彰すべきだ。

ACL決勝戦とのレベル差明らか

試合内容はどうだったのか。先月21日に行われたACL決勝の第2レグ(広州恒大―アルアハリ)と比べるとレベルの差は明らか。広島―G大阪も熱戦だったかもしれないが、ハリルホジッチが「試合のリズムがかなり遅い」と指摘したとおり、フィジカルの差はアジアのトップクラブと比べても見劣りする。

守備力に甘さ

さらに筆者が気になったのが、DF力の弱さ。まずもって、ゴール前における相手シュートに対するDFの弱さだ。シュートを体で止める気概が足りない。ポジショニングが悪いためか、相手シュートにちょこっと足を出すだけのDFが多すぎる。ゴール近くでシュートを打たせないDFをしないと世界では通用しない。打たれた場合は、DFは体の正面でシュートブロックすべきだ。相手シュートが見方DFに当たってゴールインすることはサッカーではありがちだが、体で止める気迫をもってほしい。

もう一点は、自陣でのミスの多さ。これはJリーグのみならず代表チームにもいえる日本サッカー界全体の課題なのだが、改善されない。気の緩み、注意力不足、予測力不足…とにかく守備が甘い。CS準決勝を含めた3試合において、守備からの失点の多さが気になった。

CS制度は残酷そのもの

いずれにしても、CSは試合内容がどうのという問題ではない。制度自体に問題点、矛盾点が多すぎる。これらを改善することは制度そのものの欠陥なので、クラブ、選手の努力では改善しようがない。前回の当コラムで書いたとおり、フルマラソンが終わった後にもう一回ランナーにグラウンドを一周させて優勝者を決定するような制度は残酷で見ていられない。1シーズン制度に戻すことを切に希望する。

CSは興行的に成功したのか

TV(地上波)がゴールデンタイムでJリーグを中継したのは、おそらく珍しいのではないか。しかし、準決勝の人気チーム浦和とG大阪の試合(埼玉スタジアム)の結果は5.1%(関東地区)と低調だったという。観客数は4万696人(満員6万2000人)。

決勝戦(G大阪―広島)第1レグ(G大阪ホーム/万博記念)は広島地区で22.6%だったが、関東7.6%、関西7.5%。観客数は1万7844人(満員2万1000人)と、準決勝より落ちた。

第2レグ(広島ホーム/エディオンS)の視聴率はまだわからないが、関東・関西の視聴率が驚異的に伸びたとは予想しにくい。観客数は3万6609人(満員5万人)と、大阪の試合(第1レグ)の2倍近く増えた。

この数字からは、興行として大成功だったとはいえない。出場チームの特定に関するわかりにくさ、優勝決定に係る不可解なメカニズム、それを反映して伸びないTV視聴率、と、興行的にもいずれ行き詰まる。興行面から見ても、早期にCS制度を廃し、日本サッカーを世界標準に戻したほうがいい。


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