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2015年10月30日(金) ヤクルト完敗が教えるセパの実力差

ソフトバンクの強さ際立つ

日本プロ野球日本シリーズは、ソフトバンクが4勝1敗でヤクルトをくだし日本一に。1敗はしたものの、ソフトバンクの強さばかりが目立った。ヤクルトの第3戦勝利は山田が3打席3本塁打の「暴発」によるもの。爆発ではなく「暴発」というのは、第4戦、第5戦とも山田は摂津、スタンリッジに完全に抑え込まれたから。解説者のS氏は「ソフトバンクが(山田の)どこに投げたら打たれるか、試しているみたいですね」とコメントしていたけれど、筆者もS氏に全面的に同意する次第。ソフトバンクにとって第3戦は、余裕(予定通り)の敗戦だったようにも思える。

ヤクルトのセ優勝は読売・阪神の自滅のおかげ

さて、第3戦目以外、いいところのなかったヤクルトだが、仕方がない面もある。結果はともかく、2015シーズンのヤクルトをセリーグの覇者と呼ぶにはいささか無理がある。9月11日付の当コラムで書いたけれど、ヤクルトの先発投手陣はあまりにも弱すぎた。筆者は9月11日時点で阪神優勝を確信していたのだが、ご承知のとおり阪神は自滅、読売も打線が沈黙してヤクルトが優勝をさらった。

ヤクルトが2014シーズン最下位から2015にセリーグの覇者になったことは称賛に値する。だが、セの実力上位チームである読売及び阪神が、あまりにも悪すぎたことに助けられた面も否定できない。とりわけ、読売がひどすぎた。2015シーズンの読売のひどさについては、これまた何度も当コラムで書き続けたとおり。もてあます戦力を浪費し、使い損ね、選手を壊した原采配だった。選手層及び投下資本からみれば、読売が優勝して当たり前。阪神も読売に次ぐ投下資本による戦力を誇ったが、額からいえば読売に及ばなかった。

先発が足りないヤクルト投手陣

ヤクルトの日本シリーズ先発は、石川●〜小川●〜杉浦(ロマン○・石山・久古・オンドルセク・バーネット)〜館山●〜石川●(中4日)の順。勝った第3戦の先発・杉浦は4回3分の1で降板している。

ヤクルトの3倍の先発投手を抱えていた読売

一方、球界一の金満球団・読売の先発投手陣は、菅野、マイコラス、ポレタ、高木勇、田口、大竹の6枚が揃う。故障者には内海、杉内、西村…がいた。故障選手は仕方がない面もあるが、中継ぎ、抑えの沢村、マシソン、山口、宮国、戸根、田原、高木京のだれかを先発に転向させていれば、頭数ではなく実力をもった投手の数という意味で、およそ2チーム分の先発投手陣が揃った。故障者を含めれば、読売はヤクルトの3倍の先発投手を抱えていた。

この陣容で読売が優勝できなかったのは、野手陣すなわち打撃陣の不振に尽きる。とりわけ、クリーンアップを打つべき阿部、村田、長野の責任は重い。この3人の年俸大幅ダウンは必至だろう。内野の中井、外野の大田、橋本の成長がとまった。本人が悪いのか、コーチの教え方が悪いのか、監督の使い方が悪いのか。

外国人野手については、ヤクルト、読売ともひどい目にあった。読売はセペタが絶不調、シーズン開幕後に入団させたフランシスコ、カステヤーノスもだめ、アンダーソンも故障がち。ヤクルトもバレンティン、ミレッジがだめで、途中入団のデニングも消えた。

ヤクルト優勝の主因は監督力、捕手力

ヤクルトが優勝できたのは、(1)監督力、(2)捕手力、(3)強力2番、3番、4番の攻撃力――に求められる。真中は監督1年目、最下位チームを優勝に導いた。しかも戦力的には、読売に比べてはるかに劣っていた。監督の差(真中>原)、若手捕手の差(中村>小林)が大きい。中村に限らず、若手を育てたヤクルトに筆者は魅力を感じる。

読売の監督人事に違和感

蛇足だが、V逸の読売の監督が原辰徳から高橋由伸に代わったが、おかしな人事である。真中に二軍で修業させたヤクルトとは大違い。いうまでもなく、高橋に指導者の経験がない。二軍または他球団で采配を振るったこともない。人気チームの読売にはありがちな人事だが、長嶋茂雄もこのコースで初年度はつまずいた。高橋も同じ轍を踏むだろう。

そんなセリーグをよそに、ソフトバンクが圧倒的強さを見せつけたのが2015シーズン。2016シーズン、セリーグのどこかの球団が日本一になる可能性は、限りなく低いような気がする。



2015年10月23日(金) パリーグ、2015シーズンを総括する

筆者のパリーグ開幕前順位予想は、まったくの外れ。2014シーズン、ソフトバンンクと首位争いを演じたオリックスがシーズン終了後大型補強を行ったことから、オリックスの戦力アップは明らかだと判断した。筆者はよってオリックス優勝を確信してしまった。

ところが、開幕すると、オリックスは補強選手のほぼ全員が故障という非常事態に陥った。序盤から負けがこみ、結局、Aクラス入りすらできなかった。楽天のチーム崩壊に助けられて最下位は免れたものの、戦力からみて、5位というのは、まったく予想外の結果である。

あらためて、2015シーズンの順位をみてみよう。
(1)ソフトバンク(2) 日本ハム(3)ロッテ (4) 西武(5) オリックス(6)楽天

2014シーズンは、(1)ソフトバンク(2)オリックス(3)日本ハム(4)ロッテ(5)西武(6)楽天――だったから、オリックスの2位から5位の転落は驚きである。

ソフトバンクの連続優勝、しかも圧倒的強さによるそれは、豊富な戦力、そしてなによりも、才能ある若手の台頭に裏打ちされたもの。柳田に代表されるフィジカルの強い選手が育ち、FA及びトレードで獲得したベテランが活躍した。補強によるチームづくりは読売と似ているが、内川、イデホの移籍組が主軸として安定した成績を残したところが、読売との差である。読売の場合、FA組(村田、片岡、相川)、そして外国人助っ人(アンダーソン、セペタ)がシーズンを通して戦力として機能しなかった。読売のセペタは一軍公式戦打率000という不名誉な記録を残している。イデホとの差は明らかだ。ソフトバンクは攻撃陣の破壊力が際立っている。

さて、パリーグの他球団だが、2015シーズンについてはロッテのAクラス確保及びCS第1ステージ突破という成績が光る。ロッテはビッグネーム不在、年俸もそう高くない選手構成ながら、勝負強さをもっている。課題は先発投手陣の整備だろう。

最下位に沈んだ楽天は、日本一に輝いたときの打撃陣のほぼ全選手が成績を落としている。年齢からみて、この異常な伸び悩み、停滞の理由がわからない。投手陣は田中がMLBに移籍し、大幅に弱体化したことは明らかだった。田中の変わりは難しい。

楽天は優勝後に2年連続の最下位。それゆえ抜本的改革が望まれる。投打にわたって全面的な補強を要するだろうが、獲得できる選手数は限られているし、若手が急成長する予兆は見受けられない。チームの構造改革には、相当な時間を要するだろう。



2015年10月18日(日) セリーグ2015シーズンを総括する

日本プロ野球はポストシーズン(クライマックスシリーズ=CS)が終了。パリーグはソフトバンクが、セリーグはヤクルトがそれぞれ、日本シリーズ進出を決めた。両リーグともペナントレースの覇者が勝ち残り、日本一をかけて相まみれることになった。筆者はこの結果に満足している。CS第1ステージではパリーグ2位の日ハムが3位のロッテに敗れ、いわゆる「下剋上」ムードが漂ったが、ソフトバンクがロッテを3タテで退け、同ムードを一掃した。まずはめでたしである。

ヤクルト優勝を予想できず

セリーグの結果をおさらいしておく。順位表は以下のとおり。

(1)ヤクルト、(2)読売、(3)阪神、(4)広島、(5)中日、(6)DeNA
筆者の開幕前予想は、
(1)広島、(2)阪神、(3)読売、(4)ヤクルト、(5)DeNA、(6)中日

2014シーズンは、読売、阪神、広島、中日、DeNA、ヤクルトの順位であったから、ヤクルトが最下位から優勝という驚異的結果を出したことになる。筆者はヤクルトのチーム力が向上していたとは感じていたものの、優勝とは予想できなかった。いい訳をするわけではないが、1位と予想した広島については、黒田のMLBからの復帰を称賛する意味が強く、実際は阪神優勝、2位広島、3位読売、4位ヤクルトではないかと思っていた。

戦力から見ればダントツ1位は読売である。選手層の厚さ(多彩な投手陣、実績のある打撃陣)は両リーグナンバーワンであることは疑いようがない。読売がリーグ戦2位、CS敗退で終わった主因は、原監督が豊富な戦力を浪費し、結果に結びつけることができなかったから。シーズンを通して一貫性を欠く原の采配では、どんなに豊富な戦力を擁していてもリーグ制覇はできない。原が辞表を出したという報道があったが、原が監督を辞するという決断を自らに下したことは誤っていない。

読売敗退の主因は言語破壊のスローガン「新成」

読売の問題点を具体的に明らかにしておこう。読売の混乱は、原が掲げた「新成」という造語スローガンを発端とする。この造語は日本語破壊という深刻な問題を抱えていたのだが、球団もメディアもそのことを咎めなかった。つまり、原が日本語破壊という罪を出発点としたことにより、リーグ優勝、CS勝ち残りを逃すという罰を負った。これは言葉の問題というよりも、造語による日本語破壊をチームコンセプトとしたため、チームに混乱と無秩序をもたらしたと解釈すればわかりやすい。日本語というのは歴史の積み重ねであり、それを破壊すれば、観念、概念、根本的思想、常識等をも破壊することになる。原はそのことを知らなかった。浅知恵ゆえに…である。

「新」すなわち「新しさ」は、未熟、無秩序、不慣れといった、否定的側面をもっている。「新しさ」には新鮮、溌剌、刺激的といったプラスの要素もあるが、マイナス面がプラス面を上回るのが世の常である。たとえば、「新入社員」という言葉を思い浮かべればよい。新入社員は職場に活力を与えるが、ビジネスの戦力にはなりにくい。新入社員が実績を上げるのは、早くて3年後だろう。

次に「成」である。この語はいろいろな意味を含むが、原が用いた意図は、ことが成就する、成し遂げる、成功裡に終わるといった意味をあらわしたかったのではないかと推測する。ということは、新をもってことを成功裡に終わらせたいという、なんともムシのいいスローガンを掲げたことがわかる。「新」を掲げたならば、「成(功)」は少なくとも3年を待たなければならないのが世の常識であるにもかかわらず――である。

チームを大混乱に陥れた「新成」

かくして、読売は混乱を重ねる。たとえばチームの要である捕手。原は「新」として小林を正捕手に据えたが、早々と見切り(二軍落ち)、FAでとった相川に正捕手をまかせた。その相川が故障すると、阿部を捕手に復帰させ、阿部の故障を再発させてしまった。相川が復帰するもすぐケガで登録抹消となると、今度は小林を呼び寄せ、ベテラン加藤と併用するという無秩序ぶりを露呈させた。ヤクルトが相川を出したのは、「新」の中村悠平の成長を見届けてのこと。ヤクルト投手陣が読売打線を封じたのは、中村の落ち着いたリードがあったことはだれの目にも明らか。中村でいけるというヤクルトの判断は正しかったが、小林でいけるという原(読売)の判断は間違っていた。捕手をめぐる判断の差こそが、「新」と「成」が同時に成り立たないことのよき証明である。

原の「新」には実力の裏付けがない。そのことを象徴するのが大田である。筆者は、大田は250の打者だといい続けてきた。その根拠については重複するのでここでは書かないが、原は大田のイメージに惑わされて起用し続け失敗した。大田にとどまらない。「新」であるはずの、橋本も実績が上がらなかった。

深刻なのは内野陣で、「新」となる若手は皆無であった。結局、FA組(自由契約を含む)村田、井端、片岡といったピークを過ぎた「古」に依存した。「新成」ならぬ「古成」である。

補強による投手陣の「新成」は偶然?

一方、「新成」となったのは、先発投手陣である。ローテーションは、菅野、新入団の外国人2人と新人の高木勇人、2年目の田口麗斗と菅野以外はさまがわり。内海、杉内は早々と登録抹消。大竹もシーズンを通して登板できる状態ではなかった。クローザーも先発から転向した沢村がフルシーズン活躍した。中継ぎも新人の戸根、先発から転向した宮国が活躍したが、山口、マシソンは成績を落とした。

読売投手陣は、表向きは「新成」となったように見えるが、外国人2投手、高木勇については読売が自力で育てた戦力ではない。高木勇はシーズン後半になると打たれだした。外国人補強の成功という意味の「新成」である。このことは、偶然性に依拠していないか?

投に反して打者の外国人補強はうまくいかず、フランシスコ、カステヤーノスは一軍出場も数試合で終わった。投資としては大失敗である。

結果から見れば、読売の「新成」は、先発投手の外国人2人及び高木勇人、中継ぎの新人・戸根といった補強に表れたにすぎない。補強をもって「新成」というのは、はてどうなのだろうか。

カネに任せた「新成」に明日はない

結論をいえば、読売はチームづくりに企画力がない。カネに任せて、その場しのぎの補強で選手層を厚くしてきた。今シーズンの2位はできすぎである。そんなチームに未来はない。逆にいえば、セリーグ5球団が読売を凌げなかったことが情けない。

原が退任し、その後を受けた監督は苦労するだろう。「新」を成そうとすれば、2〜3年は我慢をしなければならない。先述のとおり、「成」は簡単には手に入らないからだ。しかし、それが世の常である。毎シーズン、読売が優勝し続けるということは不可能なのだから。「巨人」が特別なチームであり続けるなんてことは、それこそ「20世紀の神話」である。


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