2015年09月11日(金) |
セリーグの優勝はどこだ |
日本プロ野球(NPB)セントラルリーグ、阪神、読売戦(9月8〜10日の3連戦。8日は雨天中止)は1勝1敗のドロー。2試合とも1点差の試合だったことから、“両者譲らず”“緊迫した伝統の一戦”といった意味の見出しがスポーツメディアの一面を飾った。
首位攻防、伝統の阪神―読売はミスの多い低レベル試合
筆者の見方はメディアとはやや異なる。2試合ともミスの多い、レベルの低い試合だった。9日の阪神・藤波投手の信じられない一塁暴投に始まり、2試合を通じて、▽投手のボーク及び牽制悪送球、▽外野手の怠慢プレー・中継ミス・ハンブル、▽走塁ミス…と、プロ野球とは思えない惨状を呈した。
加えて、両軍ともに打撃陣が低調で、チャンスをつくりながら決定打が出ない。阪神では、9日の延長戦でサヨナラ打を放ったマートンだったが、2試合トータルでみると、絶好機における併殺打、守備のミスを含めて、マイナス面の方が多かった。
采配面では、2アウトなのに外野を前に出した読売ベンチの摩訶不思議指示があり、ノーアウト2塁で打撃絶好調の今成に送りバンド代打と、阪神の消極采配がひっかかった。
阪神バッテリーの阿部への配球は研究不足
筆者がもっとも気になったのは、読売の4番打者、阿部慎之助に対する阪神バッテリーの配球だった。いまの阿部が得意とするのは真ん中からややアウトサイドのベルトからやや低め付近。苦手なのが内角の低めの変化球及び高めの速球。
読売に対して好成績を上げている広島、ヤクルトの投手陣は、阿部を怖がらず内角勝負もしくは内角でカウントを稼ぎ、アウトローで仕留めている。右投手のスライダー、カットボール系でボールが外から中に入ると、ストレートよりボールに力がない分、右翼席近くまで運ばれるか本塁打になる。トゥーシーム系(俗にいうシュート回転)も阿部には危ない。外側ボールゾーンに外れ切れればいいが、プレート上の変化であれば右翼席に運ばれる。球速がない場合は、ボールゾーンに外れても、遊撃の頭、左中間に飛ばされる。
左投手の場合は右投手の逆になる。阿部が苦手とするのは、左投手の縦に変化するキレのいいスライダー。コースを狙うよりも高低の変化が有効だ。
9日の先発・藤波、10日の先発・メッセンジャーもそろって、真ん中からやや外目のシュート回転となった絶好球を阿部に投げ込んで本塁打された。藤波はコントロールミス、メッセはハートが弱いので、内角を攻め切れない。メッセが読売戦でよい成績をおさめられない(2勝4敗)のは、彼のチキンハートのため。
阪神捕手陣も情けない。往年の阿部の残像に怯えて、思い切ったサインが出せないのか。鶴岡、藤井のベテラン、若手の梅野という捕手3人体制では心もたない。来季における最重要強化ポジションとなろう。楽天の嶋をなんとしても、FAでとりたいところだ。
残り試合数からみれば読売より、阪神・ヤクルトのほうが優位
今後の読売の試合日程は――
♦9月(13試合) 12・13=DeNA(TDM)、15=広島(MS)、18・19=ヤクルト(JK)、20・21=中日(NDM)、22・23=阪神(TDM)、24=広島(TDM)、26・27=ヤクルト(TDM)、28=阪神(KE)。 ♦10月(3試合)1・2=DeNA(YS)、4=ヤクルト(TDM)
でわずか16試合を残すのみ。読売が得意とする東京ドームでの試合は8試合中、半数を占める。ホーム8試合を6勝2敗、アウエー8試合を4勝4敗ならば、残り試合で10勝6敗(勝率0.625)。読売のいまの実力ならば、これくらいの成績が最高だろうか。現在64勝62敗1引分(127試合消化)だから、74勝68敗1引分(143試合)、勝率0.521でシーズンを終える。
阪神は9月10日現在、65勝59敗1引分(125試合消化)。残り18試合を10勝8敗(勝率0.5555)で行けば75勝67敗1引分(143試合)、勝率0.528となり、読売を上回る。
数字の上からは、読売に比べて阪神の優位は揺るがない。ところが、阪神はミスの多いチーム。弱点は、▽外国人2人の調子が今一つ、▽機動力がない、細かい野球ができない、▽中継ぎ陣が弱い――こと。
日程的には、消化試合数の多い読売に休みが多いので、自慢の投手力をフル活用できる。打線はこの先大爆発することはないだろうから、読売が各試合で接戦にもちこみ、ミスをせずに手堅く逃げ切る野球を維持すれば、阪神を逆転する可能性もある。阪神の打線が外国人2人を中心に爆発し、先発が長いイニング投げる展開に持ち込めば、阪神が逃げ切れる。
ヤクルトは先発投手陣不足、最後は阪神―読売の競り合いか
悩ましいのはヤクルトで、どうみても先発投手陣の駒が足りない。セリーグの投手防御率上位14投手のうち、ヤクルト投手陣では、小川3.055(8位)、石川3.57(12位)の2投手のみが入っている状態。
読売は、菅野(2位)、高木勇(7位)、ポレタ(10位)、既定投球数に達しないマイコラスを含め、重量級の布陣だ。一方の阪神も、藤波(5位)、メッセ(9位)、岩田(11位)、能見(14位)がいる。現在4位の広島には、ジョンソン(1位)、前田(3位)、黒田(6位)がいる。
小川、石川の2人には失礼ながら、エースといえるパワーがないように思える。この2人に続く人材も見当たらない。この3球団と比較すると、ヤクルト投手陣は相当落ちる。
数字的には、ヤクルトと阪神は同じ条件。ヤクルトがこの先打ち続ければ、阪神、読売をなぎ倒して優勝するかもしれないが、シーズン終盤の緊迫した試合で打ち続けられるかどうか。先発が崩れれば、好調のリリーフ陣の出る幕はない。
2015年09月09日(水) |
意外と早く訪れた、ハリルホジッチ体制の危機 |
2018年ロシアW杯アジア2次予選、E組第3戦、アフガニスタン―日本は9月8日、イラン・テヘラン アザディスタジアムで行われ、日本が6―0で勝った。この試合は、得点数、試合内容のどちらにおいても、前回(カンボジア戦)、前々回(シンガポール戦)をはるかに上回る結果だったので、日本代表が不調を脱したとする報道が散見された。はて、このマスメディア報道についてはどうなのか。アウエーとはいえ、相手が弱かっただけの話ではないのだろうか。
そもそも、先のW杯ブラジル大会の出場が決まった時、本戦で優勝を狙うんだ、と豪語していた日本代表である。その舌の根も乾かぬうち、本戦で惨敗を喫して早々と帰国。さらに、次大会(ロシア)の2次予選のレベルで苦戦しているようでは、どうにもならないのである。
そんな日本代表であるが、アギーレ「八百長疑惑」のドタバタを経て就任したハリルホジッチ体制。出だしは好循環がみられるかなと思ったこともあったが、それは筆者の幻覚だった。ハリルホジッチ監督は、予選開始後になっても、代表チームの方向付けを定めていない。アジアサッカーの特殊性を理解していないと換言してもいい。
それだけではない。彼は日本の代表監督に就任したのにすぎないのだが、日本サッカー総体のトップに君臨したかのような錯覚に陥っているように見える。確かに日本サッカーの現状は突っ込みどころ満載の状態。あまたの問題を抱えている。基盤となるJリーグが改革ならぬ改悪を断行してしまい、ガラパゴス化を促進している。リーグを構成する各クラブに緊縮財政が定着して、いい選手が集まらない。結果として、世界との差を一層拡大させている。
プレーオフ制度の導入で、日程がきつくなり、代表合宿に思うような時間が避けない。テストマッチ(親善試合)の相手は弱いところばかり・・・
しかも、代表選手の切り替え時にあたる今年、来年というこの時期、ブラジル大会出場組を上回るような新人が台頭してこない。新戦力というと、柴崎岳、武藤嘉紀が思い浮かぶ程度。その2人も、ブラジル組を差し置いてレギュラーを取る力がない。相変わらずの本田圭佑、香川真司、岡崎慎司・・・頼み。さらに深刻なのがDF陣。ブラジル惨敗の主因となったCBの人材難は解消されず、これまた、欠陥CBの吉田麻也に依存せざるを得ない。
このような状況下、ハリルホジッチに重要な決断が迫られている。彼が決断すべき道とは3つあり、その第一の道とは、ジーコ、ザッケローニが選択した、代表チームの「クラブチーム化」。レギュラー選手を固定し、固定した選手間のコンビネーションを熟達させ、組織力を向上させる方法。当然、代表チームのレギュラー選手は固定化されるので、新しい力は加味されない。洗練されたチームが出来上がるが、たとえば、ワールドクラスのパワーサッカーに遭遇すると、あっさり簡単に、崩壊してしまう確率が高い。日本がブラジル大会予選リーグ初戦でコートジボワールに逆転負けをしたようなケースが起こり得る。先行しながら、粘れない、フィジカルで競り勝てない、走れない・・・ような、ひ弱なチームに仕上がる。ブラジル大会では、スペイン、日本がその代表だった。
第二の道は、常に調子のよい選手を引き上げて、短期間にチームを完成させ、フィジカル的に強いチームをつくりあげるスタイル。新しいスターが出現する可能性が高まるし、体力的に充実した代表チームとなる。ブラジル大会では、コスタリカ、コロンビアがその代表。勢いのあるチームとなって、「大化け」することもある。
日本がやりたくてもできないのが第三の道。新旧戦力をバランスよく配置し、代表チームでありながらクラブチームのようであり、しかも、クラブチームにない個の力も併せ持つ。ドイツ、オランダ、アルゼンチンなどが思い浮かぶ。ブラジル大会では、ドイツがその典型だった。
しかし、現状の日本代表がドイツのようなチームをつくれる可能性は、いまのところ無理。そのドイツであっても、次回大会までブラジル大会の好調状態を維持できるとは限らない。
そんななか、ハリルホジッチはいずれの道を選択するのだろうか。ここまでのところ、なんとか第二の道を模索してきたものの、この2次予選を通じて、第一の道、すなわち、「クラブチーム化」に舵を切るような気がする。そのほうが、W杯出場の可能性が高まるからだ。
ハリルホジッチがアジア予選通過を果たすことに失敗すれば、彼の日本でのロシア大会以降の仕事はなくなる。その反対に、ロシア大会出場を果たせば、彼はヒーローとして、永遠に日本で歓迎される存在となり、カネも栄誉も思いのままとなる。
ハリルホジッチの「ジーコ化」「ザッケローニ化」が進めば、日本代表もそれまで。よくてロシア大会出場。本大会ではおそらく、グループリーグで敗退する。そんな日本代表の姿が3回も繰り返されれば、日本にサッカー・ファンはいなくなる。その前に、ハリルホジッチが弱いクラブチームをつくってしまう可能性だってある。そうなれば、日本サッカーの灯(ひ)は、ロシア大会の前に消えてしまう可能性もなくはない。
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