2014年12月30日(火) |
2014プロスポーツ界を総括する |
(1)プロサッカー編
●凋落・衰退する日本サッカー界
日本サッカー界の2014年とは、凋落傾向の一語に尽きる。W杯ブラジル大会において日本代表の主力を成した海外組は大会でこぞって不調。予選グループ敗退の主因となった。
W杯後も海外組は振るわず、日本代表期待の星・香川はイングランドで不振が続き、マンチェスターUTDを戦力外退団。ドイツに戻っても活躍できていない。香川の不振は、日本サッカー衰退の象徴ともいえよう。イングランドプレミアにいる吉田はウインターブレーク前に復調したようだが、この先どうなるかはわからない。
W杯で不調だった本田は、イタリアセリエA14−15シーズン序盤から好発進したが息切れ。ウインターブレーク前で序盤の輝きは失われていた。長友もインテルでレギュラーを維持しているが、これから伸びる選手ではない。
ドイツで活躍しているのは内田、岡崎だけ。その内田も故障が多く、今シーズンがピークだ。乾、長谷部、酒井高、酒井宏、清武、細貝もウインターブレーク前までは好調を維持したが、シーズンをとおして実績を残せるかは未知数。大迫、原口はレギュラー定着とはいかない。
スイスの柿谷、久保、ポルトガルの田中、金崎、オランダの宮市、大津もベンチ外が多い。大津は日本の柏に移籍が決まった。ベルギーの川島は下り坂、小野もレギュラー確保は難しい。
筆者が期待していたハーフナーもスペインでは通じなかった。コルドバを退団して日本(横浜マリノス)に戻るらしい。
20人以上いる海外組のうち、ウインターブレーク前時点において、まずまずの成績を残したのは本田(イタリア)、長友(イタリア)、内田(ドイツ)、岡崎(ドイツ)の4選手。次いで乾、長谷部、酒井高、清武、細貝の5選手が続く。合格ラインに到達している選手は海外組のうちの半数に満たない。日本人選手の海外移籍は成功していない。本田、長友、内田、岡崎にしても、ノビシロは少なく、近々ベテランの域に達する。そのあとを継ぐ選手が育っていない。
このような実態から、日本サッカー界がこれまでの勢いを完全に失っている様子が読み取れる。ここまで急成長してきた日本サッカーの失速が始まっている。
●ダウンサイジングが止まらないJリーグ
衰退、後退の波は、今年のJ1リーグのほうが顕著だった。今シーズンのJ1は、なんと昇格組のガンバ大阪がリーグ優勝したのみならず3冠に輝いて終幕した。三冠達成のG大阪を貶める気持ちはないが、このようなサプライズは欧州のリーグではまず起こらない。たとえばスペインにおいて下位チームがホームでレアルマドリードに勝とうものなら、街中がお祭り騒ぎ。万が一にも優勝したとなれば、地域経済が麻痺するくらいの大騒ぎになるだろう。イングランド、イタリアでも同じことだ。日本はクラブの実力が伯仲しているから、昇格チームが優勝できる――という見方もあるが、逆にいえばドングリの背比べ――しっかりとしたクラブが不在なだけ。実力が下の方で伯仲しているから混戦になり、複数のクラブにチャンスがめぐってきて、偶然性で優勝が決まる。日本最大のビッグクラブの一つ浦和の失速がその証左となる。
それだけではない。昨シーズンJ1で急成長し代表入りした選手が大学生だというから、言葉がない。学生アルバイトにプロがいいようにやられているのが日本サッカー界の実態なのだ。J1にも若手の成長がみられないわけではないが、各クラブの主戦力として活躍しているのは30代の元代表選手ばかり。
外国人の補強も小物ばかり。前出のG大阪の三冠達成に貢献したブラジル人ストライカーは本国ではまったくの無名。フィジカルにすぐれているが、それだけの素材にすぎない。JのDF陣は、この程度のFWを止めることができない。W杯では日本代表のDFの脆弱性が指摘されたが、その根源はJリーグにある。
●設備投資に失敗したセレッソ大阪
そんななか、ウルグアイ代表フォルランを獲得して、Jのクラブのうち唯一拡大路線をとったセレッソ大阪が二部降格してしまった。残念の一言である。これについては拙コラムで散々書いたことなのでここでは詳述しない。他のクラブはセレッソの失敗をみてさらに消極的経営に向かうことが予想される。それだけにセレッソには、結果を出してほしかった。
(2)プロ野球編
●珍しく補強に消極的だった読売
2015シーズンの日本プロ野球界、筆者が最も注目する球団は読売だ。ご存知のように読売は昨シーズン、ペナントレースを制したものの、プレーオフで阪神に4連敗して日本シリーズ進出を阻まれた。もっともリーグ戦でも苦戦続きで、優勝できたのが奇跡ともいえるくらいの内容だった。自慢の打撃陣が不振で、ころころ変わる打順の組換えで主力打者は困惑、監督不信の声まで上がった。投手陣はリリーフ陣が不振、先発陣も故障者続出だった。そんななか優勝できたのは、厚い選手層とりわけ、リリーフ投手陣のスクランブル登板という非常手段だった。詳しくは後述するが、読売リリーフ陣は昨シーズンの登板過多の影響により、2015シーズンは疲労蓄積で故障者が続出する。昨シーズンと同じようなスクランブル登板体制は無理だろう。
さて、読売という球団は、危機的状況をいくどもFA制度を活用して乗り切ってきたのだが、今年のオフを見ると、FA入団は相川亮二捕手(38)=前ヤクルト、金城龍彦外野手(38)=前DeNAの2選手のみ。いわゆる「アラフォー」をとった。FAでベテランをとったところから読売の補強は「老害」と揶揄されたが、〔退団選手一覧〕をみると、レギュラー、準レギュラーに限れば(★印)、概ね30代の選手をリストラしていることがわかる。若返りだ。
〔読売退団選手一覧〕 ★ホセ・ロペス内野手(31)=自由契約→DeNA ★クリス・セドン投手(31)=自由契約 ★石井義人内野手(36)=引退 ★加治前竜一外野手(29)=戦力外→未定 ★星野真澄投手(30)=戦力外→未定 ★井野卓捕手(31)=戦力外→ヤクルト ★越智大祐投手(31)=戦力外 ★野間口貴彦投手(31)=自由契約→育成選手として再契約する見込み 成瀬功亮投手(22)=自由契約→育成選手として再契約する見込み 芳川庸捕手(21)=自由契約→育成選手として再契約する見込み 高橋洸内野手(21)=自由契約→育成選手として再契約する見込み ★高木康成投手(32)=戦力外 雨宮敬投手(27)=戦力外 柴田章吾投手(25)=戦力外 森和樹投手(21)=戦力外 荻野貴幸内野手(26)=戦力外 和田凌太内野手(22)=戦力外
〔獲得選手一覧〕 相川亮二捕手(38)=前ヤクルト 金城龍彦外野手(38)=前DeNA アーロン・ポレダ投手(28)=前レンジャーズ マイルズ・マイコラス投手(26)=前レンジャーズ 吉川大幾内野手(22)=前中日 堂上剛裕外野手(29)=前中日(育成契約) 〔※2014年12月30日現在〕
このことから読売は珍しく、実質上FA制度を活用せず、既存戦力の台頭を狙ったチームづくりに切り替えたものと推測できる。
●黒田の広島入り、松坂のソフトバンク入りが話題に
一方、他球団はFA宣言選手、自由契約選手等の大物を積極的に補強した。セリーグでは広島が黒田投手をMLB(ヤンキース)から、また、ヤクルトが成瀬投手をロッテから、DeNAがロペス内野手を読売から獲得した。パリーグではソフトバンクが松坂投手をMLB(メッツ)から、オリックスはブランコ内野手をDeNAから、また、中島内野手をMLB(アスレチックス)から、日ハムも田中内野手を3A(レンジャース傘下)から獲得した。つまり、いわゆる大物選手は読売以外の球団に流れた。話題性では松坂が、実力からみれば黒田が今シーズンオフの日本プロ野球界における最大級の移籍であっただろうが、そのどちらにも読売は関与していない。
読売が大型補強を行わなかったのは、“しなかったのか”“できなかったのか”。結論をいえば、その両方だろう。読売の狙いはオリックスの金子投手とDeNのグリエル内野手だったといわれていた。ところが、2選手とも残留で決着した。黒田、松坂は眼中になかっただろう。MLBで実績を残せなかった野手については、読売に獲得の意思はなかったと思われる。
では読売の補強計画は成功なのか、失敗なのか。結果次第だから、来シーズンの読売に注目するわけだが、筆者の予想としては、失敗する。来シーズンはおそらく結果が出ない。だが、読売の路線の切り替えは長期的には実を結ぶ。
●読売は高齢化の危機感から若返りに転換か
読売の路線変更は“常勝路線”から“ファン獲得路線”への変更だろう。昨シーズンの読売の主力選手をみると、いわゆる30過ぎのおっさんばかり。外国人、FA加入選手を含め20代のレギュラーは坂本野手、菅野投手くらい。話題性、ファンの質という観点からみると、「カープ女子」で盛り上がった広島とは雲泥の差。読売が坂本をキャプテンに指名したのも若返り策の象徴だ。読売は選手のみならずファンまでもが高齢化していて、若者が読売離れを加速している。統計的な話ではなく筆者の直観でいうならば、読売ファンとはV9を知っている団塊世代前後がコアになっていて、若者とりわけ若い女性の目玉となる選手は坂本ただ一人といっていい過ぎではない。経営的にみると、読売に「明日はない」。
●読売は無理な若返りが祟り優勝を逃すか?
しかし、実力的にみると、投手陣のスターターでは、菅野、小山を例外として、内海、大竹、杉内の「おっさん組」に迫る若手が見当たらない。ブルペンではクローザーのマシソン、セットアッパーの山口、西村(スターターに変更か)らに次ぐ若手は不在。若手では澤村の役割がどうなるかが注目される。ワンポイント及びロングリリーフ陣も同様に新しい成長株が見当たらない。
野手陣も同様で捕手から一塁にコンバートされた阿部の後釜の小林はあまりに非力。内野でレギュラーの「おっさん組」に迫れる素材としては中井くらいか。外野は長野、亀井、セペダ、高橋、松本、橋本、アンダーソン、大田、矢野と、若手・ベテラン取り混ぜてタレントは豊富だが、若手の成長株は不在。若いと思われていた長野が来年30歳になる。20代は大田、橋本の2人しかいない。プロ野球の場合、30代はベテランとはいえないが、若くはない。読売が誇る外野陣が、来シーズンはともかく、近い将来、最大のウイークポイントになる可能性も否定できない。現在読売が保有する若手戦力のうち、これはと思わせる選手はポジションを問わず不在というのが現実だ。そんなわけで読売の来シーズンが気になって仕方がない。
|