2015年01月25日(日) |
アジア杯における日本が犯した4つの失敗 |
●日本に有利だった組合せ
アジア杯は当該コラム(1月15日「アジア杯、日本はベスト8どまりか」)にて筆者が予想した通りの結果で終わった。KDS(ノックダウン・ステージ)ではベスト4を目指してオーストラリアと中国、イランとイラク、韓国とウズベキスタンと筆者が本大会ベスト4の実力国と思うもの同士が星のつぶし合いを演じる展開となっていた。日本はそれより弱いと思われていたUAEと戦うこととなり、試合前は日本の楽勝を予想するスポーツ・コメンテーターが圧倒的だった。
筆者も日本はずいぶんと組み合わせに恵まれているなと内心では思っていた。UAEはJリーグの横浜Fマリノスに似ていて、フィジカルを前面に出すタイプではない。パスをつなぎながら、10番のオマルにボールを集め彼の捌きで攻撃を組み立てるチーム。ベスト8に残ったチームの中では、UAEは日本が最も与しやすい相手と思えた。
●戦犯は本田と香川
(1)ミス連発の本田はモチベーション喪失
結果はごらんのとおり、日本のPK負け。PK負けは記録上引分けであるから、UAEには負けてはいないが、勝ててもいない。試合内容の詳細は省くとして、大雑把にいえば、日本は勝てる試合を自滅により自らを敗北に追い込んだといえる。PK失敗が日本のエース、本田、香川だったというのも皮肉というほかない。もちろんUAEに勝てなかった要因はPKを外した二人だけにあるわけではないものの、筆者がしばしば当該コラムに書いてきたとおり、日本サッカーの凋落を象徴する敗戦だったとはいえる。
本田、香川はしかしながら、擁護することもできない。本田はGS(グループ・ステージ)の3試合において、決定機をことごとく外していたし、香川も得点に絡むシーンが少なかった。本田の場合、彼のミス連発は、彼が本大会に臨むモチベーションを失っていたことの証明となろう。本田がPK戦のトップのキッカーに起用されながら、とんでもないミスをやらかしたのは、南半球のオーストラリア、真夏のバカンス気分が抜けていなかったからだ。
(2)香川再生はセレッソ大阪への復帰が一番
一方の香川は重傷で、彼はこの大会において再起のきっかけをつかもうと一生懸命プレーした。それでも結果が出せないうえ、PK戦敗北のA級戦犯になってしまった。最悪の結果だ。
その香川を再起させる方法は、筆者の直観ではJリーグに復帰することだ。ちょうど出身クラブのセレッソ大阪がJ2に降格した2015シーズン、香川はJ2全試合出場を目指して、地道に必死に、おのれの身体・精神・技術について原点を探りつつ鍛えなおしたほうがいい。言語と文化の異なるヨーロッパで再起することは、かなり難しい。香川のサッカー選手としての基礎的な部分、トラップ、フェイント、走り込み、シュートチャンス等の感覚に狂いが生じているわけで、それを修正する方法としては日本で無心にプレーすることが最善だと筆者は思っている。
●日本の失敗
(1)世代交代に失敗
本田がモチベーションを喪失し、香川が自信を喪失し、長友が120分戦えない身体の衰えを見せたことは、繰り返すが、日本が世代交代期に差し掛かっていることの象徴だ。香川は年齢としては若いものの、彼の精神と肉体は、ドイツに帰国後ドルトムントで控えが続けば、衰退してしまう。若い才能も使わなければ枯渇する。彼らに追いつき追い越しそうな才能はいるのだろうか。遠藤の後継者は柴崎が内定しているが、攻撃陣の清武、乾、武藤、小林らが、本田、香川、岡崎を越えられるとは思えない。選手層が厚いと思われていたSBだが、長友がそろそろ限界に近づき、内田(本大会不選出)は故障が多い。彼らに代わる人材は?
(2)アジア杯の位置づけに失敗
日本代表はアジア杯の戦略的位置づけを誤った。優勝すればコンフェデ出場が約束されるから、世代交代を無視してブラジル組を中心とした代表選手構成で臨んだ。優勝を狙いに行きながら、それが果たされずベスト8にとどまった。結果がすべてのプロスポーツの場合、この結果は最悪だ。本大会から日本が得たものは何もない。プラスがなくマイナスばかり。
日本以外のアジアの強豪といわれるチームの試合を見ると、日本の試合より激しい。順位は別として、オーストラリア、韓国、ウズベキスタン、イランがフィジカルと闘争心を前面に出して戦う姿勢を貫いている。本大会、日本が上記の4チームと対戦することなく脱落したことは日本のアジアにおける今後を占う機会を失ったという意味で誠に残念に思う。かりに若手中心で臨んでいたら、ベスト8、ベスト4・・・という真剣勝負が体験できたかもしれない。そこでの敗北ならば意義もあった。つまり、日本は若手育成のチャンスを逃したばかりか、アジアの強豪国(オーストラリア、韓国、イラン、ウズベキスタン・・・)と真剣勝負で戦う機会も逸した(もちろん組合せ次第なので、上記すべてのチームと試合ができるわけではないが)。
(3)選手の疲労を考慮しなかったアギーレ采配の失敗
戦い方においても反省すべきところが多い。GSの3試合及びKDSの1試合の計4試合、すべて同じメンバーで戦ってしまった。その結果、UAE戦の延長でチームが破綻をきたした。前出の長友の故障だ。ケガは予知できないのだから仕方がない、という善意の見方もあるが、結果がすべてのプロスポーツの世界、アギーレの選手起用を失敗とみなさなければいけない。GSのイラク戦またはヨルダン戦で、ターンオーバーを採用すべきだった。それができなかったとするならば、代表選手層が薄いということになる。
(4)途中交代選手の活用に失敗
UAE戦において途中交代の柴崎が同点弾を放ったのでこの件はあまり目立たないが、途中交代で入ったFW(ワントップ)豊田にボールが集まらないのはどういうわけか。明らかに、豊田をスポイルする意図が選手間に働いていたと見做すべきだ。つまり、センターFWにボールを集めてそこから攻撃を組み立てるパターンを監督の意図に反してピッチの選手が行わないということ。そのために日本の攻撃時間が浪費され、得点機会が減ってしまった。
善意に考えて、ワントップの豊田を囮にするという意図も考えられるが、囮にした攻撃が見えたかといえばそんなこともなかった。さらに善意に考えて、ピッチの選手たちがカウンターを警戒したのではないか、という反論も成立しない。相手にボールを取られる確率は豊田を使っても使わなくても変わりないし、監督が豊田を使えとピッチに送り出したのだから、その攻撃パターンに集中しなければ嘘だ。
筆者の推測では、本田が他の選手に影響を与えているのではないかと思う。本田は本田以外のワントップの選手に当てて攻撃を組み立てるパターンを嫌っている節が見受けられる。ブラジルW杯アジア地区予選の前後に行われた親善試合においても、豊田と同じようなタイプのハーフナーマイクが機能しなかった事例がある。
それだけではない。ブラジルW杯本大会では、なんとDFの吉田が前線に上がりパワープレーのワントップとして起用された事例も思い出される。そうまでしないと、本田の影響力が浸透した日本代表においては、身体能力の高いワントップが活用されない。本田と心中して惨敗したザッケローニの誤りをアギーレが払拭できないのならば、日本は強くならない。
●アギーレを見切り、新監督の下で再生を
このことも当該コラム(「アギーレに期待しない」2014年7月25日)に書いたことだけれど、アギーレ監督の力量では日本代表は再生できない。筆者が「アギーレに期待しない」を書いたのはスペインにおける八百長疑惑が報道される前だったのだが、疑惑及び能力不足をセットにして解任すべきだ。この時点で代表監督を探そうにも、優秀な人材は見つけられない――と悲観することはない。超一流、一流は無理だが、「トルシエ」クラスならば探せる。いまさらトルシエではないが、彼くらいの力量と経験の持ち主なら、世界を探せば契約可能だ。世界各国、代表監督の交代など、珍しいことではない。
2015年01月17日(土) |
日本、イラク戦に凡庸な勝利――アジア杯 |
アジア杯、D組第二試合・日本対イラクは予想外の展開だった。前評判の高かったイラクだったが日本戦は弱かった。強いプレスはなし、球際の強さもなし、カウンターも速くない。DFでは、自陣ペナルティーエリアの両隅がケアできず、日本の二列目(乾)の走り込みをたびたび許し、再三ピンチを招いた。
結局のところ日本のミス(本田が3本決定機を外した)連発により、90分間で両軍があげた得点と言えば、ペナルティーの1点だけ。その1得点も主審が日本に与えたプレゼントで、欧州のリーグ戦なら絶対に笛はない。
イラクが弱体化した要因は不明。若い選手が委縮したこと、高温多湿の気候に順応できなかったこと、日本がうまかったこと――なのかもしれないが、レベルの低い凡戦だったという事実は変わらない。
日本とイラクの試合が行われたブリスベンでは、本日(17日)、開催国オーストラリアが韓国と戦い、0−1で負けた。両者ともGS突破を決めていたので消化試合ともいえるが、気合が入った激しい試合だった。日本対イラクとは雲泥の差。フィジカルを前面に出した、まさにW杯ブラジル大会を契機とした世界のサッカー・トレンドを明示する内容だった。
1日の差でブリスベンの温度湿度が急変したとは考えにくく、韓国・オーストラリアのファイティングスピリットは、日本・イラクのそれを大きく上回っていたようだ。昨日の日本・イラク、そして今日のオーストラリア・韓国の2試合を比較することによって、日本のコンディションが上がっていないことがわかる。
筆者は、けが人とコンディション不良選手が多い韓国を買っていなかったが、控え選手をやりくりして、調子を上げてきたようだ。GS3試合を1−0で勝ち続けた守備力と粘り強さは侮れない。韓国株上昇とみた。
さはさりながら、内容はともかく日本がイラクに勝ったことにより、日本のGS突破の可能性は高まった。筆者の予想は外れたわけだが、日本がベスト4に残る可能性はかなり低いと思うことに変わりない。
2015年01月15日(木) |
アジア杯、日本はベスト8どまりか |
アジア杯がいま、たけなわである。すでにグループステージ(GS)が進む中で順位予想というわけにはいかないので、アジア各国の印象をまとめておこう。つまり本稿は順位予想ではなく、実力診断ということになる。
◎優勝は開催国オーストラリアか
さて筆者の見方によれば、本大会実力ナンバー1は地元開催国オーストラリア。優勝候補、まさに本命だ。コンディション、モチベーション、技術、運動量・・・総合力で群を抜いている。
対抗はイラン。鉄壁の守備、スピードとパワーは脅威だ。このチームに先制点を与えたら勝ち目はない。
大穴はウズベキスタンと中国。ウズベキスタンはW杯アジア予選において日本を何度も苦しめてきたのだが、勝負所で勝ち点を落とし、W杯出場を逃している。中央アジアから東アジアの移動がコンディションを狂わせてきたのだろう。アジア杯は移動距離の短い一国での大会。ウズベキスタンの実力が少なからず反映される。ただしGSで中国に負けているので、第三試合のサウジアラビア戦に勝たないと予選敗退になってしまう。
本大会の中国のできは良い。難敵ウズベキスタンに勝っている。フィジカルの強さを武器にするスキルを身に着けてきた。問題は精神面。一発勝負のノックダウンステージ(NDS)で実力が発揮できるかどうか。
◎日本のチーム状態は最悪
さて、ベスト4に当然日本を入れるべきだろうが、チームの状態はよろしくない。まずもって日本がベスト4から外れる要因の第一がモチベーション不足。このことは何度も拙コラムで書いてきた。W杯ブラジル大会で惨敗した日本代表の主力――本田、長友、香川、岡崎、長谷部、遠藤らがアジア杯のレベルで闘争心をもって臨める理由がみつからない。彼らは4年前から2014年(W杯本大会)の道程――アジア杯優勝→W杯アジア予選→コンフェデ出場→W杯――を経験してしまった者たち。一度頂上を極めた者に再び頂上を目指せと叱咤しても身体が動かない。頭では「アジア杯優勝」を目標にしていても、身体がついていかない。加えて、夏のオーストラリアという気候の激変も、モチベーションを奪うはずだ。
海外組は厳冬のヨーロッパでシーズン真っ最中。シーズンの緊張から解放されて真夏のオーストラリアとなれば、リゾート気分に近いだろう。ケガも心配だから、危険なプレーは回避するにちがいない。国内組はJリーグが閉幕したオフシーズン。コンディションがいいはずがない。日本代表には不利な材料が揃いすぎているのだが、それらを克服するカギはモチベーションだ。つまり、頂上(2018年W杯ロシア大会)を極めるのだという意識性にほかならない。
◎日本はイラン、UAEに勝てない
日本代表選手にモチベーションがなければ、アジアの頂点を本気で狙いにくるイラン、イラク、中国、韓国、UAE、オーストラリア、ウズベキスタン(サウジアラビア)のいずれかとKDSで当たっても勝てない。サッカーの公式戦では技術や経験よりも、闘争心とフィジカルが勝利に結びつきやすい。
この先の日本の展開だが、D組の次戦イラクに負けてヨルダンに勝ち、GSを2位で抜け、KDSではC組の1位(イランまたはUAE)に負けるという見通しが一つ。
最悪のシナリオは、D組のイラク戦、ヨルダン戦に連敗してGS敗退であるが、その可能性もなくはない。
なお、アギーレ監督の八百長疑惑の影響はあるのかないのか――は興味あるところだが、影響は軽微だと思われる。勝っても負けても、その要因に「疑惑」が占める割合は極めて低い。
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