Sports Enthusiast_1

2013年03月27日(水) 闘わぬ者に勝利の女神は微笑まない。

W杯アジア地区予選で日本はヨルダンに1−2で敗れた。この試合を引き分け以上で終われば、ブラジル行きが決まったのだが、予選突破は持ち越された。

●敗因はただ一つ、ミスを重ねた選手たち

試合内容については省略する。スポーツメディアには批判、激励、そして、相も変わらず、“アウエーの洗礼”の見出しがオンパレード。日本中が“アウエー恐怖症”に陥っている。「海外」がそんなに怖いのか?

敗因は選手にある。ザッケローニ監督にあるわけではない。レーザービーム光線で日本選手を妨害したヨルダンサポーターにでもない。「中東の笛」とよばれる不可解なジャッジをくだす審判でもない。この試合の主審(イラン人)の笛は公正で確かなものだった。Jリーグの笛より基準が明快だったとさえいえる。

選手の惨状を思い浮かべられる範囲で列挙してみよう。

(1)数回の決定機を決められなかったFW前田。
(2)前半ロスタイム、CKのぶつかり合いで、あっさりマークを外されたFW岡崎。岡崎はフィジカルが弱すぎる。
(3)0−1の後半15分、ミスからボールを失い、裏のスペースをつかわれたDF(左SB)酒井高。
(4)酒井高が失ったボールを受けたハイル(ヨルダン)のマークにつきながら、ハイルのスピードについていけなかったDF(CB)吉田。
(5)さらに、ゴール前をカバーしなかったDF(CB)とMF(ボランチ)。
(6)たびたびシュートを打てるポジションとタイミングにありながら、パスを選択し続けたMF清武。
(7)相手の左サイドからの攻撃に脅かされ続けたDF(右SB)内田。
(8)相手が引き気味なのに、空いているスペースに入り込まないMF(ボランチ)長谷部と遠藤。日本が放ったミドルシュートの数は何本あっただろうか。
(9)極めつけは、PKを外した、これまたMF遠藤。

これだけ致命的ミスが重なれば、アウエーもホームも関係なく勝てない。ヨルダンにもミスはあった。日本が香川の得点で1−2に迫った時、ヨルダンはかなり焦っていたし緊張していた。しかも、足が動かなくなってきた。内田が得たPKは日本にとってラッキーだった。PKをとらない審判もいただろう。勝利の女神はおそらく、このとき、日本に微笑んだのだ、どうぞブラジルに行きなさい、と・・・ところが、日本はその機会を失ってしまった。

日本の敗因をもう1つ挙げるならば、残念ながら、本田と長友の不在ということになる。香川には、この二人がもつカリスマ性、精神面の強さを埋め合わせる役割が果たせなかった。年齢もあるだろうし、資質もあるだろう。香川だけではない。ピッチに立った選手たちに闘う意志がない。勝とうとする意欲がない。エリート意識だけが先走り、その陰で代表に選出されなかった選手たちの無念の気持ちを晴らすようなパフォーマンスを見せようともしない。気迫に満ちたヨルダンの選手をかわそう、すかそうとする。おしゃれなプレーを見せようとする。そんなのはサッカーではない。日本では褒められるのかもしれないが、世界では通用しない。本田と長友は、日本選手が陥りがちな消極性を払しょくさせるパワーをもっている。俺がやるんだ、という強さが見られる。

こうしたミスと消極性はどこから来るのか。アウエーだからか。それもあるだろうが、今回の代表選手の精神力の弱さに起因する。アウエーの試合の経験不足からくる。このコラムでたびたび書いていることだけど、日本代表の国際親善試合は概ね、日本ホームで、しかも、できそこないの海外の代表チーム(長旅でコンディションは最悪の状態)との試合ばかりが組まれている。これでは、強化につながらない。

●ザックとジーコ、失敗の繰り返し

この敗戦を機に、ザッケローニのW杯予選突破のための方法論の検証も必要だろう。頑なに自分の気に入った選手を固定して使い続ける手法は、ドイツ大会のときの代表監督であったジーコ(ブラジル)と似ている。両者はどちらも代表監督の経験がなく(ジーコはクラブの監督経験すらなかったのだが)、クラブの監督の方法論を代表に踏襲している。人間関係を含めた、熟成したコンビネーションがチームを強くするという哲学で一貫しているように見える。

ザックが選択した選手たちだけに可能性があるのだろうか。筆者には疑問が残る。たとえば、Jリーグ得点王の佐藤寿人(広島)を使わない理由は何か。DF(CB)はなぜ今野なのか。闘莉王をなぜ入れないのか。ボランチは、なぜいつまでも遠藤、長谷部なのか・・・

アウエーの戦い方のノウハウがない点でも二人は共通している。日本サッカー協会は、ジーコが犯した過ちを、ザックで繰り返してはいないか。

●ひょっとすると「ドーハの悲劇」が再び??

さて、日本は勝点13のまま、6月4日にホームでオーストラリアと戦う。順位表をみると、オーストラリアは勝点6で3位。日本に勝ったヨルダンが勝点7で2位。6月、オーストラリアにしてみれば日本に勝って、勝点3を上げなければ、予選3位で終わってしまう可能性が濃厚となってしまう。日本戦は必死だろう。このままの状態で日本がオーストラリアに負けると団子状態の混戦となり、予選結果は最終試合(アウエーのイラク戦)にまで持ち越されることもある。

イラクは、日本のW杯アメリカ大会行きを阻んだ因縁の相手。W杯アメリカ大会予選における日本とイラクの戦いは「ドーハの悲劇」としてオールドサッカーファンの心に刻み込まれている。もちろん、次も日本が苦手とする、中東におけるアウエー戦である。再び日本中がアウエー恐怖症に陥って騒ぎ出すのか。それも、ぞっとする話である。

日本は引き分けでW杯行きを決められたヨルダン戦を落としたことで、「楽々予選突破」の情況から、一気に「予選敗退の可能性」にまで転がり落ちてしまった。

「入れるべきところで入れないと…」というのは点取りゲームの鉄則。サッカーはその代表ともいえる。日本が勝点1を取れる試合を落とした代償が、予想以上に大きなものとならないことを祈るばかりである。



2013年03月26日(火) 2013日本プロ野球順位予想

今年はWBCがあったその影響から、序盤に波乱が予想される。とはいえ、セリーグは戦力的にみて読売の優位は動かない。一方のパリーグは実力のある選手数人がMLBに移籍したこと及び下位チームが積極補強をしたことにより、各チームに戦力的な差異が生じていない。よってパは混戦とみた。

[セリーグ順位]
(1)読売、(2)広島東洋、(3)東京ヤクルト、(4)中日、(5)阪神、(6)横浜DeNA

[パリーグ順位]
(1)福岡ソフトバンク、(2)北海道日本ハム、(3)東北楽天、(4)オリックス、(5)埼玉西武、(6)千葉ロッテ

セの読売は戦力的に見てリーグでダントツ。投手陣はほぼ万全だろうが、敢えて不安材料を探せば左投手が手薄なところか。まず、ブルペンだが、左投手で実績のあるセットアッパー山口は、これまでの登板過多による疲労の蓄積であろうか、WBCでは実績を残せなかった。おそらく、昨年ほどの活躍はできまい。

昨シーズンまでの左の中継ぎ投手としては高木康と高木京が思い浮かぶが、どちらも山口の代役を務められない。高木京が先発にまわれば、左の中継ぎ、抑えがかなり手薄となる。読売の最大の弱点だろう。先発も不安である。杉内は故障持ちで、フルシーズン持つか怪しい。エースと呼ばれる内海もWBCでは不調だった。内海も昨シーズンがピークだと思われ、おそらく下り坂に向かう。

とはいえ読売を脅かすような球団がない。2位にした広島東洋は投手陣が整備されてきたことから、大崩れはなさそう。打撃陣が奮起すれば上位は確実だ。東京ヤクルトも投手は数が揃っている。課題は打撃陣で、WBCでバレンティンが故障したが、開幕に間に合うのかどうか。楽天では実績を残せなかった元メジャーの岩村が復活すれば、打線に厚みが出るのだが。

“史上最大の補強”と前評判の良い阪神だが、元メジャーの西岡、福留には期待できない。とりわけ福留は、現役限界ラインに到達しているように思える。さらに深刻なのは、投手陣で、抑えの藤川の代役が埋まっていないままだ。

中日、横浜DeNAは投手陣が悪い。中日は大幅に戦力が抜けたのだが、それに見合う補強ができたとは思えない。中日の外国人をそっくり移籍で獲得した横浜DeNAも投手陣が手薄。

パリーグでは昨年王者の北海道日ハムが田中・糸井が抜けた大穴が補強でないまま、シーズンインしてしまった。そんな事情が反映して、新人大谷をキャンプ〜オープン戦で打者兼任をさせてしまったが、愚策である。大谷を投手に専念させ、シーズン開始から戦力とすべきだった。斉藤祐樹のルーキーイヤーよりも戦力となるはずだ。中途半端な育成計画の挙句、大谷の一軍登板はかなり遅くになりそう。今シーズン、大谷の投手としての出場機会は、あっても、短いイニングにとどまるだろう。

パリーグは戦力が拮抗していて、どこが優勝するかわからない。筆者の予想順位は、ポストシーズンに残る可能性が高い3チームという意味だが、ダークホース的な存在なのがオリックス。移籍してきた糸井、復活した坂口、さらにT−岡田、イデホと並んだ重量打線は驚異的破壊力がありそう。筆者は、打撃陣魅力満載のオリックスを応援している。



2013年03月24日(日) 藤波は難しい

今年のプロ野球の話題の新人投手、大谷(日ハム)・菅野(読売)に続いて、藤浪晋太郎投手(阪神)のオープン戦登板の様子をCATVで見た。結論から言えば、3人の中で最も劣る。弱点は以下のとおり。

(一)フィジカルが弱い。
身長はあるが、その分、下半身・体幹が鍛えられていない。フィジカル面で大谷、菅野に相当見劣りする。この日の相手であるオリックスの打者は、長いリーチに最初戸惑って凡退を繰り返していたが、球数が90球を超えたあたりから球の威力が落ち、打ちごろの半速球になったところを連打された。

(二)投球フォームが悪い。
▽肘が下がり気味で、高めの速球に威力がない。いわゆる浮き上がるような感じがない。最速で140キロ台後半(筆者が見た限りでは3球くらい)で、概ね速球はよくて140キロ台前半どまり。球筋はややシュート回転気味で、いわゆるクロスファイアーが投げられない。よって、左打者に打たれやすい。
▽力むと極端に頭が揺れ、キャッチャーミットから目線が離れる。この極端なヘッドの揺れは、下半身と体幹が弱いため、上体のバランスが崩れる結果だろう。このままだと、故障しやすい。

(三)走者を背負ったときのクィックができない。
藤波の特徴は球を長くもとうとする意識が投球フォームに反映されていて、その結果、彼の長いリーチが生かされ、慣れない打者はタイミングがとりにくくなる。ところが、走者を背負うと、盗塁を警戒して球持ちが早くなり、球速が極端に落ち、ボールの出所も打者から見やすくなる。しかも、バランスを崩す場合が多い。

反対に藤波の良さは、落ちるボールを筆頭に変化球のコントロールが良いこと。この状態のままならば、プロでは変化球投手の位置づけで終わる。一軍登録したとしても、出番は短いイニングの中継ぎか、敗戦処理くらいだろう。もちろん、年間ローテーションの一員とするのは無理である。

筆者が阪神の投手コーチならば、入団年の今年は一軍登録を諦める。身体を鍛えなおし、一年間、投げられる肉体を作り上げることに専念させる。そののち、投球フォームの修正を図る。それでもスピードが出ないのであれば、サイドスローに改造する手もなくはない。腰の回転がサイドに向いているような気がする。スライダー、シンカー、カットボールを磨いて、かつて読売で活躍した斉藤雅樹のような投手になれば、儲けものである。

いずれにしても、戦力として計算できるようになるには相当な時間を要することだろう。



2013年03月22日(金) WBC――質の低さが露呈

WBCは日本が準決勝でプエルトリコに敗れ国内の「フィーバー」が終わった(優勝はドミニカ)。フィーバーといっても、サッカーW杯とは異質なもので、大騒ぎしているのは放映権を獲得したテレビ局だけ。東京大会で予選を勝ち抜けた侍ジャパンはすぐに米国アリゾナに移動し、本番はサンフランシスコという強行日程だった。ホームでは驚異的な粘りを見せた日本だったが、アウエーでは体力面・精神面で疲労が蓄積していた模様で、プエルトリコのパワーベースボールに手も足も出なかった。

●「侍ジャパン」監督・コーチの人選に問題あり

優勝を逃したからではなく、「侍ジャパン」には批判が多かった。プエルトリコ戦の重盗失敗がそのことを象徴している。2点を追う8回1死一、二塁で打者4番という絶好機、得点差を考えれば、4番打者の長打(最低限シングル)を期待したい場面だ。そこで、ダブルスティールのグリーンライト(行ければ行けの重盗サイン)はあり得ない。しかも、相手の捕手はMLBでも強肩が売り物のモリーナである。常識では絶対にありえないサインである。二塁走者井端は当然、自重したのだが、一塁走者が走ってしまった。一塁走者のスタートはよかったが、二塁走者が走らなければどうしようもない。

この作戦に象徴されるように、山本には日本代表を率いる能力が不足していた。コーチ陣に対する批判もあった。とりわけ、ピッチングコーチの不真面目さが問題視された。

●緊張感を欠いた選手たち

選手も合宿中に写真週刊誌に不倫場面を報道されるなど、緊張感が欠けていた。選手の人選にも問題があった。とりわけ、昨年の日本チャンピオン・読売の選手(沢村・内海・杉内・山口・阿部・坂本・長野)が不振で、前出の重盗のサインも4番阿部が不振であったことが背景にあったはずだ。阿部が好調だったならば、重盗のサインもなかっただろう。写真週刊誌の報道されたのも読売の投手だった。

●日本ではテレビ局だけが「フィーバー」

WBCはMLBと日本の大手広告代理店が仕組んだイベント。しかも主催側のMLBが米国代表チームに有力選手を送り込まないのだから、コンテンツとしての質は低い。中南米各国は本気かもしれないが、そもそも野球大国の米国、日本のMLB選手が出場しないのだから、どうしようもない。米国では、公式大会として認識されていないともいわれる。日本の野球ファンもWBCのクオリティに疑念を抱いていて、概ね、冷静にこの大会を受け止めているように思える。当然、国民的な盛り上がりには至っていない。日本プロ野球選手会は、当初、大会出場辞退を表明していた。そういう選択肢も今後、大いにあり得る。



2013年03月17日(日) 菅野の「好投」に疑問符

読売のドラフト(破り)1位、菅野智之投手が14日の広島戦で「好投」した。この結果を受けて、菅野の評価は高まり、新人でローテーション入り間違いなしを断言した評論家氏もいた。

筆者は菅野の投球をCATVで見たのだが、なんとも不思議な「好投」だった。菅野の投球内容は、ストレートの球速がTV表示で140キロ台。最速で149キロだった。球筋は相変わらずシュート回転で、この日は右打者の外側からホームベースの右端をかするもの。この球筋をこの試合の球審が悉くストライクにとった。広島打線はこの球筋をボールだと判定して手を出さなかった。変化球はフォークに落差があった。その結果、6回2安打無失点8奪三振と、開幕シリーズで戦う広島を封じ込めた。

広島の2安打は、左打ちの安部友裕内野手(23)が放ったもの。3回1死走者なしで、外角141キロを左前打、6回1死走者なしではカーブを再び左前に運んだ。この2本がチームの全安打となった。シュート気味の速球は左打者には左方向を狙えば、ヒット、長打になる確率が高いことは、先の当コラムにて書いた通り。

さて、筆者の想像にすぎないが、広島打線の中軸はこの日、敢えて菅野を打たなかったのではないか。読売とは同じリーグに属し、しかも開幕シリーズで当たる相手。手の内を見せる必要はない。新人投手の菅野を潰す戦略もなくはないが、それよりも菅野の投球をじっくり見るという選択肢もある。とくに外国人打者のルイスは球審の判定にあきれて、打つ気をまったくみせなかった。

菅野のシュート回転のストレートが武器となるのか、彼の投手生命を短くするのかは断言できない。ただ言えるのは、ストレートがシュート回転で曲がる投手に本格派大投手はいないということ。せいぜい技巧派で終わる。しかも、パワーのあるMLBでは通用しない場合が多い。日本球界で本格派大投手と思われた松坂も、渡米後、肘の疲労の蓄積からストレートがシュート回転し、パワーのあるMLBの打者の餌食となった。けっきょくのところ、彼は肘の手術に追い込まれ、手術後のいま現在、低迷している。MLB復帰は難しいだろう。

菅野は早いうちにフォーム改造したほうが良い。



2013年03月10日(日) 大谷(日ハム)は超逸材だ

日ハムのドラフト1位指名選手、大谷翔平の投球をCATVで見た。▽フィジカルの強さを感じさせる、▽バランスがよい、▽投球フォームが合理的――と、抜群の才能を感じさせる内容だった。

大谷については、筆者はいい印象をもっていない。大谷自身が書いた筋書きだとは思わないが、彼の日ハム入団には密約があった、と筆者は思っている。そのことは散々すでに書いたことなので繰り返さない。

それはそれとして、とにかく、大谷は日本球界で何シーズンか投げる(打つ)ことが確実だ。日本の野球ファンは、若い才能をこの日本で見られることになって、幸いだ。大谷と同様に、「ドラフト破り」で読売に入団した菅野投手と比較するならば、大谷の方が素質的には数倍、優れているように思う。

この日の投球では、150キロ超のストレート、スライダー、カーブを披露した。難点は、第一に、リリースポイントが一定せず、体重が乗り切らずにリリース・ポイントが前にきたときはボールが抜ける。反対に体重が乗り切って、指がボールにしっかりかかったときのストレートは伸びがあって、打者はまず打てない。

第二の難点は、緩い変化球を投ずるとき、投球フォームが変わってしまうこと。肘も下がり気味で、この癖を見抜かれると、打たれることもある。ただ、高速のスライダーの場合は、ストレートのフォーム(腕の振り)と変わらないし、ブレーキが鋭く高低差がつく。これは相当の武器となろう。

調整段階でこれだけ高度な投球を見せた大谷。本番でも、ストレートとスライダーだけで、1イニングなら完全に抑えられるだろう。

変化球と速球のフォームを同じくするためのフォームの微調整は必要だが、大幅な矯正は不要だ。このくらいは、高卒ルーキーの課題としてはさほど深刻なものではない。この先、とにかく経験を積み、もう2〜3種類の変化球(たとえばチェンジアップ)をマスターすれば、数年間、先発で10勝以上は確実だろう。

問題は、投打の二刀流をいつまで続けるのか、投手専念と決まった場合、どの時期に、どういう形で起用するかであろう。筆者の見解では、まず、今シーズンから、できるだけ早い時期に投手専念と決めるが、先発起用はしない。持ち味のストレートとスライダー主体の投球に限定して、短いイニングの中継ぎで使う。フォームの微調整が完了したことを見届けて、先発ローテーション入りとする。もちろん、ローテーション入りは来シーズンからでもかまわない。焦らないことだ。

日ハムはダルビッシュが抜けた穴を、大谷で完璧に埋めたことになる。



2013年03月03日(日) 菅野(読売)、オープン戦で4回KO

読売・菅野智之のオープン戦登板を見た。相手は福岡ソフトバンク。結果は4回、8安打、4失点と最悪だった。解説のS氏(読売OB)も肘の下がったフォームの悪さを懸念していた。先回の当ブログの筆者の指摘をプロの目が認めてくれたことになる。

この日の投球内容の特徴は、カットボール、ワンシーム、トゥーシムといった抜け気味のボールが多かったこと。直球のコントロールが悪く、変化球でかわそう、という意図だったようだ。

中継のアナウンサー氏の情報によると、読売投手陣は概ねキャンプ疲れで、コンディションはよくないらしい。そういうときもあるだろう。菅野の場合、肘が下がっているから、疲労が溜まるにつれてストレートの球威が極端に落ちる。しかも、ストレートが自然とシュート回転し、右のパワーヒッターならばオーバーフェンス、左打者ならば左中間に飛ばされる。長打の被弾率は高くなる。

シュート回転系の投手の場合、コンディションがいいときにはクセ玉となって、左打者からは遠くに決まり、右打者ならば詰まらせて、抑えるケースもある。しかし、100球程度、中5日の登板を続けていくうちに肘に疲労が蓄積し、2〜3シーズンで壊れる場合が多い。

むろん、例外もある。MLBの大投手・ランディ・ジョンソンである。彼の場合、スリークォータ気味のフォームで25年間もMLBで投げ続け、サイ・ヤング賞を5回獲得している。全盛期には、160キロを超える速球、高速スライダー、スプリッター、ツーシームを駆使して、強打者から三振を奪い続けた。

だから、肘が下がっているから悪い投手だとは確言できないのだが、ランディ・ジョンソンはきわめて特殊な才能をもった投手であって、フィジカル面でも菅野と比較はできない。しかも、抜いたボールよりもスライダーを得意とした点で菅野とは特徴が異なる。

オープン戦では前回登板で好投し、今回登板でKO。次回、好投すると、“調子次第”の一言で片づけられてしまうかもしれないが、筆者が投手コーチならば、ルーキーイヤーの今シーズンは二軍でフォーム改造に取り組ませる。もちろん、一軍ローテーションには入れない。

学生野球の輝かしい成績を引っ提げて、ドラフト破り(日本のスポーツ・マスコミ用語で「浪人」)した「巨人軍監督」の甥という「ゴールデンボーイ」を、読売球団がどう育てるかが見ものだ。



2013年03月01日(金) 2013・J1順位予想

早いもので、J1の予想を掲載する季節がやってきた。きょうから3月なのだ。2013・J1順位を、以下のとおり予想する。

(1)名古屋グランパス、(2)FC東京、(3)川崎フロンターレ、(4)浦和レッズ、(5)柏レイソル、(6)鹿島アントラーズ、(7)清水エスパルス、(8)大宮アルディージャ、(9)セレッソ大阪、(10)サガン鳥栖、(11)ジュビロ磐田、(12)横浜F・マリノス、(13)サンフレッチェ広島、(14)ベガルタ仙台、(15)アルビレックス新潟、(16)ヴァンフォーレ甲府、(17)湘南ベルマーレ、(18)大分トリニータ

◎2012シーズンの順位

昨シーズンの順位をおさらいしておこう。

(1)サンフレッチェ広島、(2)ベガルタ仙台、(3)浦和レッズ、(以上、ACL出場枠。もう1枠は、天皇杯優勝チームの柏)、(4)横浜F・マリノス、(5)サガン鳥栖、(6)柏レイソル、(7)名古屋グランパス、(8)川崎フロンターレ、(9)清水エスパルス、(10)FC東京、(11)鹿島アントラーズ、(12)ジュビロ磐田、(13)大宮アルディージャ、(14)セレッソ大阪、(15)アルビレックス新潟、(以下、J2降格枠)、(16)ヴィッセル神戸、(17)ガンバ大阪、(18)コンサドーレ札幌

昨シーズンのサプライズは、強豪のG大阪と積極補強で前評判が高かった神戸の降格。たしか昨年のいまごろ、ザッケローニ代表監督が、J1の注目チームの1つとして神戸を挙げていたことが思い出される。プロの目から見ても神戸が降格するとは思っていなかったようだ。

もちろん、G大阪の降格も神戸以上の驚き。G大阪の場合は、監督人事のミスという、フロントの失敗が主因。選手の責任は薄い。ただ、日本代表のDF今野がチームになじめなかったことも大きな痛手であった。ダメなときは、いろいろとあるものだ。

◎ACL出場とリーグ順位の相関性

さて、2011年の順位表をみてみると、(1)柏レイソル、(2)名古屋グランパス、(3)ガンバ大阪、(4)ベガルタ仙台、(5)横浜F・マリノス、(6)鹿島アントラーズ、(7)サンフレッチェ広島、(8)ジュビロ磐田、(9)ヴィッセル神戸、(10)清水エスパルス、(11)川崎フロンターレ、(12)セレッソ大阪、(13)大宮アルディージャ、(14)アルビレックス新潟、(15)浦和レッズ、(降格)(16)ヴァンフォーレ甲府、(17)アビスパ福岡、(18)モンテディオ山形――となっていた。

ACLに出場した柏、名古屋、ガンバ大阪(もう1チームは、天皇杯優勝チームの当時J2優勝のFC東京)の上位3チームが、いずれも順位を下げた。柏が前年の優勝から6位へ後退、名古屋が同2位から7位へ後退、G大阪は同3位から17位と一挙にJ2に降格した。J2優勝で昇格したFC東京は天皇杯を制しACLに出場したのだが、J1では10位と振るわなかった。

ACL出場クラブは、リーグ戦で昨年より順位を落とすことが少なからず起こり得る。理由は簡単で、シーズン開始前の移動とアウエーの戦いでコンディションを崩し、リーグの序盤に流れをつかめないためだ。フィジカル、メンタル両面のスタミナ不足及び選手層の薄さが、ACLとリーグ戦との両立を阻む。これを克服するにはとにかく、チーム戦力アップを象徴する補強が重要となる。選手層の厚さが順位を上げる、といって過言でない。だから、予想も、補強を中心にして立てることになる。

◎戦力補強では浦和がダントツ

2012シーズン優勝した広島は、目立った新戦力の補強はない。DF森脇良太が浦和に移籍した分、戦力は低下している。新人の台頭があったとしても、この選手層でACLとリーグの両立は困難だろう。

昨年2位の仙台には、MF佐々木勇人(←G大阪)、MFヘベルチ(←草津)、MFジオゴ(←レシフェ)が加入した。ジオゴがどんな選手かわからないが、それほどの戦力とは思えない。MF関口訓充が浦和に移籍した分と相殺して、ほぼ前年と変わらない。ACLに出場する分、チーム力はマイナスとなろう。広島と同様、ACLとリーグ戦の両立は困難とみる。

昨年3位の浦和は、DF森脇良太(←広島)、DF那須大亮(←柏)、MF関口訓充(←仙台)、FW興侶真三(←鹿島)と、大幅な戦力アップを図った。ACLを無難に乗り切れば、上位はもちろん、優勝戦線に絡める力はある。

柏もいい補強をした。DF鈴木大輔(←新潟)、MF谷口博之(←横浜F・M)、MF狩野健太(同)、FWクレオ(←中国・広州)と、手堅い人選だ。なかでも、長身のFWクレオの加入は、課題だったポストプレーが可能となり、攻撃の選択肢を増やすことになった。ただし、ネルシーニョが採択しようとしている3バックは、どうだろうか。

優勝候補にした名古屋は、昨シーズン故障したケネディ、ダニルソンがいまのところ順調に仕上がっているようだ。FW矢野貴章の加入もプラス。ベテラン中心のチームだが、ACL出場がないぶん、チームコンディションは維持できる。ベテラン選手が「最後の花」を咲かせるシーズンではないか。

◎2013シーズンは大混戦

2013シーズンは、全体として、補強におけるサプライズはない。期待された欧州・南米のビッグネームの加入もない。若手の欧州移籍もほぼ出尽くした感があり、グローバルな選手間の動きが少なく、なんとも寂しい。このままならば、Jリーグにおける(サッカーの)ガラパゴス化が心配される。唯一の発展の道は、若手の成長と既存戦力の底上げという独自進化しか残されていないというわけ。

そんなこんなで、順位予想のモチベーションも低くなる。大雑把に言えば、どこが優勝してもおかしくないし、どこが降格しても不思議ではないということ。強豪が特化されている欧州有力リーグ(プレミア、スペイン、セリエ・・・)のあり方が理想だとはいわないが、人気、実力において世界レベルのクラブチームがJリーグ出現しないかぎり、日本サッカーの未来は暗い。


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