Sports Enthusiast_1

2010年02月27日(土) 早く終われ、冬季「五輪」

筆者は冬季「五輪」が嫌いである。個人の趣味の問題として。

五輪というのは、確か5つの大陸を象徴するはず。冬季「五輪」は筆者の受け止めとしては、「二輪」と半輪くらいであろうか。北半球の欧州と北米にアジアでは中国、韓国、日本が参加しているにすぎない。

国民的関心を呼んだ、フィギュアスケートも筆者からみると、スポーツとはいえない。筆者は、採点競技すべてを、五輪から外すべきだと考えている。もちろん、フィギュアのW杯があってもいいし、体操もそう。五輪にはないが、フィギュアというか、採点競技の極みはボディビルである。ボディビルが五輪競技にないように、フィギュアスケートも五輪には不要である。

採点競技には、審査する人間の主観が入る。当たりまである。そこに人種的偏見が加わる可能性を排除できない。審査員は、出場選手の個人的事情・背景、実績、名声・・・を考慮しないわけがない。もちろん、採点基準が公表されているが、それは技術点というカテゴリーに適用されるにすぎない。

身体の「美」、ポーズの「美」は、歴史的なものである。肉体や所作の「美」は、資本主義的生産様式に規定された、合理性がベースにある。そこから外れるものは下位に位置づけられ、規律と矯正が求められる(ミシェル・フーコー『監獄の誕生』)。労働におけるフォーディズムとフィギュアの採点基準は、合理性を最高の美とした優劣を競う点で同一である。資本主義社会は合理性に対して劣位にある者を矯正し、フィギュアの採点者は、合理性に対して劣位にあるものを下位に位置づける。

合理的なものとは、数ある体系の中の1つにすぎない(ロラン・バルト『表徴の帝国』)。たとえば、100メートルを走ってだれが一番早いかを競うには、いかなる偏見も歴史性も介入する余地がない。一方、採点競技には芸術点と称する主観性が結果に介入する。ここでいう芸術性とは、近代合理性を価値基準とした「美意識」に基づいている。そして、それは、悪しき近代主義=西欧偏重主義そのものである。女子フィギュアでは、アジア勢が金銀をとったではないか、と反論されるかもしれないが、金銀の韓国と日本の選手は、アジア人でありながら、西欧的美の表現において、他の西欧人より上位にあるという結果にすぎない。

近代五輪は、ナチス時代のベルリン大会において完成した。聖火もベルリン大会を起源とするから、20世紀の「儀式」にすぎない。ナチスドイツが聖火の儀式を五輪に取り入れたのは、古代アーリア人の宗教に拝火があったからである。ナチスドイツは自分たちドイツ人を、アーリアン(選ばれた民族)の子孫だと主張し、有色人種、セム族(ユダヤ人)を排斥した。ナチスドイツは、身体の各部位を測定し、「アーリア人」の基準を作成した。フィギュアスケートの採点とは、ナチスドイツの身体測定と同じようなものだと考えればいい。



2010年02月26日(金) 日本代表は、アジアのクラブの喧嘩ファイトを見習え

(1)災い転じて

W杯開催年の本年、スタートの東アジア選手権で、まったくぴりっとしなかったサッカー日本代表。岡田代表監督ついに解任かと噂されたが、協会の優柔不断でどうにか踏みとどまっている。そんな岡田に、朗報が入った。

1つは、スペインリーグではまったく通用しない中村俊輔が、横浜Fマリノスに復帰することが確実となったこと。エスパニヨ―ルで戦力外となり、リーグ戦に出場できないとなれば、中村俊を代表選手に選ぶことは難しい。試合に出ていない選手は代表に呼ばない、という既定方針があるからだ。スペインで不調でもJリーグならば十分、レギュラーでやっていける。だれはばかることなく、中村俊を選考できる。

2つ目は、大久保(神戸)の故障。故障した大久保には気の毒だと思うけれど、大久保が代表選考から外れることによって、岡田監督が描いている、間違ったFW構想に修正が及ぶかもしれない。

岡田監督は、岡崎(清水)、玉田(名古屋)、大久保の3人の中から2人をトップに入れて、スピードでゴールをゲットしようという戦法を基本としてきた。だが、この3人、全員がセカンド・トップタイプ。センターFWタイプではない。

そのため、日本代表の試合展開としては、ボールが前線におさまらず、後方の選手が攻撃に上がる時間が稼げない。その結果、人数をかけた攻撃ができにくく、攻撃に厚みと迫力が感じられない。代表の試合は、毎試合、毎試合、あたかも同じビデオが流れているかのよう。相手にボールを奪われないように、と、無意味な横パス、バックパスばかり。相手のバイタルエリアをかき回すことがない。相手DF陣が慌てない分、ゴールは遠い。いってみれば、アウトボクシング。腰が引けた軽いジャブばかり。攻守の切り替えが早いといえば聞こえはいいが、ちょこっとパンチを出して、さっと逃げ帰ってくる、そんな弱気なサッカーなのだ。

大久保が故障となると、FW候補として、昨年のJリーグ得点王・前田(磐田)の起用が浮上してくる。前田は高さがあり、ボールキープができて、右足でも左足でもシュートが打てる。大久保、玉田よりはスピードは落ちるけれど、代表チームの得点機会は増えるかもしれない。問題は、フィジカルがそう強くないこと。代表とJリーグのかけもちは無理という指摘もあり、前田を選ぶのもリスクが高い。

筆者がかねがね、指摘していたように、玉田、大久保はセカンドトップで機能するタイプ。大久保の故障を佐藤(広島)で埋めるという策もなくはないが、大久保が呼べなくなることで、森本(カタ―ニャ)、平山、前田の起用がしやすくなる。

難点は、岡田監督がこれまでのW杯予選、テストマッチ等において、森本・平山・前田を先発で使っていないこと。岡田監督が代表チームとして熟成、練成する期間に、攻撃の基本形を修正するというのもおかしな話だ。しかも、森本の場合、イタリアでの成績はぱっとしない。平山もJリーグでそれほどの実績があるわけではない。実績では巻(J2千葉)、高原(浦和)なのだけれど、昨シーズンは2人とも調子を落としていたし、2010年に完全復帰できる理由がない。矢野(新潟)も可能性があるが、リーグでは右サイドをやっている。日本のセンターFWは、まさに、“帯に短し、襷に長し”。

(2)ACL参戦のアジアのクラブチームに学べ

さて、W杯開催年であってもクラブはリーグ戦を戦わなければいけない。アジアではアジアクラブ選手権(ACL)が始まり、欧州では欧州チャンピオンズリーグ(CL)の熱戦が続いている。

ACLでは川崎(アウエー=A)、広島(ホーム=H)が負け、鹿島(H)が勝ち、G大阪(A)が引き分けた。筆者は、これら4試合の中継・ビデオを見ていないので、試合内容を評価することはできない。報道によると、Jリーグ勢がからんだ4試合はいずれも激しい試合だったようだ。川崎の主力中村憲があごの骨を骨折したというし、G大阪の選手も3、4人負傷したという。

試合を見ていないので、故障が相手選手の故意のファウルによるものなのか判断できないが、偶発的、故意を問わず、アジアのクラブチームは、日本のクラブに勝つため(日本のクラブは過去3回優勝)、かなり厳しくくる傾向にあることは間違いない。もちろん、汚いファウルはスポーツマン・シップに外れるが、激しく、厳しくいくことは悪いことであるはずがない。そうしなければ、日本勢の高い技術に負けてしまうのだから。厳しさ、激しさは正当な戦術の1つである。勝つための重要な手段なのだ。ファイトこそが、サッカーに限らず、プロフェッショナル・スポーツの世界において、勝利を手繰り寄せる鍵といえる。

日本代表は、アジアのクラブチームの旺盛なファイティング・スピリットにこそ、学ぶべきなのだ。日本がW杯グループリーグにて対戦するカメルーン、オランダ、デンマークは、日本より格上。日本はそれこそ、アジアのクラブチームがACLでJリーグのクラブと対戦する以上の、ファイティング・スピリットを持つべきなのだ。

システムがどうの、クロスがどうの、サイド攻撃が・・・という屁理屈はこの期に及んで意味がない。筆者が代表監督ならば、日本代表選手全員に向け、グループリーグ初戦のカメルーンに対して、喧嘩ファイトを指令する。1対1の競り合いに絶対に負けない精神力、気迫を要請する。正当な肉体的ぶつかりあい、タックル、チャージで相手をねじ伏せるよう指示を出す。

日本のサッカー・ジャーナリズムは、カメルーンのみならず、アフリカ勢というと、「強い身体能力」と馬鹿の一つ覚えのようにくりかえすが、筆者の見立てでは、日本が属するグループ内で最も1対1(競り合い)に弱いのはカメルーンである。前々回、前回と、当コラムで繰り返し強調しているように、日本が自国開催以外のW杯で勝ち点3を上げられる可能性が一番高い相手はカメルーンであり、カメルーン戦に日本が集中すれば、ベスト16の可能性が開ける。カメルーン戦意外は考える必要がない、というのが筆者の考えであり、それを可能にする条件は、日本代表選手が、ぶつかり合いで、カメルーン選手を粉砕すること以外にない。

カメルーン戦の先発候補は、森本、中村俊、本田、松井、稲本、長谷部、小笠原を優先したい。彼らは、欧州で強い当たりを経験しているからだ。サイドも強さを基準に、駒野、長友を優先、CBは闘莉王、中澤で仕方がない。だれが先発しても、カメルーン選手と喧嘩ファイトを繰り広げてほしい。



2010年02月23日(火) カメルーン戦に集中せよ

2010年、W杯開幕年のスタートでつまずいた岡田ジャパン。これまで支持があつかった代表サポーターからも大ブーイング、スタジアムには、「岡田解任」の横断幕まで出る始末。協会は、とりあえず、岡田留任を公にし、事態収拾を図ろうとしている。

このまま岡田ジャパンに策もなく、南アフリカに行って予選リーグで3連敗して帰ってくるのを見るのも忍びない。自国開催以外のW杯(フランス、ドイツ、南アフリカ)で3回にわたってグループリーグ勝ちなしとなれば、日本代表が勝てる相手はアジアのみ、という筆者の持論が悲しくも実証されてしまう。

まあ、このことは紛れもない常識なのだけれど、サッカーはジャイアント・キリングが起きやすいスポーツの1つ。日本のサッカー人気が代表の凋落とともに下火になれば、立て直すことは容易でない。W杯日韓大会にて築いた財産を失うことの大きさを後で嘆くのも芸がない。ならば、筆者なりにW杯対策を考えたい――、なんとか日本代表にベスト16入りを果たしてもらい、たとえそれができなくとも、自国開催以外の大会で勝ち点3という、大きなお土産を持ち帰ってもらいたい――ものである。

ジャイアント・キリングの第一候補は、カメルーンであろうと筆者は考えている。これから先の日本代表のテストマッチは、極論すれば、カメルーン戦に勝利するためのものと、テーマを絞り込んで臨むしかない。日本がW杯予選リーグを突破するためには、初戦勝利以外に道はないのである。カメルーンに負けて、オランダ、デンマークに勝つという想定はしないほうがいい。岡田監督にこれから先、この決断ができるきかどうか。日本は、オランダ、デンマークのことは考えなくともよいと。

参考になるかどうかは別として、カメルーンが出場した、アフリカ・ネーションズカップの準々決勝で、カメルーンは、アフリカの古豪エジプトに延長戦の末、1−3で敗退した。この試合に限れば、カメルーンの調子は悪かった。3失点はすべてDFラインのミスから。1失点目はGKのキャッチミスだし、延長戦早々の2失点目はDFのバック・パスをエジプト選手に奪われたもの。3失点目は誤審で失点ではないが、GKの判断ミスで決定的シュートを打たれた。とにかく、失点の主因はDFとGKの連携、コミュニケーションの問題にある。この時期――欧州リーグに散っているカメルーン主力選手は、代表チームとして結束していない。このまま、カメルーンがチームとして機能しなければ、日本代表にも勝機は必ずやある。カメルーンが周到な準備をしてくれば、日本の勝利はかなり難しいけれど。

この試合に限れば、カメルーンで抜群の破壊力を誇る主砲エトーの調子が悪かった。彼がエジプト戦で放ったシュートはおそらく2本ではなかったか。エトーがこのまま眠ったままならば、カメルーンの得点力は低減する。エトーを抑えられれば、日本に勝機がある。彼を抑えられるのは、稲本だろう。カメルーンがエジプト戦であげた唯一の得点はセットプレーから。しかも、相手オーンゴールだった。

カメルーンの強みは、言い古された表現だけれど、高い身体能力にある。なかで脅威なのがロングシュート。30メートルという距離は、彼らにしてみれば、ミドルシュートの感覚であり、実際、そのとおりのように見えた。日本DFがゴールを空ければ、30メートル前後からミサイル弾が飛んでくる。これを食らえば、日本はひとたまりもない。日本DFはとにかく身体をはる以外ないし、相手のシュート・レンジを遠めに設定しておく必要がある。しかし、シュートを怖がって引きすぎれば、相手の思う壺である。

では、どうするのか。守備は密着マークである。カメルーンの身体能力は高いが、重心が高い。だから接近戦の競り合いならば、重心の低い日本選手でも競り負けるとは限らない。ショルダータックルで相手を転がすこともできるはず。さらに、カメルーン選手の弱点としては、意外と当たりを嫌がる傾向があることを挙げておきたい。エジプトはとにかく。ゴリゴリとカメルーン選手を押し捲った。エジプト選手は身長ではカメルーンに劣るけれどフィジカルは強いし、スピードもある。さらに、カメルーン選手はすぐ熱くなるので、ゴリゴリのファイトで相手を興奮させ、カードを出させる手もある。これまで日本代表がやってきた、淡白なクリーン・ファイトで倒せる相手ではないから、喧嘩ファイトでカメルーンをつぶしに行く覚悟が必要だ。

注意しなければならないのは、長いリーチ。相手の長いリーチを念頭に置かないと、日本代表は思わぬミスをするだろう。普通ならば届かない感覚のタックルが届いてしまう可能性がある。自陣の狭いエリアでパスをまわすのはリスクが高い。しかし、怖がってロングボールで逃げていたら押し込まれる。しっかりと、ボールキープすることが大事なのは当たり前で、深いタックルをケアしつつ、マイボールを攻撃に結びつけることも重要だ。

カメルーンが守備の修正をしないままW杯に出場してくるとは思わないが、エジプト戦に出場したGKのレベルは高くないし、最終ラインとの連携もうまくいっていない。だから、GKと最終ラインの間で勝負できれば、日本にも勝機が開ける。早くて低いクロスや、最終ラインの裏を取るアウトに出たスルー・パスに、ダイヤゴナルで走って折り返しを出すFWの動きなどもシュートチャンスをうむだろう。

筆者はカメルーン戦で戦力となるのは佐藤(広島)のようなタイプのFWだと思っている。早い飛び出しで一気にシュート、あるいは、ペナルティーエリア付近でのワンツーでカメルーンDFを外してのシュート・・・が決められれば、日本が勝つ可能性もあると思っている。そう、うまくいくかな?



2010年02月16日(火) 岡田ジャパンはどうすべきか

(1)監督のクビをかけた試合――恐怖のギロチン・マッチ

日韓ギロチン・マッチは、韓国が3−1で日本を圧倒し、岡田監督のクビはもはや皮一枚程度でつながっている状態にまで陥った。筆者はかねがね当コラムにおいて、岡田が代表監督としての資質に欠け、指導力における不適格性を主張してきたので、“なにをいまさら”の感を抱かないでもない。怒れる代表サポーター諸氏、気がつくのが遅すぎたのではありますまいか・・・とも思うけれど、ギロチンを決断できない協会幹部の及び腰には怒りよりも呆れてしまうばかり。

今年がワールド杯イヤーでなければ、Jリーグのシーズン設定からみて今の時期、中国と引分、宿敵韓国に大敗といってもあまり心配することはないかもしれないが、岡田監督はW杯ベスト4を目標に掲げている。それを成し遂げるためには、グループリーグの相手3国・カメルーン、オランダ、デンマークのいずれかに最低でも1勝を上げなければ目標達成の可能性がない。ベスト4が目標となれば、今回の東アジア選手権は、公式戦しかもホーム開催である以上、軽くアジア勢を退け、ぶっちぎりで優勝することが目標であり求められる結果であった。

チーム編成は宿敵韓国と日本の条件は同じ。どちらも国内組中心。ホーム開催の分、日本のほうが有利なはず。さは、さりながら、日本代表選手にとって、この時期の調整は難しい。できれば、故障やケガを回避したいところ。東アジアの3ヵ国は日本に対して強いライバル意識をもっているから、玉際も厳しいしスライディングも深い。アフタータックル、後ろからのタックルもある。韓国戦はまさに、そのとおりの展開となった。しかし、サッカーの国際試合(公式戦)ではこれが当たり前なのであって、W杯イヤーであろうとなかろうと、手加減することはない。ともかく、日韓戦で最初に退場者が出たのは韓国にではなく、日本(一発レッドが闘莉王に出された。)にであった。後半、韓国選手に2枚目のイエローが出て退場者が出たので、反則に関しては五分五分というところか。

(2)W杯に行くことが目的ではない――甘えと油断

日本の代表選手は考え違いをしている。とりわけレギュラーだと思われている選手の心の中には“W杯に行くこと”が目的になってしまっているのではないか。それが名誉なのか、引退後のキャリアの証明なのかはわからないが、ある種の「甘え」だ。

筆者の想像にすぎないが、サッカー市場辺境地域のアフリカ、東欧、中南米等の選手がワールド杯の代表選手に選ばれることは、サッカー市場における中心すなわち欧州クラブのスカウトの目に留まる最大のチャンスとなり、その先には、ビッグクラブとの契約=巨額の富が見えていることを意味する。だから、モチベーションはすこぶる高い。彼らが、国家の代表というモチベーションだけで戦うW杯出場経験者を凌ぐ活躍をみせることもある。代表監督は、初出場選手の意欲を上手に使うことも求められる。その結果、W杯における新星が毎回登場する。

(3)ジーコの失敗――代表にはクラブチームとは異なるノウハウ必要

岡田ジャパンは、この時期、レギュラーを固定して、代表チームをクラブチームのように練成し、戦い方の共通した考え方(俗にしばしば「チームコンセプト」と呼ばれる。)の徹底を図ろうと試みているようだ。このやり方は、ドイツ大会で失敗したジーコ方式に似ている。ジーコジャパンのように、代表チームをクラブチーム化する練成方式もなくはない、成功事例もある。サッカー後進国の場合、たとえば、「ドーハの悲劇」を経験したときの日本代表や、リーグが発展していない時代の韓国代表、そして実際に国内リーグが機能していない北朝鮮代表などがこの形だ。ジーコジャパンは、当時の日本の主力選手――ヒデ(ボルトン)、稲本(ウエスト・プロムウイッチ)、俊輔(セルティック)、高原(ハンブルガーSV)、大黒(グルノーブル)が海外に出ていて、チームとして練成する方針は、実際には失敗に終わった。

(4)日本代表のアポリア――ドメステッィクなJリーグ日程

各国主力選手が欧州に集中している今日、各国代表選手の多くがW杯に臨むまでのスケジュールは、欧州各国リーグが終幕するまでクラブに拘束され、終幕後の4〜5月にかけて代表合宿に参加しW杯本番に臨む。その間、長ければ2月間が休養と代表チームとしての練成期間になる。岡田ジャパンの場合、海外組はほぼ上記の通りのスケジュールで進み、国内組の場合、Jリーグが3月に開幕し5月中旬まで続き、Jリーグ中断後代表チームに参加する。代表チームの練成期間はおよそ1月間だ。ジーコジャパンと変わらない。先述の通り、ジーコ方式はドイツ大会で失敗している。国内組はJリーグの序盤のパフォーマンスで評価されるが、これは過酷このうえない。欧州の選手のように、シーズンを通した評価がくだされないからだ。

(5)代表のチームとしての練成は1月間――選手選考はそれまで白紙

ではどうすればよかったのか。Jリーグのスケジュールを変更することは不可能であるし、欧州リーグも無理、いわんやW杯ももちろん無理。日本代表はこうした所与の条件でW杯に臨まなければならないのだ。

筆者ならば、代表チームの練成期間を代表選手決定後以降の1月間弱に定め、それまで、選手を完全競争状態に置く。このやり方は、練成期間が短いという弱点をもっているが、代表選手を固定してしまうことによる代表有力選手の「油断」を回避できる。

たとえば、東アジア選手権で一発レッドを出された闘莉王だが、彼は内心“自分のスペアは日本にはいない”と思っているのではないか。彼が、生まれ故郷であるブラジル国籍を放棄して日本国籍を取得した理由は、彼の実力では絶対にセレソンになれないからだろう。日本国籍ならば、彼は悠々W杯に行かれる。そこで認められれば、Jリーグよりはギャラの良い欧州クラブに移籍できる可能性が開ける。彼がブラジルに戻れば、国内の平凡な選手で終わる。

岡田監督は、最終ライン(CB)を固定し、中澤・闘莉王の2人を競争状態に置かなかった。日本人のCBはレベルが低く、この2人を追い越す人材が少ないことも確かだが、それでも、2人のうちどちらか、または、いずれもが、明らかに代表チームにとってマイナス戦力であると断定できるのであれば、選ばない選択肢があった。そのためには、岩政や山口らのCBを代表に呼んだとき、試合に使えばよかった。

いずれにしても、闘莉王を切る決断は、いまからでもできる。彼がチームに与える影響がマイナスであれば、浦和が彼の契約を更新しなかったように、あるいは、日韓大会でトルシエが当時、国民的アイドルであった中村俊輔を切ったように、また、フランス大会直前、岡田監督がカズと北沢を切ったように・・・海外では、日韓大会直前、アイルランド代表監督のミック・マッカーシーが、当時、主力中の主力であったロイ・キーンを代表から放逐したように・・・

主力選手を代表から外す理由は、上記のケースにおいてもそれぞれ異なっている。だが、外すことでチームが浮上することを監督が確信するならば、理由の如何を問わず、「正しい」。

(6)W杯までに日本代表は「何をなすべきか」

端的に言って、最も簡単な方策は、代表監督を代えることだ。ところが、協会はそう決断しなかった。ならば、日本代表を現象学的に還元するしかない。第一に、岡田監督自らが、現在のチームの解散・解体を宣言することだ。そのうえで、グループリーグ突破に目標を定め、突破のための具体策を論理的に構築し、それに基づく選手選考を行うことだ。たとえば、予選突破の絶対条件を初戦のカメルーン戦勝利と定め、カメルーンの弱点を具体的に示し、カメルーンに勝利するためのチーム(選手起用、戦略・戦術)を構築するしかない。アフリカ選手権のビデオを見る限り、カメルーンはCBとGKの連携が悪く、ベテランDFのソングのスピードが落ちているから、その間で勝負できるFW(例えば佐藤)を選ぶとか、攻撃の中心エトーを抑えるためには、密着マークを得意とする稲本を起用するとかである。そのようなロジックの下で日本代表をリストラクチャリング(再構築)できれば、日本代表の再生の道は開ける。

いま、日本代表に必要なものは、ベスト4という抽象的目標ではない。さらに、これまでレギュラーとして扱ってきた選手に対する予見を外すことだ。W杯の1試合、1試合(実際には予選リーグ3試合)に臨む作戦と選手起用に基づき、そこに勝利をもたらす可能性を探ることだ。そして、その探求の下で、テストマッチにおける個々の選手のパフォーマンスを検証することだ。そのような認識で予定されたテストマッチに臨むのであれば、東アジア選手権のような無様な試合を選手がすることもない。時間と試合数は、きわめてわずかではあるが。



2010年02月06日(土) 負け試合

「負け試合」である。0−0のドローをもって、屈辱を救ったのはGKの楢崎だった。。中国選手のPKがまともすぎたとはいえ、落ち着いた対応は頼もしい限りだ。

公式戦の東アジア選手権、しかも、ホーム開催となれば、“この時期、この相手”とは言っていられない。勝つべき試合はきちんと、勝つ習慣をつけておきたいもの。とはいえ、相手がある勝負だから、そう簡単には勝たしてくれない。相手を分析し、相手に応じた戦いをしなければならない。

中国選手の足が最後まで止まらなかった。もしかすると、日本の選手、監督を含めて、この試合の中国のスタミナと集中力の持続は意外だったのかもしれない。W杯イヤー、南アフリカ行きを決めている日本に対して、一泡吹かせてやろうという意気込みが中国選手に浸透していたかもしれない。日本は、前半圧力をかけ先制点を奪い、あとは軽くいなそうと思った可能性もある。調整の意識が払拭できないのかもしれない。

得点はもちろん、FWの2人が得点をゲットする、しそうだ、という雰囲気が感じられない。生真面目なFW岡崎と、存在感の薄い玉田の2トップ。岡崎は運動量という点で評価できるが、玉田の役割がはっきりしないし、決定機も外している。玉田が代表に残るのは難しいだろう。W杯は楔とキープ=前線のターゲットマンとして、平山〜森本のどちらかを先発起用する方針を固めないと、時間切れになりそうだ。

この試合に限ってだが、SBは左の長友よりは右の内田のほうがよかった。いいシュートも放った。右SBは、駒野と内田の競争で決まり。左利きの左SBが日本にいないため、駒野が左で長友と競争か。レベルの低いポジション争いだ。

日本の課題は両SBとセンターFW。ジーコジャパン(2006年)から、まったく進歩がない。試合終了後、ブーイングが起ったが、当然である。この試合に対する非難ではなく、岡田体制そのものへの非難である。



2010年02月04日(木) この時期のこの相手,

しかも主力不在となれば、レベルの高い試合を期待するほうが無理とは言え、それにしても、低調な試合であった。日本代表の攻撃陣は、ちょっと強いDFにあうと、まるで攻撃の形がつくれなくなる。

相手はW杯南米予選を突破したことのないベネズエラ。FIFAランキングは50位。日本と同様、来日した代表選手はほとんどが国内組であるという。同国のサッカー事情にはまるで疎いため、個々の選手の力量、技術水準について評することはできない。来日したベネズエラ代表チームの印象を大雑把にかつ一般的に表現すれば、繰り返しになるが、厳しい守備で日本の攻撃を封じた、となるのであろう。

だが、ベネズエラの守備が堅固であるとしても、この国は、昨年のW杯南米予選では参加10国のうち8位(下から数えて3番目)、しかも、W杯南米予選を一度も突破できていない。アジアと南米の実力の違いがあるとしても、日本代表の戦いぶりはふがいない。

W杯イヤー・2010年の蓋明けの1試合だけをもって、短絡的といわれることも覚悟の上で敢えて申せば、岡田ジャパンが行ってきた代表チームづくりはアジア仕様に適合するものの、世界レベルには到達していない。世界仕様に及ばない最大の点は、まずもって、個々の選手の実力である。フィジカル、技術、闘争心、判断力とりわけ各人が自分で局面を切り開こうとする意欲と創造力に劣るのである。この期に及んでどうすることもできないが、係る現実を直視して、指導者は謙虚な目標を掲げるべきである。

二点目は、これは多くの専門家が指摘している通り、先発したSBの力不足である。右SBの先発を徳永、内田、駒野の3人で争う構想のようだが、駒野の実力が優っている。内田は岡田監督が発掘した人材、徳永は大学の後輩と、実力以外の要素が加わっているのが気になるところだ。

三点目も多くの専門家の意見と違わない。岡崎、大久保の2トップの先発起用に係る疑問である。モダンサッカーでは、前線でボールを預けられる選手が必要。この試合の場合であれば、平山先発(本番では森本らとの選択)が正解ではなかろうか。これまで巻がこの役割を担ってきたが、巻の調子は上がらない。

岡崎、大久保が前線でポストプレーをするタイプとは思えない。2人がゴールに向って走りこむタイプならば、SBが上がらなければ、得点チャンスは生まれない。テレビ解説のS氏が指摘しておらえたように、「FWが引きすぎて、中盤になって」しまっているのである。さらに、FWが「相手CBを脅かさない」から、「相手CBが怖さを感じない」。となれば、ベネズエラDF陣に余裕が生じ、得点シーンはますます生まれない。

このビデオを見たW杯グループ予選の相手国(オランダ、デンマーク、カメルーン)は、日本が厳しい守備にまるで弱いことを考慮した作戦を立ててくることだろう。


 < 過去  INDEX  未来 >


tram