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五十嵐 薫
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頑張ろう東北!
エンピツユニオン

2014年05月11日(日)
5.10

日付が変わるのを待っていた。
空っぽのボトルと氷の溶けたグラスを交互に見ながら、顎の下で組んだ指に力を込める。

テレビは、さっきのレースのリプレイが流してる。
キッテルのゴールスプリントは横目で見てた。
ジロ・デ・イタリアが始めると、いよいよ夏がすぐそばまで来てるって気がする。

だが、その前に、この湿っぽい気分をやりすごさなくてはいけない。
この時期、憂鬱な気分になりがちなのは、梅雨のもたらす湿度のせいか、それとも君の命日のせいか。
もっとも、どっちか特定できたところで、この憂鬱な気分が納まるわけじゃない。

目を閉じ、あくびを一つ。
組んだ指を解し、また組む。

さっきトイレに立とうとして、足がもつれた。
そんなに飲んだのかと我ながら驚き、いやまて歳のせいかもよと思い直す。
空っぽのボトルと氷の溶けたグラス。グラスに張り付いていた水滴がつぅーと下まで滑り落ちる。

組んだ指をもう一度ほどき、こめかみを両の親指で押す。
ため息をついたつもりが、つい欠伸が漏れる。

夕飯前に女の子と「アナと雪の女王」を観たんだ。
面白かったよ。
満員の映画館なんて子供の時以来、久々だった。

君はこの映画を知らない。
ハリーポッターの最後も知らない。
そう、君と話せることなんて、昔の話とひたすら普遍的なことだけだ。

日付が変わり詰めていた息を吐く。

梅雨が終われば、元気になるよ。
今までもそうだったし、これからもきっとそうだ。


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