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2013年09月19日(木) |
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駅から家へ続く道沿いに、コスモスが咲いていた。 降り注ぐ蝉時雨が、いつの間にかコオロギの声に代わってた。 頬を撫でる風が軽くなり、月の輪郭が滲まなくなった。
近所の八百屋の店頭に葡萄があったので一房買ってみた。 ナイアガラだ。 マスカテル・フレーバーとはまた違う、独特のフォクシー・フレーバーが部屋を満たす。 どちらかというと醸造用のイメージが強いこのぶどうの、この香りが好きだ。
連日夜更かしして見ているブエルタ・エスパーニャもいよいよ終盤。このレースが終わると、毎年秋だなぁと思う。
秋になると無性に旅へ出たくなる。こことは違う場所へと、漂泊の心が動き出す。 もしかしたらそれは、冬に食物を求め移動した祖先がDNAに刻み込んだ衝動なのかもしれない。 Jetstarのサイトを見たり、JRやH.I.Sのサイトを覗いたりして、長くなった夜を過ごす。 週末にはバイクのオイルとフィルターを替えよう。
部屋に溢れるナイアガラの香りは、甘く強い。 うっとりするような、少し不安になるような、まるでぎこちない恋のような匂いだ。 そんな恋が少し懐かしくなるのも、きっと秋のせいだろう。
旅に出たいな、もう一度。 君の暮らす街はどんなとこだったっけ? もう何年も行ってないよ。
逢いたいな、もう一度。 君に逢いたい。 29歳の君に逢いたい。
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