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五十嵐 薫
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2013年02月14日(木)
chocolatière

伊勢丹の袋からチョコレートを取り出した。
ジャン=ポール・エヴァンのトリュフだ。
バレンタインデーの売り場で浮かないよう、開店直後に買ってきた。

食器棚からバカラのロックグラスを選び氷を満たす。
何年も使っているせいか底が少し欠けている。
バランタインのボトルを持ち上げ、中身が殆どないことに気付いた。
仕方なく貰いものの芋焼酎を注ぐ。

焼酎がトリュフにあうかどうかは知らない。
場末のパブみたいな組み合わせだと、一人苦笑を浮かべる。



マリコリーニは、確か当時も銀座で買えた。
アイスクリームはどうだった?
ラデュレのサロンがなかったのは確実だ。

毎年毎年新しい店が出来て、毎年毎年新しいお菓子が流行る。
「女と口を狙え」というのはユダヤ商人5000年の定理らしい。

指でつまんだトリュフを暫し眺める。
口に放り込み、グラスの芋焼酎を含む。

あわなくは、ない。
が、この一杯でやめておこう。



来年はちゃんとしよう。
チョコは伊勢丹じゃなく近所のスーパーでいいから、酒はスコッチか国産のシングルモルトを用意しよう。

グラスを洗いながらもう一度苦笑いを浮かべる。






君が死んでから上陸したチョコを手向けようとしたんだけどね。
やっぱり甘いもののことは、よくわからない。

それにしてもさ。
なんでバレンタインデーが誕生日なんだ?



また、今年も忘れそこなったよ。


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