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五十嵐 薫
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頑張ろう東北!
エンピツユニオン

2011年12月21日(水)

カーテン越しの日差しが、部屋を明るくする。
フローリングの床を舞う小さな綿毛は、ダウンから漏れたものなのか、それとも羽根布団から漏れたものなのか。
昨夜のまま置かれたロックグラスが、テーブルに小さな虹を作っている。
天気予報は、週末から崩れると言っていた。
もしかしたら、今年最後の穏やかな朝かもしれない。

なのにだ。
この部屋干しの洗濯物。
心底うんざりする。

ベランダの床の塗り替えは先月終わった。今週はサッシや壁面のクリーニングと点検。
クリスマスの連休を挟んで足場が解かれ、先月から続いていたマンションの大規模修繕は、ようやく終わるハズだった。
やっとカーテンを開けて暮らすことができると思っていたが、今朝の天気予報だ。もしかしたら、年明けに持ち越しかもしれない。



ダウンの上に、パタゴニアのレインウェアを羽織る。
首をパシュミナのマフラーでぐるぐる巻きにして、中に綿の入った鹿革の手袋を掴む。
ソックスはメリルウールを使った厚手のモノ。
シャフト11インチのブーツの中に、デニムの裾を突っ込む。

玄関のドアを開ける。
柔軟剤の匂いの満ちた部屋から、冷たい冬の中へ。
マンションの廊下には、どこからか飛んできた楓の黄色い葉が落ちていた。

そうなんだ。
寒いけど、冬は嫌いじゃない。



チョークをひき、苦労してバイクのセルを回す。
掛かりの悪いエンジンと格闘するたびに、キックさえあれば、と思う。
リカバリーを考慮しない技術は、セルモーターだろうと原子炉だろうと同じだ。
ただただ、手に負えない。



ツーリングっていうには大げさだ。
単に寒さでバッテリーが上がらないよう、2、30キロ走るだけ。
逗子で飯でも食べ、一色経由で戻ってこよう。
横須賀から16号に出て、八景あたりから右に折れ、海をトレースしながら帰ろう。



誰かが指差して「この寒い中、よくバイクなんか乗るよな」なんて言うかもしれない。

そうなんだ。
そんな冬の風物に、冬の景色に、僕はなりたいんだよ。


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