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2010年10月11日(月) |
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暖色 |
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オレンジに発光した街の端は、瞬く間に白くなり、その輪郭を取り戻す。 揺れる車内の蛍光灯の明かりが、真横に差し込む車窓からの光にすり変わる。 解凍された車内では、休日の早朝だと言うのに制服姿の女子高生二人が、何が菓子を頬張りながら小鳥みたいに囀り続ける。 朝だ。 しかも、とびきり早朝。
ふと、君と過ごした時間のことを思い出す。 ホテルの窓から眺めた神戸の素晴らしい夜景とか、君の皿にフォークを伸ばして食べたイデミスギノのケーキの甘さとか、ジグソーパズルのピースのような、記憶の断片が浮遊する。
ビル超しに眺める上りかけの太陽に目を細めながら、口元を緩める君の顔を想い浮かべる。
電車は多摩川の鉄橋を超えた。 太陽はいよいよ眩しい。
すっかり、朝の真ん中だ。
秋の夜中のセンチメンタルも、早朝の太陽が見せるイリュージョンにはかなわない。 僕はフランス人じゃないから、いくら太陽が黄色くたって、人を刺したりしない。 そもそも、湿度の高いこの国の、太陽の光はもう少しだけ暖かい。 ただ、目を細め、そのオレンジに君のプロフィールを重ねるのだ。
美しい朝焼けだった。 なんだか君に逢えたみたいで、気分がいい。
目的地まであと一時間半。 やはりまだ、少し眠い。
ねぇ。 夢でもう一度逢おうか?
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