|
|
2007年04月13日(金) |
|
名月記 |
|
女につきつけらた携帯の液晶には、栂尾の紅葉が写っていた。
「憶えてる?京都行った時の写真。」
あぁ、憶えてる。 その夜泊まったホテルのベッドを君がどれくらい軋ませたかもね。
女は値踏みをするように僕の見つめる。
「また紅葉の時期に行きたいわ。」
視線を避けて女の携帯に目を落とす。 ファンデーションで雲った液晶画面。 薄汚れた組紐の根付け。
顔をあげて女の顔を眺める。
「今年は一緒に行けるかな?」
携帯を閉じ女に戻す。 「御室の桜ならまだ間に合う。それに…。」
女は首を傾げた。
「このストラップは寿命だ。また嵯峨野に買いに行こう。」
|
|