妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2012年05月25日(金) |
『信玄の軍配者』(小) |
【中央公論社 富樫倫太郎】
三部作第二巻。 今回は山本勘助が主役。 勘助なので、前作から時が大分流れ、みんないい年に。 小太郎並に、情報が乏しい勘助なので、ほとんど創作なんだろうなー。 若い信玄というか晴信が、若い故にたまに間違ったりもしつつも、大器でよいですが、武田家的に盛り上がるのはこれからってところで終わるのは、前作と一緒でちょっと物足りなく。
勘助といえば、諏訪の姫の世話役が定番なのでしょうか、そういう資料があるんでしょうか、諏訪の姫とのやり取りが、井上靖『風林火山』のままのような気がするんだけど、同じ史料を使ってるのか。 甲陽軍艦に書いてあるんですかねー。
武田家重臣たちはいいですね。大河の風林火山思い出します。 若かりし幸村のじいさんが、飄々としてよい感じ。
冬之助が宇佐美姓をもらって、ああ、あの宇佐美なのか、とようやく誰かわかりました。
2012年05月21日(月) |
『早雲の軍配者』(小) |
【富樫倫太郎 中央公論社】
忍として有名な風魔小太郎が主人公。 この小説では北条家の軍配者ということですが。 軍配者=軍師ではないんですが(当時軍師という言葉がないとかそういう細かいことはさておき)、このシリーズでは軍師と了解してもさして間違いではないようです。 その辺の説明は作中にあるんで……。
この小説では風間党の小太郎とは別扱いみたいなので、忍の小太郎がイメージ強い身としては、性格良くて賢いけどなんか薄味の小太郎だなーという印象。
早雲にその才を見込まれて、孫の軍配者にするべく足利学校に送られる若き日の小太郎の話しなので、早雲の軍配者じゃなくて、氏康(作中だと最後の最後でようやく元服する)の軍配者じゃね?とか、そもそも最後の最後までは軍配者見習いみたいなものなので、このタイトルはなんか違うんですが、そういうことはともかく面白いことは面白かった。 戦国物なのに、学園物であり、友情物であり、青春物であり、と案外爽やかな内容。 足利学校で共に学ぶ、山本勘助と曽我冬之助たちはその後、武田、上杉に散っていくので、関東三国志的な面白さもあり。 勘助はわかるんだけど、上杉の軍師って宇佐美じゃないのかと思ったら、後の宇佐美だった。なるほど。
この若い軍配者卵たちよりも、早雲様が素敵でございました。正直。 北条家って素敵です。
【花村萬月 講談社】
萬月先生、歴史物も書くんですねーという興味と、先生の作風と信長はマッチしそうだなーということで。 読んでみたら意外と普通の信長で、うつけ時代の信長が書いた私記、という体だけれど、ところどころ信長が親切に説明するのでなんだか笑える。 意外に優しい、信様。 冒頭で村娘を唐突に切り殺してるくらいで、あとは割と温厚。 天然な竹千代との交流が微笑ましく。
しかし、全体的に薄味な印象でした。 萬月先生のほかの作品に比べても。
2012年05月02日(水) |
『播磨灘物語2』(小) |
【司馬遼太郎 講談社文庫】
ようやく秀吉に会う官兵衛。 他の小説だと、秀吉に信長への案内を頼むのが主流なのだけれど、これは荒木村重っていうのが伏線としていいですね。 急に荒木村重出てくるのが多いから。 あと、秀吉に最初に会った時に、だいたい半兵衛にも会うのだけれど、秀吉に会ってからしばらくして半兵衛に引き合わされるのも珍しい。 しばりょはあまり半兵衛と官兵衛の関係性には重点置いていないのか。 でも、出会えて喜んでいるのは半兵衛の方というのもまた、他とは逆かな、と。
2巻後半は、播磨の情勢が多くなって、官兵衛あんまり関係なくない?という、しばりょ節。 で、最後ようやく村重の謀反が。 なんというスローテンポ。 若官兵衛時代が好きなのでいいですけど。
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