妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2011年03月29日(火) |
『優しいおとな』(小) |
【桐野夏生 中央公論社】
桐野夏生が少年を主人公にして書くなんて珍しいなーと思い読んでみる。 近未来の東京でホームレスをしているイオンという15歳の少年が主人公。 ストリートチルドレンというほど立派な物でもなく、本当にホームレスという生活。 イオンの成長譚なのだけれど、なんだろうな、このラストに向けてのえ?え?という展開は。
結局、イオンが警戒するような悪いおとなは出てこず、強欲なばあさんだと思った拳銃ばあさんも、自分のことしか好きじゃないと言ったケミカルも優しかった。 桐野夏生だからもうちょっと、悪い奴が出てくるかと思ったけれど。
しかし、なんだろう、このラストじゃないとダメなのかな。 あと、イオンの育った施設の真相もこんな終盤にどうしようもない状況で明かされても、どうにもならないという気がしてしまう。
2011年03月23日(水) |
『村田エフェンディ滞土録』(小) |
【梨木香歩 角川文庫】
『家守綺譚』と対になるような話し。 土はトルコのこと。小説では土耳古と表記されている。 現代のトルコではなく、土耳古と表記されているせいもあって、どこかファンタジックな印象。 現地の神様と稲荷がもめたりするのも不思議な感じ。
そんな不思議な雰囲気を漂わせながら、村田が土耳古で出合った現地の人や、同じように勉学のために来たオットーや、ディミィトリスとの友情が語られる。 世界大戦が始まり、それぞれの運命を辿るのだけれど、村田の元に最後に残された物がたどり着くラスト、切なく胸に迫る。
2011年03月04日(金) |
『マボロシの鳥』(小) |
【太田光 新潮社】
太田光の真面目さとピュアさがぎゅっと詰まった短編集。 読書家で有名な彼が満を持してどんなものを書くのかと思っていたのだけれど、先人へのリスペクトと憧憬が溢れる寓話集に。 小説になると急に行儀がよくなってしまうなぁ。 普段、身体を張ってテレビや舞台で発信しているほどの強いメッセージはなく、どうしても小説書かなきゃいけなかったのかな、という印象。 書きたかったんだろうけど、小説でなければいけないということもなく、小説だからこそもっと踏み込める部分もあったんじゃないのかなぁと思う。
また書くのなら、もっと具体的な話しを書いて欲しいな。
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