妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2010年11月27日(土) 『螢』(小)

【麻耶雄嵩 幻冬舎文庫】

かつて惨劇のあった屋敷に宿泊に来た大学生たちが、大雨で屋敷に閉じ込められるというサークルドミステリ。
麻耶作品になじみがない人は、ひょっとしたら途中までホラーか?と思うかもしれない。
が、麻耶作品の定番てんこ盛りなバカミスです。
いや、本格なんだけれど最終的に笑ってしまうようなぽかんなオチが。
嫌がらせなのか?と思いたくなる邪悪な語り。騙り。
麻耶初読の人は怒りそう。

以下ネタバレ。

あまりに文章が気持ち悪くて気持ち悪くて、誰視点だこれ!?と思ったらあとはすぐに真相にいたってしまうという一発勝負のネタ。
文体以外にトリックらしいトリックもないし。
最後に「松浦は女だ」「えー!?」のくだりに、えーっ!?
いったいなんだってそんなしょうもないネタを…。ここまでくると笑える。
そして山荘ものにしては殺人少ないなーと思ったところの土砂崩れ!
また、天災かよ!
いやはや本当に可笑しいなぁ。麻耶ミステリは。
最後に生き残ったのは消去法で千鶴?


2010年11月22日(月) 『鋼の錬金術師 27』(漫)

【荒川弘 スクエア・エニックスガンガンコミックス】

ついについに最終巻で。
当然のことながらネタバレ満載でいかせていただきます。
読了すぐなのでまだちょっと未消化な部分もありますが…。

好きな漫画や小説のラストはいつでもどきどきの心持で待ってますが、もちろん今回も。
どきどきの主な理由は残念ながら、ちゃんと納得のラストになるのだろうか、というネガティブな理由なのですがさて今回。
物語の目的が非常にシンプルでわかりやすいだけに、まあ、身体戻ってくるんだろうと楽観視してただけに途中はらはら。
戻ってこないなんてことはあり得ないと思いつつも、やっぱりがらんどうのアルを見るとどきどきはらはらで、悲しくもあり。

しかしアルは気づいたんでしょうかね。真理そのものに交換価値があることに。
だからこそ自分から向こう側に行ったんだと。
いやほんと、アル戻ってきてよかったなぁ。思った以上に生身のアルに感動が。

ホーエンハイムに関してはずーっと死ぬとしか思えないポジションだったので、死ぬんだろうなぁとは思っていたのだけれど、やっぱり死んじゃうとなると悲しい。
1年くらい兄弟と暮らしてくれても良かったのになぁ・・・。

なんだかんだノーリスクで真理を見ちゃった大佐って得してないか?
あの流れだと視力も戻るようだし。

ハガレンに関してずーっと実は、「等価交換」という言葉がどうも好きになれなくて、うーんと思っていたのですが、今回荒川先生はやっぱりさすがだな、と。
「10もらったら11渡す」っていうのが大変うれしくて読んできてよかったなぁ。
やっぱり兄弟は偉いなぁと。

錬金術を使えなくなった兄さんはやっぱり軍は辞めたのかなーと思いつつ、兄弟それぞれの道を歩むのだね。

荒川先生お疲れ様でした。そしてありがとうございます。


2010年11月14日(日) 『っポイ! 29・30』(漫)

【やまざき貴子 白泉社花とゆめコミックス】

連載20年ついに完結。
読み始めた頃は、自分、まだ中学に上がるか上がらないかくらいだったなぁ。
へーと万里たちは20年かけてようやく中学を卒業。めでたい。
思い返してみて、自分の中学時代とリンクするものがほぼないし、自分が中学生の時にもっポイは読んでいたけれど、共感・・・したかなぁ。
とまあ、つらつら思い出に浸っててもしょうがない。

最後の春休みの長いこと長いこと、早く卒業せいと思ってじりじりしてたけれど、いざ30巻にたどりつくとちょっと目頭が熱くなったりならなかったり。
ひなにじりじりしたり。
へー意外とやるな、と思ったり。

終盤でまさかの天災に巻き込まれたり。
ここでこのエピソード・・・?とちょっと疑問に思わないでもなかったけれど、まぁいいか。もう長い付き合いだからなんでもいいか、と。
この漫画を成長物語と読むもよし、群像劇と読むもよしだと思うけれど、万里の人間不信克服物語として読むとまた趣が違ってよいんじゃないかなぁと、最終巻を読みつつ思いました。
万里が結局誰を好きってのは明かされず、そもそも誰かのことを好きかどうかも微妙だったが、へーってことでよかろう。そういうことでいいだろう。
やまざき先生ありがとう。はっきりさせないでくれて。

これから高校生になって大人になる彼らのことをあれこれ考えると楽しいですね。
へーは伸び白がいっぱいあるからいい大人になるといいねと思う反面、万里はもう出来上がってるから大人になっても、峰倉かずやのメガネキャラみたいな大人にしかならんのだろうなぁと、遠い目。
花島田は10年後くらいにがんばりが報われるとよいなぁとか、虎ちゃんは・・・がんばれ色々、とかとか。

何はともあれ先生、おつかれさまでした。


2010年11月12日(金) 『Another』(小)

【綾辻行人 角川書店】

久しぶりの綾辻。
ホラーです。
誰かが多いというネタはけっこう好きです。
呪われた3年3組というネタで、ミステリー的な驚きも仕掛けられ、綾辻らしく大量に人も死ぬ。
ただ、ちょっとページ数多いような気もします。
主人公の父親とのやり取りとか、刑事とかそんなにいるかなぁと思いました。
父親の方はまぁ、ちょっとした伏線と言えるけれどそれなら、祖父母に同じ役割を振ればよいような気もします。
刑事にいたっては…名刺の出番は!?
とまあ、ひょっとしたらこれはAnother2への布石かもしれませんが。

このままチュンソフトにサウンドノベル化してもらえそうな話しでした。
途中でいっぱい分岐点作れそう。
なんだか主人公がのんきだなぁという印象。

以下ネタバレ。

結局、呪い、というか現象そのものは無くせないので、次の年もその次も3年3組は呪われたままなんだろうなぁ。
まぁ、それはそれでいいと思うけど。
しかし、鳴のいない翌年の3年3組にへたに呪いを止める方法を伝えたら、バトルロワイヤル化しそうです。

ラストの大量殺人は、一瞬、双葉山の殺人鬼降りてきたかと思い戦慄。
ちょっとラストだけ突飛な大量殺人でした。
その辺もなんだか「かまいたちの夜」めいてはいるのだけれど。
一気読みできるおもしろさはあるのだけれど、綾辻ベストとは言えないなぁというのが正直なところ。

増えた一人の正体は、正直あんまり考えてなかった…。でもまあ、なるほどとは思います。
しかしそこの驚きに焦点を絞りすぎ、という気もしないではない。
増えた一人の正体よりも、鳴の姉妹がすでに死んでいるというのがわかった時の方がぞっとした。

呪い自体はおもしろいなぁと思う。
ルールに厳密なあたりがミステリー作家らしい設定です。


2010年11月06日(土) 『SP 野望篇』(映)『伊藤潤二の猫日記 よん&むー』(漫)

【監督:波多野貴文 日本】

ドラマが終わってからちょっと間が空いたので、だいぶ内容忘れてるんですが、残念ながらあまりドラマの回想を入れてくれてなかった。
どうせ上映時間98分なら回想を少し入れてくれてもよかったのに、と思わなくもない。

ドラマの記憶が大分薄いながらも、井上ってここまで超能力凄かったっけという印象。
ドラマのときは五感が鋭いくらいだったと思うのだが…。
官房長官宅の地図を出した時は、お前はiPhonかと思いました。
井上フォンだいぶ便利。音声認識はもちろん、記憶装置として、ナビとして、そして護衛として使用可。たぶん、GPSも搭載してる。
ただ、手錠は搭載できません。どうしても。
シンクロによって直後の行動を予測するって能力、ものすごーく初期の彼岸島における明かと思ったよ。
明もこんな便利能力なのについに開花せずに忘れ去るんだものなぁ。どうかしてるぜ。

次を観ないと内容はなんとも言えないなぁ。
本物の尾形ってなんすか・・・。

++++++++
【伊藤潤二 講談社】

ホラー漫画家の伊藤潤二による猫エッセイ漫画。
こんなに禍々しい猫エッセイあんまりない。
帯に「禍々しくなんかないですよ」と書いてるのが白々しい。
内容は確かに禍々しくないかもしれないが、終始絵が禍々しい。
なんかもう、猫も人も怖い。
だって奥さん白目だし。
なぜか、お互いにイニシャルで呼び合ってるし。
伊藤先生おもしろいなぁという一冊。
そしてよんは確かに変顔の猫。


2010年11月04日(木) 『乱鴉の島』(小)

【有栖川有栖 新潮文庫】

火村&アリスの久しぶりの長編にして、初の孤島。
孤島っていいですよね・・・と無駄に夢を羽ばたかせつつ、二人の休暇はやっぱり殺人事件に見舞われる、と。
二人が休める日は来るのかどうか。もう、日帰り温泉とかスーパー銭湯とかにしといたらいいんじゃないのか、と思いますが。

そんなわけで、お疲れの火村先生が命の洗濯するために、ばっちゃんに勧められてアリスと共に訪れた孤島(しかも行き先を間違った)で起こる殺人事件。
もちろん通信手段は絶たれ、嵐は来ないけど、お迎えが来るのはまだ先という状況で、次々と殺人が・・・起こるかと思いきやそうでもない。
そういう意味では、孤島物にしては事件そのものは大人しめ。
不気味に烏が飛び交ってポーの詩が引用されるけれども、そう派手な話しではなかったです。
しかし有栖川作品は美しいロジックがみどころなので問題ない。
そして私は火村とアリスが仲良しであればいいのにでその点ももちろん問題ない。
火村先生とアリスの仲良しぶりは、有栖川先生のミスリードなのかと疑いたくなるくらい、毎回毎回翻弄されるなぁ。素敵だなぁ。
子どもに懐かれる二人が微笑ましかったです。

一向に作品内容に触れないでここまで来ましたが、島に集まっている人たちの目的が肝。
哀しい絵空事を暴く火村先生はいつもながら辛い立場だなぁ。
この後、ちゃんと休暇取れたのかどうか気になってしまう。

ところで解説で、江神シリーズと火村シリーズのアリスが別人なのは「ワトスン役が名探偵を乗り換えたようで貞操観念に欠けると考えた」という部分に思わず、ぷっと吹き出しました。
貞操観念・・・ぷっ。
それはともかく、有栖川有栖ファンなら、別人であることはもちろん、学生アリスと作家アリスの関係は重々承知してると思うんだけどなぁ。
まさか、この解説者知らないなんてないよね。
そこの設定が有栖川先生のうまいところの一つなのに。



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