妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2010年10月29日(金) 『告白』(小)

【湊かなえ 双葉文庫】

ベストセラーだからあまり期待してなかったけど、思ったよりおもしろかったな。
二転三転するようなミステリーではない。
語り手を代えていくことで、事件の見え方が変わって、結局みんな自分本位のことしか言ってないんだな、ということが浮き彫りになる。
「告白」というタイトルではあるが、皆が本当のことを言っているようには見えない。
教師の森口にしてもそう。
自分の子どもを殺した二人を断罪するために、クラス全員を巻き込むのは教師として正しいとは思えない。
誰一人普通といえる立場の人間がおらず、そこが物語に対して距離を感じるけれど、救いのないラストはそれはそれでいいんじゃないかな。


2010年10月27日(水) 『軍師二人』(小)

【司馬遼太郎 講談社文庫】

久しぶりにしばりょうを読んだなぁ。
戦国時代を題材にした短編集ですが、前半の3篇は読んだのが2〜3年前なので記憶がないです。
読むと片っ端から忘れるたちなので。
そんなわけで、覚えてるところだけ…。
女が絡む話しはいまいちだな、という印象。

「雨おんな」
この時代の感覚だとそうなのかもしれないが、どっちの男にもあまり魅力を感じず。

「一夜官女」
しばりょう的ロマンチックなんだろうなぁ。

「侍大将の胸毛」
上に同じ。

「割って、城を」
古田織部の話し。織部といえば『へうげもの』ですが、こちらの織部の方がしっくりくるなぁ。
自分で価値を作り上げていく傲慢さとか。

「軍師二人」
後藤又兵衛と真田幸村。西軍についちゃったばっかりにねぇ・・・としみじみ思う。立てるべき主君がいないのは不幸だなぁ。
私が関ヶ原以降があまり好きじゃないのは、西軍があまりにダメだからだと思う。


2010年10月25日(月) 『夢見る黄金地球儀』(小)

【海堂尊 創元推理文庫】

海堂先生の今のところ、唯一の医療とは関係ない、コンゲーム。
やっぱり医療と言うフィールドじゃないと、発揮しきれないものがあるなぁという印象は否めない。
このジャンルは他に上手がいっぱいいるわけだし、海堂先生をあえて読む必要もない、という不利も働くし。

別に悪くはないのだけれど、こんなに杜撰な計画のコンゲームもあんまりないなー。
はったり感は海堂先生らしい。

とりあえず小夜ちゃんが元気そうでよかったね。よかったのかな。


2010年10月22日(金) 『十三人の刺客』(映)

【監督:三池崇史 日本】

リメイクですが元の映画は観てないのでこれに限った感想を。

三池、今回は真正面から時代劇ちゃんとやりました、という感じ。
暗い画面に、お歯黒女子に、とちょっと前の時代物みたいな雰囲気。
国内より海外の方を向いて作ってる印象はある。

話しが話しなので男の死に様祭りですが、侍の美学を三池監督は理解はしてるけど共感はしてないのかなーという印象を受けました。
小弥太のキャラだけ浮いているように見えるのも、わざとだろうなぁと。
私は好きだけど。
結局、妖怪だよね。あれはもう。

生き残った新六郎が清々しくもなんともないという様子で、ラストに集落をふらふら歩いているシーンは良いな。

吾郎ちゃんはがんばってるなぁ。いっつも変な役ばっかりやってる。


2010年10月21日(木) 『東と西 2』(小)

【いしいしんじ他 小学館】

男性作家のアンソロジーです。
東と西の違いはあんまり感じないですけど。
短編の並び順に悪意を感じる。後ろに行くほど後味悪いという。

「野島沖」いしいしんじ
いしいしんじらしい、ファンタジックで可愛いような怖いような話し。
怖いのだけれど、鮪になってせっせと働いてる様子はなんともユーモラス。
最後のアイスクリームというチョイスもなんとも可愛いし。

「来世不動産」升野英知(バカリズム)
バカリズムさんの死んだはいいけど成仏できないコントをちょっと思い出したけれど、小説でもバカリズムワールドなんだなぁと当たり前のことをやっぱり思う。
虫に生まれ変わるともれなくバッドエンドなんだけれど、なかなかどうして爽やかに終わって、このアンソロジーの中で最も爽やかな一本。

「肩先に花の香りを残す人」西村賢太
素敵っぽいタイトルついているけど、おっさんの整髪量の臭いだから。
まったくろくでもないけど、いい話しっぽく終わる。
お近づきになりたくないけど、この憎めない感じはなんだろか。

「続すみだ川」藤谷治
アンソロジーで話しが続くって反則じゃないのか。

「ダラホテル」戌井昭人
だからなんなんだ。

「帰省」誉田哲也
めでたしめでたし風だけれど、なんか後味悪いなぁ。
姉のキャラがよかった。

「微塵島にて」吉村萬壱
突飛極まりないけど、一番小説という感じがする。
面白いけどやっぱりグロい。


2010年10月16日(土) 『インシテミル』(小)

【米澤穂信 文藝春秋】

ポップな外見だけれど、早々にインディアン人形が出てきたり、ノックスの十戒が出てきたりと中身はけっこう古色蒼然。
キャラクターが極めて記号的なのでサークルドミステリの怖さは薄くて、ミステリクイズみたいだなぁ・・・という印象。

故意にサークルドミステリを発生させるとどうなるか、が主催者の目的であり、すなわち作者の目的、なのだがどうせこんなにCUBEめいた非現実的な話なら、もっとメタなオチでもいいんではないかと思いましたけど。
主催者=作者とか、主催者=読者だとかそういう。
むしろそういうの期待してたんですが、普通でしたね。

さすがに冒頭に十戒持ってくるだけあってフェアだったのですが、それが物足りないです。
十戒をミスリードにしてたらよかったのになぁ。
いまいち使われなかった設定とかも気になるし。武器ももっとフル活用したらいいのに。

予想してたよりも全然真っ当、普通のミステリだった、というだけで別に悪くはないと思う。

一人、浮きまくっていた祥子が特に何もせず終わったのがなんだかなぁ。
2への伏線引いただけ?いや2はないでしょ。2は。



蒼子 |MAILHomePage

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