妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2010年04月27日(火) 『犬はいつも足元にいて』(小)

【大森兄弟 河出書房新社】

兄弟作家ということで世間的にも個人的にも注目したくなる大森兄弟。
あんまり二人で書いたということを意識せずに読んでみたけれど、“僕”への踏み込みの少なさはやっぱり二人の競作からくるものなのかな。
全ての意味深な出来事が何にも結実しないのも、なんだかなぁ。
それでどうした、という読後感。
別に意味が知りたいわけではないし、結論がいるわけでもないんだけれど、妙に変な登場人物たちに意味があったのか、肉だの犬だのは本当に必要だったのか。
別に、犬がいなくても意外と成立しそうなんだよな。この話し。

今度一人ひとりで書いたらいいんじゃないかな。
え、意味ない?
意味より面白みの方が大事。


2010年04月24日(土) 『天地明察』(小)

【冲方丁 角川書店】

読むまでは暦を定めるということの重大さがいまいちぴんとこなかったのだけれど、とりあえず今は凄く大変、というくらいにまでは理解。
渋川春海という名はなんとなーく知ってるような・・・くらいの知識なのだけれど、なんとなくこんな人ではないような気がしてしまいました。
独自で調べたら、冲方解釈で合っていた、と思い直すかもしれないけれど。
春海よりも、周囲の人たちのほうが魅力的で、特に最初の北極出地の爺様二人がよかった。

歴史小説っぽくないところが受けているのだろうとは思うのだけれど、歴史小説に馴れてないという印象を受けました。
ところどころに史実の羅列のようになって、文章が練られていない、という風に。

まあ、でも、かなり地味な題材ながらなかなか感動です。


2010年04月14日(水) 『掏り〔手偏に莫〕』(小)

【中村文則 河出書房新社】

ユーモアのない伊坂みたいだなぁという第一印象は最後まであんまり変わらず。
掏りをして生きてる僕が、さらに巨大な悪意の塊のような男に使われる、というあらすじなのだけれど、その男・木崎が中盤以降に登場するので凄さがわかるようなわからないような。
僕自身も掏りで生きてるくらいなので別に善人でもなんでもなく、僕と木崎の対比が弱い。
小悪人も大悪人もそんな違いが・・・と小市民的に思う。
確かに僕は金持ちからしか掏らないし、人も殺さないし、知人が死んだら嫌だなくらいの良心はあるんですが、木崎を前にした時の反応が薄すぎて何を実際感じているのかわかりかねる。
全体的に雰囲気でわかれ、みたいな書き方だなぁ。
くどくどされても嫌だけれど、もうちょっと。

ラスト死ぬのかなぁと思いつつ読んでいたんですが、どちらとも言えない終わりなのはよかったな。
あれで死んでたら、完全に閉じた物語になるところ。


2010年04月12日(月) 『第9地区』(映)

【監督:ニール・ブロムカンプ アメリカ】

新機軸のエイリアン物。
侵略物とか、地球の危機を救うといった話しなら全然興味なかったんだけど、難民としてエイリアンを受け入れ、それを隔離しているのが第9地区、しかも舞台は南アフリカ、と聞くと俄然興味が湧く。

ドキュメンタリー風に撮られていて、エイリアンたちが難民としてやってきてから20年経過し、ついに住民たちとの衝突が激しくなってきたため、エイリアンを人間の居住区から遠い第10地区に移住させることになるというところから始まる。
NMUという世界規模の企業がエイリアンの移住を取り仕切っていて、主人公はそこの社員であり、移住の責任者。

エイリアンはエビと呼ばれているが、実際エビとゴキブリの中間くらいの見た目・・・好感は持てない感じ。
言葉もそれほどはっきり通じてはいない。
殺人や強盗もするし、あまり道徳的でもないし、友好的でもない。知的な感じもしない。
エイリアンからの視点が一切ないので(クリスの視点もあるがあまり一般的エイリアンの視点とは言えない)、何を思って地球にいるのかは全くわからない。
あんなでかい宇宙船飛ばせるんだから、もう少し知的水準が高くても・・・と思うんだけれど、その辺は冒頭に幹部連中ではない、という推測が挿入されることで説明になってるのかと思う。
蟻、みたいな感じなのか。

主人公のヴィカスはエイリアンのDNAに変質してしまうウイルスに感染して、人間に追われる身になるのだけれど、ヴィカス自身がいい奴でもなんでもないところがいい。
エイリアンにも人間にも肩入れできない。
ただ姿かたちが同じだけで、どっちかといえば人間寄りに見てしまうけれど、やっていることのえげつなさは人間の方が酷い。
ヴィカスが人体実験されるくだりは、いくら感染してもそんな早急なやり方で実験されるか・・・?と思ったりもしたけれど、国家じゃなくて、一企業のやることだと思えば、それなりにリアルなのか。アンブレラ社みたいな(それもリアル企業じゃない)

ラスト、この後第9地区がどうなっていくのか、クリスは戻ってくるのか、色々と考える余地があっていいと思う。
どこにも正義はなく、正解も提示されず、それでもきっかり娯楽してる。
爽快とまではいかないけれど、なかなかおもしろかったです。
でも正直、感染してからはヴィカスがゴッドハンド(モンスターエンジン)にしか見えませんでした。


2010年04月09日(金) 『枯れない花』『その唇に夜の露』『初恋の70%は、』(漫)

今日もBL。

【京山あつき 大洋図書】

シリーズ完結。
時の流れを大事に描いている珍しいBL。大抵早急だから。
ゆっくり、一つ一つ悩みながら進む様子が好ましい話しでした。

しかしこう言うとなんだが、この二人は社会人になる頃には別れるような気がする。
お互いが嫌いになってとかそういう理由じゃなく。
ま、今井のがんばり次第。
先のことを考えたくなるのは、今までをちゃんと積み上げてきてるから、だと思います。

+++++++
【深井結己 花音コミックス】

シチュエーションがバスという以外は凄く基本的なBLではないでしょうか。
二人ともどっちもどっちで、同情しにくいなぁ。
もうちょっと。

+++++++
【山中ヒコ 新書館ディアプラスコミックス】

高校生ものBLはいろいろ読んだけど、初めて自分の学生時代の片思いなどを思い出しました。
委員会で一緒になったりとかねぇ・・・そうそう。
せっまい世界だなぁとは思いつつ、たぶん、それがなんとも愛しい。
杉山くんがかわいい。


2010年04月07日(水) 『セラー男子』『きみにあげる。』『夜に生まれた』(漫)

BLピンからキリまで、というラインナップ。
何がピンで何がキリかはBLをどう定義するかによると思うけど。

【サキラ ジュネットコミックス】

ピアスコミックスって前からジュネットなんて名前の会社だっけ?
まぁいいや。
表紙からもわかるライトなガチムチ系の絵のバカエロ短編。
随所に笑いのツボが。
エロは多いんですが、なんせかんせ大雑把なもんでいちいち笑える。

コンブとトコブシって思いついたものなんでも描いたらいかん!おもろすぎるだろー。
コンブで緊縛は無理じゃないかなーそんなに強くないよ。コンブ。
(「ハイパー海恋物語」)

唯一シリアスだったはずの兄弟SM物も、桃色の荒縄の一言で死にました。
自分で染めるって。やる気満々準備万端過ぎる。
オチもBLゲームのバッドエンドみたいです。
(「溺∞愛」)

表題作に関しては、私は似合う女装より似合わない女装の方が好みですとだけ申し述べておきます。
ちなみにセーラー服はピンクでした。なんでも桃色かよ!

++++++++++++
【槇えびし ミリオンコミックス】

BLといえばBLですね、というくらいの薄味BL。
別にヤクザじゃなくてもいいんじゃないのかな〜。
なんでお茶屋なのかな〜。
主人公と蓮の年齢がよくわからなかったため、キャラもよく掴めないまま。
絵は上手なんだけど。
がんばれ。

+++++++++
【星野リリィ BBCデラックス】

一見すると普通の少女マンガ?かと思いきや、あ、胸ねーや、という絵柄。
ファンタジーBL短編集。
最後の一本だけ学生物ですが。
ファンタジーとBLって難しいよねぇ。
特に短編は世界観説明してる間に終わっちゃうから、あんまり細かい世界の説明もできないし、とにかく二人をくっつけなきゃいけないし・・・ある程度長さが必要なファンタジー世界でBLやるのはねぇ。
短編はもったいないねえ。



蒼子 |MAILHomePage

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