妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
目次|前のページ|次のページ
【監督:ダニエル・リー 中国】
レッド・クリフ公開を控えてひっそりと公開された、もう一つの三国志映画。 三国志ってどストレートなタイトルですが主役は趙雲。 そしてその趙雲像がまた斬新で、三国志知らないで観たらこいつは一体なんなんだ、と思うこと必至。 しかも三国志なのに102分というコンパクトサイズの映画。内容は推して知るべし。
前半は蜀軍に入隊(公孫讃の部下という設定はない)〜長板。 後半は晩年の趙雲で、曹操の孫娘・曹嬰(オリジナルキャラ)との対決。 趙雲と言えば、忠義者という印象が強いですが、特に劉備に対して忠義を感じている風でもなく、長板で阿斗を助けるのも兄と慕う平安(オリジナルキャラ)の尻拭いのため。 阿斗を救出した時も、あれは明らかに後半は阿斗を背負ってたこと忘れてたし。オイオイオイ! そしてあの乱戦は無理無理。阿斗死ぬって。
蜀軍の趙雲と同じ定山出身の平安という人物が語り部となっているのはいいのですが(ちなみに香港映画を観ると必ず見かける俳優さん)、テーマが色々とブレているような気がしました。 趙雲の英雄譚、平安が趙雲の活躍を妬む『アマデウス』的要素、能力はあれども運命に翻弄されて散る無常さ、群雄割拠し三国が争うも結局はどこも天下を統一できないという栄枯盛衰。 全体的に諸行無常という感じの作りではありましたが、何もそんなに色々詰め込まなくても・・・と。
アンディ・ラウの趙雲は素敵でしたが、やはりやや怖い感が。『インファナル・アフェア』の印象が強いなぁ。 しかしもう48歳だなんて。美しすぎるだろー。 日本ではそんなに斬新ではないかもしれないが、本国の設定としては趙雲を捨て駒に使う孔明というのはなかなか目新しい気がしました。 意外にも全体的に登場人物の美化というのは行われておらず、劉禅はやっぱり暗愚だし、関羽・張飛の息子達はともに仲が悪いし、ちょっとバカだし。 趙雲の部下・トウ芝がよい味出してました。 曹操の孫・曹嬰役の女優さんも本当に美人。まさか自分で趙雲と一騎打ちするとは思わなかったけど。 そ、それはどうかな〜と。
三国志だと思って観にいくと大変、びっくりする映画でした。 戦の虚しさ、孤高の英雄を描いた映画だと思って観ると、まあだいたい納得できるかなーというところ。 ちなみに呉の人は誰も出てきません。
2009年03月25日(水) |
『町でいちばんの美女』(小) |
【チャールズ・ブコウスキー 訳:青野聰 新潮社】
私小説めいたものからSFみたいなものまで色々とごたまぜの掌編集。 表題作が一番わかりやすくかつありきたり。 なんともアメリカン。 アメリカのハードボイルドな酔いどれ親父が無節操に書き溜めたという印象。 確かにヘミングウェイの香りもする。 もっと下品なのかと思ったのだけれど、そうでもなかった。 それとも翻訳の時に穏便に直したのか。 あとがきを読むとどうも大分直してるらしい。 うーん、下品でもいいから原文のまま読んでみたかった。 なんとなく中原昌也を思い出しました。 「ファックマシーン」「レイモン・ヴァスケス殺し」あたりが好きかな。
この手の猥雑な本は他にあまり読んでいないので、どうも落としどころがわからないですね。 似たようなのを色々読んだらもう少し読み方がわかるんだろうけど。
2009年03月16日(月) |
『生きてるだけで、愛。』(小) |
【本谷有希子 新潮社】
鬱傾向で彼氏の家で引きこもってる主人公の話し。 病院で診断されてるわけではないので、これが本当に鬱なのかそういう人なのかはなんとも言えないなぁと思いますが。 終盤、アットホームなイタリア料理店でバイトを始めるも、ウォシュレットの怖さが伝わらなくて結局大暴れして店を飛び出して、というあたりわからなくもない。 相田みつをに感動しちゃったら多分けっこう落ち込む。
ただねぇ、これを鬱だと言われるとそうかなぁ?と思う。 鬱だってことにされると病院行けよと思ってしまうので、どうせならコントロールの利かない人、として書かれたほうが良かったなぁ。
結局「生きてるだけで、愛」も「不器用だっていいじゃない。人間だもの」もおんなじこと言ってないか? そんななんでもかんでも肯定できませんて。
書き下ろしの「あの明け方の」を読むと、結局この二人別れてないんじゃん、となって拍子抜けする。
2009年03月15日(日) |
『プリーズ、ジーヴス 1』(漫) |
【漫画:勝田文 原作:P.G.ウッドハウス 白泉社花とゆめコミックススペシャル】
ジーヴスシリーズの漫画化です。 勝田先生の可愛らしくのほほんとした感じが、原作にとてもマッチしていてよいかと思います。 これはこれで楽しく。 バーティは可愛く、ジーヴスも素敵に(嫌そうな顔するときが凄いおかしい) オノリア嬢が想像よりも可愛かった。
私は小説の方がいいんですけど。 純粋に好みの問題で、漫画に不満があるわけではないです。
2009年03月10日(火) |
『孤独か、それに等しいもの』(小) |
【大崎善生 角川書店】
初めて読む人ですが、次はないという気がしました。 短編集ですが、どれもこれも大切な人が死ぬ、世間とのずれを感じている主人公の物語り。 わざと同じ話しを集めたのでなければ、何回も同じもん読ませるなと言いたい気分。 そして自力では這い上がってこない主人公。
「八月の傾斜」 高校生の時に付き合っていた彼氏を失った27歳会社員の女性が主人公。 9月に彼氏が死んだので、8月頃から精神的に傾いていってという話し。 最終的には今付き合ってる彼氏と結婚することに決めて決別するという私には何一つ理解できない話しです。 毎年9月に精神的にまいるのも、それを新しい彼氏でごまかすのも、結婚で過去と決別するのも、あることかもしれないが、小説でそんな場当たり的な解決を提示されても不満だ、という意味です。
「だらだらとこの坂道を下っていこう」 女性主人公よりはマシかな、というくらいの。 池澤夏樹を読むよ、私は。
「孤独か、それに等しいもの」 鏡を見るみたいに一緒に育ってきた双子の妹が死んでから、精神的にふさぎこんで、やっぱり出会った能天気な男に救われるという話し。 八月〜とほぼ同じじゃねぇか、と。
「シンパシー」 なんかわからないけど、ラストでなぜか女が自殺する話し。 ただ島を指差す平尾に怒りを覚える主人公の部分だけはこの1冊を通してよいかな、と思った。
「ソウルケージ」 子どもの頃に母親が男と心中した女性が主人公。 29歳になるまでがんばって働いて、ある時たがが外れて精神的にまいって、能天気な男に救われる話し。 精神的にやられた時の症状が全部同じなんだよ。どの主人公も。
2009年03月09日(月) |
『アラビアの夜の種族 II』(小) |
【古川日出男 角川文庫】
アーダムの物語が終わり、それから千年後、二人目と三人目の主人公の物語が語られると同時に、ナポレオン軍の侵攻も始まる2巻目です。
アーダムの話しが強烈だったので、二人目と三人目の話がやや印象が薄く、特に三人目のサフィアーンの物語りは、短いうえに、意外にもあっさりと幕を閉じる。 三人の主人公の邂逅、アーダムの復活がどのように繋がっていくのか。 そして、これらの物語が語られ終わった時どうなっているのか。 アイユーブはこの物語に関わっているのか。 感興は尽きません。
|