妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2009年02月28日(土) |
『ニアミステリのすすめ 新世紀の多角的読書ナビゲーション』(他) |
【編著:探偵小説研究会 原書房】
最初に断っておきますが、全部は読んでません。 私が読んだことのある作品を取り上げている項目だけさらっと目を通しただけです。
評者が共通する点を見つけて、二つの作品をその共通項から論評するという本。 ミステリは類似作品のオンパレードですから、何と何でもそれなりに語れそうな気がしましたけど。 それぞれのページ数も少ないので、あまりつっこんだ話しはなかったような。
『厭魅の如き憑くもの』は私も読んだ時に、オーデュボンを思い出したなー。 カカシというアイテムがやや珍しいからというだけのような気がしないでもないが、色々と共通項語ってらっしゃいました。
『九十九十九』や『夏と冬の奏鳴曲』をどういう風に解説してくれるのかが気になって読んだのだけれど、対になってる作品を残念ながら知らなかったのでぴんとこなかったなぁ。 ただ夏と冬〜の謎は、解こうとするより、謎として楽しむのがいいんじゃないの、という旨が書いてあって、やっぱりそう読むしかないのかな〜とは思いました。 楽しむには不可解すぎるが・・・あの作品は。
全体的にネタバレ満載なので、読書案内にはなりません。
2009年02月24日(火) |
『人形宮廷楽団 1』(漫) |
【由貴香織里 白泉社花とゆめコミックス】
新作3年ぶりだったんだな〜。 由貴香織里的、バイオハザード。 まさかのバイオ。 由貴様なので吸血鬼的なものなら想像できるけど、噛まれたり血液などで感染するウイルスが蔓延している中世的な世界、という設定。 なんというか・・・なんでバイオ。
うーん、あまり感心しない設定ではありますが、今後由貴テイストがどれだけ出てくるかですねー。
2009年02月23日(月) |
『テンペスト 下 花風の巻』(小) |
【池上永一 角川書店】
琉球王朝イケメンパラダイスの下巻です。 パラダイスというほど出てこないので誇大広告ですが。
ペリー来航と言うとどうも、いまだにペリーの肉声を思い出してしまいますけど、その辺から開国、琉球王朝滅亡までが下巻。 流刑にされた寧温は、側室の真鶴として王宮に帰ってきます。 その後、寧温も恩赦が出て、二重生活に拍車がかかるという展開ですが、寧温に戻った時点で後宮から出ることも可能だっただろうになぁと思いました。
どうも登場人物たちの行動に筋の通ったものを感じなくて、最終的になんだか虚しくなってきた。 どうして誰も寧音と真鶴が同一人物だって気づかないのかとかもどうでもよくなった。 結局真鶴が成しえたことがあったんだろうか。その場その場の活躍はあったけれど、後に残るものは少ない気がした。 終盤に、正体がばれた時に私は謝罪ではなく、自分のしてきたことをもっと誇って欲しかった。
真鶴と寧音が常にお互いの間で揺れていてどちらの自分に対しても後ろめたさや罪悪感を持ち続け、歯がゆかった。 どこかでさっさと割り切ってくれればよかったのに。
名だたる読書家・書評家が絶賛する理由がいまいちわからなかった。何かの政治的な力が? ただ、琉球のことを何も知らない、ということだけは痛感した。 それだけでも大きな収穫ではあったかもしれない。
2009年02月21日(土) |
『13日の金曜日』(映) |
【監督:マーカス・ニスベル アメリカ】
説明不要のあの13日の、一作目リメイク・・・なのかなぁと思って観てみたら違った。 観たことある人、ない人それぞれのイメージにある13日の金曜日のイメージをそのまま抽出して、ストーリーもへったくれもなくまとめあげた映画というような印象。 ただひたすらバカな若者が、片っ端からジェイソンの餌食になるという。
観ながら、監督はやや原作をバカにしてるんでは?と思ったりもした。 『スクリーム』の監督が撮ったほうがよかったんじゃないの。 多分、みんなだいたいストーリー知ってるでしょ?というような姿勢で作られてるんだろうと思いました。 世界一有名な殺人鬼と言えますから、バックグラウンドの説明は冒頭数分で終了というのもいいのかもしれません。
そうは言っても、終盤アホらしすぎてなんかもう笑えてきました。 セックスと薬にやられてる者はもれなく殺害。 邪魔になりそうな者も殺害。 まあ、とにかく殺害。 クリスタル・レイク周辺の住民はジェイソンのことは見て見ぬ振り。町の厄介者みたいな扱いなの?
ドラマ『スーパーナチュラル』ファンとしては、主演のジャレットにはがんばってもらいたかった。死ぬなら痛くないように死んで!と思いましたが。 SPNのイメージのまんまの格好だものだから、終始サムはもっとやれる子と思ってしまいましたが、なんと言うかもう少し機転を利かした展開が欲しかったなぁ。
惜しげもなくトップレスが登場するので、エロ>ホラーって感じで、妙に男性客多かったなぁ。 そんなにほいほい脱ぐとね・・・ほら、ジェイソンがね・・・という脱いだら死ぬという図式。
ラストは、燃やせ!と。湖に返すから、ねえ。 教訓は友だちは選べってことでしょうかね〜。やるなということはやるな、とか。キャンプ地で過剰にいちゃつくな、とか。廃墟には入るな、とか。 ホラー映画のお約束てんこ盛りでした。ポップコーン片手に気楽に見るといいでしょう。気をつけないとポップコーン飛び出すかもしれないけど。
2009年02月17日(火) |
『テンペスト 上 若夏の巻』(小) |
【池上永一 角川書店】
琉球王朝を舞台にした王朝絵巻、ってことで大河的な重厚さに身構えて読み始めたら、これなんてネオロマ?というストーリーと軽い語り口調にやや肩透かし。 コーエーさんにゲーム化してもらったらいいんではないですか。 女であることを偽って宦官として試験を突破し宮廷の官吏になった寧温こと真鶴が主人公。 なんとなく『BASARA』(田村由美)を思い出しつつ、コバルト文庫で全10巻くらいで出てたほうがこんな仰々しいハードカバー上下巻にするよりしっくりしそう。
主人公の真鶴が美少女なのはまぁいいとして、脇に至ることごとくがきらきらしいキャラでもうわかったわかった、と言いたい。 しかも顔もいい、頭もいい、性格もいい、だが一様にみんな根性が足りない。 それは真鶴にも言えて、聞得大君に素性がばれて一度は死を選ぶまでは、うんうんと思って読んだけれど、雅博に助けられてからの逆転の速さは、そんなことができるなら死のうとする前にやっとけよ・・・というあっさりさ。 そしてすぐに兄貴を助けてやれよ。
変態宦官の登場後も、兄貴囚われてるのに一向に心配してないというか、知らないのか?の真鶴に疑問を持ったり、寧温が三日出勤してこなくてようやく動く朝薫にそれでいいのかと思ったり、細部がどうも大雑把に処理されているのが気にかかる。
寧温に惚れてる二人の男もいまいち役に立たないのが気にかかる。 寧温が女ではないということはもうどうでもいいのか?この二人は。 雅博は真鶴のことはもういいのか? そしてあっさりと徐の思惑通りに寧温に不信を抱く二人が本当にみみっちいな!と。 へたれだと思っていた兄が意外な根性を見せたのに反し、この二人が本当にいざとなると役に立たなくて苛立つ。
儀間親雲上は、試験を受けなおす根性があるのに、仕官後の活躍があまりになくて凄く残念。 勝手に、きっと真鶴のことを覚えていて寧温のよき相談相手になってくれるはず!と期待したんだけれど、登場人物紹介にすら載ってない。 儀間、多嘉良が好きだったので、阿片事件で昇格した時ようやく出番がまわってくるかと期待したんだけれど、どうにも活躍の場は与えられないようです。 キャラの見せ場をもっと作ってくれても・・・。
まあ確かに面白い。ジェットコースター王朝絵巻ではある。 でも、レールの枕木がぼこぼこ外れていては乗り心地が悪いんである。 そんな粗が瑣末に思えるような下巻を期待したい。
2009年02月14日(土) |
『八日目の蝉』(小) |
【角田光代 中央公論新社】
赤ん坊を誘拐した希和子が赤ん坊を育てながら逃亡し続ける前半と、成長した誘拐された子である恵理子の視点で語られる後半。 希和子の逃亡を助けるのは、善意の人びとではないが、それでも二人は奇跡的に数年間を過ごすことができる。 逃亡生活であるはずなのに、小豆島での生活が二人にとってまぶしい記憶であるのと同様、気がつくと希和子と一緒に一日でも長くその日が続くことを祈っている。 希和子も恵理子の本当の両親も愚かに違いないのだけれど、恵理子は許す。 許せるだろうかと思うけれど、そのおかげで意外なほどに清々しい読後感。
【真藤順丈 メディアファクトリー】
これを本屋で見たときは、またネット本?ていうか、まだ○○男ってやってるの?と思ったもんですが、第3回ダ・ヴィンチ文学賞受賞作にしてデビュー作。
庵堂三兄弟の時と同様、やや饒舌な語り口と暴力的なエピソードになんとなく出来の悪い舞城のような・・・という読み心地。 色々な物語りが書き連ねてある地図を持ち歩く地図男と主人公のパートの合間に、記録された物語りが綴られて入れ子のようになっています。 最後に無関係ないくつかの物語の共通点が明かされますが、せめて5つくらい物語がないと奥行きに欠けるんじゃないかなぁ。 3つの物語が語れるけれど、ちゃんと最後まで語られたといえるのは23区の代表戦の話しだけで、他は尻切れ蜻蛉な印象。 地図には物語の断片として書かれているはずなのに、読者に提示される時はまとまりのある話しとして語られるから、もっと物語をばらばらに崩して見せて欲しかった。
真藤順丈の本を二冊読んでみて、変な設定を思いつくけれど話しの落としどころは意外と平凡という印象。 これからはもっと変な方向にはみだしてって読者の頭を抱えさえてもらいたいもんです。
2009年02月07日(土) |
『アラビアの夜の種族 I』(小) |
【古川日出男 角川文庫】
前々から古川日出男は読んでみたかったので、ようやく初読み。 初めて読むのはベルカなんではないかと思っていたのだけれど、古本屋にあったからこれに。
タイトルと表紙からなんだか色っぽい話しを想像しますが、非常に凝った構造の小説。 ナポレオン艦隊の迫るエジプトが舞台であり、ナポレオンを撃退するため作られる、読む者を破滅へと導く災いの書で語られるさらに過去の物語が、作中のもう一つの物語として、千夜一夜のように挿入される。 そしてさらには、この物語り全体が作者が翻訳した本という体裁を取る入れ子構造。 どの階層の物語りも、それぞれの語り口に魅了されて本当に夜が明けそう。 1巻目は一つ目の妖術師アーダムの物語が語られる。 おぞましいのに最後は滅びの美しさすら感じてしまう。 どんな話しがこの後語られ、書はどのように完成するのかとても気になる。
2009年02月04日(水) |
『チャンネルはそのまま!HHTV北海道★テレビ 1』(漫) |
【佐々木倫子 小学館】
佐々木倫子の新作はローカルテレビ局。 ご当地漫画家の本領が発揮できそうな舞台です。 久しぶりに地味な(地元の人間しか実感湧かない)北海道風景がたくさん見れそう。
今回の主人公はバカ枠で採用された雪丸花子。なんだか白泉社を思い浮かべる名前だけれど、小学館から出てます。 いつもの感じで、地味でゆるいが、一話一話の話し作りは上手いです。 今後花子がエースストライカーに化けるかどうかはわかりませんけど、ゆる〜く楽しみたいと思います。
2009年02月01日(日) |
『世にも不幸なできごと6 まやかしエレベーター』(小) |
【レモニー・スニケット 訳:宇佐川晶子 草思社】
今回の後見人は金持ちのスクアラー夫妻。 前回さらわれてしまった、クァグマイヤー家の三つ子の2人はいまだ行方知れずのまま。 オラフから逃げながら、オラフにさらわれた2人を救出しなければならないという困難な状況が加わりました。
ボードレール家の3人の子ども達がもっとずるかったら、あるいはもっと弱かったらひょっとしたらこんなに不幸ではないのかもしれない。 オラフに立ち向かおうとしなければ、嫌な後見人の下から逃げ出していれば、諦めてしまえば今よりももっと楽だったんじゃないかと思ってしまう。
がんばる健気な子ども達を見てこんなにも励まされない小説もない。 三人の絆に毎回目頭が熱くなる。
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