妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2009年01月30日(金) 『媚の椅子』『子連れオオカミ』(漫)

【池玲文 リブレ出版SUPERBBC】

『絆』の感想で、極道物はあんまり好きじゃないんだよね〜と書いたそばから、極道物なんですが、なんで好きじゃないのか、なんなら好きなのか確認しとこうと思って。
だが、私の思った極道物とはまたどうも違った。
痛みには媚びないっていうか・・・ただのドMなんではないかと。
それは本当に拷問なのかと。
そんで、なんで本当のことさっさと言わなかったのかとか、なんか色々と腑に落ちなかったです。
極道なのにみんな線細いし。
・・・あ、それはこだか和磨後遺症?
でも眉があと5ミリ太くても別に構わないと思うよ?

「怖い」がキーワードだったらしいけど、ある種怖いと言えなくもない韮沢でした。でもそういう怖さじゃないんだけど・・・求めたのは。

他に別の話しが二本収録されていましたが、全体的に言えるのは、攻キャラの言葉足らずさが全ての元凶なんでは?ということでした。
お前らーまずは告白からしろよー!

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【井上佐藤 竹書房BAMBOOコミックス】

擬似家族物が好きなので、へぇ〜と思って読んでみました。
読みながらこの人の漫画読んだことあるような〜と思っていたのですが『エンドルフィンマシーン』の人か。
内容の前に、なんかこの人の漫画って吹き出しが読みにくい気がする。
一読して誰が言ったのかよくわからないことがある。

で、表題作のシリーズですが、せっかく子どもがいるのに、子どもの存在が薄い!!いかん、それではいかん!!
子どもと動物はちゃんと書かれてないと嫌だな〜。

最近はBLに腐女子が登場するパターンがぼちぼち増えた気がする。
これは、主人公の相談相手としての、理解ある男友達・元カノ・家族に続くキャラクターなのかもしれない。
まあ確かに、ゲイの恋愛相談相手としての腐女子は適任と言えなくもないかもしれないけれど、同じく腐女子である大多数の読者は果たして物語中の腐女子キャラに共感を持つのだろうか?
いてもいいのだけれど、腐女子部分だけがやたらリアルになるんだよね・・・作中において。
そこんとこ留意してもらいたい。
今回の「ララルー」の腐な妹キャラは良かったと思いますが。


2009年01月29日(木) 『絆 5・11』(漫)

【こだか和磨 リブレ出版BE−BOYCOMICS DELUXE/BE−BOYCOMICS】

10巻までの内容を愛蔵版全5巻でまとめて、その後、普通に11巻が出たという意味です。タイトルの巻数は。
読者に対して優しくないなー。どないなの、その仕打ち。

圭と蘭丸カップルはまあもうどうにもならんので、主に政と佳のカップルの行く末が焦点の5巻と11巻。
(殺し屋カップルも間に挟みつつ)(濃いな)
まーやっぱりなんだかんだいっても本懐遂げないとすっきりしないよね☆
と思いました。すっきりしてよかったです。

圭と蘭丸の新婚カップルは、唐突に父親が出てきたり、家族にカミングアウトしたりとまとめに入ったなぁと思いつつ、突き詰めていくとそういう問題も処理せんといかんもんだからなぁと読んでました。
色々と甘甘な感じもしますが、ここで家族の反対やら偏見などを持ち出してヘビーにするのも今までの流れにそぐわないので、笑顔で祝福しときましょう。

これにて大学生編終了ってことなんだけど、ついぞ大学生っぽいとこ見なかったなとぼんやり反芻してしまいます。
割と最初から上手く行ってたので、政と佳カップルよりも、圭と蘭丸カップルの方が掘り下げが少なかったのが意外でした。
やっぱBLはいくつ障害を乗り越えるか、どんだけでかい障害を与えられるかで愛が試されるジャンルだなぁ。
なるほどなぁ。勉強になりました(なんの?)
昨今のBLに比べれば大分ざっくりした話し作りなんですけどね〜。
こだか先生ってエンターテナーだなぁと思いました。


2009年01月28日(水) 『絆 3・4』(漫)

【こだか和磨 リブレ出版BE−BOYCOMICS DELUXE】

2巻の最後で拉致られちゃった圭ですが、攻が拉致されてもなんもいいことがないという一例・・・いや、大変だったんですけどね。ええ。
基本的になんでもリバ推奨なもんで、圭もたまには受てみたら?と思ったりしますが。

あ、でも、政と佳カップルでリバとかはさすがに言いませんので!

久しぶりに結婚するの見たな〜と思いつつ、京都旅の風景がなんかこう自分の行ったことがある京都と重なってやたら笑えました。
辻利で男4人は・・・!今度、辻利に行ったら確実に笑うと思います。

3組目のカップルも登場しましたが、さらっと退場。
レオン・・・?と思いつつ。

4巻ではまさかの剣道漫画な展開にびっくり。
医療小説だと思ってたら、いきなり剣道小説になった海堂先生の『ひかりの剣』並にびっくり。
いや〜作家として引き出しが多いのは素晴らしいことだなぁ。

ラブありエロありサスペンスありアクションありファンタジー(!!)もありスポ根もあり、ないのは女っ気だけ
奥深い、奥深いよBLっていうか絆。

政と佳もじりじりと進展。性急じゃない感じが物珍しくてよいですね!
BLってじれったいという言葉とそういや無縁だよな。

BLって言うと短編、長くて一冊というのがほとんどで、読みやすいし短編が好きな私はそれがBLジャンルのいいところの一つだなぁと思っていたのだけれど、絆読んでると、たまには10巻超えとまではいかないけど、全5巻くらいの長編もBLで読みたいもんだなぁと思いました。
やっぱり長いと読み応えもあるしね。


2009年01月26日(月) 『絆 1・2』(漫)『世にも不幸なできごと5 おしおきの寄宿学校』(小)

【こだか和磨 リブレ出版BE−BOYCOMICS DELUXE】

先日、バスが来るのを待つ間、近くの古本屋で立ち読みをしていたのですが、その時、『絆』の1巻1話目を読みながら、「あぁ、この1話目だけですでに4〜5回立ち読みした記憶があるなぁ」とぼんやり思いました。
いい加減に買って読もうと思って、愛憎版・・・じゃない愛蔵版も出たことだしちゃんと読むことに。

そんなわけでなんだか今更感のある、『絆』でございます。
初期BLの要素が全部詰まってるんじゃねぇの?というてんこ盛り感。
教科書的BLであります。いいかーここテストに出るぞー!みたいな(なんの?)
ま、最近の流行というか主流の作風ではないですけれども。
後出しジャンケンみたいに設定が後から後から出てくるのはジャンプ的ですが、BBCは割りとジャンプ的システムだからしょうがない。

同級生カップル圭×蘭丸と、世話役の政×ヤクザのぼん佳の二つのカップリングが軸になってますが、好みで言うと実のところどちらも私の好みには入っていないカップリングであります。
そもそも私は極道物BLもあまり好きじゃないし。
いや好きなんだけどストライクゾーンが狭いというか。いや私の好みはいいんだよ。別に。
圭と蘭丸はこれ以上どうにもなりようがないので、政と佳の二人が今後の注目ですね〜。
プラトニックの方がいいんだけどなぁ。この場合。言ってもしょうがないんだけど。

圭の長髪が気に入らんかったので、2巻で短くなってよかったな〜と思いました。蘭丸と同様に。
一巻1話目の圭って、今じゃあり得ないキャラデザインだよなぁ。
なんか色々と懐かしいノリです。

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【レモニー・スニケット 訳:宇佐川晶子 草思社】

今回の引き取られ先は変な規則ばっかりの寄宿学校。
ここで三人は、ようやく友だちができるという話し。
キノコが生えてカニが生息しているボロい小屋をあてがわれ、死ぬほど退屈な授業を受けるヴァイオレットとクラウス、そして副校長の秘書の仕事をしなければならないサニー。
今回も理不尽さ全開です。

ようやくできた2人の三つ子も、家族を家事で亡くしていますが、やっぱりこれはオラフ伯爵と関係があるのかないのか。
献辞に毎回登場し、文中にも登場するベアトリスもどうやら物語りに関係するらしいことが今回わかります。
そういえば、作者もこの世界の住人として記述されているから、ベアトリスも実在する人物じゃなかったんでしょうか。
どこまでがスニケット氏の創作なのか。

2人の三つ子が残したVFDという言葉の謎も加わり、珍しく引きのある終わりでした。後半戦に入るんでしょうか。
子ども達には幸せになってほしいなぁと思うのだけれど、無理なんだよねぇ。
ゴーリーの『不幸な子ども』ほど不幸ではないとは言え、やっぱり毎回かわいそうでかわいそうで。
もうちょっと三人が憎らしければいいのに、いい子なんだものなぁ。


2009年01月23日(金) 『世にも不幸なできごと4 残酷な材木工場』(小)

【レモニー・スニケット 訳:宇佐川晶子 草思社】

今度の後見人は工場長。
どんどん引き取り手が酷くなっていって、今回子ども達はついに工場での労働に借り出されます。
もちろん赤ん坊のサニーも。サニーってきっと、まだ1歳未満なんだよね?
世にも不幸というか無残というか。

工場の看板が噛みつくしたガムで書かれていたり、郵便局の旗から古い靴がぶらさがっていたり、目玉の形の病院があったりと、相変わらず細部の不愉快さが際立っています。
昼食がガムだったり、給料がクーポン券だったりするのも徹底した不条理。
行く先々で姉弟妹の憩いの場となる図書室もここではたった三冊の本しか置いていない有様。

三人の役割分担がはっきりした今回、毎度のオラフ伯爵の変装がついに女装になって、その芸人根性にはもう笑うしかない。
でもちょっと飽きてくるよね・・・。このワンパターンは。
全13巻だとわかっていなかったら読み続けるのしんどいかもしれない。


2009年01月19日(月) 『百瀬、こっちを向いて。』『世にも不幸なできごと3 大きな窓に気をつけろ』(小)『瞳子』(漫)

【中田永一 祥伝社】

表題作は昨年読んだ恋愛小説アンソロジー『I LOVE YOU』に収録されていたもの。
アンソロジーに収録されていたのを読んだときは、またモテない芸か・・・もうそれはいいよと思って読み流したのですが、後日この作者が覆面作家であることがこのミスで明かされていて、調べるとどうも中身は乙一らしい、と。
斎藤美奈子の『文芸誤報』にも「乙一らしいよー」という旨が書かれていたので、ほぼ確定だろうと思い、とりあえずもう一度読んでみました。

「百瀬、こっちを向いて。」
主人公は、幼馴染で命の恩人でもある先輩の頼みで、百瀬という少女と恋人の振りをすることになる話しです。
主人公のモテないぶりの描写が、人間レベルを設定してみたり、ダブルデートの時に「休日にあつまっている男女混合のなか良しグループなど、スプラッタ映画で殺害されるために登場する役柄でしか見たことがなかったので、殺人鬼にだけは気をつけなくてはとおもった。」と思っていたり、改めて読むと、乙一らしい表現の数々。
だから最初に読んだ時になんかイラっとしたんだな。これじゃあ、乙一だろう、と。
乙一の作風を考えると、そのままのペンネームでこういった恋愛小説短編集を出すのははばかられたのかもしれないけど、ややこしいなぁ。

「なみうちぎわ」
百瀬のときも思ったけれど、本当にもてる男子というのが引き出しにないというか、想像できないんだろうな、という小太郎という子のキャラ。
P124の「愛とは状態のことで、恋とは状態が変化するときに放出される熱なのではないか。一階から二階へ階段をのぼると体があったかくなるのとおなじだ。心が熱を発しながら、今よりも上の、広くてふかい愛情の段階へ移行しているのだ」という文があるのだけれど、愛と恋、逆なんではないか?

「キャベツ畑に彼の声」
全部、高校生の恋愛にまつわる話しなのだけれど、これは女子高生が先生を好きになるパターン。
そこに覆面作家の正体というちょっとしたミステリーもありつつ。一番好きかなぁ。

「小梅が通る」
性格は地味なのにすっごい美少女が主人公。なんとなく『少女七竃と可愛そうな七人の大人』を思い出した。
寛太という少年がなかなかかわいかった。
P242の「寛太くんは何度かふりかえってわたしたちに手をふった」のは、慎平の間違いだと思うんだが・・・。

全話、ラストにちょっとしたひねりがあって、恋愛小説として果たしてくくれるのかちょっと疑問だった。恋愛小説ってよくわからないんでなんとも言えないんですが。
乙一名義だったら『暗いところで待ち合わせ』のような小説だって出しているんだし、別に乙一のままでも問題なさそうなんだけどなぁ。

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【レモニー・スニケット 訳:宇佐川晶子 草思社】

ボードレール家の孤児たちが次に引き取られたのは、あらゆるものに対して臆病なジョセフィーンおばさん。
今回も大人は全くあてにならず、子ども達はどんどんたくましくなっていっているのが幸いと言えば幸い。
ヴァイオレットが終盤にジョセフィーンおばさんに、
「マーケットでシャム船長に会ったとき、わたしたちはこわかったんです。おばさんが窓から身をなげたと思ったときも、こわかったんです。アレルギーをおこすものを食べたときだって、ヨットを盗むのだって、ハリケーンのまっさいちゅうにこの湖をわたってくるのだって、こわかったわあ。でも、だからといって、私たちはやめたりしませんでした」
と言ったのが胸を打つ。全然伝わらないところも含めて。
ジョセフィーンおばさんを置き去りにしてしまったあとも、三姉弟妹があばさんを気遣い続けるところも感動的。

この巻でどうやら、両親の死は他殺だったことがにおわされるけれど、このままオラフ伯爵と孤児たちの追いかけっこはあと何巻続くんだろうか。

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【吉野朔美 小学館】

80年代を舞台にした瞳子という女性を主人公にした連作短編。
大学卒業して就職せずに、実家でぷらぷらして、趣味の合う男友達と遊んでるという80年代的のんきな設定ではあるけれど、当時は当時での切実さはあって、母親との関係、姉との関係、社会との関わり方がさらっと一話一話で描かれている。

母親との関係というのは普遍的なテーマだなぁとは思うのだけれど、この80年代の空気が苦手だった。


2009年01月17日(土) 『flat 1』(漫)『いつか僕もアリの巣に』(他)

【青桐ナツ マッグガーデンブレイドコミックス】

青桐ナツの初コミックスなんだそうなんですが、なんかすっごいどっかで見たことあるような気がするんですけど、どっかで描いてませんでしたかね?
webとか。

中身は、自由人な高校生・平介と、超我慢強い従兄弟の幼児(4〜5歳くらい?)秋のほのぼのとしたラブ・・・じゃなかった、ハートフルストーリー。
これだけだとぴんとこないとは思いますけど、まぁ、可愛い話しです。
秋の平介大好きっぷりが可愛いし、だんだんほだされている平介も可愛い。
このまま大きくなっても大丈夫かな、とちょっと思う大好きっぷりですが、とりあえず現状はほのぼのといい感じ。
続きが楽しみです。

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【大河原恭祐 ポプラ社】

主にアリの研究をしている著者のアリの入門編のような本。
表紙のアリとか、中身のイラストとか、活字の茶色とか、装丁が色々と可愛いので読んでみました。
まぁ、表紙のアリはアリ嫌いには駄目かもしれないけど。

半分くらいまで読んではたと、もの凄いマニアックな本読んでるんじゃないだろうか、私は・・・とちょっと我に返りましたが難しい内容ではありません。
非常に噛み砕いて、アリ全般のことを色々と書いています。
ただ、本当にアリのことしか書いていないので、先日読んだ『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』というように、大学周辺の話しや、ちょっとした事件はほぼないです。
採集の過程で刺されたとか、学生へ出す課題のこととか、ちらっと触れられてはいますけれども。

最近話題になった、働きアリの中にも怠けている奴がいるという話題にも触れられていますが、それに関しては『働きアリの2割はサボっている』っていう本も出てるのでそちらの方が詳しいかもしれません。読んでませんが。
今確認してみたら、アリの本ではないし、読んでもあまりわからないみたいです。
気になる方はこちらの方がいいかもしれません。

シロアリはアリではないということを強く主張していたのが印象的でした。
アリはハチと同じグループだけれど、シロアリはゴキブリに近いから、と説明されたのだけれど、虫は虫・・・と思ってしまう私はあまりぴんとこなかった。
多分、犬と猫を同じだと言うくらいに違うんだろうけど。

アリが出てくると春だなぁと思うのだけれど、アリは昆虫の中でも活動開始が早い方だそうで、あながちその感覚も間違ってはいなかったようです。
他に、世界一大きいアリのコロニーが石狩海岸にあるっていうのにびっくり。
近いな。

春になってアリが出てくるのを見るのがなんとなく楽しみになる一冊でした。


2009年01月15日(木) 『世にも不幸なできごと2 爬虫類の部屋にきた』(小)

【レモニー・スニケット 訳:宇佐川晶子 草思社】

爬虫類学者のモンゴメリー博士に引き取られることになった三人。
1巻のオラフ伯爵とはうってかわって、とてもいい人だったモンゴメリー博士のもとで束の間幸せだった三人ですが、それも助手に扮したオラフがやってきたことで一週間で終わってしまうという展開。

三人には不幸な出来事しか起こらないとわかっているのがある意味、最大のネタバレであり、このままいくと不幸がマンネリするんではないかと早くも危惧を覚えます。
だって最大の不幸はやっぱり、三姉弟妹がバラバラになってしまうことだったり、誰かが死んでしまったりすることだろうと思うのだけれど、そういうことは起こらなさそう。
ある程度の範囲は守った上での、不幸の連続は予想の範囲内になってしまうのがやや退屈。

しかしこの小説、子どもは楽しく読めるかもしれないけれど、大人にはこの痛切な風刺がやや痛い。
三姉弟妹以外に登場する大人は、善人はすぐ騙されたり、死んでしまうし、悪人はいつまでものさばって好き勝手に振舞う。
大人って言うのはこういう生き物なんだよ、ということを懇切丁寧に子ども達に示唆して、だから三姉弟妹みたいに自分達で考えて考えて協力するんだよって言ってるようでいて、それでも不幸になるあたりがひねくれてます。

どの辺に活路を見出して読み進めればいいのか悩ましい小説だな。
不幸を楽しめばいいのかもしれないが、三姉弟妹になんの落ち度もない以上、やっぱり幸せになるといいなぁと考えてしまうのは人情だろう。


2009年01月13日(火) 『庵堂三兄弟の聖職』『世にも不幸なできごと1 不幸のはじまり』(小)

【真藤順丈 角川書店】

昨年のホラー大賞受賞作。
真藤順丈は割りと去年話題になったかと思いますが、選評でも言われているように怖いホラーを期待すると肩透かしです。
むしろいい話しっぽく終わって、家族愛?兄弟の絆?そんな話しにまとまっていて、そういう普通のテーマを遺体を遺品に加工する家業とか、暴力的言動やら、極度の引きこもりやらといった、不健康な設定で固めた小説でした。

悪くはないけどよくもないといった印象。
きっと作者は普通の人なんだろうなぁ、それなのにがんばって異常っぽいことを書いているというふうに感じました。
初めて読んだ真藤順丈の印象は悪い人ではなさそうだ、でした。

長男×次男で読むと楽しいと思います。物語のその後も含め。

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【レモニー・スニケット 訳:宇佐川晶子 草思社】

あらすじから冒頭にいたるまで、ひたすらこれはハッピーエンドの物語ではないと断言し続ける、偏屈な作者。
三姉弟妹がどんどこ不幸になっていく物語りですが、児童書なのでえげつないことはあまりないです。今のところ。

これはハッピーエンドではない、不幸なものがたりなんだと主張すればするほど、作者の書きたいことが不幸ではないというように読み取れてくる。
両親を亡くし、預けられた親戚はろくでなしで子ども達をこき使い、両親の残した遺産を分捕ろうとする。
オラフ伯爵は確かにろくでなしの悪党として書かれているのだけれど、ひょっとしたら作者が本当に嫌うのは人はいいけれど頼りない、後見人のミスター・ポーや、優しいけれどころっと騙されてしまう隣人のジャスティス・ストラウスといった、無責任な善人たちのほうなんじゃないか、という気がする。
子ども達はひどいめにあうかもしれないが、実は子ども達に向ける作者の視線はとても優しい。


2009年01月11日(日) 『僕の知るあなたの話』『プリティマニア』(漫)

【鈴木ツタ 竹書房BAMBOOコミックス】

涼しい顔して茨なカップリングな鈴木ツタ。
今回はホスト×ヤクザ(年上)が表題作。
昨今はヤクザでも受になるのだなぁ。恐ろしい時代だな。
私としては断然有りなのですが。
普通の、同級生カップルとか、会社員カップルとかも収録。
みんなどことなく浮世離れした感じがして好きです。
表題作と、「かみさまの目をぬすんで」が好きでした。

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【スエカネクミコ 少年画報社】

今回も誰向けなのかさっぱりわからない変態漫画。
本人も自覚有りなのでもうしょうがない。
とりあえずひたすら巨乳だし、潔い脱ぎっぷり。
そして何もどうにもならないエンディングといい、なんかもう色々と毎回潔いなぁ!
個人的にはこの作風好きです。


2009年01月10日(土) 『K−20 怪人二十面相・伝』(映)

【監督:佐藤嗣麻子 日本】

原作は北村相ですが、読んでないので乱歩版としか比較できません。
明智小五郎と怪人二十面相は色々な人が作品にしてますが、あんまり満足した記憶がない。

「怪人二十面相だ!」というセリフから始まるとおり、原作オマージュもしつつ、舞台は架空の帝都。
縄梯子と高笑いももちろんあり、やっぱり恥ずかしい奴だな二十面相といったところ。
躁の気があるからな。彼は。

事前に二十面相の意外な正体って宣伝されてしまったので、どう考えても約一名しかそれに該当する人がいなくて、そんな意外性は求めてないんだけどな〜と原作ファンはちょっと思う。
少年探偵団シリーズはお約束の楽しさなので。
まぁ、原作とはまた別物だからそういう流れもありではあるのですが。

全体としてはお正月の娯楽映画で、見た目にも豪華でお話しもすっきりしていてよろしいと思いました。
金城武はまた伝書鳩かわいがってるなぁとか(赤壁に引き続き)とか、松たか子は本当に色気がなくてかわいいなぁとか、仲村トオルが時々白鳥(ドラマバチスタの影響)に見えるなぁとか、そういう感じです。
金城武と國村準のコンビは大変かわいいです。

以下ネタバレ。

意外な犯人の正体を隠すためとはいえ、小林くんのミスリードがあまりにはなはだしかった。
そんなあからさまに怪しい小林くんはいかがなものか。

明智先生の自作自演だった、という真相なのだが、明智先生好きとしてはじゃあ今後誰が二十面相と戦ってくれるんだよ〜という気持ち。

衣装デザインが田島昭宇だったり、VFXを手がけるのが白組だったり、監督はゲームのムービー撮ってる人だったりと、映画界も最近はそういった業界の人材が登用されるようになったんだなぁと。日本らしい感じもします。

ところで小日向さんはどうなっちゃったんでしょうね・・・。


2009年01月09日(金) 『LIFE,LOVE 1』(漫)

【西田東 芳文社花音コミックス】

西田東の漫画を読むのは二作目だけれど、えらい勢いで上達してる気がするんですが、どうなんでしょう。
まぁ、相変わらず80年代な感じの絵柄ですけども。
マフィア×政治家秘書ってありますが、マフィアの下っ端なのでBL的な派手さはないです。
西田氏なので。

2巻目は日本になるのか。色々と気になります。


2009年01月03日(土) 『SUPERNATURAL 1』『赤の神紋 第14章DivingRed』(小)

【原案:エリック・クリプキ 編訳:佐野晶 竹書房文庫】

ドラマのノベライズ第一作。
少し前に、3巻読んじゃったんですが。
ドラマの1〜7話までを収録。
小説で読むと、冒頭のシーンがドラマの時よりも感動するかも。
母のメアリーのことが細かく描写されているおかげで、その死の無残さがより伝わると。
ただ、ドラマを2ndシーズンまで見てるので、そのせいでより感情移入しやすくなっているという見方もできますが。

誤字が多くて、しっかりしてくれーと思いました。
P269のバジャマパーティー(正パジャマパーティー)とか、P334のシェイプシスター(正シェイプシフター)とか。
どんな姉妹だ、と。
他にもありましたけど、忘れました。

+++++++
【桑原水菜 集英社コバルト文庫】

ついに最終巻です。
ミラージュと対というか、ミラージュの副産物というか、そういうポジションの作品だけに終わるというのがなんとも感慨深い。
ミラージュと赤の神紋は書くのもしんどいと思いますが、読むほうもしんどい。
終始自分の在り様を問われているような気がしてきます。

あまり私的な感想を述べたくないので、表面的な感想だけ書いときます。
前半(この巻のではなく全体の)を読んでいたときは、一体どこに着地するんだとはらはらはらはらしっぱなし、不安やら心配やらでいっぱいだったのですが、平和な着地点に到達できて本当によかったです。
もちろん、響生はこれからがんばらねばなりませんし、またがんばる過程で似たような苦しみに陥ることもあるかもしれない。
でもこれを乗り越えた響生はきっと次も乗り越えられるのでしょう。
七転八倒の人生ですが、なんとなく私は羨ましい。

榛原のちょいちょい可愛い面が逆に怖いというか、どうがんばっても面と向かって可愛いとは言えない、さすが帝王。
学芸会でタヌキの役をやったなんて・・・可愛い過去があるのに可愛いと言えない。

赤の神紋で実は一番気にかかっていたキャラクターが鈴木飛鳥だったのですが、優等生的なところに落ち着いてしまいました。
なんだろう、一種のツンデレだったんでしょうか。
他の桑原作品でも見かけないタイプだったので、新しい局面が見れるんじゃないかと動向に注目していただけに、もうちょっと常軌を逸してくれてもよかったかな〜と思いつつ、そうなるともう事態の収拾がつかないので、飛鳥はここまででいいのかもしれない。
新たな可能性を秘めているキャラだったと思うので、他の作品でフィードバックされるといいなぁ。

それにしても、響生とケイの初の場所が函館。
私は今後の人生函館に行くたびににやにやせねばならんのでしょうか。
そして、響生の母校って○高か。ひょっとして。

赤の神紋という舞台は、桑原版アマデウスだったそうですが、戯曲を読んでみたいものです。メデューサももちろん。

あがき続ける凡人の物語りに万感の拍手を。


2009年01月02日(金) 『乱れそめにし』『ラッシュ!』『萌えの死角』(漫)

年明けからBLしか読んでないんですが、苦手な人は適当に流してください。

【こだか和麻 飛鳥新社】

昨日書いた、BL初期はガチンコかファンタジーの二つしかないと言ったうちの、前者の雄といった存在のこだか和麻。
素晴らしいですね。
いや、やっぱり熱いのが好きなんで。
あと、ミラージュの洗礼を受けている人間はどう考えても好きな話しです。
黙ってありがたく押し戴く感じで。
受の腹筋が割れている、いいじゃないですか。
まぁ、そこが大事なんじゃないんですけども。
いやはやいいよね。うん。

+++++++
【ユキムラ ドラコミックス】

あーボーイズラブだなぁという感じ。
最近、あんまり高校生に興味ない上に、ヤンキーにもあまり触手が働かないので、ふぅんで終わった感が。
金井兄に何があったのかが終始気になりました。
表題作より、後半の高校生と美容師カップルの方が好きだな。
生真面目なアホの年下攻。あんまり攻に見えなかったけど。

しかし、こだか和麻のあとだと平和すぎると思ってしまう。比較したいわけではないのだけれど、やっぱりやや濃い目が好きなのかなぁ。

+++++++
【今市子 KARENコミックス】

今市子さんのBLっぽいことを語るエッセイ。
正直、文鳥エッセイのほうが面白い。
文鳥>萌なのか、今市子!?
今市子ファンなら読むと、市子さんはナマモノ系だったんですねぇと思う一冊です。
個人的には、ハゲタカの話しを5ページくらいしてくれてもよかったのに・・・と思う。

市子さんがオーソドックスな組み合わせしか思いつかないのは、おひつじ座だから?と書いていたのだけれど、マイナーばっかり思いつく私もおひつじ座です。
そういえば、確かにオーソドックスな組み合わせが多いけど・・・それ以前にキャラクターの性格がやや変なのが今市子作品なので、オーソドックスであることに気づかなかったな。

相棒の話しやら、懐かしい感じの洋画の話しやら(ベンハーてそんな話しだっけ!?)みたいなことがあって参考になります。なんの参考だ。


2009年01月01日(木) 『薔薇の瞳は爆弾』『ガーデン』(漫)

あけましておめでとうございます。
正月早々にBLばかりですが、ま、今年もなんらかの参考にしていただければと思います。

【ヤマシタトモコ リブレ出版ビーボーイコミックス】

短編集ですね。
アラブ特集で、この話しはさぞ浮いていただろうなぁと思いますが、アラブの富豪に興味のない私はグッジョブと言いたいところ。
ヤマシタトモコの片思いは本当にいつも悲愴で、しかもBLにしては珍しく報われないことも多い。
報われないけど、なんだか報われないのも致し方ない感じの人たちなので、読んでいて凄く気落ちすることはないのが救いと言えば救い。

「嗚呼ボーイフレンド」と「絶望の庭」を読んでいて、ヤマシタトモコの言葉の選び方って小説家みたいだなぁと思った。
小説も書いてそう。

表題作がアホみたいで好きですね。

+++++++
【寿たらこ リブレ出版】

初出が2000年なのでやや古いですね。
中身は、SF+ファンタジーなのであまり関係ないといえばない。
ボーイズラブが今みたいに、等身大の世界の話しじゃなく、ファンタジーでありSFだった頃の香りが漂う作品集。
初期BL本当に、ガチンコで男同士の愛か、男同士と言うよりももっと中性的な話しの両極端にわかれていたような気がします。
それでもって、本作は後者に属する話しで、少女漫画誌では弾かれるけど、BLとも言い難いそんな内容。
運命の相手の物語とでも言いましょうか、まあ、ぶっちゃけ割と苦手な感じです。
私は変態な話しと、愚か者の話しが好きなので。
あと、平行世界がすごい苦手なの。BLに限らず、頭悪いの。こんがらがっちゃうの。



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