妄言読書日記
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※ネタバレしています
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2008年10月30日(木) 『NO.6 7』(小)

【あさのあつこ 講談社YA!ENTERTAINMENT】

内容と関係ないのだけれど、このYA!シリーズの「物語の快感」というキャッチフレーズがよいよな、と思います。
ほんとに、快感感じるラインナップかどうかは個人の趣味ですが。
(これと都会トムしか読んでいないし、そもそもティーンが対象のシリーズですし)
素敵なものを読んでいるときに感じるのは間違いなく快感です。

さて、いよいよ内部への侵入を果たした紫苑とネズミです。
ネズミの中で紫苑の重みが増す出来事が起こり、紫苑も変わってしまうのかどうなのか、が今後の見所でしょう。
そして、次の巻では沙布との再会もあるでしょうが、それこそ変わってしまったであろう沙布に対してどうするのか。

ひょっとして物語りはこれからなのか?
No.6自体もどうなってしまうか予測できない中、そんな気がしてしまいますが、とりあえず二人の絆がこれ以上深まるとBLになっちゃうよ?ってところが気になるのです。お姉さんは。
ティーンのお嬢さん方はこんな大人になってはいけないのです。
まあ、あさの先生に出会った時点でまずいルートに入っていると言えるかもしれませんが。
こちらも楽しいもんですよ。諦めれば。


2008年10月29日(水) 『ザ・ロード』(小)

【コーマック・マッカーシー 訳:黒原敏行 早川書房】

荒廃した世界で、父親とその幼い息子が南を目指して歩くというロードムービー的な小説。
動植物も絶え、灰が降り積もり、どんどん寒くなっていく世界は、当然無法地帯で残虐な人間たちから息子を守りつつ、あてがあるわけでもなく南を目指す父親。

先日読んだ『最後の物たちの国で』と同じような設定なだけに、比べてしまいます。
で、最後の物たちの〜の方が好みだったので、どうも退屈でした。
少年の善良さがどうもうそ臭い・・・。
ラストもなんだかなぁ。こんな過酷な世界を延々書いてきて、いきなりそんなこと言われても、信じられない。

ヴィゴ・モーテンセンで映画化するらしいので、そちらは楽しみですが。
ついでに『ノーカントリー』も観たかったんだけどなぁ。
いずれまた。


2008年10月27日(月) 『ジェネラル・ルージュの凱旋』(小)

【海堂尊 宝島社】

ナイチンゲールに登場した、ジェネラルこと速水が主役。
田口&白鳥シリーズって書いてるけどこれはもう間違いなく、将軍が持ってった。
ついでにいうと、ついにミステリーじゃなくなった。
誰が告発したのかとかなんのためにとか、事実はどうだってあたりはミステリーと言えるかもしれないが、一連のシリーズはメディカルエンターテイメントってことでいいと思う。
個人的にはなんの不服もない。

ナイチンゲール事件と実は平行して起こっていた、速水の業者との癒着問題。
二つの案件を同時に抱えていたなんて、意外と器用だったんじゃないか、田口先生。
その両方をなんとか丸く収めたんだから、田口先生の能力への認識は上方修正が必要かも。

ナイチンゲールの時はちらりとしか出てこなかったけれど、改めて速水部長のかっこよさは手放しで賞賛したい。
速水の前では白鳥も大人しい。
あれ、バチスタ以外はけっこう白鳥は大人しい・・・?
速水と姫宮の組み合わせがなんだかおかしかった。
姫宮は誰と組ませてもおもしろいなぁ。
いつか田口先生と顔を合わせて欲しい。

田口先生のリスクマネンジメント委員会とは別に設置された、エシックス・コミティでの査問会シーンで、ここでもAiを突っ込んでくる海堂先生の執念には頭が下がる。
今回ばかりは死体もないし、救命救急センターの窮状でいくかと思いきや。
『死因不明社会』で倫理委員会の方からね・・・と言っていたのはこのことか、と海堂先生がしてきた苦労がしのばれる一幕です。
ほんとにここまでだったのか、誇張してるのかはわかりませんが。
・・・ひょっとしたらこれでも遠慮してるかもしれないけど。

沼田や査問会で、速水以上にいじめられる田口先生が気の毒なはずなのに、なんでかあまりかわいそうじゃない。
ああ見えてけっこうしたたかだからかもしれない。

久しぶりの黒崎教授も相変わらず頑固で素敵です。
イメージは國村準。

田口、速水、島津の同期トリオはもっと読みたいなー。
田口先生は、速水のことを肝心なところで勝負弱いと言っていたけれど、速水が個人的に田口先生に弱いだけのような気がする。
もしくは田口先生が勝負強いのか。
両方かも。

北に行くことになった速水先生には早く帰ってきて欲しいなぁ。
帰ってくるのかな。
螺鈿で北に向かった小百合と遭遇してそうな予感もします。


2008年10月25日(土) 『螺鈿迷宮』(小)

【海堂尊 角川書店】

主人公は代われど、舞台は同じ桜宮市で、バチスタ、ナイチンゲールでも時々名前が登場した桜宮病院。
主人公が医学生になったため、登場人物の平均年齢が下がった印象。
中身も、ミステリーというより、青春小説、成長物の側面が強いかも。

東城大学医学部の落ちこぼれ学生、天馬大吉が主人公。
名前だけはちらっと登場した、幼馴染で記者の別宮葉子からの依頼で、桜宮病院にボランティアとして潜入することに。
ここで、噂の巌雄院長や、双子、そしてついに氷姫こと姫宮が登場。
姫宮とキャラがかぶってるなんて言ったら、田口先生に失礼なんではなかろうか・・・と思いたくなるドジっこぶり。
田口先生はもう少しできる、と思うよ?

それにしてもようやく、本来のコンビを拝めました。
普通、逆だよね。
白鳥・姫宮コンビが思った以上にしっくりしてて楽しかったです。
医者の白鳥はいよいよ、伊良部みたいでしたけど・・・。
田口先生といる時より大人しかったのはなぜだろう。それとも、普段はこれくらいなのだろうか。

以下、ややネタバレ。

桜宮家の人々のキャラがけっこう気に入っていただけに、とちゅうから真相が見えてくると、なんとかこう、どうにかなりませんかね、という気持ちにさせられた。
目次で「蝸牛炎上」とあったので半ば諦めてはいたのですが、それでもこう飄々と生き延びそうな感じがあったのになぁ。
せっかく登場したのに、登場とともに一斉に退場するなんて寂しかったです。
すみれと田口先生がどんな感じなのか見てみたかった。
田口先生にとっての氷室、みたいに天馬にとっての小百合という感じで、今後もまだ何かありそうですね。

今までの作品は、Aiを導入してれば・・・という話しだったのが、今回はAiをしっかり行った上での犯行でした。
海堂先生のフェア精神がそうさせたのか。

終末期医療を題材に、罪が罪を呼ぶ展開で、なかなか重たい話しでした。
白鳥ですら敗北を認める中、美智が不定愁訴外来にたどり着くシーンは、2ページしかないながらも救われる気持ちになります。
すみれが最後になんと言って、美智のことを託したのかが気にかかります。

天馬にはがんばって医者になってもらって、また東城大付属病院での再会を期待してます。


2008年10月24日(金) 『死因不明社会 Aiが拓く新しい医療』(他)

【海堂尊 講談社ブルーバックス】

小説でもお馴染みの、Aiと現在の日本の死亡診断状況についてです。
海堂先生の悲願・Aiの導入についてより詳しく書かれているので、小説ファンは今後一層、白鳥の言ってることや、医師が言ってることが理解しやすくなる一冊。

ミステリファンとしては、解剖ってみんなやってるんじゃないの?とか、死因がわからないなんて何も始まらないじゃないか、という気分になるのだけれど、現実はかなり杜撰。

解剖率は2%で、残りは体の表面からの死亡診断がされる現実。
それは医療現場の責任ではなく、死亡診断を軽視して予算をつけない厚生労働省に大きな責任がある。
概ねそういう内容です。
生きてる人にも死んでる人にも、ろくなことはしてくれない厚生労働省。
ここは白鳥にがんばってもらうしかない。

これを改善するためには、Aiの導入を、というのだけれど、なにせかにせ予算がつかないことには何も始まらない、ということが根底にある。
死亡原因が知りたければ東京で死ぬしかない、という現状。

読みながらそういえば、解剖率や監察医制度のことはどこか別の小説でも読んだことがあったような・・・鬼籍通覧かな。

合間合間に白鳥と別宮のインタビュー形式での解説もあり、小説ファンには読みやすく、小説読んだことがない人にはアレ?となるかも。
終盤の文章は、熱が入ってきてなんとなく白鳥みたいになっていた海堂先生。

でもこれって厚生労働省や医療現場の問題なんではないのか、と思う人には、先生の最後の言葉を引用したい。

官僚の不作為も適切にとがめられなければ、彼等は責任を感じない。物事を考え抜かなければ、市民は国家に喰い殺される。防ぐ手だてはただひとつ。自分で考え、物事を調べ、よりよくするために行動すること。安穏と怠惰な眠りの中で人生を全うできる幸せな時代は終焉を告げた。
 無知は罪なのである。


死亡診断に関してだけではなく、現状の全てに当てはまる言葉として首肯して受け止めたい。


2008年10月22日(水) 『最後の物たちの国で』(小)

【ポール・オースター 訳:柴田元幸 白水社】

「人々はつぎつぎに死んでいき、赤ん坊は一人として生まれず、物もどんどんなくなり、それとともに言葉も消えていく」国に兄を探しに行った、アンナからの手紙という形をとっている小説。
崩壊に向かっている国において、どんな犯罪も死も派手なエピソードではなくただ淡々と過ぎていく。
貧しく、物資にも乏しいこの国では、一度なくなった物はその物を現す言葉すら消えていくというのが恐ろしい。
紙や鉛筆ですら手に入りにくいそんな場所で、アンナがこの国での経験を手紙にすることに希望を見出すのはとてもよくわかる。

最後にアンナたちがこの国を脱出できたのかはわからない。
けれどこの手紙がどうやら差し出した相手に届いたように読めるところを見ると、脱出できていてもできていなくても少しは希望の持てる未来がアンナたちに訪れたのではないかと思えるし、思いたいなと思う。


2008年10月20日(月) 『ゲットスマート』(映)

【監督;ピーター・シーガル アメリカ】

あんまりコメディ映画は観ないのだけれど、これはなんとなくツボに入るかな、と思い観に行ってみた。
哀しいことに、予告で大抵の笑いの部分が流れちゃってて、オチを知ってるシーンが多々…。
予想されたこととはいえ、予告でオチを流すのもどうなのだろうか。

思ったよりも、マックスが有能で驚いた。
もっと落ちこぼれなのかと思いきや、元々有能な分析官で、それなりに格闘もできて、機転もきく。

じゃあなんでコメディになっちゃうのかといえば、その真面目さがおかしい。
真面目であるがゆえに、ちょっとしたトラブルや失敗が起こったときに笑っちゃう。
おふざけコメディはどうも好きじゃないので、真面目にやってるがゆえに笑える、というのはとてもよかったです。

意外とアクションもあり、続編ができそう。

あと、これが噂のマシ・オカか〜と思いました。ヒーローズは見たことないので。


2008年10月16日(木) 『ナイチンゲールの沈黙 下』(小)

【海堂尊 宝島社文庫】

読み終わってから、バチスタもおさらいでさらっと読んでみて確信したのだけれど、このシリーズはフーダニットに重点は置いていないんだな。
バチスタのと時はあまりに犯人がわかりやす過ぎて、なんだかなーと思った部分があったのだけれど、よくよく読み返すと、白鳥が「大切なのは事実かどうかを証明することではなくて、事実と仮定して物事を動かしていった時に、最後まで矛盾なく成立するかどうか確かめるというやり方をすること」と言っていて、つまりはそういうことかと。
読者はだいたい前半の田口先生パートで犯人の目星がつき、後半の白鳥パートではその仮定が合ってるかどうか一緒に検証していく、という読み方をするのがどうやらベストな気がします。
読み返してみて、論理パズルみたいな構造の小説だなぁとバチスタは思いましたね。

で、ナイチンゲールに出てくる小夜の特殊能力は検証にはさして絡まない部分だから、そう目くじら立てなくてもいいんではないかな、と思うわけです。
必要かといわれると微妙かな、とは感じたけれど、前代未聞の自白シーンもこの能力のおかげですし、退屈な自白シーンにまだこんなバリエーションがあったのかと感心しました。

で、以下はナイチンゲールの真相部分にも触れる話し。

真相が判明したときは、あまりにもそのまんまやないかーい!と言いたくなるような犯行内容で逆に驚きました。
城崎は本当にただのミスリードだったんだなぁ。

ラストの自白はしたけれど、小夜がやったということを証明できないというあたりの流れは、なんだか逆転裁判風でわくわくしました。
田口先生Brabo!という感じでした。
犯人あてよりも、証明するほうが好きなんです。

バチスタの時よりも、やたら田口先生が可愛く見えたのはなんでかなーと思ったら、今回は一人称じゃなかったからなんですねぇ。
けっこう心の内では鋭くつっこんでる田口先生だけれど、表面的には穏やかでお人よしが前に出ている様子。
にしても、警察庁と警視庁ってどう違うんですか?は、世間知らずというかなんというか・・・。
有名な歌姫のことも全然知らないし、生活感があるようで浮世離れしている印象。

「女が本気なら、その時は男は見届けるしかない。それは力が要ることなんだ」
という田口先生のセリフがちょっと意外。
センセイはひょっとしたら、20代とか30代に大恋愛をしてるのかも。なんだかしてそうなんだよなぁ。

新登場の加納・タマコンビや、速水、島津などの同級生たちがさして広くはないであろう不定愁訴外来にひしめいている様がかなりおかしかった。
このメンバーは今後も楽しませてくれそうです。
田口先生のまわりには、優秀ないい男がいっぱいいるなぁ。
いい男部分に関しては、白鳥は違うけど。兵頭も違うのか。

今回もいっぱい楽しい仰々しい二つ名が登場してました。
デジタル・ハウンドドッグが今回のヒット。

瑞人が両目を摘出しなければならないという展開で、このために小夜の能力が必要だったのかとは思ったけれど、やや予定調和な気がしました。
海堂先生は意外とロマンチストな部分があるのかも。

今回でキャラクターがある程度揃った、という気がするので、3作目のジェネラルルージュが早く読みたいなぁ。


2008年10月15日(水) 『ナイチンゲールの沈黙 上』(小)

【海堂尊 宝島社文庫】

田口・白鳥シリーズ第二弾。
そんなに毎回、院内で殺人が起こっちゃまずいだろう、と思っていたのですが、殺人事件自体は外の出来事。
今回、メインになる舞台は小児科です。
海堂先生は、子どももなかなか上手に書くなという印象。
アツシがかわいいです。

本来小児科にはなんの関係もないはずの、田口先生がいつの間にか事件にすっかり関わっていくことになるあたり、トラブル処理係が定着したなぁ。
由紀と田口先生の面談が印象的。
やっぱり田口先生は素敵だなぁ。可愛いし。
私服は白いタートルネックのセーターなのか。40なのに。
飲まないミニボトルを集めているところなんかも好きだ。
集めてはいるけれど執着はないあたりも。
それにしても、生活感があるようでいて、いまいち休日の様子が見えてこない人だな。

今後レギュラー化するであろう、新キャラも登場し、今回もやっぱり下巻からの登場になるらしいあの人の登場を楽しみに下巻へ進みたいと思います。


2008年10月13日(月) 『魔王』(小)

【伊坂幸太郎 講談社文庫】

『グラスホッパー』あたりからやや、書きたいことが変わってきたのかなぁという印象の伊坂ですが、「魔王」「呼吸」と読むとその印象も強くなります。
伊坂の小説にしては、爽快感に欠ける読後感。
過渡期、というかターニングポイントな一作なのかな、と。

伊坂キャラは団体行動が苦手そうだな、と改めて実感しました。

「魔王」
安藤兄の方が主人公。
途中で千葉が出てきたので、まさか・・・とは思いましたが。
私も安藤兄タイプで、なんでもかんでも考えてしまうので、考えすぎだよ兄、とは思えなかった。
兄は結局、自分の能力を本当に有効には使えなかった、という印象の終わり方ではあったけれど、実はそうでもなかったのかな、と「呼吸」で犬養が再び同じセリフを言ったところで思い直します。

ごきぶりを「ごきげんよう、ひさしぶり」と呼ぶ潤也が可愛いなと。

「呼吸」
魔王から5年後の話し。
潤也ではなく、その妻となった詩織の視点からの話し。
世の中の流れに流されることを危惧して、真っ向から立ち向かってた兄と違って、こちらの二人は情報をシャットダウンして社会から少し距離を置く、というやり方で流されることを避けている、んだと思う。
潤也はわからないけれど、詩織には避けているという明確な意思はなさそうだけれども。
投票用紙に○をつけるところなんかも、あまり自覚的ではなさそうだし。
潤也が何をしようとしていたのか、これからどういう国になっていくのかはわからないままに、話しはぷつりと終わる。
「考えろ」ということなのだろうな。これは。そんな気がする。


2008年10月12日(日) 『宇宙兄弟 1〜3』(漫)

【小山宙哉 講談社モーニングコミック】

タイトルと表紙を見ると、なんとなくシュールなのかな、と思うのだけれど全くそうではなく読むと、確かに「宇宙兄弟」だな、となります。

やや近未来を舞台に、子どもの頃の夢だった宇宙飛行士になって月に行くことになった弟と、なり損なってその上、会社をクビになった兄が再び宇宙飛行士を目指す話しです。
宇宙飛行士、さっぱり身近でもなければ現実味もない職業ですが、存在することは確かだし、宇宙に行った日本人だっているのに、そういえば漫画の題材になったのは見たことなかったなぁと。

キャラクターも普通の日本人だし、試験も筑波。
兄弟も特に天才ということもなく(それなりに優秀なんですが)、意外なほど堅実。
試験のテンポもよく、ちょっと上手く試験が運びすぎじゃ・・・と思わないこともないのだけれど、ひょっとしたらこの漫画の本当のメインは試験に受かった後にあるのかもしれない、ので今はむっちゃんが上手く3次試験を乗り切れるのかどうか、続きを楽しみにしてます。

時々、実はできるのかな、と思わせといて、なんだか抜けてるお兄ちゃんがなんとも可愛い。


2008年10月10日(金) 『ホルモー六景』(小)

【万城目学 角川書店】

『鴨川ホルモー』を読んだからついでに読んでおくか、くらいの気持ちで読んだのだけれどこっちの方が面白かった。
鴨川の続編、というよりも番外編に位置する連作短編集。

肝心のホルモー自体をやってる話しはなく、ホルモーに関わる人たち周辺のお話しです。
ホルモーをやってる風景が好きだったのでないのがやや残念ではありましたが。
京大サイドの話しは意外となく、安倍くんにいたってはほとんど登場せず。
凡ちゃんとのその後を期待すると肩透かしです。

「ローマ風の休日」と「長持ちの恋」がよかったです。
やっぱり凡ちゃんが好きなようで。
長持ちの〜では、高村くんがそうだっていうのが、なんとなく釈然としない気もしましたけれど、まあ、高村くんでもいいか。

「もっちゃん」は、ホルモーの話しだと思って読んでいると、おっとそういうことか、となります。
鼻も檸檬も超有名だから、たいていの人はすぐわかるとは思いますけど。
今度、もっちゃんの小説読んだら笑ってしまいそうだな。


2008年10月09日(木) 『一月物語』(小)

【平野啓一郎 新潮社】

かっこつけたツッチーに似た著者近影にやや引くものがあってどうも読む気にならなかったのですが、読んでも別に読む必要はなかったな・・・としか思えなかった。
毎行毎行、読めない漢字、見たことない漢字、初めて見る熟語が登場して、大変語彙が豊富なんですね、とは思えど、だからどうだという文章。
上手いか、この文章。

話しも泉鏡花風で、迷い家と牡丹灯篭のアレンジのような、なんで今さらこんな話しを読まねばならん、という気分になる。
タイトルは雨月物語じゃなくて、遠野物語のほうにかかってるんですかねぇ。
どっちでもいいけど。
この作品だけ読むと、なんで三島の再来なんだかさっぱりですが、『日蝕』は三島風なんでしょうか。

三島や鴎外やらに憧れるのはけっこうだし、文体も別に擬古文でいいけど、テーマくらいはもう少しオリジナリティがあってもいいんじゃないか。
現代物の小説はどんな感じなんでしょうね。


2008年10月05日(日) 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(小)

【J・D・サリンジャー 訳:村上春樹 白水社】

10代のうちに読んでいたら、凄い共感するか、凄い反発するかどっちかだっただろうなぁと思う。
ホールデンはまあ、確かに甘ったれた奴だと思うのだけれど、ルームメイトや、教師や、あるいはちょっと会話を交わしただけの尼さん、タクシーの運転手、そういう人たちのちょっとした部分にもの凄く気分が落ち込む感じはひじょうにわかる。
口からでまかせばかりで、その時その時ですぐに気分が盛り上がったり盛り下がったり。そういうのに覚えがある分、ホールデンと同じ年代だったら逆に読むのがイヤになったかも。
20歳前後で読むのが丁度よさそうだなぁ。

ホールデンの年代が一昔前になってしまった私ですが、10代のこういうセンシティブな話しはとても気持ちが沈む。
どうも私はうまく大人になれなかったタイプみたいで、半分くらいまだホールデン的部分が残ってて、なんといかそういうのを目の前にすると落ち込むよね。と村上訳風に言ってみる。

それにしても思ってた以上に、舞城ってサリンジャーだったんだなぁと驚いた。


2008年10月02日(木) 『アイアンマン』『崖の上のポニョ』(映)

【監督:ジョン・ファヴロー アメリカ】

アメコミの映画化です。
アメコミは相変わらずさっぱりわからないので、その辺の比較は詳しい人に譲ることに。

ヒーロー物にしてはおっさんな主人公、トニー・スターク。
武器製造会社の天才開発者で社長で、大金持ちで、道楽者、というプロフィールだけ見るとどっちかと言うと悪役じゃないの、というのが変り種です。
全体的に大雑把というか荒削りな話しなのは、アメコミヒーロー物らしい。
優秀な科学者がいっぱい集まっても作れなかったもんを、囚われの洞窟の中で作り上げちゃう社長とか、鉄製のスーツではあの猛火の中熱かろうとか、ちょっとはインセンのことを思い出してやれよ社長、とかまあ色々思いました。

特になんの意外なことも起こらないストーリーですが、社長が自力で脱出してから、アイアンマンのスーツ作り上げるまでの過程が楽しいです。
手伝ってくれるのは不器用アームロボと、有能執事コンピューター(音声のみ)って、冒頭の派手な生活ぶりからは想像もつかない意外にも地味なメンバー。
やっぱり天才はちょっと変ってことなんでしょうか。
困った社長ですが、なんだか憎めないです。
秘書やローディといった真面目な人物にいつも怒られている姿もかわいいです。
ラストの記者会見も社長、言っちゃった!て感じでヒーロー物としては意外ながらも社長らしい。

エンディングロールの後の意味がいまいちつかめなかったのですが、パンフレットを読んで理解。
いずれにせよ続編作る気満々で終わっていたし、実際予定もあるようなので、今度こそ社長には思う様活躍してもらいたいな〜。今回の活躍は微妙だった。

ところで、社長の自宅はもう少しセキュリティ上げた方がいいと思うよ。

エンディングのアニメーション(?)がかっこよかったです。

++++++++
【監督:宮崎駿 日本】

ポーニョポニョポニョ♪がここ一週間鳴り止まず、やむなく観にいきました。
観たら止まった。
恐るべしポニョの呪い。

宮崎版人魚姫物語。
がんばって子ども向けに作ったんだな〜と思いました。
ポニョの両親のこととか掘り下げたそうな雰囲気を出しつつ、スルー。
大人はちょっとそこが気になっちゃうと思う。

実は汚い海とか、わらわらしてるフナムシとか、ちょっと不気味な海の生き物とか、妙に不気味なアイコンが散見されて宮崎だからなのか、何かの暗喩なのか細かく見るといろいろ気になる細部がたくさん。
話しはシンプルなだけに、どこに注目するかによってけっこう見方が大きく変わりそうな映画でした。

ポニョパパのフジモトって、一体・・・と思っていたらパンフレットにノーチラス号の船員だったって書いてあった。
なるほど。
パパは見た目、落ちぶれたハウルっぽいけど、なんだか駄目さが好きでした。
宮崎映画は、駄目っぽいパパと、元気なじいさんばあさんが好きです。

宗介役の子上手かったなー。大人がやってるのかと思った。
それにしても山口智子が凄い上手い。声優かというほど上手かった。

わらわらしてる矢野顕子が相当怖かった。小さい矢野顕子が〜いっぱい〜!!!

エンディングもすっきりしていて、小さい子ども視点を徹底的に考慮したんだなぁと思います。
が、大人の鑑賞にも耐え得る映画です。

ポニョが魚の子じゃないっていうのはなんか騙された気分だけどなー。
あれ両親共々魚じゃないし、ポニョも見たとおり魚に見えないし。
まー可愛かったけど。

私的なことなのだけれど、バケツに入ったポニョを見ると、大昔に読んだ日野日出志の「ウロコのない魚」というホラー漫画を思い出すんだ・・・。
すげぇ、怖いんだ。怖いというかグロいんだ。日野日出志だから・・・。


2008年10月01日(水) 『SUPERNATURAL 3』(小)

【原案:エリック・クリプキ 編訳:佐野晶 竹書房文庫】

同名アメリカドラマのノベライズです。
全3巻のうちいきなり3巻から読んでるのは、1、2巻が本屋になかったからです。
TVドラマを全部見てるので、ほぼドラマと同じ内容ということもあり、まいっかと3巻から。
ドラマ見ていない人は、1巻からお読みになることをお薦めします。

そもそもノベライズというものを読んだのが初めてで、アメリカでノベライズされたものをさらに翻訳したのか、それとも編訳の人が、小説に書き起こしてるのかよくわからないんですが、そこのとこのプロセスってどうなってるんでしょうか。
いずれにせよ、文章は微妙。
凄い下手、ではないけれど、紋切り型な表現が多いなぁと思います。

それでも、ドラマではわからない心理描写や、細かい設定が読めるのが楽しいです。
また、見ると読むではやはりちょっと雰囲気変わっていて、小説はやっぱり好きだなぁと。
もちろんドラマのほうがいいんですけれど!

シーズン2もノベライズ出して欲しいな。



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