妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2008年03月31日(月) 『嫌オタク流』(他)『魔界都市異伝銀座魔界高校』『光の帝国 常野物語』(小)

【中原昌也・高橋ヨシキ・海猫沢めろん・更科修一郎 太田出版】

門外漢の中原氏と高橋氏が前半は海猫沢氏に、後半は更科氏にいろいろぶつける本。
別に何が面白いわけでも、オタクに興味があるわけでも、どうでもいいんですけど、オタクがどうのというより、人間が嫌いなのか、と思えてくる中原昌也のみんな死んじゃえばいいのに的な発言がいちいちおかしい。
この人なんだって、こんなになっちゃったのかなーと。
きっとろくでもない小説書いてるんだろうな。
そのうち読んでみよう。

前半より、後半の方がまだマシだけど、どうせなら対談中によく出てくる、岡田斗司夫やら本田透を呼べよ。
大塚英志でもいいけど。
わりとひどい内容でした。

+++++++
【菊地秀行 双葉文庫】

魔界都市って書いてるけど、新宿とは全く関係ないです。
高校生(一応)が主人公だからか、バイオレンスで怪奇な感じが薄い。
いやそりゃ、十分変な話しなんだけども。
話も終盤、なんだかまっとうで、そうじゃないだろ菊地秀行!と。
あとがき読んだら、なんだか満足そうで、菊地ももう60だからなぁとか思ってしまった。
新宿の闇にすっかり慣れてしまったからなのかもしれません。

一人称じゃないほうが好きだなぁ。

+++++++
【恩田陸 集英社文庫】

常野の不思議な能力を持つ人々の連作短編集。
「大きな引き出し」「オセロ・ゲーム」「光の帝国」が好きでした。
特にオセロ・ゲームの瑛子が夫を取り戻せるのかどうか、その後が非常に気になるのですが、それは『エンド・ゲーム』に書かれているようです。


2008年03月29日(土) 『福音の少年』(小)

【あさのあつこ 角川文庫】

今、ふとどうしてこのタイトルなのかが気になった。
主人公である二人の少年のどちらも、福音をもたらすような子ではなかったような気がするし、誰に対しての福音なのか。
少年は二人のうちどちらをさしているのか、あるいは両方なのか。
陽の声のことをさすとしたら、福音をもたらされるのは明帆だったのか。

端的に説明すれば、一人の少女の焼死事件を追う、幼馴染と恋人の少年二人の物語なのだけれど、そういう理解ではどこか違和感が残るし、読み終わっても到底納得できない話だと思う。
二人が藍子の死の謎を追うのは、二人が藍子の死を悼んでいるからでも、犯人を憎んでいるからでもなく、他者に支配されることの反発に他ならなく、そういう点でこの二人は共通してる。
あさの作品はいつもたった一つのことしかいっていない。
決め付けられることを拒み、空虚な言葉を絶対に認めない。
あさのさんの年齢になってもなお、他者から押し付けられるものにこんなに敏感で厳しいというのは素直に毎回感動する。
そのせいで、たとえ文章があけすけすぎていたり、直截的過ぎるように感じるとしても。

いつものようにとても力強く、密度の濃い話しだったと思うのだけど、どこかに不満が残る理由のひとつは、主人公二人の差異があまりはっきりしなかったことのような気がする。
似ている、と描写されるから、似ている部分はあってもいいのだけど、バッテリーにしろ、No.6にしろ、MANZAIにしろ、真逆の二人が主人公で、お互いに反発したり惹かれたりする理由が見えやすかったのに比べて、やっぱりわかりにくい。
たぶん、今回はわざと似た二人にしたのだとは思うのだけど。

だけど、最後の最後で明帆と陽は別の選択をするわけで、どこでその差異が出るのかが見えづらかった。
どうして明帆は一人で決着をつけようとしたのか、どうして陽がそう思わなかったのか。
ラストがばたばたっと展開しすぎたのかもしれない。
あとは最後まで、藍子が何を考えて、どうしてそんなことをしていたのかが、わかるようでわからないことも、すっきりしない要因だと思う。

満点な出来ではないのだけれど、それはそれで私は好きでした。
でも、たまに、普通の友情でもいいんだよ、あさの先生。

「薄桃色の一瞬に」で、ようやく藍子がちょっと見えて、ようやく藍子という少女の死を悲しく思えた。
あさのさんの書く女の子たちの友情もとてもよいと思う。


2008年03月26日(水) 『夏光』『ほかに誰がいる』(小)

今日は地元の新人作家二人の作品。

【乾ルカ 文藝春秋】

ホラー短編集。
もう少しいい装丁だったら、あるいは、ホラー大賞から出ていたらもっと人に読まれたかもしれない。
体の部位にまつわる6編が収録され、第1部は少し古い時代を、第2部は現代を舞台に書かれている。

「夏光」
唯一、舞台が北海道ではない話し。
最後まで読むと、そこでなければならない理由もわかる。
怖いというよりも哀切な印象。他の話もそうなのだけど。

「夜鷹の朝」
できはあまりよくないかも。

「百焔」
呪詛の話しでありながら、意外にもいい話しでまとまったのが逆に良かったのかも。

「は」
ものすごく滑稽なんだけど、夜店の金魚を見たらちょっと思い出すかもしれない。
グロイ話しだけど、軽い語り口で不快感は薄い。
一番ホラーらしい話し。

「Out of This World」
小学生達のちょっと不思議な夏休み話、と思って読んでたら、ラストが思いのほか無残で、ちょっと気分が落ち込んだ。
乙一を思い出した。

「風、檸檬、冬の終わり」
ホラーと言うよりはちょっと不思議な能力の話しで、タイトル通り、清々しいような哀しいような読後感。

粒ぞろいな短編集でした。今後もがんばって書いて欲しいものです。
たぶん、ホラーでくくらないほうがいいとおもうけど。

++++++++
【朝倉かすみ 幻冬舎文庫】

恋愛物なんだろうと思って、粗筋も確認せずに読んだので、序盤で驚いた。
恋愛物というか、まあ、一目ぼれの話しなのだけど、そうとう強烈な主人公でした。
この主人公はどこかで立ち止まったり我に返ったりするのだろうか、と思いながら、どこまでもついていくと、最後の最後まで走り抜ける。
「思い込んだまま、突っ走る小説にしよう」とあとがきに書かれている通り。

若くない(10代や20代じゃないという意味で)新人作家のエネルギーは凄いな、と最後まで読まされてほとほと感心。
決して好きな話しではないのだけど。

これはうちの近所の描写だなぁという部分があって、なんともくすぐったい気分になりました。


2008年03月22日(土) 『天河伝説殺人事件 下』(小)

【内田康夫 角川文庫】

浅見シリーズでも屈指の名作、だそうでこれを読んだわけなんですが、上下にするような内容でもあるまい・・・というのが正直な感想でした。
まぁ、文庫化に際して分かれちゃったのかもしれないですが、がしかし、余計なキャラやらエピソードが多いような気がしてならない。
ミスリード?
千代栄というキャラはいるのか?とか、智春と光彦のちょっといい感じ、なエピソードとか。
叙情的なんだよなぁ。そこがいいのかもしれないのだけどそれが冗漫に感じられる。

ラストシーンはよかったかなぁ。
基本的に、光彦の推理に裏づけがないのが説得力に欠ける。
それじゃ、裁判になったら負けちゃう!!(それは違うから)


2008年03月21日(金) 『バンテージ・ポイント』(映)『男たちの荒野 ブラディ・ドール読本』(他)

【監督:ピート・トラヴィス アメリカ】

大統領狙撃事件というショッキングな事件の目撃者、8人の視点から描く、というプロット。
というと、交互に語られるのかと思うかもしれませんが、TVプロデューサーの視点から始まり、シークレットサービス、観光客、と次々にバトンタッチしていきます。
毎回毎回、狙撃ちょっと前から狙撃後の混乱まで見せられるので、三人目あたりから、ちょっとこのままのペースで見せられたら飽きがくるんでは、と心配になりましたが、おそるべきスピード感で最後まで見せます。
緩急の緩の部分はなし。
余分なものは一切排除した、ひじょうにスマートな脚本。
終盤のカーチェイスもオーソドックスながら、狭い街中(ロケ地はスペインじゃないらしいが)を実際に走っているだけあって迫力充分。

大統領狙撃事件がこんなにあっさりすっきり、すかっとしてていいのか!?と思うくらいよく整理された映画でした。
1時間半という実際の短さもあるけど、あっという間、という表現がぴったりです。
この感覚は一見してみるのが一番よいかと思います。

+++++++
【監修:北方謙三 角川文庫】

タイトルどおり、ブラディ・ドールシリーズのあれそれ本。
インタビューからキャラクタープロフィールから年表から、となかなかよいデータブックになるかと。

一巻一巻の粗筋読んでいるだけで熱い。
キャラ紹介も、あらためてセリフとか描写を抜粋されると、熱いやらかっこいいやらなんやら可愛いやら、と困ってしまう。
全く、北方氏の書く男って奴はしょうもうないなぁ!と改めて思いました。
そろそろ、約束の町とか、水滸伝読みたいな。


2008年03月20日(木) 『天河伝説殺人事件 上』(小)

【内田康夫 角川文庫】

なぜ今更、これ、というのに特に理由はないです。
映画化したとき、すっごい宣伝してたのでよく覚えてるのですが、市川艮監督だったんですねぇ。
主題歌の「二人静」がなつかしい。
でも、たぶん、観てない。

上巻なので内容については特に言うこともないですが、私はどうも浅見くんの性格が嫌いなんだと思ってたのですけど、浅見くんが嫌いなんじゃなくて、内田先生の語り口が合わないんだな、と気づきました。
いいよ、いちいち読者に語り掛けなくても、と。

なにやら登場人物も多く、こんがらがっておりますが・・・さて。


2008年03月17日(月) 『きみのためのバラ』(小)

【池澤夏樹 新潮社】

短編集。
さまざまな国が舞台になっているけれど、旅行記風というよりは、スケッチブックのような印象。
やっぱり池澤夏樹の文章が好きだな、と思う。
「ヘルシンキ」「人生の広場」なんかが好きでした。


2008年03月10日(月) 『グミ・チョコレート・パイン』(映)『パソコンのパはパンツのパ』(漫)

【監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 日本】

オーケン原作小説の映画化。
原作読んでませんが。

ケラ監督は名前は知ってますが、舞台を観たことがあるわけでもなく、時効警察も見てなかったし、どんなのができてるのかさっぱり予想できず観に行ってきましたがおもしろかった。
そもそも青春映画のあの頃は良かった的な空気がどうも苦手なので気乗りしなかったのですが、これは、あの頃も今もさっぱりよくない。
でもよい。
羨ましくはないけど、なんともよい青春映画。
主演の二人もとてもよかったです。
美甘子役の黒川芽以はうまいしかわいいし。

大森さんとマギーは『アイデン&ティティ』で共演してましたが、あの映画も青春ものだったけど、あちらは私の苦手なタイプの青春ものでした。

電気グルーヴのエンディング曲もよかったです。

+++++++
【むとべりょう エンターブレインB’sLveyコミックス】

スエカネクミコ、やはりBL描いていたか・・・と。
スエカネさんの明るい変態が好きなのですが、BLでもやっぱりライトに明るい変態でした。
でもBLの方が変態度がライトになるのは何故だろう。

BLなのであたりまえなのですが、巨乳がないとやっぱり寂しい・・・。

ところで「どうかしている!」(タイトルですよ)が山○○ギさんの、某シリーズの某末っ子の話しに似て・・・・・・・
まああまり言わないでおきますが。
繊細な問題なので。
どちらも好きな漫画家ですし。


2008年03月03日(月) 『荒川アンダーザブリッジ1〜5』(漫)

【中村光 ヤングガンガンコミックス】

ず〜っと表紙が気になっていたのですが、いくら粗筋を読んでもさっぱりわからないので、結局読んでみました。
主に、4巻、5巻の表紙が気になったんですがね・・・。
読んでみると確かに粗筋の通りで、これは説明が難しい。

時折ふっと切ない瞬間があるのが好きなので、できれば、ニトとリクに焦点絞って欲しいなぁと。
だんだん、周りのキャラの話しが多くなってきてるので。

リク父から目が離せません。
高井もパパになりたいのかママになりたいのか、あるいは・・・なのか危険すぎる存在です。
そして、時折スーツを着ているシロさんが私的になんともたまりません・・・。



蒼子 |MAILHomePage

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