妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2008年04月30日(水) |
『風林火山』『ガールズ・ブルー II』(小) |
【井上靖 新潮文庫】
昨年の大河原作。 珍しく最初から最後まで見通していたので、小説はなんだかドラマのダイジェストのように感じてしまった。 小説で読むと、全体的に性格悪いな。 大河での家臣たちがいい味出してたし、特に板垣と甘利は感動的な死に様だったために、え、そんなあっさり!みたいな気分が否めない。 普通、ドラマより小説のほうが心情描写は詳しいと思うのだけど・・・ドラマこってりしてたからなぁ。
珍しくドラマのほうがおもしろかった、と思った例でした。
+++++++ 【あさのあつこ ポプラ文庫】
ポプラ文庫創刊だそうで。 ガールズ・ブルーの続編なのだけど、あさのあつこにしてはあっさり過ぎないか、と。 ガールズ・ブルーが好きだっただけに、ちょっと読んで残念な気がしました。 美咲とか、如月視点も読んでみたかった。 真央のことが心配なので、3があるときは、よい方向へ持っていってあげてもらいたい。
あさの作品の少年少女を読むと、10代の頃を思い出すというよりは、この子たちに認められる大人になってるかなぁということを考える。
2008年04月29日(火) |
『のぼうの城』(小)『L FILE NO.15』(他) |
【和田竜 小学館】
発売したときからオノナツメの表紙が気になりつつ、内容も気になりつつ静観したのですが、あれよあれよと売れてきた。 王様のブランチすごいな。 今年のナンバーワンは言いすぎだけど。
忍城と石田三成の攻防は知らなかったので、最後までどうなるどうなると楽しく読めた。 とても現代感覚で書かれていて読みやすかったし。 コアな歴史小説ファンはひょっとしたら軽すぎるかもしれないけど。 でもこののぼう様(“でくのぼう”の“のぼう”)のなんとも捉えどころのなさに、この文章は合ってると思います。 成田家家臣たちもいいキャラクターです。 戦国ものにしては珍しく、平均年齢が若いし。 敵方の三成もなんだかかわいい。
今後の作品も楽しみです。
+++++++++ 【写真:蜷川実花 集英社】
ワイミーが残したファイルという体裁の、L(マツケン)写真集。あとその他、小畑先生の漫画がちょっと。 とりあえず何をどう言っていいのかわからないので、すごいねぇと言っておく。
ワタリのメモパートがすごい。なんか内容がすごい。 ワタリってこんな感傷的キャラクターでしたっけ?というかこのワタリ、Lのこと愛しすぎじゃない?そもそもこの文章、老人のものというにはちょっと熱くない? 執筆者のよくわからない情熱が伝わってきまして、苦笑。
漫画はLの生態が垣間見えて楽しいです。 カラーだし。あいかわらず美麗。
写真はお尻からのアングルに驚きつつ、洗濯物干してるのと、メリーゴーランド乗ってるのと、泡風呂に漬け込まれてるのがかわいかったです。
2008年04月28日(月) |
『永遠を旅する者 ロストオデッセイ 千年の夢』(小) |
【重松清 講談社】
ゲームの『ロストオデッセイ』をやりたいやりたいと思いつつも、Xboxごと買うにはやはり踏ん切りがつかず、本書を読むことで諦めようと思ったのだけど、読んだらやっぱりやりたい。 誰かXboxを買って!
まえがきも説明はあるのだけど、本書はロストオデッセイというゲームで主人公が見る夢を重松清が小説として書いたもの。 夢の断片ともいえる短い話しが31篇入っています。 一千年を生きることの悲しみを書くことを依頼されただけあって、哀切な話しが多い。
カイム自身のことはあまり多く語られず、カイムの視点でさまざまな場所、時代の人々が語られる。 その多くが人の死であるのは、死なないということの哀しみを描くために必要だったのだろうとわかってはいても、一気に読むとけっこうつらい。 一話一話をゆっくり読むほうがよいように思います。
時代の傍観者に徹するカイムが、時折見せる心情や、積極的にかかわろうとする瞬間が見える話しが私は好きです。 「囚われの心で」「遺影画家」「グレオ爺さんの話」「コトばあさんのパン」「はずれくじ」「ハンナの旅立ち」など。
与えられたテーマが悲しみを書くことだったからしかたがないのだけれど、千年を生きることで出会う喜びももう少し読みたかった。 あまりにカイムが哀しくて、ゲームではもう少し喜びがあるんだろうか、と余計に気になってしまう。
2008年04月27日(日) |
『厭魅の如き憑くもの』(小) |
【三津田信三 原書房】
昨年のこのミス5位だった『首無の如き祟るもの』のシリーズ一作目。 首無を読もうかなと思ったのですが、なにごとも一作目から読まないと気がすまないので一応読んでみました。 (余談なのだけどこのミスを読み返したら“厭魅”に“えんみ”てルビが。“まじもの”って読むのだよ・・・)
土俗ホラーでミステリー。 横溝系ミステリにホラーを大量に盛り込んだ印象。 ホラー色が全面に出ているので、解決はミステリー:ホラー=7:3くらいだといいなぁと思って読んでいたのですが、9:1ですね。 もっと理屈で説明できない部分を残してもたぶん、この作品の雰囲気なら読者も受け入れてくれたんではないかなぁという気がしました。 紗霧の川辺でのエピソードや、漣三郎の兄とのエピソードはなかなか怖くていい雰囲気。 随所に怖い雰囲気が出ていたのだけれど、それでも時々興醒めするような記述があって残念。
紗霧の日記、漣三郎の記述録、取材ノート、そしてもう一つの視点、の4つの視点が繰り返されるのだけれど、もう少し4者の文体変えてもらいたかった。 時々間違ってるんだか、それともわざとなんだかわからない文章が出てきて戸惑う。 p127でそれまで老人と記述されてたのが急に刀麻谷と名前で記述され、その直後に老人が自己紹介してたり、p401で櫛、箸、傘、扇、案山子と並べていたけど、扇はこのあとに判明するものだったりなどなど。 あまりミスリードとしては意味のない部分なので、純粋にミスのように思えますが。
あと途中ででてくる土俗薀蓄も、絡んでいるようなないような。 そういうのは京極堂で十分だ、と。 三津田信三と京極夏彦でどちらが知識において正確かどうかということは意味がなく、いかにそれらしく読ませるかの問題で、京極夏彦はものすごく詭弁がうまいということをあらためて実感。
人間関係が複雑なのも、村の地形が複雑なのもミスリードに過ぎないのがなんとも残念。 あちこちに複線が散らばっていたのはわかるのだけれど、余ってる複線もあって、それはやはりミステリーとして美しくない。 文章が微妙に下手なのも痛い。 キャラクターが薄いので、いっそ金田一を呼べ!と途中で思ったりしてしまうのも痛い。
とりあえず私が気になってやまないのが、黒子と蓮次郎はどういう関係だったんだ!という一点。 できてたのか、実は黒子が女だったのか、聯太郎だったのか・・・とあれこれ勘繰ってたのに、そもそも蓮次郎自身が一度も出てこなかったし。 そこんとこに論理的説明をお願い、刀城さん!
2008年04月21日(月) |
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』(小) |
【桜庭一樹 富士見書房】
最近、漫画化したので漫画を読もうかなぁと思いつつ、先に小説を読んでみました。 桜庭一樹は初めて読みます。 どの本もタイトルがすごいし、コピーとかも、なんかアレだし、いささかしり込みしたくなる雰囲気が出てるのですが、読んでみたら意外にも普通。 いや普通というと悪いようなのですが、ライトノベル的な言語じゃない、という意味で。 読むとすぐに砂糖菓子の弾丸という言葉の持つ意味もわかるし、それがまた悲しい。 甘ったるくて無力な武器しか持たない藻屑がかわいそうで哀れ。
一番最初に結末が提示されているという点においても、ひじょうに重いのだけれど、なぎさと藻屑がいつまでも同じ言葉で語れないことが切ない。 二時間くらいで読めてしまうのだけど、よかったな。 桜庭一樹はきっとミステリ好きなんだろうなぁと思った。
まったくの余談で内容の雰囲気を壊しかねない感想なのだけど、藻屑が終始どうにも、鳥居みゆきとかぶってしょうがなかった。
2008年04月20日(日) |
『田村はまだか』(小) |
【朝倉かすみ 光文社】
この一冊で一躍有名になりそうな最近の朝倉かすみ。 最初に断っておくと田村は芸人の田村とは何の関係もありませんので。 いや、このタイトル聞くと多くの人が、あの?というリアクションするので。
小学校の同窓会の3次会、ススキノのバーでクラスメートの田村を待つ、5人の男女の話しです。 40代の男女の心境にはさすがに共感するものがあまりないのですが、『ほかに誰がいる』のときのように、やっぱりあまり普通の話しは書かない人なんだなぁという印象。 ありきたりな40代の男女、とは到底いえない5人。 5人が待つ、田村の小学生のころのエピソードにしたって平凡なエピソードではないし、中村という女子もけっこう異色。
なかなか現れない田村への興味がわいていく一方、私は二瓶さんが気になってなって。 最後になんでか店に来てくれたのがうれしい。
とは言うものの、どうも朝倉かすみの話しは苦手要素が多いかもしれない。
2008年04月17日(木) |
『ロング・グッドバイ』(小) |
【レイモンド・チャンドラー 訳:村上春樹 早川書房】
チャンドラーはいずれ読んでおくべき、と思っていたので新訳が出たこの機に(と言っても結構経つんだけど)読んでみました。
後ろ指差されることを承知で言うのだけど、退屈な話しです。 文章の特異性については、村上氏の解説をお読みいただくとして、レノックスが死んで以降からはもう、寄り道につぐ寄り道で、それを楽しく読める村上氏のような読者は楽しいのだろうけど、マーロウという人間がわからない初対面の私には戸惑いとともに退屈なエピソードの数々。 じゃあそこを省け、と思うかと言えば、そこを省かれたら何も残らないわけで、そこが魅力なのもわかる。 そのしつこい比喩はなんなんだ、と呆れたりもする。
テリー・レノックスというキャラクターは魅力的で、ラストも粋。 わかる。名作なのはわかる。 再読されるべき作品であり、もっと味わうべき文章なのもわかる。
だが長いんだ。 しかし短くしろとも言えない。 名作ってこれだから感想に困るんだよなぁ。
2008年04月14日(月) |
『FRAGILE』(小) |
【木原音瀬 ビープリンス文庫】
『ergo』なる雑誌(?)が発売されてしまうような木原音瀬っていったい何者?とずっと気にかかっていたのですが、新創刊されたこの文庫で新刊が出たので読んでみました。 内容は特に確認せず、表紙から、あぁ痛い系なんだなーと思いつつ。
読みながらいろいろな思いが去来しましたねぇ。 初めて読むし、BLは漫画は読むのですが小説はあまり読まないのですけど、BL小説にはBL小説の文法があると思うのですが、木原さんは小説の文法で書いている人なんだなーというのが第一印象。
テンポがよいというよりも何事も性急にことが運ぶBLですが、構成がしっかりしてるのか唐突感がなく余計なことにツッコミ入れる暇もなく読まされました。
こんな監禁調教モノにもかかわらず! すごい。
ここまで尊厳踏みにじられて、プライドずたずた状態で、いったいどういう結末がくるのか、どうまとめる気なんだ、といささか意地の悪い気持ちで読んでたのですが、狐につままれたような読後感になりました。 しかし、考えてみればこの話しでラスト殺し合いにならず、しかも奇跡のハッピーエンドにもっていくにはこれしかないなぁと。 そこに気づくと、大河内のろくでもない最低な性格もこれまた必要な要件だったんだろうなぁと気づきます。
青池の大河内への容赦ない仕打ちに目を奪われがちですが、大河内の性格設定がすごすぎる。 こんな最低のろくでなし見たことない。 (横柄で冷たくて権力志向のくせに小心で刺し違える勇気もない) それなのに青池がほれるのもわかるんだから、まあ、すごいわけですよ。
久しぶりに憎しみ愛なBL読んだなぁ。 この話しがすごくうまい、というのは重々わかったが、じゃあそこに萌えはあるのか、なにか感動はあるのか、ということを考えるとどうかなぁ。
青池の仕打ちの半端なさや、大河内の性格のろくでもなさは、本当に不愉快なまでのものがあって、私は好きは好きなんですが、はたしてそれはありなのだろうか悩むところです。
2008年04月12日(土) |
『ソラニン 1・2』(漫)『殺戮迷宮 魔界都市ガイド鬼録』(小) |
【浅野いにお 小学館ヤングサンデーコミックス】
ゼロ年代を代表する漫画家なんだそうだ。 確かにいま20代の人は特に共感する部分の多い漫画だろうなぁと思う。 まぁそりゃ泣きますよ。
『おやすみプンプン』よりもずっと一般向けでわかりやすい話でした。 いい漫画なんですが、私が漫画に求めるものはそれではないなぁと思う。
+++++++ 【菊地秀行 光文社文庫】
外道シリーズ2巻目です。 2巻目にして早くもガイドしてるか・・・?的な展開です。 そう考えると魔界都市で一番職務に忠実なのは屍さんなんだろうなぁ。
いささかデカイ敵をもってきすぎたような気がします。 ガイドに相手させる敵ではないような。 メフィストかせつらにしといたほうがよかったような。
外谷さんがついに!?というのが気になる。 ほんとにあれ、外谷さんだったのかなぁ。
2008年04月11日(金) |
『ラブヘタリスト』『シュガーミルク』(漫) |
少し前になりますがブログの方BLカテゴリができました。 ご活用ください。 分けてみたら意外とあってびっくりした。
【シヲ 東京漫画社マーブルコミックス】
最近は、マーブルコミックスばっかり読んでる気がしますが。 ちょっと変わっていつつ痛い暗い系ではない路線を扱ってくれてうれしいのです。
いろんな話しがはいった短編集。 ほんとに方向性がばらばらで。 「氷結眼鏡の向こう側」と「Sound of footsteps」がまあ好きだったかなぁ。 特に後者。 まったくBLではないが。 編集さん、もっとおやじ描かせてあげて。需要はあるよ!絶対にあるって!!
それにしても久しぶりに女子の概念が欠落したBLだったな。いいのですが。それはそれで。
+++++++ 【蛇龍どくろ 東京漫画社マーブルコミックス】
なんだか怖そうなPNだけど、なかみはかわいい系のお話しでした。 短編集でしたが、長い話も描けそうな雰囲気。
表題作も好きですが(不細工受けは好きです。増えて!)「虹の残り香」とか「冬を待つ季節」も好きでした。 後者はBLか?って感じですが。
私は需要が少なそうな話ばっかり好きだなぁ。 つーかBLっぽくない話しが好きなのか。 たぶんBLなのにBLっぽくないのが好きなんです。
2008年04月10日(木) |
『ジャンパー』(映) |
【監督:ダグ・リーマン アメリカ】
空間の抵抗感とでもいうのか、重みの感じられる瞬間移動シーンが、リアルで説得力がある。
ま、そこだけな映画なんですが。
内容は薄い。 が、短いしテンポも非常にいいのでつまらないことはない。 主人公が正義感に目覚めることもなく、いつまでも微妙にアホなのも新しいような気がする。 かっこいいのに、いささかもったいないくらい。
でも主人公よりグリフィンのほうが好きだったけど。 バックグラウンドがあまり語られないのも逆によかったなー。 もう少し君たち協力しなさいよ、と思いつつ。
前半部分で、デヴィッド(主人公)がテレビで洪水のニュースを見ても無関心だったのが伏線になるのかと思ったけど、どこまでいっても人助けに能力を使う気はなかった。 物語中ではなんとか切り抜けたわけだけど、きっと人々に祝福されるような人生にはならないんだろうなぁと思うラストでした。
2008年04月08日(火) |
『ヘタリア』『おやすみプンプン 1・2』(漫) |
【日丸屋秀和 幻冬舎コミックス】
言わずと知れた・・・あ、知らないのか。普通の人は。 知ってる人は知ってる、アホみたいに大人気のweb漫画がついに単行本化。 そんなわけで、半分くらいは読んだことある話しでした。 これを読めば誰もが国にわけのわからない愛着を持つに違いない。 愛国心とは別の何かですが。
さまざまなものを擬人化してきた腐女子ですが、国を擬人化したのが男子だったということに驚きを禁じえない。 (山手線擬人化を昔見たことがある) なんか、大丈夫?いいの、これ?
絵がかわいいのですが、致命的に字が読みづらいのが、単行本化して直るかなと思ったのだけど、いっそう潰れてる部分もあり・・・。
どうでもいいけど、私はオーストリアさんが好きです。 表紙デザイン素敵だなぁ。
++++++++ 【浅野いにお 小学館ヤングサンデーコミックス】
絵も漫画もすっごくうまい。 が、すっごいシュール。 そしてけっこう気分が落ちる。 あと、時々シュールさが怖い。プンプンのおじさんがすっげー怖い。 リアル目になるのやめて!怖い!! 基本的にこの漫画に出てくる大人がみんななんだか怖いです。
主人公がなぜか鳥みたいな形してるのですが、たぶん、こういう生き物というよりは、ごく普通の少年とその家族を極端なまでにデフォルメしていった結果なのかなぁという気がします。
しかし、わりと苦手な感じのシュールです・・・。
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