妄言読書日記
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※ネタバレしています
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【北方謙三 角川文庫】
8巻の主人公は、三年前に別れた妻の借金を払うために、N市にやってきたスーパー経営者の立野です。 今まで一番、職業だけで見ると庶民派。 でも、BDの男なのでぼこぼこにされても、しゃべらないと決めたら何もしゃべらないし、立てる限りは立つ、というタフガイ。
私はこんなの読んでいますが、暴力も人死にも非常に嫌う所でして、この巻のラストのむごさは、ちょっと吐き気がするほど嫌な後味です。 小説のラストとしてどうこうではなく、私の感覚から言ってどうにも嫌な気分になる。 果たして太一にここまでの運命を課す必然性はあったのだろうか、と思わずにはいられない。 直前の、 「パパに、いま翼をあげたいよ」 というシーンが印象的だっただけに、あんまりにも太一の死が残酷だと思う。
物語が、どこまで残酷であっていいものか、ということをちょっと考えてしまう。
【北方謙三 角川文庫】
今回の主人公は付き合っていた女を追って仕事も辞めてやってきた、下村です。 と思わせて、末期癌で蒲生のじいさんの亡き後、病院を建てようとがんばる沖田のほうが印象深いので、こっちの方を書きたかったのではという気がしますな。 毎度、50オーバーのオッサンが出てくると、若人たちは印象が薄れるな。
BD名台詞、というか有名台詞の、「俺の天使」がここで。 まさかあんなに連呼するとは思わず、笑えました。 俺の天使と言った下村よりも、「天使か。悪くねぇな」と答えた坂井にびっくりしますがな。 さすが、BDの男達。行動に予測がつきません。
歴代主人公は大抵、ぼこぼこにされますが、手を失った下村が今後どうやってブラディ・ドールのフロアマネージャーを勤めることになるのか気にかかります。
そして、叶が思いのほか地味に死んでいきました・・・。 キドニーにせっかく友だちができたのに(そこかよ) 叶とキドニーは何に惹かれあってたんですかね。いえ、深く追求はしないですが。 ただ、金魚は社長に託して本当に良かったのか、という気はします。 社長、ちゃんと金魚の面倒見るのかなぁ。 それこそキドニーに任せたほうがいいんでは。
桜内先生が、びっくりするほど知子の尻に敷かれていた上に、なんかキャラ変わった?というくらいよくしゃべっていた。 とても、男を家に泊めるような人とは思えなかったのに、下村を同居させてみたりしてさ。 いやはや・・・前の巻の主人公って、どうしていつもびっくりな行動するのかな。次の巻で。
【北方謙三 角川文庫】
今回は女好きで、流れの外科医・桜内。 そういや、女好きなキャラっていそうでいなかったなぁ。 ようやく医者の登場に、ドクの内面がどうとかこうとかいう以前に、医者としてひっきりなしに呼ばれまくり。 終いには自分の足も手術しちゃう桜内。 一人だけフルネームが明かされない、桜内。
そして、藤木の存在感の前では主人公なんて建前だとしか思えないドクでした・・・。 『黒銹』が叶の話と見せかけて、沢木の話しだったような感じでしょうか。
と言う感じで前振り終わってよいでしょうか。私がしたいのは藤木の話し一つなので・・・。 以下ネタバレのような、ぐだぐだした話し。
予想以上に藤木の死に凹んでいる自分がいます。 お前、お前は馬鹿だよ藤木…。でも止められないんだよなぁ。社長にだって。 やっぱり生きていられなかったのだろうな。 社長が、キドニーが、叶が藤木を語るたびに、もうよしてくれ、と言いたくてたまらなかった。 死んでいく者として語るのはやめてくれよ、と。 藤木も昔を語るのはやめてくれ、と。
「失いたくない友だちになっていた。気づいたらそうなっていた、と言っていたよ」 「馬鹿ですね」 「川中さんが?」 「私がです。社長にそう思われる前に、消えておくべきでした」
本当に馬鹿な人たちだ。 そう思われてしまったのだから、もう覚悟を決めてずっといればいいのに。 最後に社長の顔が見たいと言うなら、最後まで見ていればいいのに。
あぁ、もう何も言いたくない。
蒲生のじいさんが死んだもの哀しかったな。 遠山先生とのやり取り好きだったから。
2007年03月24日(土) |
『まほろ市の殺人 夏 夏に散る花』(小)『純情ロマンチカ1・2』(漫) |
【安孫子武丸 祥伝社文庫】
まほろ市という架空の都市を舞台にした、ミステリ競作うちの一作。 麻耶の作品を遠い昔に読んで以来二作目。 かなり短いあっさりな作品。
そういや我孫子の本格ミステリは初めて読むかな。 以前に読んだ『ディプロトドンティア・マクロプス』を読みましたけれど、あれは・・・SF?
以下ネタバレします。 まあ、気にするほど大したネタではないのですが。
お前、主人公のこと好きだったんか、 小山田ーっ!!? という感じですか。 急にそんなこと言われても。 双子と言い、小山田といい、一体主人公の何に引かれてるんだ? 顔か。顔がいいのか。 文学賞を獲りそこなった売れない作家だがそれでいいのか。
ラストでのみずきの殺しっぷりは、『かまいたちの夜』そのもの。 トリックに関係ない殺人が多すぎるよ。我孫子。 そういうのはフェアじゃない。
ラストみずきからの手紙で終わったのかと思って、怖いなぁと思っていたら、続きがあってそれがまた、どうしようもなくきれいごとで、どうしてそういう風にしちゃうかなぁと思いました。 我孫子よ・・・と毎度の事ながらつくづく思う。
+++++++ 【中村春菊 角川書店アスカコミックCL−DX】
私はこの人が大昔に描いた、京極堂同人(ギャグ)が好きだったのですが、よもやこんな売れっ子作家になるとは思わなんだ。
なんつーか、普通のBLかと思いますが。 基本に忠実な感じ。 いいのではないでしょうか。基本は大事です。 私はやっぱり、メインカプのお二人の話のほうが好きかな。 やっぱり基本ですので。
何しろ私はBLに関してはベタとお約束が大好きです。 万歳、予定調和!ウェルカム、流され人生!!
【北方謙三 角川文庫】
5巻目は、ターゲットを追って町にやって来た殺し屋・叶です。 でも本当に書きたかったのは、一度は女のために落ちぶれたジャズピアニストの沢村だったんだろうと思います。
今までの主人公の中ではだんとつに軽い男、というかいちいち気障な叶。 設定もあるかなしかの軽さ。 ある種気の毒な気もしました。 珍しく、キドニーと意気投合するキャラでもありましたが。 そして、これまた珍しく、社長よりも藤木に好感を持つというひねくれぶり。
いつか出るだろうと思っていた、『老人と海』もここで登場。 p178の 男はただ錆びていく。 にしびれる。サントリーのCMかっ!? 角瓶のキャッチコピーか!! 叶、おもしれぇなぁ。 笑うところじゃないのはわかってますって。
娘のボーイフレンド登場にやきもち焼きの秋山さんが可愛かったです。 社長にもこれくらい可愛げがあればいいのに。
【北方謙三 角川文庫】
粗筋 「荒海を渡り、絶壁をよじ登って、男は女のもとへやってきた。「私がいる。おまえには私がいる!」ただその一言を伝えるために。 毎回粗筋が熱い熱い。 そして、内容も全くその通りなので、本当にすばらしい。 でも、小説そのものは熱い筆致というわけではなく、冷静ですらあると思う。 読点の多さも最初は気になるのだけれど、これはこれでじっくりと力強い文章だなと読み進めると味わい深い。
今回は58歳の絵描き・遠山が主人公。 このシリーズどの主人公も別にヤクザ者でもなければ、裏社会の人間でもないというところが凄い。 まあ、堅気というわけでもないけれど、一応なにごともなければ一般人・・・と呼ぶのも笑止だが、一般人には違いない。 一巻以来そういやいないな、と思っていた悦子が登場。 てっきりそのまま社長のところで働いているのだと思っていたら、いろいろあったらしい。 結局、社長と悦子って対面していない、よなぁ。
玲子は死ななくてもよいような気がしたのだけれど、だめな男達だな。
巻末対談を読んでしまうと、今後饒舌なシーンが出てきたら、北方先生また寒い所で執筆しているのかな、とかカレーパンに当たったのかなとか思ってしまうよ。
【北方謙三 角川文庫】
3作目は、殺された妻の復讐のために、キーラーゴからやって来た男・秋山が主人公。 キーラーゴってどこですか、ってな感じの私ですが、雰囲気はわかる。 11歳の娘が一緒というところがよいですね。 なんだか、社長と似た雰囲気があるけれど、社長よりは甲斐性があるんでしょう。
女の人がいとも簡単に死ぬシリーズなので、菜摘さんが元気でなにより。 結構好きだな。 30代でおばさんと呼んだらだめだよ、秋山さんよ。
私的に女の子にいたずらするような奴は左手一本でもぬるいと思うけどな。 きっと藤木は今後も安見ちゃんの顔はまともに見られないのだろうな。不憫。
最後の北方インタビューで、何作目かで死ぬと言われてしまった、藤木。 やっぱり・・・やっぱり死ぬんだ〜。
2007年03月15日(木) |
『さらば、荒野』『碑銘』(小) |
【北方謙三 角川文庫】
10年ぶりくらいに、ブラディ・ドールシリーズを読み進めようという気分になったので、1巻を再読。
「冬は海からやって来る。毎年、それを静かに見ていたかった。だが、友よ。人生を降りた者にも闘わねばならない時がある。虚無と一瞬の激情を秘めて、ケンタッキー・バーボンに喉を灼く男。折り合いのつかない愛に身をよじる女―――。夜。霧雨。酒場。本格ハードボイルドの幕があく!」
とまあ、長くなりましたが裏の粗筋説明にはこう書いてありました。 まさにこてこてのハードボイルド! この粗筋だけで、3分くらいは笑っていられる。 内容もこてこてですがな。
一巻はクラブブラディ・ドールの経営者・川中が主人公。 まさに、タフな男。 うーわー・・・と女の目から見ると、はた迷惑この上ない男ですが、男が惚れるタイプの男です。 前半はいまいち共感もできず、どうぞご勝手にという気分でしたが、弟を背負って必死に駆けているあたりは、なかなかいいと思いました。 必死にならないやつには興味わかないんです。
一度読んでいるにもかかわらず、覚えていたのは最後の海上での追いかけっこシーンだけでしたが。 あまりに人が死にすぎてやりきれん。
+++++++ 【北方謙三 角川文庫】
川中社長はやっぱり、第三者視点から見たほうが素敵なようです。 二作目の主人公は、少々若返りまして、社長と藤木を殺すためにN市にやってきた坂井です。 前作から1年半の時が流れたようで、藤木は社長のくどきに負けたようで、ブラディ・ドールでマネージャーに。
社長視点だった時はあまりわからなかったのですが、坂井視点になったとたん、どいつもこいつも社長が大好きということを隠そうともしなくなって、非常に笑えました。 特に藤木。 ひょっとして、今の言葉で言うとツンデレなのか、藤木。 (ちなみに舞台は携帯電話も普及していない時代です)
個人的にはこの一年で、藤木と社長の間にあった心の交流が詳しく知りたいところですよ。 全然船のことを知らなかった藤木が、ちゃっかり運転できるようにまでなってたりさ。
坂井が藤木の決意を変えさせることは無理だ、と諦めたものを、社長が一言言ったらあっさり変えちゃう藤木(いやあっさりじゃないんだろうけども)を見ていると、きっと出会った頃から藤木は社長に弱かったんだろうなぁと思う。 だから、強固に社長のスカウトを断ってたのかも。
藤木にも坂井にも長生きしてもらいたいもんです。 藤木の作るカクテル飲みたいなぁ、と思いながら、私は干し芋齧りながらブラディ・ドール読んでました。
2007年03月13日(火) |
『純棘 Thorn Revolution6thMission』(小) |
【五條瑛 双葉社】
後半戦スタートです。 後半に入ったせいか、サーシャの出番が増えて、バックグラウンドも徐々に見えてきました。 個人的にはサーシャの細かい設定とか、過去話とかはさほど気にならないし、どちらかと言えばずっと謎のフェロモン男で通してもらいたいのですが、そうもいかんのでしょう。
久しぶりに鳩の出番も多く、だんだん彼の行く末もろくなもんじゃないんだろうなぁという気分に。
さて今回出てきた田沼ですが、五條キャラでは今までいそうでいなかったキャラかもしれません。 怖いよ。あんた。 終盤のシーンは『赤い羊は肉を喰う』の終盤と似てますな。
いやはや、ほんとこのシリーズはろくでなしというか、人でなしばっかりだな。
2007年03月11日(日) |
『龍が如く』(映)『君に届け 1〜3』(漫) |
【監督:三池崇史 日本】
まあ、ゲームですよ。 映画じゃなくて、この唐突さ、この説明の無さ、シーンの繋がりのなさ、アクションの秀逸さ。全部ゲーム。 私はこのゲーム、最初の方しか知らないのですが、街歩いていたら訳もわからずいきなりチンピラに絡まれたりするゲームです(シナリオはちゃんとありますよ!)
その唐突な部分だけがどういうわけかチョイスされた感じです。 ゲームの方がまだシナリオがちゃんとしてますね。くどいけど、最初しか知らないんですが。
真嶋の兄さん@岸谷吾郎メインです。 監督はどれだけ、真嶋の兄さん(もしくは岸谷氏)のことが大好きなのか。 確かにいい役だが、ああいうキャラは押さえるべきところに出てきてこそ美味しいのであって、あんなにずっと出ていては主役の影が薄れてしまう。 せっかく、珍しく北村一輝が主役なのにねぇ。
ダメっぷり全開の映画でしたが、私はなぜかけっこう好きでした。 絶対におすすめはしないのですが。
+++++++ 【椎名軽穂 集英社別冊マーガレットコミックス】
久しぶりに少女漫画という感じの少女漫画読みました。 その眩しさに、何度か死にそうになりました。 その純粋さに、灰になるかと。 吸血鬼にとっての太陽、ゾンビにとっての聖水、まさにそんな感じ。 朽ちる・・・!と思いました。
そして久しぶりに漫画読んで号泣です。 二巻は、女の子なら大抵泣くんじゃないかな。 爽子はもとより、矢野と吉田もええ子でな〜〜〜〜。 女の子の友情、たまらない。
そしてまた、風早くんが心底爽やかなんだよ。 どんだけ爽やかなのか! 塵になりそうですよ・・・。
黒い大人には爽やか過ぎて、逆にダメージが大きいそんな少女漫画でした。 みんながんばれ〜。
【志水アキ メディアファクトリー】
三国志の中の、5人の人物を主役にした短編集。 また、このチョイスが地味っつーか、渋いっつーか。 黄忠、鍾会、甘寧、孟獲、簡雍の五人です。 面白かったですけれど、なんともかんとも地味。 三国志というのは群像だからいいのかな、とこういう特定の人物に絞った話しを読むと毎回思います。 この感じで、いっそ三国志を描いてもらいたいもんだなぁ。
簡雍伝が一番好きかな。
2007年03月07日(水) |
『ラスト・イニング』(小) |
【あさのあつこ 角川書店】
『バッテリー』のその後を扱った短編が二編です。 その後は読みたいような読みたくないような複雑な気分でしたが、彼らはまだ成長しているのだなぁと感慨深いものがありました。
「マウンドへと」
あの最後の試合の直前の様子です。 みんな好きじゃ。
「白球の彼方」
高校生になった瑞垣の視点の話です。 最終巻を読んだ時にも思ったように記憶しているのですが、瑞垣を見ていると可哀相でならない。 一人大人になってしまったゆえに、ストレートに悩むこともできず、大胆にもなれず、相談することもできず。 大人になろうとしてそうなったわけではなく、元から彼はそういう性質だったのだろうと思う。 多分、大人はそんな瑞垣を見て大人びた子だと思い心配などしないのだろうし、同年代の周りの人間はやっぱり心配なんてしないで頼ってしまう。 瑞垣に必要なのは大人が彼を子ども扱いすることだと思う。 子どもなんだと思い知らせてやることも必要なんじゃないかと思うのだけれど、残念ながらあさの作品には共通してそういう確固とした大人がいない。 最後に監督が瑞垣に今までとは違う野球との関わりを示すけれど、いささか唐突な感もあった。
瑞垣はそれで野球との関わりに関しては解決できるかもしれないけれど、まだまだ門脇との関係については解決していない。 きっとこれからまだまだ、苦悩の日々なのだろうなぁ。 瑞垣は誰かがじゃなくて、自分が門脇に勝ちたいと思えればいいのに。 そうは思えないんだろうなぁ。難儀。
そしてラストの巧が可愛い。 豪には笑っててほしいなぁ。この二人もまだまだ難儀な道を歩いているようで。
香夏ちゃんとの兄妹関係がなかなか可愛かったです。
2007年03月03日(土) |
『現在官僚系もふ 8』(漫) |
【漫画:並木洋美 作:鍋田吉郎 小学館ビッグコミックス】
どうやら最終巻だったらしいです。 最後まであまり絵が上達しなかったなぁということくらいしか、感想がな・・・い・・・。 あと、めんどくせぇから、ヤマケン×もふは公式にしとけ、と途中で何度も思ったりもしつつ、いや、もふ攻か?そうなのか?とかも思ったりした。
全体的に踏み込みが足りないような印象。 官僚のお仕事がよくわからないので、どれくらい不足しているのか、これ以上描きようがないものなのかは定かではないが。
ところで、広瀬さんが新名に「ご主人をかどわかしたのは!」と言ったシーンがあるのですが、かどわかす=誘拐ではないですか。 かどわかしてどうする。「たぶらかす」もしくは、「そそのかす」の間違いではないのだろうか。
細かいことはあまり言いたくないが、これはちょっとなぁ。
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