妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
目次|前のページ|次のページ
2007年02月28日(水) |
『アフターマン 人類滅亡後の地球を支配する動物世界』(他) |
【ドゥーガル・ディクソン 訳:今泉吉典 ダイヤモンド社】
『フューチャーイズワイルド』より前に出版された本なので、同コンセプトの『フューチャーイズワイルド』の方が洗練されてるかなぁという印象。
人類が滅亡して、5000万年後、地球上の生物はどのような進化を果たしているだろうか、という本。 一つ一つイラスト付きで、ともすると普通の動物事典でも読んでいるような錯覚に陥りますが、全て推測される動物の姿なのです。 2億年後を扱ったフューチャー〜の方が、大胆な進化をしているので、読み物としては後者を読んだ方が面白いと思う。
生命のしたたかさと強靭さがありありと伝わり、わけもなくこのシリーズは感動してしまう。
50億年後、太陽の水素は燃え尽きてしまい、地球上の生命は絶えるかもしれないが、他の惑星で生命の進化ははじまり、生命は何らかの形で、つねに宇宙のどこかに存在することはほぼ間違いないと結ばれている。 それが地球上の生物ではなくても、人間でなくとも、ましてや自分となんの繋がりがない生き物であっても、どこかで生まれる生命に思いをはせると何ともいえぬ愛しさが沸く。
2007年02月24日(土) |
『TheMANZAI 3』(小) |
【あさのあつこ ピュアル文庫】
気がつけば三巻が出ていて、しかも文庫落ちまでしていたという。
なんというか、驚くほどに何も起こらない巻です。 つまらないと言えばつまらないし、物足りなさもある。 でも、私的には普通だとか普通じゃないとか、好きだの嫌われるだの、そういう極めてシンプルなことで悩めた時代のことを思い返して、ちょっと胸に切ない。 大人になってからだって、根本的にはそういうシンプルな悩みなのだろうけれど、そればっかり考えているわけにもいかないからなぁ。 いや、なんか泣けるな。
メグと秋本くんの親問題がこれからどうなるのか。 そして一方通行の三角関係がどこに行き着くのか。 この子等がどうやって大人になっていくのか、気にかかります。
2007年02月22日(木) |
『邪魅の雫』『動物園の鳥』(小) |
【京極夏彦 講談社ノベルス】
読むのに三ヶ月もかかってしまいました。 いつもどうしてこんなに厚いのかと思いながら読むのですが、いらないと思えるようなシーンなどを削っていっても多分、話しは通じるんじゃないかと思うのですが、きっとそうしたらこのシリーズらしさ、というようなものがなくなるのだろうなぁという気がします。 長くてもいいんですが、やっぱりこう厚いと怯むよねぇ。毎度。
シリーズの新作というのは、シリーズの流れにおいての評価と、その一冊単独での評価ができると思うのですが、邪魅はシリーズのうちの一冊としては興味深い事実が出てきて面白いとは思いますが、一作品としてみると、他の話しよりも地味、という印象。
それでもなんだか私は好きでした。 益田くんと関くんというコンビが案外面白かったから、かもしれません。 青木くんもがんばってたし。 もしくは、訳もわからず右往左往する人々を尻目に、次々に起こる殺人、そして解きほぐされる真相、という流れが久しぶりに探偵小説の基本に立ち返ったような気がして、懐かしさすら感じたからかもしれません。
前作、今回、と榎さんがあまり元気じゃなくてちょっと寂しい。
+++++++ 【坂木司 創元推理文庫】
ひきこもり探偵シリーズ完結です。 ぼちぼちとぼやいていましたが、まあ、こういう小説というか作家というのも必要なのかなぁと思います。 鳥井が苛められるようになった経緯が語られましたが、やはり甘いような気はするし、谷越はそうそう許されるようなことはしていないし、またすぐに改悛するような人物ではあり得ないと思う。
でもどうしても、信じたいんだろうなぁ。人の善意を。
それを青いと思ってしまうこちら側に問題があるのかもしれない。 それでもやっぱり、私はこの小説の人物達の甘さに苦笑する。
苦笑するけれど、鳥井と坂木の一歩は応援してますよ。
作家の方の坂木さんも真面目な感じがするので、ひょっとしたら今後書いていくうちにもっと上達するんじゃないかなぁ。小説。 気が向いたらまた読んでみるかもしれません。
2007年02月20日(火) |
『この方法で生延びろ! 究極サバイバル篇』(他) |
【ジョシュア・ペイビン デビッド・ボーゲニクト 訳:倉骨彰 草思社】
第6弾は、初心回帰ということでしたが、面白イラストがなく、いつものようにUPできず。 項目的には、ゾウの群れが押し寄せてきたら、とか、大ダコに襲われたら、暴走タクシーに乗ってしまったら、生きたまま埋葬されてしまったら・・・などなど、まあないよな、というものから、白い粉が入った不審な封筒が届いたら、とか遭難したら、などというようなないこともないかもしれない、という項目まで。
動物達の襲撃、という章に「吸血鬼に襲われないようにするには」が入っていて、動物に分類?と疑問に思いましたが。
大怪我をせずに階段を転げ落ちるにはジグザグに落ちるといいみたいなのですが、多分、思い出す間もなく落ちるのではないか、という気がします。
放射能汚染から身を守るには、というのもあるのですが、読むほどに守れる気がしなくなるのですよね・・・。
やはり、初回のインパクトは越えられず、というところ。
2007年02月16日(金) |
『あの花に手が届けば』(小) |
【駒崎優 中央公論新社C・NOVELS】
バンダル・アード・ケナードシリーズの二作目(冊数では四冊目)です。 今回は一冊でお話し終わり。 うーん、可もなく不可もなく。 なんというか、ついでに、緊迫感も無く…。 小説的な面白さを求めて読んでいる訳じゃないから、私はいいのですが、普通に考えたら多分、物足りないだろうな。
前作との繋がりは微塵も無くて、先生はどうなったのだろうな・・・と思ってみたりしつつ、エルディル(白狼)とアリ君が可愛いければいい私は、特に気にしません。 その一人と一匹にしたところで、微妙に活躍の場があったんだかなかったんだかという感じで、不完全燃焼。
隊長の入浴も無く、いささか残念。
ネルの処遇は甘くないか、と思うんですが。 結果的に誰も殺してないって、あなた達冒頭で仲間数名を失ってるじゃないですか…。 間接的ならよしとか言わないように。
次があるのか無いのかわかりませんけども、まあ、出たら読みますよ。 ほんっと、挿絵に救われているなぁ。この小説。
2007年02月15日(木) |
『ワルキューレの雪騎行』『アリアドネの糸車』『シヴァの踊る森』(小) |
【桑原水菜 集英社コバルト文庫】
ためてた分、一気に読みました。 あぁ、つ〜か〜れ〜た〜。 では一冊ずつ。
「ワルキューレの雪騎行」
帯に「新境地」って書いてあるのですが、やっぱりミラージュ初期の雰囲気がある・・・と・・・・・思うんだけどな。 確かにスタートこそ、ドイツで心臓移植という日本の郷土文化、信仰どっぷりだった桑原作品とは雰囲気変わったかな、と思ったのですが、2巻目はもう雪女ですからねぇ。 もうあっという間に桑原ワールドです。 桑原ワールドと言えば、山間でのカーチェイス。なんだか懐かしいよ・・・涙、という感じで。 相変わらず車好きですね。桑原先生。
アイザックの偽善っぷりが愛おしいですな。 もうね。先が見えるようだよね。アイザック。どちらの命を選んでも壮絶に後悔するアイザック。ぐるぐる苦悩しまくるアイザック。 ケヴァンとアイザック、どちらが先に答えを出すのか。
「アリアドネの糸車」
こんなにアクション満載小説はコバルトでは桑原先生くらいじゃなのか、と毎度思う。 満載なだけじゃなく、派手。
思い悩むと仏様に会いに行ってしまうあたりに、某N氏を思い出しますが…。 アイザック氏、どんどん苦悩も深まり、桑原的だめんずの真価(?)発揮してきてます。 奏のことは好きだが、兄の心臓は取り返したい。 その傲慢と偽善がたまらないですね。
ケヴァンの言葉と、アイザックの言葉のどちらを信じたらいいかわからない奏@主人公には本当に、心から強く生きろと言ってあげたい。 15歳で桑原小説の主人公やるのは大変だよ・・・。がんばれ、奏。 彼のこれからを考えると、本当に気の毒で気の毒で・・・。負けるなー! 特にアイザックに。
「シヴァの踊る森」
ドイツからスタートしたのに、今となっては御岳山で滝行です。 すっかり桑原フィールドじゃないですか。いいんですけれども。私は。
ついにジェットコースターの最初の上昇部分が終わったな、という巻でした。 後は下って下ってぐるぐるされて・・・という展開が待っているのでしょうね。間違いなく。
やっぱりという感じで、アイザックよりも先に、ケヴァンが答えを出しました。 ケヴァンも彼は彼で色々、ぐるぐるしてるんだろうけれど、ひとまずは奏を助ける方向に決心してくれてほっとします。
ようやく、事の全容が見えてきて、奏には大変ショックの大きい巻でしたが、本当にもう不憫だな・・・。 アイザックの裏切りもついに露見。 これからのアイザックの苦悩を思うと・・・ときめきが止まりませんな。
徐々に出てきた、アドルフがどんな人物なのかも大層気になるところ。 ケヴァンと奏の逃避行はどうなるのか。 ・・・ひょっとしてまた、壮大なシリーズになっちゃうんでしょうか。若干恐怖です。
2007年02月14日(水) |
『アヒルと鴨のコインロッカー』(小) |
【伊坂幸太郎 創元推理文庫】
初っ端からなんですが、ネタバレしないと感想が書けないのでご了承ください。
東京から進学のために仙台に来た椎名が主人公の現代と、ペットショップ屋でアルバイトをしている琴美が主人公の二年前の話が交互に語られます。 エピソードの時間差を上手くつないでいく手法は、伊坂の定番と言えるかも。
徐々に琴美パートにて、何が起こったのかがわかるにつれ、椎名パートの“河崎”に違和感を感じてくるのは本当に上手い。 今まで読んだ伊坂作品の中では一番、哀しみとやり切れない思いが強い話しでした。 再三、因果応報が語られるのだけれど、結局はそれを願う登場人物たちの望みは叶うようで叶わない。 ペット殺しの犯人の一人は結局生き残り、琴美やドルジは死んでしまう。
「死ななくてもいい。せめて、歩けなくなればいいな」 と言うドルジの願いくらいは叶っていればいいな、と思う。
2007年02月12日(月) |
『BLOOD+A 1・2』(漫) |
【スエカネクミコ 角川書店】
先日読んだ『はじまりのグラシュマ』がそれなりに面白かったので、こちらもついでに。 内容が面白かったと言うより、スエカネさんの絵が好きだった、という理由の方が大きかったのですが。
アニメの方は全く知らないので、読んでいて、世界観の基礎知識がないためふーん?みたいな曖昧な理解で読み進みましたが、暗いなぁ! この分だとアニメも暗めなのだろうな。 多分、主人公二人が真面目だから、一層暗いんだろうなぁ。
だが、そんなサヤとハジが良いのだろうな。
全く関係ないのだけれど、舞台がノマノフ宮廷だったので、ゲームの『シャドウハーツ2』の舞台を思い出してしまいました。 あ、おんなじだーって(当たり前なんですが)
アニメと比較してどうのこうのとは言えないのですが、面白かったと思いますよ。
2007年02月08日(木) |
『マリー・アントワネット』(映) |
【監督:ソフィア・コッポラ アメリカ】
セレブな監督が撮ったセレブな映画。 よくもまあ、あの有名な悲劇の王妃の物語を、ここまで薄っぺらいストーリーにできるものだなぁと逆に感心する。
“女の子”の映画。 女の子達が、終始、可愛いものと甘いお菓子に囲まれて、豪華なお城に住んで、きゃっきゃと楽しそうではある。
マリー・アントワネットのプロモ映像だと思えばいいのかもしれない。
キルスティン・ダンストは、確かに美人ではないが、表情によってはとってもキュート。 (逆に角度によってはやたら可愛くない) 愛すべき王妃で、いまどきのアメリカンな感じのするマリーだっただけに、もう少し映画自体に奥行きがあったら面白かったのだろうなぁと思う。 暗くてどろっとした部分は、きれいさっぱり軽く流されてしまった。 ま、きれいで可愛いものが撮りたかったんだろうなぁ。 実際のベルサイユ宮殿で撮影できた喜びはひしひし感じる。
カンヌで、パルムドッグ賞なるものを獲ったらしい、マリーの愛犬・パグは凄い可愛かったけど。 いや本当に可愛かったな。
2007年02月05日(月) |
『赤の神紋 第十三章 AngelosGlow』(小)『鳥類図鑑』(他) |
【桑原水菜 集英社コバルト文庫】
去年の九月に発売していたようなのですが、1月に気づいたために、不覚にも帯がついていません…。 かなり落ち込み。
気を取り直して、本編はついに開幕「メデューサ」でございます。 個人的には再三言っているように、榛原の演劇はあまり観たくないかも〜と思うのですが、メデューサもなかなかにえげつない内容のようで、ええんかい、公開してもと思ったり。
十日間の公演をやり切れるのか、というテンションで前半戦が終了。 ケイの命綱、響生が微妙に煮え切らないので、後半戦はゴーゴー響生です。 響生に半端は似合わないので、前科がついてもいいから思うままにいきなよ、響生。 と思うのですが、実際に行かれると、あぁ〜なんでそんな行動に出ちゃうかなぁ〜と頭を抱えるので、困ったもんです。
榛原の過去話もちらっと出てきて、榛原に懐かれるのも考えもんだなぁ、響生にケイ。
舞台から降りてしょっぱい気持ちになる、奥田が唯一ほほえましい。 新くんもいい子だよなー。 次の新刊はいつですか! そろそろ終わりなのかな、と思うとなんとも切ない。なんでだろう。
+++++++ 【絵・文:本山賢司 東京書籍】
鳥類図鑑という名前がついており、野鳥のイラストと簡単な生態が書いてありますが、本山氏の各鳥に関するエッセイ的な要素の強い説明文が普通の図鑑と一味違います。 本格的図鑑を期待すると、不満があるかもしれませんが、本山氏の文章がユーモアあって楽しい。
「後頭部の冠羽のせいで、キンクロハジロは威勢のいいあんちゃんのように見える」とか「ほかの鴨にくらべてオシドリのオスは、すこぶる派手だ。何だか怪しい。すると、どうだろう。オスはヒナの世話をメスにまかせっぱなしにして、越冬地へ移っていってしまう。新しいメスを探して、つがいになるためである。いちどつがいになった相手とは、決して一緒にならないという徹底した輩もいる。やはりにらんだとおりだ」とか書いてある。
なかなかおもしろい一冊です。
2007年02月02日(金) |
『はじまりのグラシュマ』『鉄コン筋クリート All in One』(漫) |
【スエカネクミコ 角川書店】
ゲーム『逆転裁判』のキャラデザをしていたスエカネさんの、初オリジナルコミックです。 やっぱりこの人の絵が好きだなぁ。 女の子の消えた世界に残された男たちが次々と魔法使いになるという、粗筋だけだとわかるようなわからないような話しです。 顛末はわりと個人的な話しになってましたが、キャラクターが可愛かった。 あと、スエカネさんの描く女体いいよ。ラインが。
タイトルの意味は読み終わってもわかりませんが。 (あとがきでわかるけど、そんなの説明されなきゃわからないよ!)
ストーリーが大雑把なのだけれど、次の作品楽しみにしてます。
+++++++ 【松本大洋 小学館】
映画化で話題の原作です。 お買い得と思って、これ買ったのですが重くて大変でした…。
言ってしまえば、善と悪の葛藤物語ですが、久しぶりにこんなオーソドックスに善と悪を書いたもの読んだなぁという感じ。 予定調和なストーリーですが、独特の絵柄で読ませます。 面白かったです。 映画はー・・・まだこちらは公開してないようです・・・田舎だから。
しかし、松本先生、絵柄はユニークだけど話しは案外素直なのね。 変にひねくれてなくていいけども。
2007年02月01日(木) |
『ディパーテッド』(映) |
【監督:マーティン・スコセッシ アメリカ】
『インファナルアフェア』のリメイクですが、テーマが全く違うので、インファナル〜の方のイメージで観ているとけっこう違和感。 無間が副題についていただけに、終わることなき罪と罰という感じでしたが、こちらは信頼と裏切りがテーマ。 一つ一つのエピソードやセリフが、元と一緒なだけに、描いているテーマが違うのはまさに換骨奪胎という感じでした。
潜入する二人のアイデンティティの揺らぎというのはあまりなく(ディカプリオのあれはどちらかと言えば罪悪感だろう)、トニー・レオンやアンディ・ラウの鬼気迫る演技の印象が強かった香港版と比べてしまうと、こちらの二人はちょっと薄味。 特にマット・デイモン。 演技力の問題ではなく味付けの違いなのですが。
主演二人を押し退けるがごとく、存在感を放っていたマフィアボスのジャック・ニコルソンがこの映画の主役だったと思います。 いやはや痺れる悪役っぷりでした。
いつ潜入だとばれるのかという緊張感があまりなかったのですが、ラストのエレベーターシーンが香港版とちょっと違って、一番緊張感があったなぁ。 あんな死に方をするディカプリオは初めて観る。なかなかの衝撃シーンでした。
ラストにディグナムがコリンを撃つのですけれど、ディグナムには辞職しないで警官として逮捕するなりなんなりして欲しかったんだけどなぁ・・・とそこは不満。 オリジナルにはいないキャラなだけに、なんだかコリンを撃つためだけに追加されたのか?と思ってしまうよ。
よい出来ではあるのだけれど、オリジナルの方が好きでした。
|